アルバムレビュー:See How We Are by X

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※本記事は生成AIを活用して作成されています。

cover

発売日: 1987年9月**
ジャンル: オルタナティブ・ロック、カウパンク、アメリカーナ、パンク・ロック


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概要

『See How We Are』は、ロサンゼルスを代表するバンドXが1987年に発表した6作目のスタジオ・アルバムであり、
バンド再構築の試みと、大人になったパンクの“自己点検”を記録した叙情的ロック作品である。
ビリー・ズーム(Billy Zoom)の脱退という大きな変化を経て、
後任にデイヴ・アルヴィン(The Blasters)を一時的に、そして後にトニー・ギルキーソンを正式加入させたことで、
Xは新たなサウンドの幅と感情のトーンを得ることとなった。

本作では、かつてのような暴力的な衝動や都市の喧騒から一歩引き、
“生き延びてしまった者たち”による、過去と現在を見つめるような視点
が表れている。
それは痛みと共にある成熟であり、アメリカーナ、カントリー、ブルースへの傾斜を強めたXの新章を告げる一枚でもある。


全曲レビュー

1. I’m Lost
オープニングから中音域でじわじわと攻める渋いロックンロール。
“迷っている”という感覚が、かつての怒りよりもずっと静かで深い不安として響く
ジョン・ドウのボーカルがしみる。

2. You
本作随一のパワーポップ寄りな佳曲。
タイトルの“あなた”は、恋人なのか過去の自分なのか、誰にもなりうる。
シンプルな歌詞のなかに複雑な感情が折りたたまれている

3. 4th of July
デイヴ・アルヴィンが書いた本作中もっとも有名な楽曲。
独立記念日の夜に家庭崩壊の予兆を描くというアメリカーナ・パンク史に残る名バラード
アメリカン・ドリームの崩壊と、家のなかの沈黙が美しくも痛ましい。

4. In the Time It Takes
時間の不可逆性をテーマにした、落ち着いたフォーク・ロック調の一曲。
Xがここまで“静けさ”と向き合ったことに驚かされる。

5. See How We Are
表題曲。かつての“俺たちのありさま”を皮肉に、そして誠実に見つめ直す。
長く続けてきた人間関係・バンド・国家・人生への一言“See how we are(どうだい、こんなもんだ)”が突き刺さる

6. Left & Right
社会と個人、政治と日常の二項対立をシニカルに切り取る。
硬質なギターと乾いたドラムが、混乱した時代の“選べなさ”を演出する。

7. When It Rains…
タイトル通り、すべてが悪い方向に転がる日常を描写したブルース・ロック調の楽曲。
エクシーンのヴォーカルが抑制を効かせながらも、情緒の濁流を予感させる

8. Holiday Story
“休日の物語”とは名ばかりで、実際には仮面の家族と過去の亡霊を描いた皮肉な一曲。
メロディは明るく、内容は真っ黒――それがXらしい。

9. Surprise, Surprise
テンポを上げて軽快に聴かせる曲ながら、
“驚いたかい?”という問いには、予測可能な裏切りと倦怠が含まれている。

10. Cyrano de Berger’s Back
詩人シラノの帰還という皮肉めいたタイトル。
“語りすぎて届かない愛”というテーマが、まさにジョンとエクシーンのボーカル関係そのもののように聞こえる。

11. I See Through You
“お前のことは見抜いている”と語る怒りのような諦めのような歌。
恋愛なのか社会なのか、真実がどこにもない現代への痛烈な観察

12. True Love Pt. 3
1978年から続く“True Love”シリーズの三部作完結編。
愛とは何か、愛は死んだのか、それでもまだ信じるのか――
Xというバンド自身の自己対話がそのまま収められたような曲


総評

『See How We Are』は、Xが音楽的・感情的に成熟せざるを得なかった時期の、静かな決意と折り合いの記録である。
初期のアルバムのようなパンクの剥き出しの衝動は後退したものの、
その代わりにここには、暮らしのなかで蓄積された疲労、優しさ、未練、そしてそれでも愛そうとする意志がある。

アメリカーナやフォークに接近したサウンドは、のちのオルタナ・カントリー/カウパンク文脈でも再評価され、
本作は“ポスト・パンクではなく、ポスト・成熟”という意味で重要な作品となった。


おすすめアルバム

  • The Blasters / The Blasters
     ルーツロックとパンクの交差点。Dave Alvinの文脈でぜひ聴きたい。
  • Uncle Tupelo / Anodyne
     Xの後継的存在ともいえるオルタナ・カントリーの先駆者。
  • The Replacements / Pleased to Meet Me
     パンク上がりのバンドが成熟と闘う姿が共鳴する。
  • Lucinda Williams / Lucinda Williams
     詩情とアメリカーナの融合。エクシーンとの近縁性が見える。
  • Tom Waits / Rain Dogs
     都市の寂しさと詩の言葉をブルースに溶かした大人の名盤。

特筆すべき事項

  • 「4th of July」はその後、Xの代表的なカバー対象楽曲となり、多くのアメリカーナ・アーティストに愛され続けている。
  • 本作は**“バンドの再構築と再定義”というテーマに取り組んだ初めてのXの作品**であり、
     その姿勢は、90年代以降の彼らの再評価のきっかけにもなっていった。
  • タイトル『See How We Are』は、“これが私たちの姿だ”という諦念と愛情が同時に込められた、老いたパンクの挨拶状のようでもある。

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