アルバムレビュー:『Off the Wall』 by Michael Jackson

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

発売日:1979年8月10日

ジャンル:ディスコ、ファンク、R&B、ソウル、ポップ、ダンス・ポップ

概要

Michael Jacksonの『Off the Wall』は、1979年に発表された通算5作目のソロ・スタジオ・アルバムであり、彼がThe Jackson 5/The Jacksonsの天才的な少年シンガーから、独立した大人のポップ・アーティストへと決定的に変貌した作品である。後の『Thriller』が世界的な文化現象として語られる一方で、『Off the Wall』は音楽的な純度、ダンス・グルーヴの完成度、ヴォーカルの解放感において、Michael Jacksonのキャリアでも特別な位置を占める名盤である。

本作の背景には、Michael Jacksonの人生とキャリアの大きな転換がある。幼少期からThe Jackson 5の中心として活動してきた彼は、Motown時代に「I Want You Back」「ABC」「I’ll Be There」などのヒット曲で圧倒的な歌唱力を示していた。しかし、少年スターとしてのイメージは、成長するにつれて制約にもなった。1970年代後半のMichaelは、家族グループの一員であると同時に、自分自身の音楽的個性を確立する必要に直面していた。

その転換を可能にしたのが、Quincy Jonesとの出会いである。Michael Jacksonは映画『The Wiz』への出演を通じてQuincy Jonesと関わり、本作で本格的にタッグを組むことになる。Quincy Jonesは、ジャズ、R&B、映画音楽、ポップ、ソウルの領域に精通した名プロデューサーであり、Michaelの才能を大人のポップ・ミュージックの中でどう開花させるかを深く理解していた。『Off the Wall』は、Michaelの若さ、声、ダンス感覚、ソウルのルーツ、そしてポップ・スターとしての可能性を、Quincy Jonesの洗練された制作手腕によって最大限に引き出した作品である。

音楽的には、本作はディスコ時代の終盤に位置する。1970年代後半のダンス・ミュージックは、ディスコ・ブームによって世界的な広がりを見せていたが、1979年頃にはその商業的な過熱に対する反動も出始めていた。『Off the Wall』は、そうした時代にあって、単なるディスコの流行に乗ったアルバムではなく、ディスコ、ファンク、ソウル、R&B、ポップを高い音楽性で統合した作品である。ここでのダンス・ミュージックは、軽薄な享楽ではなく、身体と感情を解放する洗練されたポップ芸術として鳴っている。

アルバムの冒頭を飾る「Don’t Stop ’Til You Get Enough」は、その象徴である。Michael自身が作曲に関わったこの曲は、細かく刻まれるギター、弾むベース、ストリングス、パーカッション、そして彼の高くしなやかなファルセットが一体となった、ディスコ・ファンクの傑作である。冒頭の語りから高揚へ移る瞬間には、Michaelが子ども時代のイメージを脱ぎ捨て、自分の身体と欲望とリズムを完全に解放するような感覚がある。

続く「Rock with You」は、Rod Tempertonによる楽曲で、ディスコとソウル・バラードの中間にある滑らかなダンス・ナンバーである。この曲では、Michaelの声は極めて柔らかく、ロマンティックに響く。激しく踊らせるのではなく、相手と一緒に揺れるような親密なグルーヴを作る。『Off the Wall』の魅力は、このように熱狂と洗練、肉体性と上品さが同居している点にある。

本作では、Michael Jacksonが単に優れたシンガーであるだけでなく、リズムを身体で理解する表現者であることが明確に示されている。彼の歌唱は、メロディを美しくなぞるだけではない。息、短い掛け声、語尾の切り方、ファルセットの跳ね、リズムの前後への揺れが、すべてダンスと結びついている。後の『Thriller』や『Bad』でさらに発展する、ヴォーカルそのものをパーカッション化するMichael独自のスタイルは、本作ですでに鮮やかに現れている。

