アルバムレビュー:Break Every Rule by Tina Turner

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

発売日:1986年9月23日

ジャンル:ポップ・ロック、ロック、ブルー・アイド・ソウル、アダルト・コンテンポラリー、シンセポップ

概要

Tina Turnerの『Break Every Rule』は、1986年に発表された通算6作目のソロ・スタジオ・アルバムであり、彼女のキャリアにおける「復活後」の地位を確固たるものにした重要作である。1984年の前作『Private Dancer』は、「What’s Love Got to Do with It」の世界的ヒットによって、Tina Turnerを1960〜70年代のソウル/ロックンロール・シンガーから、1980年代を代表するグローバルなポップ・ロック・スターへと再定義した。『Break Every Rule』は、その成功を受けて制作された作品であり、彼女の声、年齢、経験、身体性、ロック的な強さを、80年代的なプロダクションの中でさらに大きなスケールへ拡張している。

Tina Turnerは、Ike & Tina Turner Revue時代に「River Deep – Mountain High」「Proud Mary」などで圧倒的なパフォーマンス力を示し、R&B、ソウル、ロックンロールを横断する存在として評価されてきた。しかし、そのキャリアは私生活と音楽活動の両面で困難に満ちていた。Ike Turnerとの関係から離れた後、1970年代後半から1980年代初頭にかけては商業的な成功から遠ざかっていたが、『Private Dancer』によって劇的なカムバックを果たす。『Break Every Rule』は、そのカムバックが一過性のものではなく、成熟したアーティストとしての第二の黄金期であることを示したアルバムである。

タイトルの「Break Every Rule」は「すべてのルールを破る」という意味を持つ。これは、Tina Turnerのキャリアそのものを象徴する言葉でもある。音楽業界において、40代半ばの女性アーティストが世界的ポップ・スターとして再浮上することは、当時の基準では例外的だった。若さや流行を重視するポップ・シーンに対し、Tina Turnerは経験、声の力、舞台で培った身体性、ロック的なカリスマによって既存のルールを破った。本作は、そうした彼女の再生と自立の物語を背景に持っている。

音楽的には、『Break Every Rule』は『Private Dancer』で確立された80年代型ポップ・ロック路線を継承しながら、よりスタジアム・ロック的で、より洗練されたアダルト・コンテンポラリー色を強めている。シンセサイザー、エレクトリック・ドラム、厚いコーラス、艶やかなギター、ドラマティックなバラードが中心となり、Tina Turnerのハスキーで力強い声がその上に乗る。彼女の声は、80年代的な滑らかなサウンドの中でも決して埋もれない。むしろ、機械的で光沢のあるプロダクションに対して、生身の熱と経験を注ぎ込む役割を果たしている。

本作には、Bryan Adams、Mark Knopfler、Rupert Hine、Terry Britten、Graham Lyle、David Bowieなど、当時のロック/ポップ界の重要人物が関わっている。Tina Turnerは、作曲家やプロデューサーの楽曲を自分の声で完全に自分のものにするタイプのシンガーであり、本作でもその解釈力が際立っている。楽曲そのものは80年代的なポップ・ロックの文脈にあるが、彼女が歌うことで、恋愛、別れ、欲望、自立、成熟した女性の強さといったテーマが、より深い説得力を持つ。

『Break Every Rule』は、Tina Turnerのキャリアにおいて、単なる『Private Dancer』の続編ではない。前作が復活の衝撃を伴う作品だったのに対し、本作はその復活後にどのようなアーティスト像を築くかを示した作品である。ここでのTina Turnerは、苦難を乗り越えた人物としてだけでなく、現代的なポップ・プロダクションを背負えるロック・ディーヴァとして振る舞う。彼女の声には、ソウルの痛み、ロックの荒々しさ、ポップの明快さ、そして大人の恋愛の複雑さが同時に宿っている。

1980年代半ばのポップ・シーンでは、MadonnaWhitney HoustonCyndi Lauper、Janet Jacksonなど、女性アーティストがそれぞれ異なる形で時代を更新していた。その中でTina Turnerは、若さや新奇性ではなく、経験とパフォーマンスの強度によって独自の位置を築いた。『Break Every Rule』は、80年代ポップの華やかな音像の中に、彼女の長いキャリアと人生の重みを持ち込んだ作品として重要である。

