アルバムレビュー:Ironbound by Overkill

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

発売日:2010年1月29日

ジャンル:スラッシュ・メタル、ヘヴィ・メタル、グルーヴ・メタル

概要

Overkillの15作目のスタジオ・アルバム『Ironbound』は、2010年代スラッシュ・メタル復権の流れを語るうえで極めて重要な作品である。1980年代からニュージャージーを拠点に活動してきたOverkillは、Metallica、Slayer、Megadeth、Anthraxによるいわゆる「ビッグ4」とは別の位置で、アメリカ東海岸スラッシュ・メタルの硬派な系譜を担ってきたバンドである。彼らは商業的な巨大成功よりも、継続性、現場感覚、強靭なライヴ・パフォーマンス、そして妥協の少ないスラッシュ・メタル精神によって支持を集めてきた。

『Ironbound』は、その長いキャリアの中でも特に評価の高い後期代表作である。1980年代のスラッシュ・メタル黄金期をリアルタイムで生きたバンドが、単なる懐古に陥らず、現代的な音圧と演奏精度を備えながら、初期衝動を再燃させたアルバムとして位置づけられる。Overkillは1990年代以降も活動を止めず、グルーヴ・メタルやモダンなヘヴィネスを取り込みながら作品を発表し続けていたが、『Ironbound』では彼ら本来の攻撃性、疾走感、メロディックなリフ構築、そしてBobby “Blitz” Ellsworthの鋭いヴォーカルが、非常に高い密度で結晶化している。

本作が重要なのは、単に「昔ながらのスラッシュをやった」からではない。2000年代後半から2010年代初頭にかけて、Evile、Municipal Waste、Warbringer、Havokなど、若い世代によるスラッシュ・リバイバルが盛り上がりを見せていた。その中でOverkillのようなベテランが『Ironbound』を提示したことは、スラッシュ・メタルが過去の様式ではなく、現在形の音楽として再び機能し得ることを示した。若手が1980年代の音像を参照する一方で、Overkillは当時を知るバンドとして、経験値と現代的なプロダクションを結びつけ、説得力のある作品を作り上げた。

Overkillの音楽的特徴は、単純な高速リフだけではない。D.D. Verniのベースは常に強い存在感を持ち、ギター・リフと並ぶもう一つの推進力として機能する。Bobby “Blitz” Ellsworthのヴォーカルは、甲高く突き刺すような声質と、パンク的な荒々しさ、そしてメタルらしい劇的な表現力を兼ね備えている。ギターは鋭い刻みとメロディックな展開を行き来し、楽曲は長尺であっても緊張感を失わない。『Ironbound』では、これらの要素が非常に明確に整理されている。

アルバム・タイトルの「Ironbound」は、Overkillの地元ニュージャージー州ニューアークの地区名にも関連する言葉であり、同時に「鉄に縛られた」「鉄のように結束した」といったイメージを持つ。これはバンドの出自、都市的な硬さ、労働者階級的な粘り強さ、そしてメタルという音楽への忠誠心を象徴している。Overkillの音楽には、派手な神秘主義や悪魔的な演出よりも、汗、鉄、騒音、ストリート、怒り、しぶとさといった感覚が強くある。本作はその美学を非常に力強く打ち出している。

歌詞の面では、社会不信、怒り、精神的な圧迫、暴力性、自己防衛、破壊と再生といったテーマが扱われる。Overkillの歌詞は哲学的な抽象性よりも、攻撃的な語感、ストリート感覚、挑発的なフレーズを重視する傾向がある。しかし『Ironbound』では、単なる怒号ではなく、長いキャリアを経たバンドならではの確信が感じられる。自分たちが何者であるかを理解し、それを迷いなく音にする姿勢が、アルバム全体を貫いている。

『Ironbound』は、スラッシュ・メタルの伝統を継承しながら、2010年代における再生を告げたアルバムである。1980年代のOverkillを知るリスナーにとっては、バンドが再び最前線の攻撃性を取り戻した作品として響き、若いリスナーにとっては、スラッシュ・メタルの本質を現代的な音で体験できる入り口となる。長いキャリアを持つバンドが、単なる過去の再演ではなく、現在の自分たちとして勝負した作品。それが『Ironbound』の大きな意義である。

