
1. 歌詞の概要
「In Union We Stand」は、Overkillが1987年にリリースした2ndアルバム『Taking Over』に収録された楽曲であり、バンドの“アンセム”的役割を担う名曲です。タイトルの通り、“団結こそが力”というストレートなメッセージが全編に込められており、社会の中で孤立や疎外を感じる者たちに対して「俺たちは一緒だ」という力強い連帯の言葉を届けています。
スラッシュ・メタルのスピード感とパワーを維持しつつも、ミッドテンポで堂々としたリズムとキャッチーなサビが印象的で、Overkillにとって初期の代表曲であると同時に、メタル・コミュニティの団結の象徴となる楽曲でもあります。
2. 歌詞のバックグラウンド
1980年代後半、アメリカの若者たちは冷戦、貧富の差、ドラッグ問題、政治的保守化など多くの不安を抱えていました。そんな中、Overkillはスラッシュ・メタルという激しい音楽を通じて、「自分たちは孤独ではない」「共に声を上げよう」というポジティブなメッセージを放ちました。
この曲は、いわば**ヘヴィメタルにおける“労働者階級の団結歌”**ともいえる内容であり、歌詞では国家や権力に頼らず、自らの意志で生きること、仲間との連帯を通じて逆境を乗り越えることが歌われます。
3. 歌詞の抜粋と和訳
引用元:Musixmatch – Overkill / In Union We Stand
“In union we stand / As they blaze across the land”
「団結のもとに立ち上がる/やつらがこの地を蹂躙しようとも」
“In union we make a final stand”
「最後の抵抗も、団結してこそ成し得る」
“We won’t let them take us down / We’ll rise and fight again”
「奴らには負けない/俺たちは何度でも立ち上がる」
4. 歌詞の考察
この曲の力強いコーラスとリフレインには、戦争、社会的不公正、仲間への忠誠、そして反抗の精神が込められています。「Union(団結)」という言葉は、政治的スローガンであると同時に、メタル・シーンの仲間意識やファン同士の絆も象徴しています。Overkillはこの曲で、ヘヴィメタルを単なる音楽ではなく、共同体そのものとして描き出しています。
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- “United” by Judas Priest
- “Peace Sells” by Megadeth
- “Fight for Your Right” by Beastie Boys
- “The Trooper” by Iron Maiden
6. スラッシュ・メタル版「We Are the World」
「In Union We Stand」は、過激な音楽性の中に“人間的な温かさ”と“仲間を信じる心”を宿した名曲です。怒りだけでなく希望を内包するこの一曲は、スラッシュ・メタルを「破壊」ではなく「団結と再生」の音楽へと押し上げました。
Crazy Train by Ozzy Osbourne(1980)楽曲解説
1. 歌詞の概要
「Crazy Train」は、Ozzy OsbourneがBlack Sabbath脱退後にソロ・キャリアの幕開けとして1980年に発表したアルバム『Blizzard of Ozz』のオープニング・トラックであり、今なお彼の代表作として世界中で親しまれている名曲です。イントロのギターリフはランディ・ローズによって生み出されたもので、ロック史上最も有名なギター・リフのひとつに数えられています。
歌詞のテーマは、世界が“狂気”の列車に乗って破滅へ向かっているというメタファー。冷戦、核戦争の恐怖、人類の自己破壊的行動への懸念が込められています。一方で、個人としての苦悩や精神的な混乱も同時に語られており、「Crazy Train」はパーソナルな葛藤と世界規模の不安を同時に描いたメッセージ・ソングでもあります。
2. 歌詞のバックグラウンド
1979年にBlack Sabbathを解雇されたOzzyは、ランディ・ローズ(G)、ボブ・デイズリー(B)、リー・カースレイク(Dr)と共に自身の新バンドを結成し、音楽的にも精神的にも新たなスタートを切ります。「Crazy Train」は、その第一歩として書かれた楽曲であり、Ozzy自身の“再生”の象徴でもありました。
また当時、世界は米ソ冷戦の最中であり、核の脅威が常に存在していました。そうした不安な世界情勢と、Ozzy自身の内面的カオスが交差するかのように、「Crazy Train」はまさに**混乱した時代を走る“狂気の列車”**そのものを表現しています。
3. 歌詞の抜粋と和訳
引用元:Musixmatch – Ozzy Osbourne / Crazy Train
“Crazy, but that’s how it goes / Millions of people living as foes”
「狂ってる、でもこれが現実/何百万人が互いを敵として生きている」
“Maybe it’s not too late / To learn how to love and forget how to hate”
「まだ間に合うかもしれない/愛し方を学び、憎しみを忘れることが」
“I’m going off the rails on a crazy train”
「俺は脱線する――狂気の列車の上で」
4. 歌詞の考察
「Crazy Train」は、時代の狂気と人間の内面の混乱を重ね合わせた詩的なメッセージソングです。単なる破滅の警鐘ではなく、「もしかしたらまだ間に合う」という希望の断片も歌詞には含まれており、Ozzy Osbourne特有の“暗黒の中の光”が感じられます。
また、楽曲の疾走感ある展開とキャッチーなフレーズは、破滅的なテーマにも関わらず、聴く者にエネルギーを与える構造になっています。まさに破壊と再生が交差するハードロックの金字塔と言えるでしょう。
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- “Bark at the Moon” by Ozzy Osbourne
-
“Living After Midnight” by Judas Priest
-
“Breaking the Law” by Judas Priest
-
“Highway to Hell” by AC/DC
-
“Paranoid” by Black Sabbath
6. “狂気”が導いた新しい始まり
「Crazy Train」は、Ozzy Osbourneというアーティストが、社会や世界と真摯に向き合いながら、自身の過去と再生を音楽で語った記念碑的作品です。狂気とは逃避ではなく、現実を正面から見つめる手段にもなりうる――そんな逆説的な強さが、この名曲には宿っています。
両曲に共通するのは、“逆境の中で立ち上がる”というメッセージ。Overkillは団結で、Ozzyは再生で、それぞれ自分の道を貫いた。ヘヴィメタルの本質とは、まさにそこにあるのかもしれません。
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