歌詞面では、夜、ダンス、恋愛、解放、孤独、自己表現が中心となる。「Don’t Stop ’Til You Get Enough」では快楽と高揚が肯定され、「Rock with You」では恋人との一体感が歌われる。「Off the Wall」では日常の制約から抜け出すことがテーマとなり、「She’s Out of My Life」では失った愛への深い後悔が歌われる。アルバム全体は、単に踊るための作品ではなく、夜の自由、恋の喜び、心の痛み、そして自己解放を描いた青春と成熟の間にあるアルバムである。

『Off the Wall』は、Michael Jacksonのキャリアにおける最初の大きな自立宣言である。『Thriller』以降のMichaelは、世界最大のポップ・スターとして巨大な神話を背負っていくが、本作にはその前の自由さがある。スターとしての重圧が過度に肥大化する前の、音楽そのものと踊る喜びに満ちたMichaelがここにいる。だからこそ、本作は後年の作品とは異なる瑞々しさと開放感を持っている。

日本のリスナーにとって『Off the Wall』は、『Thriller』の前史として聴くだけでは不十分である。むしろ、Michael Jacksonがソウル/ファンク/ディスコの伝統をどのようにポップの中心へ引き上げたのかを知るための決定的な作品である。ダンス・ミュージックが持つ快楽性と、歌手としての繊細な表現力が、これほど自然に融合したアルバムは多くない。

全曲レビュー

1. Don’t Stop ’Til You Get Enough

「Don’t Stop ’Til You Get Enough」は、『Off the Wall』の幕開けを飾るだけでなく、Michael Jacksonが大人のソロ・アーティストとして生まれ変わった瞬間を象徴する楽曲である。冒頭の低く囁くような語りは、これまでの少年スターMichaelのイメージから離れ、より官能的で自信に満ちた人物像を提示する。その直後、ファルセットが軽やかに飛び出し、曲は一気にダンス・フロアへ解き放たれる。

音楽的には、ディスコ、ファンク、ソウルが完璧に融合している。ベースラインは軽快で、ギターは細かく刻まれ、ストリングスは曲に華やかな上昇感を与える。ドラムとパーカッションはタイトで、全体のグルーヴを強く支えている。Quincy Jonesのプロダクションは非常に整理されており、音数は多いが混雑しない。すべての楽器がMichaelの声とダンスを引き立てるように配置されている。

歌詞では、止まらない高揚、愛や快楽のエネルギー、身体が動き続ける感覚が歌われる。タイトルの「十分に満たされるまで止まるな」という言葉は、ダンスの持続だけでなく、自己解放の宣言として響く。ここでのMichaelは、誰かに作られた少年アイドルではなく、自分の身体と声を使って快楽をコントロールするアーティストである。

この曲のヴォーカルは非常に重要である。Michaelは高音を滑らかに使い、短い掛け声や息のアクセントでリズムを生み出している。歌はメロディであると同時に、ダンスの一部である。この感覚は後の彼のスタイルの核心となる。

「Don’t Stop ’Til You Get Enough」は、ディスコ時代の終盤に生まれた最高峰のダンス・ポップである。流行としてのディスコを超え、Michael Jacksonという表現者の身体そのものを音楽化した名曲である。

2. Rock with You

「Rock with You」は、『Off the Wall』の中でも特に滑らかでロマンティックな楽曲である。Rod Tempertonによる作曲で、ディスコのリズムを持ちながらも、激しい熱狂ではなく、恋人と一緒に夜を揺れるような柔らかな感覚が中心にある。

音楽的には、ミッドテンポのディスコ/ソウルであり、ベース、ドラム、ギター、シンセサイザーが非常に上品に組み合わされている。ビートは踊れるが、過度に前へ出ない。曲全体に余白があり、その中でMichaelの声がしなやかに動く。夜の空気、光、身体の近さを感じさせるサウンドである。

歌詞では、相手と一緒に踊り、音楽に身を任せることで、愛と一体感が生まれる様子が描かれる。「rock」という言葉は、ここではロック音楽というより、身体を揺らすこと、共に動くことを意味している。ダンスは単なる娯楽ではなく、恋人同士が言葉を超えてつながる手段である。

Michaelの歌唱は非常に柔らかい。彼は力強く押すのではなく、メロディの上を滑るように歌う。ファルセットと地声の移行も自然で、声全体が曲のグルーヴと一体になっている。この繊細さが、「Rock with You」を単なるディスコ曲ではなく、永続的なラヴ・ソングにしている。