全曲レビュー

1. The Green and Black

オープニング曲「The Green and Black」は、Overkillのバンド・カラーである緑と黒をタイトルに掲げた、自己宣言的な楽曲である。アルバムの冒頭にふさわしく、長いイントロから徐々に緊張を高め、やがて本格的なスラッシュ・メタルの疾走へ移行する構成を持つ。単に最初から突っ走るのではなく、重々しい導入によってバンドの威圧感を示し、その後に爆発する展開が効果的である。

この曲では、Overkillの特徴であるリフの組み立ての巧さが際立っている。ギターは鋭く刻まれながらも、単調な高速ピッキングに終始しない。リズムの変化、ブレイク、メロディックなフレーズを挟みながら、曲全体をドラマティックに構築している。D.D. Verniのベースも強く前に出ており、低音域から楽曲を支えるだけでなく、独立した攻撃性を持っている。

歌詞の面では、バンド自身のアイデンティティを確認するような内容が中心にある。緑と黒は、Overkillというバンドの象徴であり、ファンとの共同体的な記号でもある。ここで歌われるのは、単なる自己賛美ではなく、長年にわたり活動を続けてきたバンドの結束、継続、そしてスラッシュ・メタルに対する忠誠である。

Bobby “Blitz” Ellsworthのヴォーカルは、この曲で非常に強い存在感を放つ。彼の声は荒々しく、鋭く、時に狂気じみているが、それでいてフレーズを明確に届ける力がある。年齢を重ねたベテランの声でありながら、勢いはまったく衰えていない。「The Green and Black」は、『Ironbound』が単なる復古作ではなく、バンドの現在進行形の力を示すアルバムであることを冒頭から宣言する曲である。

2. Ironbound

タイトル曲「Ironbound」は、本作の核となる楽曲であり、Overkill後期を代表する名曲の一つである。鋭いリフ、疾走するドラム、強靭なベース、そしてBobby “Blitz” Ellsworthの攻撃的なヴォーカルが一体となり、スラッシュ・メタルの快感を非常に純度の高い形で提示している。アルバム・タイトルを冠するだけあって、曲にはバンドの出自と精神性が凝縮されている。

音楽的には、スピードと重量感のバランスが優れている。単に速いだけではなく、リフにはフックがあり、サビには観客が拳を上げて叫べるようなアンセム性がある。Overkillは長年、パンク的な勢いとメタル的な構築性を組み合わせてきたが、「Ironbound」ではその両方が理想的に噛み合っている。演奏は精密でありながら、機械的にはならず、あくまで人間の怒りと熱を感じさせる。

歌詞では、都市的な硬さ、結束、逆境への抵抗が感じられる。「Ironbound」という言葉は、地名であると同時に、鉄のような不屈の精神を象徴する。Overkillにとってこの曲は、地元とバンドの歴史を音楽的に結びつけるものでもある。スラッシュ・メタルはしばしば暴力性や破壊性を表現するが、この曲における攻撃性は、無目的な暴発ではなく、自分たちの場所を守るための力として響く。

サビの力強さも特筆すべき点である。Overkillはメロディックなバンドではあるが、そのメロディは甘さではなく、集団的な叫びとして機能する。「Ironbound」はライヴでも強い効果を発揮するタイプの曲であり、バンドと観客が同じ言葉を共有することで、スラッシュ・メタルの共同体性を生み出す。アルバム全体の中心として、これ以上ない説得力を持つ楽曲である。

3. Bring Me the Night

「Bring Me the Night」は、アルバム序盤の勢いをさらに加速させる高速スラッシュ・ナンバーである。冒頭から鋭いリフが切り込み、ドラムは一気にスピードを上げる。曲の構造は比較的コンパクトでありながら、Overkillらしいリフの展開と攻撃性が詰め込まれている。1980年代スラッシュ・メタルの直線的な快感を、現代的な録音で再構築したような曲である。

この曲の魅力は、スピード感の中にある明確なキャッチーさである。Overkillは常に、暴力的な演奏と覚えやすいフックを両立させることに長けていた。「Bring Me the Night」でも、ヴァース部分は激しく突き進むが、サビでは聴き手がすぐに掴めるフレーズが用意されている。これにより、曲は単なる爆走ではなく、ライヴで強い一体感を生むアンセムとして成立している。

歌詞のテーマは、夜、欲望、危険、解放の感覚である。夜はメタルにおいてしばしば、社会的な規範から外れる時間、抑圧された感情が解き放たれる空間として描かれる。この曲でも、夜は単なる時間帯ではなく、怒りや衝動が表に出る場として機能している。Overkillの世界では、闇は恐れるものというより、戦うための舞台である。