全曲レビュー

1. Typical Male

オープニング曲「Typical Male」は、本作を代表するヒット曲のひとつであり、Tina Turnerの80年代ポップ・スターとしての魅力を端的に示す楽曲である。Terry BrittenとGraham Lyleによる楽曲で、前作『Private Dancer』の「What’s Love Got to Do with It」と同じく、洗練されたポップ・ソングライティングとTina Turnerの力強い歌唱が結びついている。

サウンドは、シンセサイザーとエレクトリック・ドラムを中心にした80年代的なポップ・ロックである。リズムは軽快で、メロディは明快、サビには強いフックがある。だが、Tina Turnerの声が加わることで、曲は単なるスマートなポップではなく、肉体的な存在感を持つ。彼女の声のざらつき、語尾の押し出し、低音域の強さが、楽曲に大人の余裕と挑発を与えている。

歌詞では、男性の典型的な態度や恋愛における駆け引きが描かれる。タイトルの「Typical Male」は、男性の行動を少し皮肉を込めて分類する言葉であり、Tina Turnerはそれをユーモアと自信をもって歌う。ここでの女性像は、相手に翻弄される存在ではない。むしろ、男性の癖や弱点を見抜きながら、自分のペースで関係を進める成熟した人物として描かれている。

この曲の重要性は、Tina Turnerが80年代のポップ・フォーマットの中でも、年齢や経験を強みに変えている点にある。若い恋愛の無邪気さではなく、相手の心理を理解したうえで楽しむ大人の駆け引きが中心にある。「Typical Male」は、『Break Every Rule』の入口として、アルバム全体に漂う強さ、知性、セクシュアリティを明確に提示している。

2. What You Get Is What You See

「What You Get Is What You See」は、アルバムの中でも特にロック色の強い楽曲であり、Tina Turnerのステージ・パフォーマーとしてのエネルギーがよく表れている。Bryan AdamsとJim Vallanceが関わった楽曲で、80年代のアリーナ・ロック的な明快さと、Tina Turnerのブルージーな声が結びついている。

タイトルは「見たままが手に入るもの」という意味であり、飾らない自分、偽りのない魅力、表と裏の一致を示す言葉として機能している。歌詞では、恋愛や人間関係において、相手が本当に信頼できる存在なのか、見せている姿と本質が一致しているのかが問われる。Tina Turnerはここで、ロマンティックな幻想よりも、現実的な判断力を持つ女性として歌っている。

サウンドは、ギターの存在感が強く、シンセ主体のポップ曲よりもよりロックンロールに近い。ドラムは大きく、コーラスは力強く、曲全体に前進する勢いがある。Tina Turnerの声はこうしたロック寄りのサウンドと非常に相性が良い。彼女の歌唱は、音を滑らかに処理するというより、言葉を身体から押し出すような迫力を持っている。

この曲は、Tina Turnerが単なるポップ・バラードの歌い手ではなく、ロック・シンガーとしても強力な存在であることを示す。1980年代のプロダクションに包まれていても、彼女の根底にはR&B、ソウル、ロックンロールのライブ感がある。「What You Get Is What You See」は、その生々しい魅力をポップに整えた楽曲である。

3. Two People

「Two People」は、『Break Every Rule』の中でもアダルト・コンテンポラリー寄りのバラードとして重要な楽曲である。前の2曲が軽快なポップ・ロックだったのに対し、この曲ではより深い情感と関係性の複雑さが前面に出る。Tina Turnerの成熟したヴォーカルが、静かな緊張をもって楽曲を支えている。

歌詞の中心にあるのは、二人の人間が関係を続けることの難しさである。恋愛は単純な情熱だけでは成立せず、互いの違い、沈黙、すれ違い、理解し合おうとする努力が必要になる。「Two People」というシンプルなタイトルは、恋愛を抽象的なロマンスではなく、具体的な二人の人間の問題として捉えている。

音楽的には、シンセサイザーと柔らかなリズムが中心で、80年代らしい広がりのある音像を持つ。だが、Tina Turnerの歌唱は過度に甘くならない。彼女の声には常に少しのざらつきと痛みがあり、それがバラードに現実感を与える。単なる美しいラブ・ソングではなく、関係を維持することの重みが声に刻まれている。

「Two People」は、Tina Turnerの歌唱解釈力を示す曲である。彼女は大きな声量で押し切るだけではなく、抑制されたフレーズの中にも感情を込めることができる。恋愛の成熟した側面、特に情熱の後に残る対話や葛藤を描く点で、本作の中でも重要なバラードである。

