
1. 歌詞の概要
「Seven Wonders」は、Fleetwood Macが1987年に発表したアルバム『Tango in the Night』に収録された楽曲で、スティーヴィー・ニックスがリード・ヴォーカルを担当したシングル曲である。歌詞は、失われた愛とその記憶を幻想的に描き、古代の「世界七不思議」にたとえている。かつての恋はすでに終わっているものの、その人との時間が自分の人生において特別な意味を持っていたことを「もし七不思議のうちの一つだけを知ることができたのなら、それはあなたとの愛だった」と歌い上げている。愛の喪失を悼みつつも、その体験が永遠に消えない宝物であることを示す、哀愁と誇りが入り混じったバラードである。
2. 歌詞のバックグラウンド
「Seven Wonders」は、作曲家サンディ・スチュワート(Sandy Stewart)による作品で、スティーヴィー・ニックスが歌詞の一部を手直しし、自身のパーソナルな感情を込めたことでFleetwood Macの楽曲となった。アルバム『Tango in the Night』は80年代のFleetwood Macを象徴する華やかでシンセサイザー主導のサウンドを持つ作品であり、「Seven Wonders」はその中でもメランコリックなムードとポップさを兼ね備えた楽曲として人気を博した。
この曲は、スティーヴィー・ニックスのキャラクター性――神秘的で幻想的なイメージ――を体現していると同時に、彼女自身の恋愛遍歴や愛への執着とも重ね合わせられる。Fleetwood Mac内部の複雑な人間関係(バッキンガムとの別れ、バンド内外での恋愛模様)も、曲の感情的な深みを一層強めていると言える。
また「Seven Wonders」は、のちにアメリカのドラマ『アメリカン・ホラー・ストーリー:魔女団(Coven)』で使用され、スティーヴィー・ニックスがゲスト出演したことで再び脚光を浴び、現代のリスナーにも強く印象づけられることとなった。
3. 歌詞の抜粋と和訳
英語歌詞(抜粋)
“So long ago
Certain place, certain time
You touched my hand
All the way, all the way down to Emmiline”
日本語訳
「ずっと昔
ある場所、ある時
あなたが私の手に触れた
その感触は、深く、深く心に刻まれている」
そしてサビ部分でこう歌われる。
英語歌詞(抜粋)
“If I live to see the seven wonders
I’ll make a path to the rainbow’s end
I’ll never live to match the beauty again
The beauty of you”
日本語訳
「もし七不思議のすべてを目にしたとしても
虹の果てまで辿り着いたとしても
二度と出会えないだろう
あなたという美しさに」
(歌詞引用元: Genius)
4. 歌詞の考察
「Seven Wonders」の核にあるのは「喪失した愛の唯一無二性」である。七不思議という比喩は、人類が誇る奇跡的な建築物や自然現象を意味するが、それらよりも自分の経験した愛の方がはるかに美しく価値あるものだった、とニックスは歌っている。この表現には、彼女自身のロマンティックで神秘的な視点が反映されている。
また歌詞全体に漂うのは「時間が流れても色あせない記憶」の力である。かつての愛は失われてしまったが、その記憶は虹の果てや奇跡を超えるほどの意味を持ち、永遠に自分を形作る一部となる。そこには悲しみと同時に、愛を経験できたことへの誇りや感謝も込められている。
Fleetwood Macの楽曲の多くは、愛の終わりや裏切り、再生といったテーマを扱っているが、「Seven Wonders」は特に幻想性が強く、現実的な痛みを神話的な言葉で昇華している点に特徴がある。これはスティーヴィー・ニックスの詩的感性が最大限に活かされた楽曲であり、彼女の歌声が持つ霊的な響きと完璧に調和している。
(歌詞引用元: Genius)
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- Gypsy by Fleetwood Mac
自由と喪失を幻想的に描いたニックスの代表曲。 - Rhiannon by Fleetwood Mac
神秘的な女性像を描き、ニックスのイメージを決定づけた曲。 - Sara by Fleetwood Mac
愛と喪失を象徴的に綴った長編的な楽曲。 - Edge of Seventeen by Stevie Nicks
ソロキャリアにおける代表曲で、愛と死を詩的に昇華したナンバー。 - White Rabbit by Jefferson Airplane
神秘と幻想をサイケデリックに描いた同時代の女性ヴォーカル曲。
6. 現在における評価と影響
「Seven Wonders」は『Tango in the Night』からシングルカットされ、アメリカ・イギリス双方でチャート入りするヒットを記録した。アルバムの中でも最もスティーヴィー・ニックス色が強い曲であり、バンドのポップなサウンドと彼女の神秘的な作風が見事に融合した楽曲として高く評価されている。
現代においても、この曲はFleetwood Macのライブで人気を博し続けており、スティーヴィー・ニックスのキャリア全体においても重要な位置を占める。特に『アメリカン・ホラー・ストーリー』での再利用により、若い世代のリスナーに再発見され、彼女の「ロックの魔女」としてのイメージをさらに強固なものとした。
「Seven Wonders」は、愛の喪失を壮大で幻想的な言葉に昇華し、永遠のロマンティシズムを体現した楽曲として、今もなお輝きを放ち続けている。



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