アルバムレビュー:Ross by Diana Ross(1983)

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※本記事は生成AIを活用して作成されています。

cover

発売日: 1983年6月9日
ジャンル: ポップ、ソウル、ダンス・ポップ


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概要

『Ross』(1983)は、Diana RossがRCA時代にリリースした3枚目のスタジオ・アルバムであり、彼女のキャリアにおいてはやや異色とされる“ジャンル横断型ポップ・アルバム”である。
同名タイトル『Ross』としては1978年にもアルバムが存在するが、本作は1980年代中期らしいエレクトロポップとアーバン・ソウルの要素を取り入れた、より洗練された仕上がりとなっている。

この時期、Rossは『Why Do Fools Fall in Love』(1981)、『Silk Electric』(1982)といったポップ・チャート指向の作品で成功を収めており、本作ではその延長線上でさらに洗練されたプロダクションとラブソング中心の選曲が目立つ。

プロデュースにはGary Katz(Steely Dan作品で知られる)が参加し、またMichael JacksonやLionel Richieといった同時代のスーパースターたちとのコラボレーションの余韻を感じさせる洗練されたサウンド作りが特徴。
ただし、本作はチャート上では前作ほどのインパクトを残すことはできなかったものの、Diana Rossの柔らかくエレガントなボーカルを堪能できる隠れた良作として再評価が進んでいる。


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全曲レビュー

1. That’s How You Start Over

アルバム冒頭を飾る穏やかなバラードで、「失った愛からの再出発」がテーマ。
Rossの繊細な歌声が、新たな一歩を踏み出す女性の姿にそっと寄り添う。
メロウなシンセサイザーと控えめなパーカッションが、80年代らしい透明感を醸し出している。

2. Love Will Make It Right

希望に満ちたポップ・バラード。
「どんなに傷ついても、愛が癒してくれる」というメッセージが直球で、Rossの“優しさ”が最もよく表れた一曲。
ミドルテンポの心地よいリズムが、日常に溶け込むように響く。

3. You Do It

軽やかなグルーヴと甘酸っぱい恋心が交差するポップ・ソウル。
「なぜかわからないけど、あなたは私を夢中にさせる」――そんな心の動きを明快に歌い上げる。
キャッチーなメロディとバックコーラスの絡みが心地よく、シングルカットされなかったのが惜しまれる佳曲。

4. Pieces of Ice

本作のリード・シングルであり、唯一大きな注目を集めたトラック。
シンセを多用したクールなアレンジと、サスペンス映画のような緊張感のある構成が特徴。
タイトル通り「氷の破片」のように冷たくも鋭い楽曲で、Rossの鋭い視線とヴォーカルが完全に一致する。

5. Let’s Go Up

希望と再生のエネルギーに満ちたポップ・チューン。
「もう一度、上を向いて歩こう」というリリックが明るく響く。
軽快なキーボードとブラス・アレンジが、アメリカン・ポップの王道らしさを体現。

6. Love or Loneliness

「愛か孤独か」というテーマを問いかける、深みのあるミディアム・テンポのバラード。
内面に沈むようなアレンジと、Diana Rossの儚げなボーカルが心に残る。
現代的なエレポップの質感を持ちながら、テーマは普遍的。

7. Up Front

ファンキーなリズムとダンサブルなベースラインが特徴のアーバン・ポップ。
積極的な恋の駆け引きを女性の視点から描き、Rossの自信に満ちた歌いっぷりが楽しい。
80年代クラブ・シーンとも親和性の高いトラック。

8. Girls

女性同士の連帯や友情をテーマにした楽曲で、Rossにしては珍しく“女の子同士”の視点に立った軽やかな作品。
合唱的なコーラスと明るいトーンが、80年代ポップの華やかさを象徴している。
アルバムの中でも最も親しみやすい曲のひとつ。


総評

『Ross』(1983)は、Diana Rossが80年代の音楽的潮流に適応しながら、自己のヴォーカル・アイデンティティを滑らかに融合させた作品である。
“声のパーソナリティ”を主軸に据えた構成は、派手なサウンドや演出に頼らずとも、彼女の魅力を十分に伝えてくれる。

『Silk Electric』の攻めたヴィジュアル路線から一転、本作では落ち着いた都会的センスが前面に出ており、それはAndy Warholのポップアートから離れたジャケットデザインにも表れている。
Diana Rossはこのアルバムで、エレガントで成熟した女性像を、控えめながら確かな説得力をもって描いているのだ。

ヒット性ではやや控えめな成績に終わったが、それゆえに“隠れた佳作”としてファンからは根強い支持を受けている。
特に「Pieces of Ice」や「You Do It」などは、Diana Rossの80年代音楽における実験性と表現の深化を感じさせてくれる。


おすすめアルバム(5枚)

  • 『Silk Electric』 / Diana Ross(1982)
     セルフ・プロデュース期の前作で、より個性的な表現とヴィジュアルに挑戦した作品。

  • 『The Woman in Me』 / Donna Summer(1982)
     ポップとアーバン・ソウルを融合させた同時代の女性ヴォーカルによる秀作。

  • Heartbreaker』 / Dionne Warwick(1982)
     Barry Gibbプロデュースによるアダルト・コンテンポラリー作品。Rossの柔らかな音世界と響き合う。

  • 『Let’s Hear It for the Boy』 / Deniece Williams(1984)
     爽やかで明るい80年代女性ポップのエッセンスが詰まった一枚。

  • Break Every Rule』 / Tina Turner(1986)
     成熟した女性アーティストによるポップ作品として、Rossと精神的に通じる部分が多い。


ビジュアルとアートワーク

本作のアートワークは、前作のWarholジャケットから一転し、シンプルでエレガントなDiana Ross本人のポートレートが採用されている。
クールで洗練されたその姿は、まさに80年代的“都会の女性像”を象徴しており、音楽のトーンとも絶妙に一致する。

『Ross』(1983)は、声で語るDiana Ross、静かに進化するDiana Rossを感じることのできる一枚である。
決して派手ではないが、確かな表現者としての厚みを実感させる“アーティストのアルバム”なのだ。

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