4. Till the Right Man Comes Along

「Till the Right Man Comes Along」は、タイトルが示す通り、「ふさわしい男性が現れるまで」というテーマを持つ楽曲である。恋愛を求めながらも、妥協せず、自分に見合う相手を待つ姿勢が描かれる。Tina Turnerのキャリアや人生を考えると、この曲は単なる恋愛歌以上の意味を帯びる。相手に依存せず、自分の価値を知った女性が、関係を選び取るという態度が中心にある。

サウンドは、明るく軽快なポップ・ロックであり、アルバム前半の流れを保っている。リズムは前向きで、メロディも親しみやすい。Tina Turnerの声は力強く、歌詞の自立的なメッセージに説得力を与えている。彼女が歌うことで、「待つ」という行為は受け身ではなく、自分の基準を守る能動的な選択として響く。

歌詞では、恋愛における理想と現実のバランスが描かれる。誰でもよいわけではない、しかし愛を拒絶しているわけでもない。ふさわしい相手が現れるまで、自分自身を保つ。このテーマは、1980年代の女性ポップにおける自己決定の感覚ともつながっている。

「Till the Right Man Comes Along」は、アルバム全体の中では比較的軽い楽曲だが、Tina Turnerの大人の女性像を補強する役割を持つ。恋愛を求めることと、自分を安売りしないことが矛盾しない。その姿勢が、彼女の歌声によって明快に表現されている。

5. Afterglow

「Afterglow」は、アルバムの中でも官能的でムーディーな楽曲である。タイトルの「afterglow」は、直訳すれば夕焼けの残光や余韻を意味するが、恋愛や身体的な親密さの後に残る感覚を指す言葉としても使われる。Tina Turnerはこの曲で、成熟したセクシュアリティと静かな陶酔感を表現している。

サウンドは、シンセサイザーの柔らかな広がりと、控えめなリズムが中心である。派手なロック感よりも、夜の空気、親密な空間、余韻が重視されている。Tina Turnerの声は、ここでは力強く叫ぶのではなく、低く、深く、官能的に響く。声のざらつきが、楽曲に大人の色気を与えている。

歌詞では、情熱の後に残る静かな幸福感や、相手との時間の余韻が描かれる。若い恋愛の衝動というより、すでに多くを経験した人物が感じる深い満足に近い。Tina Turnerの歌唱は、このテーマに特別な説得力を持たせる。彼女の声には、単なるロマンティックな甘さではなく、人生経験に裏打ちされた感情の深さがある。

「Afterglow」は、『Break Every Rule』の中で、アルバムのテンションを少し落とし、より内密な空間を作る曲である。Tina Turnerのセクシュアリティが、派手なパフォーマンスだけでなく、静かな余韻としても表現されることを示している。

6. Girls

「Girls」は、David BowieとErdal Kızılçayによる楽曲であり、本作の中でもやや異色の空気を持つ。David Bowieらしい抽象的で少し演劇的な質感があり、Tina Turnerのポップ・ロック路線の中に、アート・ポップ的なニュアンスを持ち込んでいる。後にBowie自身も録音している楽曲であり、Tina Turner版はその解釈の一形態として興味深い。

音楽的には、シンセサイザーを中心とした80年代的な音像でありながら、メロディやコード感には少し不思議な陰影がある。一般的なストレートなロック曲というより、都会的で、やや非現実的なムードを持つ。Tina Turnerの声は、この楽曲に生身の存在感を与え、Bowie的な冷たさと彼女の熱い歌唱が対照を作る。

歌詞は、女性たちの存在、欲望、視線、都市的なイメージを含むが、直接的な物語としては捉えにくい。Bowieの楽曲らしく、断片的で象徴的な言葉が並び、具体的なメッセージよりも雰囲気やイメージが重視される。Tina Turnerはそれを過度に説明せず、声の強度によって曲に輪郭を与えている。

「Girls」は、『Break Every Rule』の中でアルバムに変化を与える楽曲である。Tina Turnerの王道的なポップ・ロックやバラードとは異なる質感があり、彼女が80年代の多様な作家性を自分の声で吸収していたことを示している。Bowie的な人工性とTina Turnerの肉体性の交差が、この曲の面白さである。

