発売日: 2017年6月2日
ジャンル: インディー・ロック, アート・ロック, エクスペリメンタル・ロック
Alt-Jの3作目『Relaxer』は、彼らの特徴である実験的で不規則なアプローチをさらに深化させた作品であり、これまで以上に音の幅と感情の深みを追求している。全8曲で構成されたこのアルバムは、壮大かつドリーミーなサウンドスケープと、時にダークで暴力的なテーマが交錯する、独特の世界観を持つ。フォークやエレクトロニカ、オーケストラの要素を融合し、前作までに比べてよりミステリアスで挑戦的なトーンを展開。Alt-Jのサウンドをさらに進化させた、短くも濃密な作品である。
各曲ごとの解説:
- 3WW
アルバムの冒頭を飾る、静かで幻想的なトラック。「Three Worn Words（3つの疲れた言葉）」というフレーズに象徴されるように、愛と喪失をテーマにしている。繊細なギターとストリングスが組み合わさり、リリカルで美しい空間を作り出している。エレナ・トンラのゲストヴォーカルが楽曲に柔らかさと感情の深みを加える。 - In Cold Blood
ブラスとシンセのエネルギッシュなイントロから始まる、インディーロックの要素が強い曲。派手なブラスアレンジが目立ち、アップビートなリズムと暗示的な歌詞が対照的。曲の明るさと裏に潜むダークなストーリーが、聴く者に不安感を与える。 - House of the Rising Sun
伝統的なアメリカン・フォークソングを大胆にアレンジしたトラック。ミステリアスで夢幻的なサウンドが漂い、Alt-J流の解釈で新しい生命を吹き込まれている。原曲の悲劇性が、アート・ロック的なアプローチによってさらに際立っている。 - Hit Me Like That Snare
パンク的な衝動に満ちた、このアルバムの中でも異彩を放つトラック。攻撃的なギターと叫びのようなヴォーカルが印象的で、セクシュアルなテーマを扱っている。エネルギッシュでありながら、荒削りで挑戦的なアレンジがAlt-Jの実験的な一面を強調する。 - Deadcrush
エレクトロニックなビートとサイケデリックな要素を取り入れたトラックで、歴史上の人物との恋愛妄想をテーマにしたユニークな内容。シンセサウンドとベースが強調され、クラブ向けのダンサブルなリズムを持ちつつ、複雑なリリックが特徴的だ。 - Adeline
美しくメランコリックなバラードで、オーケストラのアレンジが感情を豊かに表現している。歌詞ではタスマニアデビルが人間に恋をするという奇妙で詩的なストーリーが描かれ、ニューマンの優しいヴォーカルとともに幻想的な世界が広がる。 - Last Year
過去一年間の出来事を振り返るようなトラックで、静かで内省的な曲調が特徴的。ヴォーカルは静かに進行し、曲が進むにつれて緊張感が高まっていく。喪失や時間の経過をテーマにした、感情的に深い楽曲だ。 - Pleader
アルバムの最後を締めくくる壮大なトラックで、教会のコーラスやストリングスが劇的に盛り上がる。ウェールズの炭鉱での生活をテーマにしており、祈りのような歌詞とともに、荘厳で感動的なクライマックスを迎える。壮大なアレンジと神秘的な雰囲気が、アルバムを美しく締めくくっている。
アルバム総評:
『Relaxer』は、Alt-Jがその実験的な音楽性をさらに追求し、よりダークで深みのある世界を作り出したアルバムである。フォークからエレクトロニカ、クラシカルな要素まで、多彩なジャンルを融合させながら、彼ら独特のサウンドスケープを展開している。特に「3WW」や「Adeline」のような繊細で美しい曲と、「Hit Me Like That Snare」のような攻撃的で挑発的な曲が同居し、アルバム全体に豊かなコントラストを与えている。前作と比べ、さらに洗練された音楽的アプローチを見せる一方で、彼ららしい大胆でユニークな世界観を保っている。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚:
- To Pimp a Butterfly by Kendrick Lamar
社会的テーマと実験的なサウンドを融合させた傑作。Alt-Jの深いリリックと複雑な音作りが好きなリスナーには、Kendrick Lamarの挑戦的なスタイルが響くだろう。 - The Age of Adz by Sufjan Stevens
オーケストラとエレクトロニカを融合させた作品。Alt-Jの壮大で複雑なサウンドスケープに共感するリスナーにおすすめ。 - Blackstar by David Bowie
ダークでエクスペリメンタルなトーンが、Alt-Jの『Relaxer』と共通する部分が多い。音楽的冒険心に満ちた一枚。 - Visions by Grimes
エレクトロニカとポップの融合が特徴のアルバム。Alt-Jのエレクトロニックなサウンドが好きなリスナーには、このアルバムもぴったり。 - Good Kid, M.A.A.D City by Kendrick Lamar
ストーリーテリングと緻密なプロダクションが際立つ作品。Alt-Jの複雑なリリックとサウンドを楽しめたリスナーにおすすめ。
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