演奏面では、ギターの切れ味とリズム隊のタイトさが際立つ。特にドラムの推進力は強く、曲全体を前へ前へと押し出していく。Bobbyのヴォーカルは、速いテンポの中でも言葉を鋭く打ち込み、曲にパンク的な荒さを加えている。「Bring Me the Night」は、『Ironbound』が持つスラッシュ・メタルとしての即効性を最も分かりやすく示す曲の一つである。

4. The Goal Is Your Soul

「The Goal Is Your Soul」は、タイトルからして不穏で挑発的な楽曲である。「狙いはお前の魂だ」という意味を持つこのタイトルは、宗教的、精神的、あるいは心理的な支配のイメージを呼び起こす。Overkillらしい毒気と攻撃性が強く表れた曲であり、アルバムの中でも邪悪なムードを持っている。

音楽的には、疾走一辺倒ではなく、重いグルーヴとスラッシュ的な刻みを組み合わせている。リフには引っかかりがあり、聴き手を不安定にさせるような緊張感がある。Overkillは高速パートだけでなく、ミドルテンポの圧力を使うことにも長けており、この曲ではその側面がよく出ている。グルーヴ・メタル的な重さを取り入れながらも、核にあるのはあくまでスラッシュの鋭さである。

歌詞のテーマは、精神の支配、誘惑、破壊的な力との対峙である。魂を奪うという表現は、悪魔的なファンタジーとしても読めるが、現代社会における洗脳、欲望、権力、依存の比喩としても機能する。Overkillの歌詞は必ずしも詳細な物語を語るわけではないが、攻撃的な言葉の連打によって、圧迫感と危機感を作り出す。

Bobbyのヴォーカルは、ここでは特に狂気じみた表情を見せる。高く突き刺す声と、吐き捨てるようなフレーズが交互に現れ、曲の不穏さを増幅する。ギター・ソロも鋭く、楽曲の混沌をさらに引き上げる。「The Goal Is Your Soul」は、『Ironbound』の中でスピードだけではないOverkillの表現力を示す曲であり、バンドが持つダークな演劇性を感じさせる。

5. Give a Little

「Give a Little」は、アルバム中盤に置かれた、ややロックンロール的なノリを持つ楽曲である。Overkillはスラッシュ・メタル・バンドでありながら、パンク、ハードロック、ロックンロールの感覚を失わないバンドでもある。この曲では、そのストリート感覚が前面に出ている。鋭さは保ちつつも、リフには跳ねるような感触があり、曲全体に分かりやすいグルーヴがある。

音楽的には、前半の高速曲に比べて、少し肩の力を抜いたような印象がある。しかしそれは弱さではなく、バンドの幅を示すものだ。Overkillは常に全力で速く走るだけではなく、リズムの揺れやロック的なうねりによって、別の種類の攻撃性を作り出すことができる。「Give a Little」は、その意味でアルバムに呼吸を与える役割を担っている。

歌詞では、取引、譲歩、搾取、欲望の交換のようなテーマが感じられる。「少し与えろ」というフレーズは、単なる優しさの呼びかけではなく、相手から何かを引き出そうとする圧力のようにも響く。Overkillの歌詞では、社会や人間関係がしばしば競争や衝突として描かれる。この曲でも、信頼よりも駆け引き、平和よりも摩擦が中心にある。

リフのキャッチーさとBobbyの癖の強い歌唱によって、曲はライヴ向きの即効性を持つ。D.D. Verniのベースも、ギターと一体化しながらグルーヴを強調している。「Give a Little」は、アルバムの激しさを維持しつつ、スラッシュ・メタルの中にあるロックンロール的な楽しさを思い出させる曲である。

6. Endless War

「Endless War」は、タイトル通り、終わりなき戦いをテーマにした重厚な楽曲である。Overkillの作品では、戦争はしばしば実際の軍事衝突だけでなく、人生そのもの、社会の競争、精神的な闘争の比喩として扱われる。この曲でも、「終わらない戦争」は外部の敵との戦いであると同時に、自分自身や時代との戦いとして響く。

音楽的には、重いリフと緊張感のある展開が中心にある。曲は単純な疾走曲ではなく、ミドルテンポの圧力とスラッシュ的な加速を組み合わせながら進む。リフの一つ一つが硬く、まるで金属片を叩きつけるような感触を持っている。Overkillの演奏はここで非常にタイトで、無駄な装飾よりも、曲のテーマに合った重量感を重視している。