7. Back Where You Started

「Back Where You Started」は、Bryan AdamsとJim Vallanceによるロック色の強い楽曲であり、Tina Turnerのパワフルなヴォーカルを前面に出した一曲である。この曲で彼女は、ポップ・スターというより、ロックンロールの現場を知るシンガーとしての本領を発揮している。

サウンドは、ギターを中心にした骨太なロックで、リズムも力強い。80年代的なプロダクションは施されているが、曲の根底にはブルース・ロックやR&B由来の推進力がある。Tina Turnerの声は、こうしたサウンドの上で非常によく映える。彼女の歌唱は鋭く、荒々しく、言葉を叩きつけるような迫力がある。

歌詞では、相手が結局元の場所へ戻ってしまうこと、変わらない行動や関係の循環が描かれる。恋愛における失望や、同じ過ちを繰り返す人物への苛立ちが感じられる。Tina Turnerが歌うことで、このテーマは単なる恋愛の愚痴ではなく、人生経験を経た人物の厳しい判断として響く。

この曲は、Tina Turnerが1980年代の音像の中でも、ロックの荒々しさを失っていないことを証明する。彼女の声は、滑らかなポップ・プロダクションの中でも強いが、ロック曲ではさらに本能的な力を発揮する。「Back Where You Started」は、本作における最も力強いロック・ナンバーのひとつである。

8. Break Every Rule

表題曲「Break Every Rule」は、アルバムのコンセプトを象徴する重要曲である。タイトルの「すべてのルールを破る」という言葉は、恋愛における理性や社会的な規範を超える情熱を指すと同時に、Tina Turner自身のキャリアと重なって響く。彼女はこの曲で、ルールに従う人生ではなく、自分の感情と意志に従って進む力を歌っている。

音楽的には、ドラマティックなポップ・ロックであり、シンセサイザーとギターが大きなスケールを作る。曲は大きく広がり、Tina Turnerの声がその中心に立つ。彼女の歌唱は、抑制と爆発のバランスが巧みで、サビに向けて感情を高めていく。アルバム・タイトル曲にふさわしい力強さがある。

歌詞では、ルールを破ってでも愛や欲望へ向かう姿勢が描かれる。ここでのルールは、社会的な規範、過去の経験から来る警戒心、あるいは自分自身を守るための制限とも読める。Tina Turnerが歌うことで、それは単なる衝動ではなく、人生の制限を乗り越える宣言として響く。

「Break Every Rule」は、アルバム全体の精神的な中心である。Tina Turnerのキャリアは、まさに多くのルールを破ることで成立した。年齢、性別、人種、音楽業界の期待、過去のイメージ。彼女はそれらを越えて、新しいポップ・スター像を作り上げた。この曲は、その姿勢を音楽的に表現している。

9. Overnight Sensation

「Overnight Sensation」は、成功、名声、瞬間的な注目をテーマにした楽曲である。タイトルは「一夜にして有名になる存在」を意味するが、Tina Turnerが歌うと、この言葉には皮肉が加わる。彼女の成功は決して一夜で生まれたものではなく、長いキャリア、苦難、努力の果てに得られたものだったからである。

サウンドは、80年代らしいエネルギッシュなポップ・ロックで、リズムは前向きで力強い。Tina Turnerの声は、名声のきらびやかさと、その裏にある現実を同時に感じさせる。彼女は単に成功を祝うのではなく、成功がどのように作られ、消費されるのかを知る人物として歌っている。

歌詞では、突然注目されること、スターになること、その裏にある欲望や期待が描かれる。1980年代のポップ・シーンはMTVの影響によって、視覚的なスター性が大きく重視される時代だった。Tina Turnerもまた、髪型、衣装、身体的なパフォーマンス、映像表現によって強いイメージを作ったが、彼女の場合、そのスター性は長年の舞台経験に支えられていた。

「Overnight Sensation」は、アルバムの後半において、名声と自己演出のテーマを持ち込む曲である。Tina Turnerのカムバックは劇的だったが、それは偶然の流行ではない。この曲は、そのような成功の表と裏を、明るいロック・サウンドの中に含ませている。

10. Paradise Is Here

「Paradise Is Here」は、本作の中でも特に深い情感を持つバラードであり、Tina Turnerの成熟した歌唱が際立つ楽曲である。Paul Bradyによる楽曲で、後に彼自身も録音しているが、Tina Turner版では、彼女の声によって大きなスケールの愛の歌として響く。

