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1. 歌詞の概要
「Plush」は、アメリカのロックバンド Stone Temple Pilots(以下、STP)が1992年にリリースしたデビューアルバム『Core』に収録され、翌1993年にシングルとして発表された楽曲です。この曲は、STPのキャリアを代表する楽曲の一つであり、1994年のグラミー賞で「Best Hard Rock Performance」を受賞しました。
歌詞のテーマは、喪失、執着、そして過去に囚われる心理状態です。歌詞では、語り手がかつての恋人の行方を追い求めながらも、彼女がもう戻らないことを理解している様子が描かれています。タイトルの「Plush(プラッシュ)」は、通常「豪華な」「柔らかい」という意味を持ちますが、ここでは美しくも消えてしまったもの、手の届かない存在を象徴していると解釈されています。
音楽的には、特徴的なアコースティックなイントロ、ヘヴィでメロディアスなギターリフ、スコット・ウェイランドの独特なボーカルスタイルが融合し、90年代のオルタナティブ・ロック/グランジシーンを象徴するサウンドを作り上げています。
2. 歌詞のバックグラウンド
「Plush」の歌詞は、実際の事件にインスパイアされたものです。バンドのギタリストである ディーン・デレオ(Dean DeLeo) とボーカルの スコット・ウェイランド(Scott Weiland) は、カリフォルニアで起きたある少女の失踪事件を題材にこの曲を書きました。しかし、歌詞自体は直接的に事件を描いたものではなく、失われた愛や執着をテーマにした、より個人的な内容に変えられています。
また、スコット・ウェイランドは後のインタビューで、「この曲は、恋愛における裏切りや、決して戻らない愛に対する未練を描いたもの」と語っています。つまり、「Plush」は単なる犯罪事件の再現ではなく、普遍的な愛の喪失と孤独を描いた楽曲として成立しています。
3. 歌詞の抜粋と和訳
歌詞の一部抜粋
And I feel that time’s a wasted go
So where ya going ‘til tomorrow?
And I see that these are lies to come
Would you even care?
俺は感じるんだ、時間が無駄に流れていくのを
じゃあ、お前は明日までどこへ行くんだ?
そして分かるんだ、これから先も嘘ばかりだって
お前は気にするのか?
この部分では、語り手が恋人が去っていく現実を受け入れられず、問いかけている様子が描かれています。「Would you even care?(お前は気にするのか?)」というラインは、語り手の絶望感と、相手が自分のことをもう気にしていないかもしれないという不安を表しています。
Where you going with that mask I found?
And I feel, and I feel when the dogs begin to smell her
お前はどこへ行くんだ? 俺が見つけたその仮面をつけて
俺は感じる、俺は感じる、犬たちが彼女の匂いを嗅ぎつけるとき
「仮面(mask)」という言葉は、偽りや裏切り、あるいは過去の自分を隠そうとする行為を象徴している可能性があります。さらに、「犬たちが彼女の匂いを嗅ぎつけるとき」というラインは、実際の事件から着想を得たものと考えられますが、ここでは失われた存在が決して戻らないことへの哀しみを表しているとも解釈できます。
4. 歌詞の考察
「Plush」は、単なるラブソングではなく、喪失と執着、そして過去への未練をテーマにした深い楽曲です。
- 恋人の喪失と執着
- 歌詞では、語り手が去ってしまった恋人を探し求めているものの、彼女がもう戻らないことを理解している様子が描かれています。
- 「Where ya going ‘til tomorrow?(お前は明日までどこへ行くんだ?)」という問いかけには、過去に囚われながらも先へ進まなければならないという葛藤が感じられます。
- 現実と幻想の狭間
- 「仮面をかぶる」という表現や、「犬が匂いを嗅ぎつける」という比喩は、現実を受け入れられずにいる心理状態を示唆しているとも考えられます。
- つまり、語り手はまだ彼女のことを忘れられず、過去にしがみついている状態にあるのです。
- 時間の経過と絶望感
- 「And I feel that time’s a wasted go(時間が無駄に流れていくのを感じる)」というラインは、過去に囚われ、前に進めない心理状態を表しています。
- この感覚は、喪失を経験した多くの人が共感できるものであり、Plush の持つ普遍的な魅力の一因となっています。
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- “Interstate Love Song” by Stone Temple Pilots
- 「Plush」と同じく、失われた愛をテーマにした楽曲で、よりメロディアスなアプローチが特徴的。
- “Black” by Pearl Jam
- 失恋と喪失感を描いた楽曲で、「Plush」と同様に感情的なボーカルが魅力。
- “Creep” by Stone Temple Pilots
- 自己嫌悪と孤独をテーマにした楽曲で、「Plush」と同じくウェイランドのエモーショナルな歌唱が光る。
- “Would?” by Alice in Chains
- 喪失と後悔をテーマにしたヘヴィな楽曲で、「Plush」の持つメランコリックな雰囲気と共鳴する。
- “Glycerine” by Bush
- 失恋と執着をテーマにした、感情的なグランジ・バラード。
6. 楽曲の影響と文化的意義
「Plush」は、STPの代表曲として、90年代のグランジ/オルタナティブロックを象徴する楽曲の一つとなりました。
- グラミー賞受賞
- 1994年、グラミー賞「Best Hard Rock Performance」を受賞。
- アコースティックバージョンの人気
- 1993年のMTV Unplugged で披露されたアコースティックバージョンは特に評価が高く、STPの別の側面を見せる機会となった。
- スコット・ウェイランドのカリスマ性
- この曲を通じて、スコット・ウェイランドの特徴的な歌唱スタイルとカリスマ性が広く知られるようになった。
結論
「Plush」は、喪失と執着を描いた90年代グランジの名曲であり、そのメロディの美しさと感情的な歌詞は、今なお多くのリスナーに響き続けています。
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