歌詞のテーマは、消耗、暴力の連鎖、終わりの見えない対立である。戦いが終わらないという感覚は、現代社会において非常に広い意味を持つ。個人は仕事、社会制度、人間関係、内面の不安と常に戦っている。Overkillはそれを抽象的な慰めとしてではなく、攻撃的で冷たい現実として描く。救済よりも抵抗、調和よりもサバイバルがこの曲の中心にある。

Bobbyのヴォーカルは、ここでは怒りと疲労の両方を感じさせる。長年戦い続けてきた者の声として響き、若いバンドには出せない重みがある。「Endless War」は、Overkillのベテランとしての説得力が表れた楽曲であり、『Ironbound』の中でも特に硬派な一曲である。

7. The Head and Heart

「The Head and Heart」は、理性と感情の対立を示すタイトルを持つ楽曲である。頭と心という二つの要素は、判断と衝動、計算と情熱、冷静さと怒りの対比として読める。Overkillの音楽そのものも、この二つの要素によって成り立っている。演奏は精密に構築されているが、その根底には激しい感情がある。この曲は、その構造をタイトルの時点で示している。

サウンドは、リフの展開が比較的複雑で、曲の中で緊張と解放が繰り返される。ギターは鋭く刻まれ、リズム隊は強固に支えるが、単純な直線的疾走だけではない。ブレイクや展開の変化によって、頭で組み立てられた構成美が感じられる。一方で、ヴォーカルやリフの攻撃性は非常に感情的であり、タイトル通り、理性と衝動がぶつかり合っている。

歌詞では、判断の難しさ、感情に従うことの危うさ、あるいは理性だけでは生き抜けない現実が描かれているように聴こえる。メタルにおいて感情はしばしば怒りとして表現されるが、Overkillはその怒りを無秩序に放出するのではなく、楽曲構成の中に閉じ込めることで強度を生む。この曲は、その方法論をよく示している。

Bobbyの歌唱は、言葉を叩きつけるようでありながら、曲の構造をきちんと導いている。リフとの掛け合いも巧みで、バンド全体が一つの機械のように動く。「The Head and Heart」は、『Ironbound』の中でOverkillの知的な構築力と肉体的な攻撃性が交差する楽曲である。

8. In Vain

「In Vain」は、アルバムの中でもやや暗く、陰影の濃い楽曲である。タイトルは「無駄に」「むなしく」という意味を持ち、努力が報われない感覚、救いのなさ、あるいは無意味な闘争を連想させる。Overkillの攻撃性は常に勝利のためだけにあるわけではなく、敗北や徒労を知った上で、それでも戦うためのものでもある。この曲にはその苦い感覚がある。

音楽的には、重いリフと不穏な空気が中心にある。スピードよりも圧迫感が重視され、曲全体に沈み込むようなムードがある。ギターは鋭いが、明るい高揚よりも暗い緊張を生み出している。ドラムも単なる疾走ではなく、曲の重さを支えるように刻まれる。アルバム全体の中で、感情の陰影を深める役割を果たしている。

歌詞のテーマは、努力の空回り、失望、繰り返される失敗である。しかし、Overkillはそれを静かな絶望としては描かない。むしろ、無駄だと分かっていてもなお抵抗する姿勢がある。スラッシュ・メタルにおいて重要なのは、希望の明るさではなく、絶望に対する反射的な反抗である。「In Vain」は、その感覚をよく表している。

Bobbyのヴォーカルは、ここではやや苦々しく、怒りの奥に疲労感を含んでいる。長いキャリアを持つバンドだからこそ、このようなテーマに重みが生まれる。若さだけではない、経験を経た攻撃性がこの曲にはある。「In Vain」は、アルバムの中で深みを与える重要な楽曲である。

9. Killing for a Living

「Killing for a Living」は、タイトルからして非常に攻撃的で、暴力と職業性、生活のための殺しという不穏なテーマを持つ楽曲である。これは直接的な殺人の描写としてだけでなく、社会の中で暴力が制度化され、仕事や生存の一部になってしまう状態の比喩としても読むことができる。Overkillらしい黒いユーモアと批判性が感じられる曲である。

