Rebellion (Lies) by Arcade Fire（2004）楽曲解説

1. 歌詞の概要
2. 歌詞のバックグラウンド
3. 歌詞の抜粋と和訳
4. 歌詞の考察
5. この曲が好きな人におすすめの曲
6. 嘘を暴き、目を開かせる祈り

1. 歌詞の概要

「Rebellion (Lies)」は、Arcade Fireのデビューアルバム『Funeral』（2004年）に収録された代表曲のひとつであり、アルバム全体を貫くテーマである「死と再生」「共同体の喪失と再構築」を、強烈に響くリズムと力強い合唱で表現した楽曲である。
歌詞の中心にあるフレーズ「Every time you close your eyes, lies（目を閉じるたびに、それは嘘なんだ）」は、眠りや無関心を「嘘」に重ね、目を背けることが真実からの逃避であると告発する。バンドはここで「眠り」と「覚醒」をメタファーに、人々が社会の欺瞞に気づき、立ち上がることの重要性を歌い上げている。
そのリフレインの反復は祈りであると同時に、共同体を奮い立たせる戦いの合図のようにも響き、アルバムの核心を担う存在として強烈な印象を残している。

2. 歌詞のバックグラウンド

『Funeral』は、メンバーの家族の死やモントリオールの寒く厳しい冬を背景に制作されたアルバムであり、そこには死を見つめながらも「生を肯定する」強い意志が込められている。その中で「Rebellion (Lies)」は、最も直接的に社会への挑発を孕んだ楽曲である。

リリース当時、北米の音楽シーンはポストパンク・リバイバルやインディーロックの隆盛期であり、Arcade Fireはその流れの中で一際異彩を放った。ストリングスやアコースティック楽器を取り入れ、単なるギターバンドの枠を超えて「共同体の祭儀」のような音楽を鳴らした彼らは、音楽誌から熱烈な支持を受けることになる。

この曲のリズムは、ベースとドラムが繰り返す執拗なビートを軸に構成されており、まるで人々をトランス状態に導く呪術的な力を持っている。それに乗せてウィン・バトラーが叫ぶように「Lies」と繰り返すことで、観客は自然とその輪に巻き込まれる。この構造はライブにおいて特に強烈で、バンドと観客の境界を消し去り「共同の儀式」と化す瞬間を生み出す。

また、この楽曲はArcade Fireの音楽観を象徴している。「個人の悲しみ」を超えて「共同体全体の覚醒」を求める視座こそが、彼らを同時代のバンドから際立たせたのだ。

3. 歌詞の抜粋と和訳

（引用元：Genius Lyrics）

Every time you close your eyes (lies, lies!)
目を閉じるたびに（それは嘘だ、嘘だ！）

People say that your dreams are the only things that save you
人は「夢こそが君を救う唯一のものだ」と言う

Come on, baby, in our dreams
さあ行こう、夢の中で

We can live our misbehaviour
僕らは不道徳を生きられるんだ

眠りや夢を見ることは、しばしば逃避や救いとして肯定的に語られる。しかしこの歌詞では、それは「嘘」と断じられる。現実から目を逸らすことは安易な慰めであり、本当の覚醒は「夢」ではなく「現実を直視すること」にあるのだ。

4. 歌詞の考察

「Rebellion (Lies)」の根底にあるのは、社会の欺瞞と人々の無関心に対する怒りである。目を閉じることは「眠る」ことと同時に「現実から目を背ける」ことを意味し、バンドはそれを「嘘」と断言する。これは大人や権力者だけでなく、無自覚に従ってしまう人々への警告でもある。

一方で、この曲は単なる批判に留まらない。「夢の中では不道徳を生きられる」と歌うことで、人間の持つ欲望や衝動も肯定している。夢や眠りが嘘である一方、それを通じて生まれる「欲望の真実」もまた否定できないものだ。その両義性を抱えながら、バンドは「現実に目を開けろ」という叫びを繰り返す。

ライブで観客が一体となって「lies! lies!」と叫ぶ光景は、個々の覚醒が共同体の覚醒へと連鎖していく瞬間であり、それはアルバム『Funeral』が訴える「死を超えた再生の共同体」を体現している。つまり「Rebellion (Lies)」は、個人の内的な覚醒と社会的な連帯を結びつける架け橋のような楽曲なのである。

この曲はまた、2000年代の社会状況とも響き合う。アメリカの対テロ戦争や政治的な分断の中で、多くの人々は「目を閉じて」日常を送ることを選んだ。しかしArcade Fireはその態度を「嘘」と断じ、リスナーに「目を開け」と迫った。この普遍的で切実なメッセージが、時代を超えて曲を力強く響かせているのだ。