
1. 歌詞の概要
Roll Away the Stoneは、Mott the Hoopleが1973年11月にイギリスでシングルとして発表した楽曲である。翌1974年にはアルバムThe Hoopleにも収録され、バンド後期の代表曲のひとつとして知られるようになった。作詞作曲はIan Hunter。イギリスのシングルチャートでは最高8位を記録している。(Wikipedia – Roll Away the Stone)
この曲の歌詞は、タイトルからして象徴的だ。
Roll Away the Stoneとは、石を転がしてどけろ、という意味である。重く、動かしにくく、行く手をふさいでいるもの。それをどけることで、先へ進める。閉じ込められていた場所から出られる。光が差し込む。
つまりこの曲は、単なる恋の歌でありながら、同時に解放の歌でもある。
歌詞の語り手は、相手を安心させようとしている。暗い夜が来ても大丈夫だ、と言う。道がふさがっていても、その石を転がしてしまえばいい、と歌う。そこには恋人への励ましがあり、同時に自分自身への鼓舞もある。
Mott the Hoopleらしいのは、そのメッセージがまったく説教くさくならないところだ。
重いテーマを掲げるのではなく、きらびやかなピアノ、弾むリズム、分厚いコーラス、少し芝居がかったIan Hunterの歌声で、一気にロックンロールの祝祭へ変えてしまう。
Roll Away the Stoneは、暗闇を否定しない。
むしろ、暗闇があることを前提にしている。だからこそ、そこから抜け出すための言葉が必要になる。
石をどけろ。
夜を越えろ。
ふさがった道を開けろ。
その言葉は、恋人へ向けられているようであり、バンド自身へ向けられているようでもある。
1973年のMott the Hoopleは、David Bowieが書いたAll the Young Dudesで一気に注目を集めたあと、自分たちの言葉と音で次の一歩を示さなければならない時期にいた。All the Young Dudesは1972年にDavid Bowieが書き、Mott the Hoopleが録音した曲で、彼らに大きな商業的成功をもたらした。(Wikipedia – All the Young Dudes)
その後に現れたRoll Away the Stoneは、バンドが他者から与えられた輝きだけでなく、自分たち自身のロックンロールとして輝けることを示した曲でもある。
歌詞は明るい。
しかし、ただ明るいだけではない。
どこか切実で、どこか無理やり笑っているようでもある。だからこそ、聴いていると胸が熱くなる。
Mott the Hoopleのロックンロールは、いつも少し泣き笑いの表情をしている。Roll Away the Stoneにも、その表情が鮮やかに刻まれている。
2. 歌詞のバックグラウンド
Roll Away the Stoneは、Mott the Hoopleのキャリアの中でも重要な転換点にある曲だ。
もともとMott the Hoopleは、1960年代末から活動していたイギリスのロックバンドである。初期は熱狂的なライブ人気を持ちながらも、商業的には苦戦していた。そこにDavid Bowieが関わり、All the Young Dudesを提供したことで状況が大きく変わる。Bowieの楽曲とプロデュースは、バンドにグラムロック時代の象徴的なイメージを与えた。(Pitchfork – All the Young Dudes / Mott)
だが、Bowieの助けで注目されたバンドが、その後に何を鳴らすのか。
これは大きな問題だった。
Mott the Hoopleは、ただのBowie周辺バンドではなかった。彼らには、Ian Hunterのざらついた声、Pete Overend Wattsの存在感、Dale Griffinのドラム、そしてロックンロールへの愛情と皮肉があった。
1973年のアルバムMottでは、その自立した個性が強く打ち出される。All the Way from Memphisのような曲では、ロックンロールという幻想と現実をユーモラスに描きながら、同時に大きなアンセムとして成立させていた。All the Way from Memphisは1973年にシングルとして発表され、イギリスでトップ10入りしている。(Wikipedia – All the Way from Memphis)
Roll Away the Stoneは、その勢いを受けて登場した。