音楽的には、鋭いリフと疾走感が戻ってくる。アルバム終盤に向けて再びテンションを上げる役割を持ち、聴き手を休ませない。リフは攻撃的で、ドラムはタイトに突き進み、ヴォーカルは皮肉と怒りを込めて言葉を放つ。Overkillのスラッシュ・メタルは、暴力を単に賛美するのではなく、その異常さを過剰な音で描くことで、社会の歪みを映し出すことがある。この曲もその系譜にある。

歌詞では、殺しが仕事になる世界の異様さが描かれる。軍事、犯罪、権力、経済、競争社会など、さまざまな解釈が可能である。重要なのは、暴力が例外ではなく日常になってしまう恐ろしさだ。タイトルの冷淡さは、まさにその感覚を表している。Overkillはここで、スラッシュ・メタルの攻撃性を使って、倫理が摩耗した世界を描いている。

曲としては、ライヴでも強いインパクトを持つタイプである。サビのフレーズは挑発的で、リフは直感的に身体を動かす力を持つ。「Killing for a Living」は、『Ironbound』終盤に再び攻撃性を引き上げる楽曲であり、Overkillの社会的な毒気と音楽的な破壊力が結びついた一曲である。

10. The SRC

ラスト曲「The SRC」は、『Ironbound』を締めくくるにふさわしい、攻撃的で緊張感のある楽曲である。タイトルの意味は明示的に説明されない部分もあるが、曲全体には統制、暴力、システムへの不信、あるいは何らかの強制力に対する反発が感じられる。Overkillはアルバムの最後まで勢いを緩めず、聴き手を荒々しい音の渦の中に置き去りにする。

音楽的には、スラッシュ・メタルとしての切れ味を維持しながら、終曲らしい重さも持っている。ギター・リフは鋭く、リズム隊は最後まで強靭で、曲全体が緊張した状態で進む。アルバムの締めくくりにバラードや静かな余韻を置くのではなく、あくまで攻撃的なまま終わる構成は、Overkillらしい。『Ironbound』は、最初から最後までメタルとしての圧力を保つ作品であり、この曲はその姿勢を最後に確認する。

歌詞の面では、抑圧的な力への反発が中心にあるように響く。Overkillの世界観では、個人は常に何かに押し潰されそうになっている。社会、権力、暴力、欲望、嘘、裏切り。それらに対して、ただ耐えるのではなく、音と怒りで反撃することが重要になる。「The SRC」は、その反抗の姿勢を終盤にもう一度強く打ち出す曲である。

Bobbyのヴォーカルは最後まで鋭さを失わず、バンド全体の演奏も疲れを感じさせない。むしろアルバムが終わる瞬間に、Overkillというバンドのしぶとさが最も強く残る。『Ironbound』は復活作と呼ばれることが多いが、このラスト曲を聴くと、それは単なる復活ではなく、長年戦い続けてきたバンドがさらに前進するための宣言だったことが分かる。

総評

『Ironbound』は、Overkillの長いキャリアの中でも特に重要な後期代表作である。1980年代のスラッシュ・メタルを支えたバンドが、2010年代に入ってもなお現役の攻撃性を維持し、むしろ新たなピークを作り出した作品として高く評価できる。本作の最大の強みは、懐古と現代性のバランスにある。リフ、ヴォーカル、スピード、ベースの存在感、ライヴ向きのコーラスといった要素は明らかにクラシックなスラッシュ・メタルに根ざしている。しかし、録音は現代的に分厚く、演奏は非常にタイトで、音の輪郭も鋭い。古さを再現するのではなく、伝統を現在の音圧で鳴らしている。

Overkillというバンドの特徴は、本作で非常に分かりやすく表れている。Bobby “Blitz” Ellsworthのヴォーカルは、他のスラッシュ・メタル・シンガーと比べても個性が強い。甲高く、挑発的で、時に狂気を感じさせる声は、楽曲に強烈なキャラクターを与えている。D.D. Verniのベースは単なる低音の補強ではなく、リフとリズムの中心に立つ存在であり、Overkillのサウンドを他のバンドと差別化している。ギターとドラムも、スピード、重量、構成力を高い次元で両立させている。

本作はまた、スラッシュ・メタルというジャンルの持続力を示す作品でもある。スラッシュ・メタルは1980年代に最盛期を迎え、その後グランジ、オルタナティヴ・ロック、デス・メタル、グルーヴ・メタルなどの台頭によって一時的に主流から退いた。しかし、『Ironbound』が登場した2010年前後には、若い世代によるスラッシュ・リバイバルが活発化していた。その中でOverkillがこれほど強力な作品を作ったことは、ジャンルの再評価に大きな意味を持った。若手が過去を参照するだけでなく、ベテランが現在形のスラッシュを提示したことで、シーン全体に厚みが生まれた。

