アルバムレビュー:Send Me a Lullaby by The Go-Betweens

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

Spotifyジャケット画像

発売日: 1981年11月(オーストラリア)、1982年2月(イギリス)
ジャンル: ポストパンク、インディーロック、フォークロック


概要

『Send Me a Lullaby』は、オーストラリア出身のバンドThe Go-Betweensが1981年に発表したデビュー・アルバムであり、ポストパンク期に生まれた最も繊細で文学的なロック作品のひとつとして知られている。
この時点でのメンバーは、ロバート・フォースターとグラント・マクレナンの2人のソングライターとドラマーのリンダ・ニコルソンで構成され、のちにバンドの“二重性”を象徴する対比的な作風がすでに芽吹いている。

本作はPostcard RecordsやRough Tradeなどと並ぶ初期インディーポップの黎明期に登場し、その素朴でありながら鋭利な言葉遣いと、ぎこちなくも美しいメロディライン、アヴァンギャルドなリズム構成によって、特にUKのポストパンク・シーンで熱狂的な評価を受けた。

プロデューサーにはGo-Betweensの盟友でもあるThe Birthday Partyのドラマー、ミック・ハーヴェイが名を連ねており、その荒削りで即興性の高い音像は、のちの洗練された“文芸ポップ”路線とは一線を画す
タイトル『Send Me a Lullaby(子守唄を送って)』には、傷ついた若者の“優しさへの希求”と“現実とのねじれ”が重なって響く。


全曲レビュー

1. Your Turn, My Turn

跳ねるようなリズムと、ぎこちないギターの絡みが印象的なオープニング。
交代制の恋愛観を描いた歌詞は、曖昧で詩的で、フォースターらしい皮肉が込められている。
パンク的なミニマリズムと詩情が共存。

2. One Thing Can Hold Us

メロディアスなラインの裏に、崩れそうなリズム感が潜む不安定なバラード。
“僕たちを繋ぎとめるものは何か?”という問いが、空白を含んだ演奏に滲み出ている。

3. People Know

初期Go-Betweensの特徴である“楽器の非対称性”が際立つナンバー。
人は他人をどこまで理解できるのかという問いが、語り口調の歌詞に込められている。
音数は少ないが緊張感が高い。

4. Don’t Let Him Come Back

マクレナンによる、より感傷的な視点から描かれる恋愛の一幕。
“彼を戻さないで”というフレーズが繰り返される中、真っ直ぐな愛情と不安が交錯する。
フォーク的なコード進行とシンプルなメロディが効果的。

5. Cats Life

童話のような世界観と、鋭い社会観察が交差する異色の小品。
リズムの切れ味と、皮肉な言葉の応酬がThe Fallにも通じる感触を持つ。

6. Midnight to Neon

深夜から朝方にかけての都市風景を描いた、詩的なポストパンク・ナンバー。
きらびやかさとは対極の、沈黙と空虚を鳴らすような演奏が心を掴む。
フォースターの朗読のようなヴォーカルが冴える。

7. Eight Pictures

物語性の強い歌詞と、断片的なイメージを重ねて構成された楽曲。
“8枚の写真”が示すのは記憶か、恋か、それとも失われた時間か。
音楽は淡く、言葉が前景化される。

8. After the Fireworks

おそらくアルバム随一のメロディアスな楽曲。
花火のあとの静けさ=感情のクライマックス後の虚無を描いた歌詞は、後年の傑作群を予感させる美しさを持つ。
マクレナンの作家性が光る瞬間。

9. Sideways Act

鋭角的なリフとスネアが牽引するアブストラクトなトラック。
恋愛も生活も“真っ直ぐには進まない”というメッセージを、楽曲そのものの構造が体現している。

10. Friends of My World

“私の世界の友人たち”というフレーズが繰り返される、内省的な楽曲。
孤独と連帯の間を揺れるような感情が、繊細な音使いとともに描かれる。

11. Ride

リズムが複雑に組み合わさり、ギターが不規則に響く実験的トラック。
“乗ってしまえば戻れない”というような衝動性が、演奏とリリックの両面に込められている。

12. Arrow in a Boy

最後を締めくくるのは、“少年に突き刺さる矢”という象徴的なタイトルの楽曲。
痛みと成長、愛と不在の物語が重層的に重なるような、余韻を残すフィナーレ。


総評

『Send Me a Lullaby』は、未完成であることの美しさと、実験精神が結晶化した、ポストパンク~インディー時代の記念碑的作品である。
リズムは非対称、メロディはぎこちない。だがその不完全さこそが、都市の孤独、青春の不安、言葉にできない感情を鮮やかに描き出している。

フォースターとマクレナンのデュアルな作家性はまだ未熟ながらも、すでに鋭く、そして心に残るものを確実に持っていた。
のちの『Liberty Belle and the Black Diamond Express』『16 Lovers Lane』といった“美しいGo-Betweens”の原石が、ここには眠っている。

洗練を求めない者、余白の中に真実を見出すリスナーにこそ、この作品は深く突き刺さる。
『Send Me a Lullaby』は、ノイズと優しさ、知性と即興が共存する、静かな衝撃の一枚なのだ。


おすすめアルバム(5枚)

  1. The Feelies / Crazy Rhythms (1980)
     ナーヴァスなギターと知的ポストパンクの源流。音の間が共鳴。
  2. Young Marble Giants / Colossal Youth (1980)
     ミニマルと静寂の美学。静かに迫る音像が通底する。
  3. Josef K / The Only Fun in Town (1981)
     鋭角なリフとポエティックなリリックで構成された知性派ポストパンク。
  4. Orange Juice / You Can’t Hide Your Love Forever (1982)
     同郷ブリズベン出身バンドとして、感傷と陽気さのバランスが近い。
  5. The Blue Nile / A Walk Across the Rooftops (1984)
     後年のGo-Betweensに通じる叙情性と静謐さを備えた名作。

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