発売日: 1968年5月24日
ジャンル: サイケデリックロック / プログレッシブロック
『Ogden’s Nut Gone Flake』は、Small Facesがサイケデリックロックの領域に大胆に足を踏み入れたアルバムで、彼らのキャリアを象徴する作品である。コンセプトアルバムとして構成され、2枚組のレコードのA面は、様々なスタイルを取り入れた楽曲が並び、B面はファンタジックな物語「Happiness Stan」をテーマにした組曲が展開される。アルバム全体に漂うサイケデリックな雰囲気と、メロディックなポップセンスが見事に融合し、1960年代後半のブリティッシュロックを代表する作品となっている。
各曲ごとの解説:
1. Ogden’s Nut Gone Flake
タイトル曲「Ogden’s Nut Gone Flake」は、インストゥルメンタルで始まるサイケデリックなオープニング。エフェクトのかかったギターと、夢幻的なオーケストレーションが融合し、アルバム全体のファンタジックなムードを強調している。アルバムの壮大さを予感させる美しいイントロだ。
2. Afterglow (Of Your Love)
「Afterglow (Of Your Love)」は、ソウルフルなバラードで、Steve Marriottの感情豊かなボーカルが際立つ楽曲。壮大なメロディと、ギターとオルガンの暖かいアレンジが特徴。愛と喪失をテーマにした歌詞が心に響く、アルバムのハイライトの一つだ。
3. Long Agos and Worlds Apart
「Long Agos and Worlds Apart」は、サイケデリックなサウンドが色濃く反映されたトラックで、キーボードとエフェクトの効いたボーカルが特徴。空間的で広がりのあるサウンドが、リスナーを幻想的な世界へと導く。メロディの複雑さとアレンジが、この曲にプログレッシブロックの要素を加えている。
4. Rene
「Rene」は、キャッチーなメロディとユーモアに満ちた歌詞が特徴のポップナンバー。アコースティックギターがリードする軽快なサウンドで、ストーリーテリングの要素も強く、ロンドンの港町に住む女性Reneの物語が描かれる。バンドの遊び心とストーリーテリングが光る一曲だ。
5. Song of a Baker
「Song of a Baker」は、ヘヴィなギターリフと力強いドラムが特徴のロックナンバー。歌詞ではパン屋の生活が描かれているが、背後には人間の苦悩や労働の意味がテーマとして込められている。Marriottのボーカルがエネルギッシュで、バンドの演奏が特に力強い。
6. Lazy Sunday
シングルとしてリリースされ、ヒットを記録した「Lazy Sunday」は、風変わりで軽快な楽曲。遊び心に溢れた歌詞と、コックニー訛りのボーカルがユーモラスな雰囲気を醸し出しており、サイケデリックなアレンジとポップなメロディが見事に融合している。キャッチーなコーラスが耳に残る、バンドの代表作だ。
7. Happiness Stan
アルバムのB面に入ると、物語「Happiness Stan」が展開される。タイトル曲「Happiness Stan」は、ストーリーテリングが中心となる幻想的な楽曲で、Stanというキャラクターが月の欠けた部分を探す旅に出るというストーリーが描かれる。語りとサウンドが組み合わさり、アルバム全体のコンセプトを強化している。
8. Rollin’ Over
「Rollin’ Over」は、ヘヴィでリズミカルなロックナンバーで、勢いのあるギターリフとMarriottのシャウトが印象的。曲のエネルギーとダイナミズムが際立っており、バンドのロックンロールスピリットを感じさせる。
9. The Hungry Intruder
「The Hungry Intruder」は、穏やかなメロディと優しいボーカルが特徴のバラード。Stanの冒険の中で出会うキャラクターを描いた曲で、柔らかいギターサウンドが幻想的な雰囲気を強調している。感情的な深みがあり、物語に温かみを与える一曲だ。
10. The Journey
「The Journey」は、タイトル通りStanの旅路を描いた壮大なトラック。エレクトリックギターとオルガンが絡み合い、サイケデリックでドラマチックなサウンドが展開される。物語のクライマックスを表現するかのような曲構成が魅力だ。
11. Mad John
「Mad John」は、Stanが出会う狂気の男Johnを描いた楽曲。アコースティックギターと素朴なボーカルが特徴で、物語の中に深みを加える。物語と楽曲が巧みに組み合わさり、幻想的で詩的な世界観を形成している。
12. HappyDaysToyTown
「HappyDaysToyTown」は、物語のフィナーレを飾る明るく楽しいナンバー。歌詞はシンプルで、アルバム全体のストーリーをまとめ上げる。キャッチーなメロディとアップテンポなビートが心地よく、全体を楽しく締めくくる曲だ。
アルバム総評:
『Ogden’s Nut Gone Flake』は、Small Facesの音楽的な冒険心と創造力が結集したサイケデリックロックの傑作である。彼らのポップセンスとサイケデリックな実験性が見事に融合し、ユーモア溢れる物語と楽曲が展開されるコンセプトアルバムとして、当時のロックシーンに大きな影響を与えた。特に「Lazy Sunday」や「Afterglow (Of Your Love)」など、メロディアスでキャッチーな楽曲が多く収録されており、ポップさと実験性のバランスが取れた作品となっている。サイケデリックロックの名作として今でも高く評価されている。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚:
- The Piper at the Gates of Dawn by Pink Floyd
サイケデリックロックの金字塔で、実験的なサウンドと幻想的なストーリーテリングが『Ogden’s Nut Gone Flake』に共通する。 - Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band by The Beatles
サイケデリックロックの代表作であり、コンセプトアルバムとしての構成や、ポップセンスが共鳴する作品。 - Sell Out by The Who
The Whoの実験的でユーモアに満ちた作品。広告風のコンセプトと、キャッチーなロックが『Ogden’s Nut Gone Flake』と似たアプローチを持つ。 - In the Court of the Crimson King by King Crimson
プログレッシブロックの黎明期を代表する作品で、壮大なコンセプトと複雑な構成が『Ogden’s Nut Gone Flake』に通じる。 - Forever Changes by Love
サイケデリックフォークとロックが融合したアルバムで、美しいメロディと幻想的な世界観が、Small Facesの音楽と共通する。
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