この曲には、Mott the Hoopleが持っていたいくつもの顔が詰まっている。
- グラムロックの華やかさ
- パブロック的な親しみやすさ
- ロックンロールへの古典的な愛
- Ian Hunterらしい皮肉と温かさ
- コーラスで一気に聴き手を巻き込む祝祭感
特に興味深いのは、録音のバージョンに関する背景である。
Roll Away the Stoneには、Mick Ralphsがまだ在籍していた時期の初期録音と、The Hoople収録の再録音があるとされる。初期版ではMick Ralphsがリードギターを弾き、のちのアルバム版ではAriel Benderがハーモニー・リードを加え、Lynsey de Paulがブリッジ部分のボーカルで参加している。(Wikipedia – Roll Away the Stone)
この変化は、バンドの内部状況ともつながっている。
Mick RalphsはMott the Hoopleを離れ、Bad Companyを結成することになる。RalphsはMott the Hoopleの創設メンバーであり、のちにBad Companyでも大きな成功を収めたギタリストだった。(AP News – Mick Ralphs obituary)
つまりRoll Away the Stoneは、バンドがひとつの形から別の形へ移り変わる時期の曲でもある。
人が抜ける。
新しいメンバーが入る。
サウンドが変わる。
それでもバンドは前へ進む。
その状況を考えると、タイトルの石を転がしてどけろという言葉は、さらに深く響いてくる。
Mott the Hoopleは、いつも崖っぷちのバンドだったように見える。
解散寸前でBowieに救われ、成功したと思ったら内部の変化に揺れ、華やかなグラムロックの中心にいながら、どこか場末のロックンロール・バンドの匂いを失わなかった。
Roll Away the Stoneは、その不安定さを明るい曲調で包み込んでいる。
だから、この曲のポップさは単なる売れ線の明るさではない。
明るくやらなければ倒れてしまう人たちの明るさなのだ。
3. 歌詞の抜粋と和訳
歌詞全文は権利保護のため掲載しない。ここでは、楽曲の理解に必要な短い一節のみを引用し、意味を補足する。
歌詞の確認には、配信サービス上の歌詞表示や歌詞掲載サイトを参照できる。以下のページでも歌詞の一部が確認できる。
Lyricstranslate – Mott the Hoople Roll Away the Stone Lyrics
Roll away the stone
和訳:その石を転がしてどけろ。
この曲の核になる一節である。
石は、目の前にある障害であり、心をふさいでいるものでもある。関係の不安かもしれない。孤独かもしれない。時代の閉塞感かもしれない。
重要なのは、その石が消えるのを待つのではなく、自分たちで動かすという点だ。
このフレーズには、受け身ではない明るさがある。
In the darkest night
和訳:いちばん暗い夜の中でも。
ここで歌は、ただの陽気なロックンロールから少し奥行きを持つ。
暗い夜がある。
迷いがある。
怖さがある。
それでも、曲は沈まない。むしろ暗さを認めたうえで、それを抜けるためのコーラスを鳴らす。
Mott the Hoopleの魅力は、この暗さと明るさの同居にある。
I’ll keep you safe
和訳:君を守ってみせる。
これはラブソングとしての中心にある言葉だ。
ただし、甘くささやくというより、ステージの上から大声で宣言するような響きがある。小さな部屋の愛の言葉ではなく、観客を巻き込むロックンロールの約束として鳴っている。
守るという言葉が、ここでは少し大げさで、少し芝居がかっている。
でも、その大げささがいい。
Mott the Hoopleの音楽は、いつもロックンロールの舞台性を引き受けている。泣きたいことも、笑いたいことも、照れくさい愛の言葉も、全部ステージの光にさらしてしまう。
There’s a rockabilly party
和訳:ロカビリーのパーティーがある。
この一節には、曲の陽気なルーツ感がにじむ。
Mott the Hoopleはグラムロックの文脈で語られることが多いが、彼らの芯には古いロックンロールへの愛がある。ロカビリーという言葉は、その源流へ向かうサインのように響く。
つまりRoll Away the Stoneは、1970年代のグラムロックでありながら、1950年代のロックンロールの亡霊とも踊っている曲なのだ。