タイトルの「楽園はここにある」という言葉は、遠くの理想を追い求めるのではなく、今この瞬間、この関係、この場所に幸福を見出すという意味を持つ。歌詞では、未来の約束や遠い夢よりも、現在の愛の確かさが重視される。これは、大人の恋愛観として非常に重要である。若い恋愛が未来への期待を語るのに対し、この曲は現在の深さを歌っている。

音楽的には、ゆったりとしたテンポと広がりのあるアレンジが中心である。シンセサイザーとギターが柔らかく重なり、Tina Turnerの声がその上で大きく伸びる。彼女の歌唱は、力強いだけでなく、優しさと説得力を持つ。声の中に長い経験があり、それが「楽園はここにある」という言葉に現実味を与えている。

「Paradise Is Here」は、アルバム終盤において、最も穏やかで肯定的な感情を提示する曲である。ルールを破り、駆け引きをし、失望や欲望を経験した後に、ここでは現在の愛を受け入れる静かな確信がある。本作のバラードの中でも特に重要な楽曲である。

11. I’ll Be Thunder

アルバムの最後を飾る「I’ll Be Thunder」は、力強いイメージを持つ終曲である。タイトルの「私は雷になる」という表現は、自然の力、予測できないエネルギー、感情の激しさを象徴している。Tina Turnerの声と非常に相性の良いイメージであり、アルバムを締めくくるにふさわしいスケール感を持っている。

音楽的には、ドラマティックなロック・バラードに近い構成で、シンセサイザーとギターが大きな音場を作る。曲はゆったりとしながらも、内側に強い力を秘めている。Tina Turnerの歌唱は、低く始まり、徐々に大きな感情へ向かう。彼女の声は、まさに雷のように、静けさの中から突然大きな存在感を放つ。

歌詞では、自分が相手にとって大きな力になること、あるいは感情そのものが自然現象のように避けがたいものであることが描かれる。Tina Turnerはここで、愛する存在、支える存在、揺さぶる存在として歌う。弱さよりも、強いエネルギーとしての愛が中心にある。

終曲としての「I’ll Be Thunder」は、『Break Every Rule』全体のテーマを力強く閉じる。アルバムを通じて描かれてきた大人の恋愛、自立、欲望、強さ、ルールを破る姿勢が、最後に自然の力のイメージへと拡張される。Tina Turnerというシンガーの存在感そのものを象徴するような締めくくりである。

総評

『Break Every Rule』は、Tina Turnerの1980年代における第二の黄金期を確立したアルバムである。前作『Private Dancer』が劇的な復活作であったのに対し、本作はその成功を踏まえ、彼女が80年代のポップ・ロック・シーンで継続的に中心的な存在であり得ることを示した。商業的にも成功を収め、複数のシングルを生み出したが、作品としての重要性は、Tina Turnerの成熟した声と80年代的なプロダクションが高い水準で結びついている点にある。

アルバム全体を貫くのは、大人の女性の自立と欲望である。ここでのTina Turnerは、若い恋に振り回される人物ではない。男性の典型的な態度を見抜き、相手の本質を見極め、ふさわしい相手を待ち、時にはルールを破って情熱へ向かう。恋愛を求めながらも、自分の価値と判断力を失わない。この姿勢は、彼女の実人生の物語とも重なり、楽曲に強い説得力を与えている。

音楽的には、80年代半ばのポップ・ロックらしいサウンドが全面に出ている。シンセサイザー、エレクトリック・ドラム、厚いコーラス、広がりのあるリヴァーブ、洗練されたギター・サウンドは、当時のメインストリームそのものである。だが、Tina Turnerの声はその時代性を超える。彼女の歌唱には、R&Bの土台、ゴスペル的な力、ロックンロールの荒々しさ、ブルース的な痛みがある。そのため、本作は80年代的な音作りでありながら、単なる時代の産物にはならない。

特に「Typical Male」「What You Get Is What You See」「Back Where You Started」などでは、Tina Turnerのロック・シンガーとしての力が明確に表れている。一方で、「Two People」「Paradise Is Here」「Afterglow」では、バラードやミッドテンポ曲における表現力が示される。彼女は叫ぶだけのシンガーではなく、抑制された言葉にも人生の重みを込めることができる。声の強さと解釈の深さが、本作の最大の魅力である。

