
発売日: 2005年8月30日
ジャンル: オルタナティブ・ロック、ダンス・ロック、パワーポップ
概要
『Oh No』は、OK Goが2005年に発表したセカンド・アルバムであり、バンドのキャリアにおける大きな転機となった作品である。
ポップでありながら鋭利、知的でありながら衝動的。
そんな二面性を内包した本作は、彼らを“バイラル・ビデオのバンド”としてではなく、“音楽的にも卓越したバンド”として世界に印象づけた。
本作のプロデューサーは、Nirvana『Nevermind』やGarbageを手がけたButch Vig。
彼の手腕により、OK Goのキャッチーなメロディとユーモアが、より重厚でロック的なサウンドとして結実している。
また、YouTubeで爆発的に拡散された「Here It Goes Again」のトレッドミル・ダンスも相まって、アルバム自体の評価も大きく高まった。
ただし、それを抜きにしても、『Oh No』は“映像抜きでも強い音”を持った、誠実なロック・アルバムとして成立している。
全曲レビュー
1. Invincible
冒頭を飾るにふさわしい、力強くストレートなギター・ロック。
サビの「Do you think… we’re invincible?」というリフレインが爽快で、自己肯定と若さの爆発を象徴している。
2. Do What You Want
スピード感あふれるビートとキレのあるギターが炸裂する、ライヴ映え必至のナンバー。
タイトル通りの“自由”と“無秩序”を祝福するような、陽性のエネルギーに満ちている。
3. Here It Goes Again
バンド最大のヒット曲。
シンプルなリフと8ビートが病みつきになる一曲で、トレッドミル・ビデオでの軽快なパフォーマンスと相まって一躍世界的に有名となった。
歌詞の中にある“同じことの繰り返し”という虚無感と、そのポップさのギャップも見逃せない。
4. A Good Idea at the Time
グラムロックの香りを感じさせるスウィング感のあるギターが特徴的。
派手さの中にちょっとした毒を感じさせる、OK Goらしい皮肉が効いた一曲。
5. Oh Lately It’s So Quiet
アルバム中もっともミニマルでソフトな曲。
タイトル通り、“静けさ”の中に潜む不安や緊張感を描き出している。
Damian Kulashのヴォーカルが繊細に際立つ。
6. It’s a Disaster
タイトルとは裏腹に、軽快でダンサブルなリズム。
破滅や不安を“楽しげに”歌うという逆説的なアプローチが、バンドの知的ユーモアを象徴している。
7. A Million Ways
「A million ways to be cruel」というサビのフレーズが印象的な一曲。
この曲もビデオで注目を集めたが、楽曲単体でも非常に完成度が高い。
ニューウェーブとファンクが交差する、クセになる一曲。
8. No Sign of Life
ミッドテンポのナンバーで、ややダークなトーンが漂う。
不穏なコード進行と、乾いたリズムが空虚さを際立たせる。
9. Let It Rain
アルバム終盤に現れる、内省的かつ解放感あるナンバー。
雨というモチーフが象徴するように、感情の浄化とリセットがテーマ。
10. Crash the Party
皮肉に満ちたロック・チューン。
「パーティーを壊す」というフレーズには、表面的な楽しさを覆す毒が込められている。
カラフルで騒がしい中に、バンドの冷静な視線が光る。
11. Television, Television
ガレージロック風のざらついた質感と、テレビ文化に対する風刺が混ざり合った一曲。
短いながらもパンチの効いたトラック。
12. Maybe, This Time
儚さと希望が交錯する、美しいメロディのミディアム・ナンバー。
“今度こそ”というフレーズが、未練と再起の感情を共存させる。
13. The House Wins
ピアノを主体にした、エレガントでドラマチックなエンディング曲。
カジノをモチーフにした歌詞は、人生の不確かさと“勝ち目のなさ”を描いている。
静かだが深く心に残る締めくくりである。
総評
『Oh No』は、OK Goが“映像のバンド”として注目される前に、“音で勝負できるバンド”であることを証明した作品である。
Butch Vigのプロダクションは、バンドの持つポップさとインディー感覚を見事に融合させ、聴き応えのあるロック・アルバムに仕上げている。
また、曲ごとのキャラクターが際立っており、どの楽曲もシングルカットできるような完成度を誇る。
ユーモア、哀愁、怒り、歓喜──あらゆる感情が凝縮されながら、すべてがOK Goらしい“ひねり”を伴って描かれている。
それは、ただのポップロックではなく、“賢いポップ”なのだ。
おすすめアルバム(5枚)
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Franz Ferdinand / Franz Ferdinand
OK Go同様、ダンサブルで知的なロック。UK勢との共通性が際立つ。 -
The Hives / Tyrannosaurus Hives
パンキッシュなエネルギーとキャッチーさの共存という点で共鳴する。 -
Motion City Soundtrack / Commit This to Memory
感情豊かなパワーポップと電子音の融合がOK Goの柔軟性と近い。 -
The Killers / Hot Fuss
ポップとロックの間を行き来する構成美、そしてバイラルな力の強さで通じる。 -
Gnarls Barkley / St. Elsewhere
映像と音楽の融合による世界観構築という意味で、アプローチが似ている。
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