歌詞の面では、怒り、戦い、精神的圧迫、社会不信、暴力性、自己防衛が繰り返し現れる。『Ironbound』は明るい希望を歌うアルバムではない。しかし、ただ暗いだけでもない。むしろ、過酷な状況に対して音で反撃するためのアルバムである。Overkillの音楽における怒りは、破滅へ向かうだけの怒りではなく、生き残るためのエネルギーとして機能する。そこに、彼らが長年支持されてきた理由がある。

アルバム全体の構成も優れている。冒頭の「The Green and Black」でバンドの旗を掲げ、タイトル曲「Ironbound」で作品の中心を示し、「Bring Me the Night」で一気に疾走感を高める。中盤では「The Goal Is Your Soul」「Endless War」「In Vain」のような重さや不穏さを持つ曲が配置され、終盤には「Killing for a Living」「The SRC」で再び攻撃性を強める。全体として、テンションを維持しながらも、スピード、グルーヴ、重さ、アンセム性の変化があるため、単調さを避けている。

『Ironbound』は、クラシックなスラッシュ・メタルを好むリスナーはもちろん、現代的な音圧を持つヘヴィ・メタルを求めるリスナーにも適している。MetallicaやMegadethの初期作品、Testament、Exodus、Anthrax、Death Angelなどに関心がある人にとって、本作は非常に聴き応えのある作品である。また、ベテラン・バンドの後期作品が単なる惰性ではなく、キャリアの新たな頂点になり得ることを示した例としても重要である。

Overkillはしばしば、ビッグ4ほどの一般的知名度を持たないバンドとして語られる。しかし『Ironbound』を聴くと、彼らがスラッシュ・メタルの歴史において欠かせない存在であることが明確になる。流行に左右されず、時代が変わっても自分たちの音を鍛え続けたバンドだからこそ到達できた強度が、このアルバムにはある。『Ironbound』は、鋼鉄のような結束、都市の硬さ、長年の闘争、そしてスラッシュ・メタルへの不変の忠誠を刻み込んだ、Overkill後期の傑作である。

おすすめアルバム

1. Overkill – The Years of Decay

Overkillの1980年代末を代表する名盤であり、バンドのクラシック期を理解するうえで欠かせない作品である。スラッシュ・メタルの攻撃性に加えて、長尺曲やドラマティックな展開も多く、『Ironbound』に通じる構成力の原点を聴くことができる。Bobbyの個性的なヴォーカルとD.D. Verniのベースが、バンドの核として強く機能している。

2. Overkill – Horrorscope

1991年発表の重要作で、Overkillの重厚さと攻撃性が高い水準で結びついたアルバムである。スラッシュ・メタルの切れ味を保ちながら、より太い音像とダークな雰囲気を備えている。『Ironbound』の硬質なサウンドや現代的なヘヴィネスを好むリスナーには特に関連性が高い。

3. Testament – The Formation of Damnation

2008年発表のTestamentによる復活作で、ベテラン・スラッシュ・メタル・バンドが現代的な音圧で再び強力な作品を作り上げた例である。『Ironbound』と同様、単なる懐古ではなく、経験と現代的プロダクションを組み合わせたスラッシュ・メタルの好例として聴くことができる。

4. Exodus – Tempo of the Damned

2004年発表のExodusの復活作で、ベイエリア・スラッシュの暴力性と現代的な音作りが融合したアルバムである。Overkillとは地域性やヴォーカルの個性が異なるが、ベテラン・バンドが新世紀にスラッシュ・メタルの攻撃性を再提示した作品として、『Ironbound』と並べて聴く価値が高い。

5. Death Angel – The Art of Dying

2004年に発表されたDeath Angelの復帰作で、クラシックなスラッシュ・メタルの技術力、メロディ、リフの切れ味を現代的に再構成している。『Ironbound』ほど都市的で荒々しい質感ではないが、ベテラン・スラッシュ勢の復権という文脈で重要な作品であり、2010年代スラッシュ再評価の流れを理解するうえで関連性が高い。

PR
アルバムレビュー
シェアする

コメント

タイトルとURLをコピーしました