『Break Every Rule』は、作家陣の多様さも重要である。Terry BrittenとGraham Lyleによる洗練されたポップ、Bryan AdamsとJim Vallanceによるロック、David Bowieによるアート・ポップ的な要素、Paul Bradyの情感豊かなソングライティングが、Tina Turnerの声を通じてひとつのアルバムにまとめられている。Tina Turner自身がすべてを書いたアルバムではないが、彼女の解釈力によって楽曲は統一された人格を持つ。これは、シンガーとしての彼女の偉大さを示す点である。

1980年代の女性ポップ・スター像を考えるうえでも、本作は重要である。Madonnaが挑発と自己演出によって、Whitney Houstonが圧倒的な歌唱力によって、Janet Jacksonがダンスとコントロールの美学によって時代を築いていた中で、Tina Turnerは経験と生命力によって別の道を示した。彼女は若さを装うのではなく、成熟を武器にした。『Break Every Rule』は、ポップ・ミュージックにおいて年齢と経験が強みになり得ることを証明した作品でもある。

日本のリスナーにとっては、本作は80年代洋楽ポップ・ロックの典型的な音像を持つアルバムとして聴くことができる。シンセサイザーやドラムの音には時代性が強いが、その中心にあるTina Turnerの声は今なお強く響く。80年代のAOR、ロック、ソウル、ポップスに親しむリスナーにとっては、当時の国際的なメインストリームがどのように成熟した女性アーティストを受け入れたのかを知るうえでも重要な作品である。

『Break Every Rule』は、『Private Dancer』ほど歴史的な衝撃を持つ作品として語られることは少ないかもしれない。しかし、アルバムとしては、Tina Turnerの復活後の自信、音楽的な幅、ポップ・スターとしての安定感を示す非常に完成度の高い作品である。ルールを破るというタイトルは、単なる挑発的な言葉ではない。Tina Turnerはこの時点で、キャリアの終盤に差しかかった歌手という業界の見方を破り、年齢や過去のイメージを越えて、新しい時代のスターとして存在していた。

総じて、『Break Every Rule』は、Tina Turnerの力強さと成熟を80年代ポップ・ロックの形で結晶化したアルバムである。恋愛、欲望、自立、名声、現在を生きること、そして自分の人生を自分で選ぶこと。これらのテーマが、彼女の圧倒的な声によって結びつけられている。『Private Dancer』が復活の宣言だとすれば、『Break Every Rule』はその復活を確かなものにした勝利のアルバムである。

おすすめアルバム

1. Tina Turner – Private Dancer

Tina Turnerの1980年代カムバックを決定づけた代表作。「What’s Love Got to Do with It」「Better Be Good to Me」「Private Dancer」などを収録し、彼女を世界的ポップ・スターとして再定義した。『Break Every Rule』の直接的な前作であり、復活後のサウンドとアーティスト像の基盤を理解するうえで不可欠である。

2. Tina Turner – Foreign Affair

1989年発表のアルバムで、「The Best」を収録。『Break Every Rule』で確立された大人のポップ・ロック路線をさらに洗練させ、よりヨーロッパ市場を意識したスケール感を持つ作品である。Tina Turnerの後期キャリアにおけるスタジアム級の存在感を知るのに適している。

3. Bryan Adams – Reckless

1980年代ロックの明快なソングライティングとアリーナ・ロック的なサウンドを代表する作品。Bryan Adamsは『Break Every Rule』にも楽曲提供で関わっており、Tina Turnerのロック寄りの楽曲との関連性が高い。80年代ポップ・ロックの力強いメロディとプロダクションを理解するうえで重要なアルバムである。

4. Bonnie Tyler – Faster Than the Speed of Night

ハスキーで力強い女性ヴォーカルと、ドラマティックな80年代ロック・プロダクションを結びつけた作品。「Total Eclipse of the Heart」を含み、Tina Turnerと同じく、ロック的な声をポップの大きな舞台へ押し出した例として関連性が高い。劇的なバラード表現を比較して聴くことができる。

5. Cher – Heart of Stone

1989年発表のアルバムで、成熟した女性アーティストが80年代後半のロック/ポップ・サウンドで再び大きな成功を収めた作品。Tina Turnerと同様に、長いキャリアを持つ歌手が時代の音に適応しながら個性を保った例として重要である。力強い声、ロック・バラード、ポップな自己再定義という点で『Break Every Rule』と深く響き合う。

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