4. 歌詞の考察
Roll Away the Stoneの歌詞を考える時、まず注目したいのは、明るさの種類である。
この曲は、明らかに楽しい。
ピアノは跳ねる。
リズムは軽快だ。
コーラスは大きく広がる。
サビは一度聴けば覚えられる。
だが、そこにある明るさは、完全に無邪気なものではない。
Mott the Hoopleの音楽には、いつもどこか疲れた大人の顔がある。きらびやかな衣装を着て、ロックンロールの神話を演じながら、その神話が少し嘘であることも知っている。だから彼らの歌には、夢を見る喜びと、夢が壊れる予感が同時にある。
Roll Away the Stoneも同じだ。
石を転がしてどけろ、という言葉は前向きだ。けれど、そもそも石があるからこそ、その言葉が必要になる。
何もふさがっていない人は、そんなことを叫ばない。
この曲の語り手は、暗さを知っている。
夜を知っている。
不安を知っている。
それでも、ロックンロールの力でそれを押しのけようとしている。
そこが、とてもMott the Hoopleらしい。
Ian Hunterの声も、この曲の解釈に大きく関わっている。
彼の歌声は、いわゆる美声ではない。少し鼻にかかり、ざらつきがあり、言葉の端に皮肉が混じる。だが、その声には妙な説得力がある。
きれいな声で大丈夫だよと言われるより、Hunterの声で大丈夫だと言われるほうが信じられる瞬間がある。
なぜなら、その声は実際に大丈夫ではなかった時間をくぐってきたように聞こえるからだ。
Roll Away the Stoneのサビは、そうした声によって、単なるポップなフック以上のものになる。
石をどけろ。
道を開けろ。
暗い夜でも守る。
それは恋人への言葉であると同時に、聴き手への言葉でもある。そしてバンド自身への言葉でもある。
1973年から1974年にかけてのMott the Hoopleは、成功の中にいながら不安定だった。
All the Young Dudesで得た人気は大きかったが、その成功はDavid Bowieという外部の存在とも強く結びついていた。Mott the Hoopleは、そこから自分たちの物語を作り直さなければならなかった。
Roll Away the Stoneは、その意味で、自己更新の歌に聞こえる。
Bowieが転がしてくれた石の先へ、今度は自分たちで進む。
過去の停滞をどける。
メンバー交代の不安をどける。
ロックンロールが終わったという気分をどける。
そして、まだいけると歌う。
この曲がイギリスでトップ10入りしたことも重要だ。(Wikipedia – Roll Away the Stone)
それは、Mott the Hoopleが一発の偶然ではなく、時代の空気をつかむ力を持っていたことを示している。
ただし、彼らのグラムロックは、David BowieやT. Rexのような妖艶さとは少し違う。
Bowieが宇宙から来た異邦人のように見えるなら、Mott the Hoopleはパブの奥から急にステージへ上がってきたロックンロール一座のようだ。
きらびやかではある。
しかし、どこか泥臭い。
演劇的ではある。
しかし、足元には酒場の床の感触がある。
Roll Away the Stoneのサウンドにも、その二面性がよく出ている。
ピアノの入り方は華やかで、曲全体を跳ねさせる。ギターは派手に暴れるというより、曲の輪郭を明るく照らす。リズム隊は重くなりすぎず、前へ前へと進ませる。
そして、コーラスが一気に曲を広げる。
Mott the Hoopleのコーラスには、きれいに整った合唱というより、みんなで声を出している感じがある。そこがいい。音楽的な完璧さよりも、集団で叫ぶ快感が前に出ている。
Roll Away the Stoneのサビを聴いていると、ひとりで抱えていた不安が、いつのまにか観客全員の合唱に変わっていくような感覚がある。
それはロックンロールのもっとも素朴な魔法だ。
個人的な痛みを、みんなで歌える形に変える。
閉じた心を、コーラスで開く。
重い石を、ひとりではなく大勢で転がす。
タイトルの意味は、そこにもある。
石を転がすのは、ひとりでは難しい。
でも、音楽が鳴れば、誰かが一緒に押してくれる。
この曲は、そういう共同作業としてのロックンロールを鳴らしている。
また、Roll Away the Stoneには、宗教的な響きも薄く漂っている。
