1. 歌詞の概要
「Renegades of Funk」は、Rage Against the Machine(以下RATM)が2000年にリリースしたカバーアルバム『Renegades』に収録された楽曲であり、もともとは1984年にアフリカ・バンバータ(Afrika Bambaataa)とソウル・ソニック・フォースによって発表された、オールドスクール・ヒップホップとファンクの名曲である。
このカバーにおいて、RATMは原曲のダンスグルーヴとアフリカ中心主義的な誇りを、さらに攻撃的かつ政治的に拡張し、「反逆者(renegades)」という言葉を単なる反抗者ではなく、歴史を通じて既存の秩序に挑んできた者たち全体の代名詞として再定義している。
歌詞の中には、マルコムX、チェ・ゲバラ、マーチン・ルーサー・キング・ジュニア、ジェイムズ・ブラウン、ハリー・フーディーニなど、異なる領域で「常識」や「権威」に挑戦した者たちの名が次々と登場する。
つまりこの曲は、音楽や思想、文化における“型破り”の系譜を讃えるアンセムであり、同時にそれらがいかにして“支配への抵抗”として機能してきたかを教えてくれる、リズミカルな革命の歴史書なのだ。
2. 歌詞のバックグラウンド
原曲の「Renegades of Funk」は、ヒップホップの草創期に登場した革新的な楽曲であり、アフリカ・バンバータのビートと思想が、ブラック・プライドやアフリカ回帰主義をポップカルチャーに接続させた意欲作であった。
RATMはこの曲を取り上げるにあたって、歌詞はそのままにしながらも、サウンド面で大幅に再構築した。
トム・モレロのギターは、まるでDJスクラッチやサンプルのようなノイズを生み出し、ファンクのグルーヴにヘヴィなメタルの重量感を注入している。
また、この曲が収録された『Renegades』というアルバム自体が、Bob DylanやMinor Threat、MC5など、“音楽で反抗してきた者たち”の系譜をたどるカバー集であることも、この曲のテーマと呼応している。
“反逆者たち”を讃えるこの曲は、まさにRATM自身の音楽的信条の宣言でもあり、ザック・デ・ラ・ロッチャが脱退する前、バンドが放った最後のメッセージとしても記憶されている。
3. 歌詞の抜粋と和訳
出典:genius.com
No matter how hard you try, you can’t stop us now
どれだけ止めようとしても、俺たちは止まらないNo matter how hard you try, you can’t stop us now
どれだけ壁を作っても、俺たちは越えていくWe’re the renegades of this time and age
俺たちはこの時代の“反逆者”だThis is the time and age of the renegade
今は“反逆者の時代”なのだ
この冒頭のラインは、RATMのすべての活動を象徴するような宣言であり、抑圧に対して音楽と行動で立ち向かってきた彼ら自身の姿を重ねずにはいられない。
さらに中盤では、歴史上の反逆者たちの名前が列挙される。
From a rebel to a revolutionary
反抗者から革命家へBecause our people’s army is the army of the mind
俺たちの軍は“思考の軍隊”だ
これは、暴力ではなく“意識の覚醒”こそが革命の武器であると示す、ラディカルで知的なメッセージである。
4. 歌詞の考察
「Renegades of Funk」は、“自由とは何か”“正義とは誰のものか”という問いに対して、「疑い続けることが反逆であり、反逆こそが生の証である」と答えている。
ここで言う“反逆者”とは、暴力を振るう無法者のことではない。
むしろ、社会が決めた“正常”や“正当”にノーを突きつけ、自らの身体や思想を通じて歴史を揺るがしてきた者たちのことである。
RATMはその系譜に、自分たちも位置づけようとしている。
重要なのは、この曲が“怒り”だけで成り立っていない点だ。
ファンクのリズムは、“踊ること=存在を祝福すること”であり、支配者が奪おうとしてきた“喜び”を取り戻す行為でもある。
つまり、この曲は「踊る抵抗」「祝福としての反逆」なのだ。
しかもそれは一過性のものではなく、歴史において繰り返されてきた「意識の革命」を讃える祭典のように響く。
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- Fight the Power by Public Enemy
ブラックカルチャーと公民権運動をラップで表現した“反抗の国歌”。 - Rebel Without a Pause by Public Enemy
怒りとリズムの完璧な融合。ラディカルな意識の走り書き。 - Kick Out the Jams by MC5
“音楽が武器になる”という思想を最初に体現したデトロイト・ロックの象徴。 - Know Your Rights by The Clash
“権利を知れ”というテーマをパンクの言葉で突きつける、リスナー覚醒のための曲。 - White Riot by The Clash
“白人も暴れるべき時だ”と挑発的に語る、クラス意識と階級闘争のパンク・アンセム。
6. 踊り、叫び、目覚めろ ―「反逆者たち」の連帯としてのファンク
「Renegades of Funk」は、Rage Against the Machineというバンドの精神の根幹を、音楽史と文化史の中に位置づける“最後の声明”である。
この曲が語るのは、「声をあげること」「体を動かすこと」「疑うこと」、それらすべてが“反逆”であり、同時に“祝福”でもあるという真実だ。
ファンクとは、支配された身体が取り戻すリズムであり、
ラップとは、沈黙させられた声が再び世界に語りかける言葉であり、
ロックとは、革命のビートを響かせる武器である。
RATMは、それらすべてを「Renegades of Funk」に詰め込んでこう宣言する。
“これは俺たちだけの歌じゃない。お前の歌でもあるんだ”と。
過去に抗い、今を変え、未来を照らす者たちへ――
この曲は、時代と場所を超えて鳴り続ける、抵抗と連帯のファンク・アンセムなのだ。
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