
1. 歌詞の概要
「She Flies on Strange Wings」は、オランダのロック・バンドGolden Earringが1971年に発表したアルバム『Seven Tears』に収録された楽曲であり、シングルとしてもリリースされた。60年代後半のビート・ポップから脱却し、よりシリアスでプログレッシブな作風へと向かい始めた彼らの変化を象徴する一曲である。
歌詞の内容は神秘的で寓話的であり、「奇妙な翼で飛ぶ女性」という象徴的な存在をめぐる物語が描かれている。彼女は自由と神秘を兼ね備えた存在であり、主人公を惹きつけながらも手の届かない超越的な存在として描かれる。その姿は幻想的であり、同時に恐怖や畏怖をも感じさせる。恋愛や欲望の対象であると同時に、解放や破滅をもたらす「危うい象徴」としての女性像を提示している。
2. 歌詞のバックグラウンド
1971年当時、Golden Earringは「Golden Earrings」から現在の「Golden Earring」へとバンド名を短縮し、音楽性もよりシリアスでハードな方向へ舵を切っていた。「She Flies on Strange Wings」はその過程で生まれた代表曲であり、プログレッシブ・ロック的な要素やシンフォニックなアレンジを取り入れている。
この曲は7分を超える大作で、当時のシングルとしては異例の長さを誇る。バンドは演奏力とアレンジ力を前面に押し出し、後の「Radar Love」(1973)や「Twilight Zone」(1982)に続く国際的ブレイクの下地を築いていた。特に、この曲の幻想的で壮大な展開は、ヨーロッパのリスナーに「Golden Earringはただのポップ・バンドではない」という印象を強く植え付けたといえる。
ライブでもこの曲は長らくレパートリーに組み込まれ、Golden Earringの初期の代表作のひとつとして愛され続けた。
3. 歌詞の抜粋と和訳
以下に「She Flies on Strange Wings」の印象的な部分を抜粋し、英語歌詞と和訳を併記する。
(歌詞引用:Genius)
She flies on strange wings
彼女は奇妙な翼で飛んでいく
She’s got a tale to tell
彼女は物語を語ろうとしている
She hides it all too well
だがその物語は深く隠されている
Her eyes are mirrors of the sea
彼女の瞳は海のような鏡だ
A treasure chest of mystery
謎に満ちた宝箱のように
歌詞は彼女の存在を「謎」「神秘」「恐怖」として描き、普通の人間を超えた象徴的存在に仕立て上げている。
4. 歌詞の考察
「She Flies on Strange Wings」に登場する女性は、単なる恋愛対象ではなく「超越的で神秘的な存在」として描かれている。彼女は自由に飛び回り、秘密を抱え、主人公を魅了しながらも手の届かない距離にいる。その姿は「欲望と恐怖」「自由と破滅」といった二面性を象徴しているように思える。
歌詞に繰り返し登場する「翼」というイメージは、自由や超越を意味すると同時に、異質さや危険をも示している。彼女の「奇妙な翼」は、人間の理解を超えた力であり、主人公が惹かれながらも畏怖を抱く理由となっている。
音楽的にも、この曲は静と動のコントラストを駆使し、女性の神秘性を音で表現している。幻想的なパートから爆発的なギターのリフへと展開する構造は、まるで彼女の存在そのものを音楽で描き出しているようだ。バンドは歌詞と音楽を完全に融合させ、プログレッシブ・ロック的な「叙事詩的体験」を提示している。
この曲が当時のシングルとして異例の長さを持っていたことも、彼らが単なるポップ・バンドから脱却し、芸術性を強調する方向へ進んでいたことを裏付けている。
(歌詞引用:Genius)
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- Eight Miles High by Golden Earring
バーズのカバーであり、同じく幻想的でサイケデリックな長尺の演奏が光る。 - Radar Love by Golden Earring
国際的にブレイクするきっかけとなった代表曲で、疾走感と壮大さが魅力。 - A Salty Dog by Procol Harum
幻想的で叙事詩的な世界観を描く、同時代の英国プログレ作品。 - Child in Time by Deep Purple
長尺でダイナミックな展開を持つ名曲で、「She Flies on Strange Wings」と同じ劇的構造を共有。 - Lady Fantasy by Camel
神秘的な女性像を扱い、叙情性と壮大な展開を兼ね備えたプログレの代表的ナンバー。
6. Golden Earringにとっての意義
「She Flies on Strange Wings」は、Golden Earringが国際的に羽ばたく直前の重要な作品であり、彼らの音楽的進化を示す象徴的な楽曲である。60年代のポップから脱却し、シリアスでプログレッシブな領域へと進んでいく過程において、この曲は大きな意味を持っていた。
「奇妙な翼で飛ぶ女性」というテーマは、彼らの音楽が持つ幻想性や神秘性を体現しており、後の「Radar Love」や「Twilight Zone」のような国際的成功へとつながる重要なステップとなった。今日においても、この曲はGolden Earringの初期から中期への移行を象徴する記念碑的作品として評価され続けている。



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