石をどけるという言葉は、墓の石を連想させる。復活や再生のイメージにもつながる。実際、当時のアメリカの音楽誌Record Worldは、この曲をイースターを思わせる愛の手紙という趣旨で評したとされる。(Wikipedia – Roll Away the Stone)
もちろん、この曲を宗教的な歌として読む必要はない。
だが、閉じられた場所から出る、暗闇から光へ向かう、という構図は確かにある。だからこそ、サビの単純な言葉が少し大きな意味を帯びる。
恋の歌であり、ロックンロールの歌であり、再生の歌でもある。
その多層性が、Roll Away the Stoneをただのキャッチーなシングル以上のものにしている。
さらに言えば、この曲にはMott the Hoopleの終わりへ向かう輝きもある。
The Hoopleは1974年に発表され、バンドの最終期を象徴する作品となった。1974年にはThe Golden Age of Rock ‘n’ Rollもシングルとして発表されている。(Wikipedia – The Golden Age of Rock ‘n’ Roll)
黄金時代を歌い、石をどけろと歌う。
その言葉には、どこか切迫した明るさがある。
永遠に続かないことを知っているから、今この瞬間を大きく鳴らす。
バンドが壊れそうだから、なおさらサビを派手にする。
終わりが見えるから、ロックンロールの黄金時代を叫ぶ。
Mott the Hoopleの後期の曲には、そうした終末感と祝祭感が同時にある。
Roll Away the Stoneは、そのバランスが非常に美しい。
軽快なのに、胸が少し痛い。
楽しいのに、どこか泣ける。
懐かしいのに、今も前へ進む力がある。
この曲が今も愛される理由は、そこにあるのだと思う。
5. この曲が好きな人におすすめの曲 5曲
- All the Way from Memphis by Mott the Hoople
Roll Away the Stoneの明るいロックンロール感が好きなら、まず聴くべき一曲である。失われたギターをめぐるユーモラスな物語を、巨大なアンセムに仕立ててしまうところがMott the Hoopleらしい。ピアノの跳ね方、Ian Hunterの皮肉っぽい歌い方、サビの開放感がRoll Away the Stoneとよくつながっている。
- All the Young Dudes by Mott the Hoople
David Bowieが書いた、Mott the Hoople最大級の代表曲である。Roll Away the Stoneの背景を知るうえでも欠かせない。こちらはよりメランコリックで、グラムロックの時代精神を濃くまとっている。若者たちのアンセムでありながら、どこか終末的な空気も漂う。Mott the Hoopleが大きく開かれるきっかけになった曲だ。
- The Golden Age of Rock ‘n’ Roll by Mott the Hoople
Roll Away the Stoneの祝祭感をさらに大げさにしたような楽曲である。タイトル通り、ロックンロールの黄金時代を高らかに歌い上げる。だが、ただ懐古的なのではなく、終わりかけているものを必死につかまえようとする切実さがある。Mott the Hoople後期の華やかさと寂しさがよく出ている。
- Saturday Gigs by Mott the Hoople
バンドの別れの歌として知られる、胸に残る一曲である。Roll Away the Stoneが石をどけて前へ進む歌だとすれば、Saturday Gigsは歩いてきた道を振り返る歌である。明るいロックンロールの裏側にある喪失感を味わいたい人には、特に響くはずだ。
- Sweet Jane by Lou Reed
Mott the Hoopleの持つ都会的なロックンロール感、そして少し斜に構えたロマンティシズムが好きなら、Lou ReedのSweet Janeも自然につながる。Mott the HoopleはVelvet Underground系の空気とも相性がいい。派手ではないが、言葉とリフだけで世界を作る力がある。Roll Away the Stoneの祝祭とは違う角度から、ロックンロールの永遠性を感じられる。
6. 石を転がすロックンロールの祝祭
Roll Away the Stoneは、Mott the Hoopleというバンドの魅力をとてもよく表している。
それは、きらびやかなのに泥臭いという魅力だ。
曲はポップで、サビは覚えやすく、コーラスは派手だ。だが、そこにある感情は軽くない。Mott the Hoopleは、楽しい曲の中に不安を忍ばせるのがうまい。笑っているのに、目の奥が少し疲れている。そんな表情が、彼らの音楽にはある。
Roll Away the Stoneも、まさにそういう曲である。
石をどけろ、というフレーズは力強い。けれど、その石が何なのかを考えると、曲は急に深くなる。
それは恋人との不安かもしれない。
成功のあとに立ちはだかる期待かもしれない。
バンド内部の変化かもしれない。
ロックンロールが古びていくことへの恐れかもしれない。
あるいは、ただ毎日の中で心をふさぐものかもしれない。
どの石であっても、この曲は同じように言う。
転がしてどけろ。
その単純さが、強い。
Mott the Hoopleは、難しい理論で人を救うバンドではない。彼らのやり方はもっと直接的だ。ピアノを鳴らし、ギターを鳴らし、声を張り上げ、コーラスで巻き込む。
そして、気づいたら少し元気になっている。
Roll Away the Stoneには、そういうロックンロールの実用性がある。
実用性というと味気なく聞こえるかもしれない。だが、本当にいいロックンロールは、生活の中で役に立つ。落ち込んだ時に聴ける。歩き出す時に背中を押してくれる。自分ひとりでは動かせないと思っていた石に、もう一度手をかける気にさせてくれる。
この曲のサウンドは、まるで古い劇場のカーテンが一気に開くようだ。
ピアノが光を連れてくる。
ドラムが足元を押す。
ベースが曲の腰を支える。
ギターが横から火花を散らす。
Ian Hunterの声が、少し不機嫌そうに、でも確かに前を向いて歌う。
そのすべてが合わさった時、Roll Away the Stoneはただのラブソングではなくなる。
これは、ロックンロールという形式そのものへの信頼の歌である。
暗い夜が来ても、曲があれば大丈夫かもしれない。
道がふさがっても、みんなで歌えば石は動くかもしれない。
バンドが壊れそうでも、今この瞬間だけは音が鳴っている。
その瞬間のきらめきを、Mott the Hoopleは見事に捕まえている。
また、Lynsey de Paulが参加したブリッジ部分の声も、曲に独特の色を与えている。男性的なロックンロールの勢いの中に、少し演劇的でポップなアクセントが入ることで、楽曲はさらにグラムロックらしい華やかさを帯びる。(Wikipedia – Roll Away the Stone)
この曲の面白さは、そうした小さな仕掛けがありながら、最終的にはとても大衆的なコーラスへ帰っていくところだ。
複雑さを隠して、みんなで歌える形にする。
これは簡単なようで、とても難しい。
Mott the Hoopleは、ロックンロールの歴史を知っていた。1950年代のロカビリーも、1960年代の反抗も、1970年代のグラムの虚飾も知っていた。そして、それらを全部まとめて、自分たちの少し傷だらけのアンセムに変えた。
Roll Away the Stoneは、その代表例である。
この曲を聴くと、Mott the Hoopleがなぜ単なる一時代のバンドではなく、後のロック・ミュージシャンたちに愛され続けているのかがわかる。
彼らは、ロックンロールを信じていた。
同時に、そのうさんくささも知っていた。
夢を見せながら、夢が壊れる音も鳴らしていた。
だから彼らの曲は、今聴いても妙に人間くさい。
Roll Away the Stoneのサビは、明るくて大きい。けれど、その奥には、人生はいつも簡単ではないという実感がある。だからこそ、石をどけろという言葉がただの掛け声ではなくなる。
これは、何度もつまずいた人たちのための言葉だ。
何度も終わりかけたバンドの言葉だ。
それでもステージへ戻ってくるロックンロールの言葉だ。
曲が終わったあと、耳にはまだコーラスが残る。
Roll away the stone。
その響きは、妙にしつこい。
そして、頼もしい。
重い石は、たぶんまた目の前に現れる。
夜もまた来る。
不安も消えない。
それでも、この曲を聴いている間だけは、少しだけ信じられる。
押せば動く。
歌えば軽くなる。
ロックンロールは、まだ終わっていない。
Roll Away the Stoneは、そんなふうに聴き手の心を明るい方向へ押し出す曲である。派手で、少し芝居がかっていて、でも最後には本気で胸に届く。
Mott the Hoopleの音楽が持っていた泣き笑いの魔法が、この一曲にはしっかり宿っている。

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