「Rock with You」は、Michael Jacksonのロマンティックなダンス・ポップの完成形である。『Off the Wall』の洗練された夜のムードを象徴する名曲である。

3. Workin’ Day and Night

「Workin’ Day and Night」は、アルバムの中でも最もファンク色が強い楽曲のひとつである。Michael自身が作曲に関わっており、彼のリズム感、パーカッシヴな発想、エネルギーの強さがよく表れている。タイトル通り、昼も夜も働き続けるような切迫感と推進力がある。

音楽的には、ベース、パーカッション、ホーン、ギターが密集し、非常にタイトなファンク・グルーヴを作る。曲は休むことなく前へ進み、Michaelの声もそのリズムに食い込む。ここではメロディの美しさ以上に、リズムの圧力が重要である。ダンス・フロア向けでありながら、単純なディスコではなく、より汗と身体性を感じるファンクである。

歌詞では、恋愛関係の中で相手のために働き、尽くしているにもかかわらず、十分に報われていない感覚が描かれる。労働と恋愛が重ねられており、愛のために消耗する人物の姿が見える。しかし曲調は暗くならず、その不満さえもグルーヴへ変換している。

Michaelのヴォーカルは、非常にリズミックである。短く切るフレーズ、叫び、息、掛け声が曲の重要な要素になっている。後年の「Wanna Be Startin’ Somethin’」や「Jam」にもつながる、身体的なヴォーカル表現の原型がここにある。

「Workin’ Day and Night」は、Michael Jacksonがファンクの核心を深く理解していたことを示す楽曲である。ポップ・スターとしての明るさだけでなく、グルーヴを作るミュージシャンとしての才能が強く表れている。

4. Get on the Floor

「Get on the Floor」は、アルバム前半のダンス・ムードをさらに推進するファンク/ディスコ・ナンバーである。Louis Johnsonとの共作であり、The Brothers Johnson周辺のファンク感覚がMichaelのポップ性と結びついている。タイトルの通り、聴き手をダンス・フロアへ誘う非常に直接的な楽曲である。

音楽的には、ベースラインが大きな魅力である。弾むようなベースが曲全体を引っ張り、ギターとパーカッションが細かく絡む。ドラムはタイトで、グルーヴに無駄がない。Quincy Jonesのプロダクションは、ファンクの粘りを保ちながら、ポップとしての軽やかさも確保している。

歌詞では、踊ることへの誘いが中心である。ここでのダンスは、日常の疲れや制約から抜け出すための行為である。フロアに出ることは、自分を解放することでもある。『Off the Wall』全体にある「夜の自由」というテーマが、この曲にもはっきり現れている。

Michaelの歌唱は、軽やかでありながら非常に正確である。彼はベースとドラムの隙間に声を入れ、リズムをさらに細かく刻む。声と身体が完全に連動しているような歌唱であり、聴いているだけでダンスの動きが想像できる。

「Get on the Floor」は、本作のダンス・アルバムとしての側面を支える重要曲である。シングル曲ほど有名ではないが、アルバム全体のグルーヴを考えるうえで欠かせない一曲である。

5. Off the Wall

表題曲「Off the Wall」は、アルバムのコンセプトを最も明確に示す楽曲である。「off the wall」という表現は、普通ではない、型破りな、羽目を外した、という意味を持つ。ここでは、日常の規則や社会的な抑圧から抜け出し、自分らしく楽しむことがテーマになっている。

音楽的には、Rod Tempertonらしい洗練されたディスコ/ファンクである。リズムは弾み、ベースとギターは軽快に絡み、ホーンやシンセが曲に華やかさを与える。曲全体には、夜のパーティーのような雰囲気があるが、同時に非常に上品に整えられている。

歌詞では、人生を真面目に受け止めすぎず、ときには壁から外れて楽しむことの大切さが歌われる。これは、Michael自身の人生にも重なるテーマである。幼少期から厳しいショービジネスの中で育った彼にとって、自由に楽しむこと、制約から抜け出すことは単なる娯楽以上の意味を持っていた。

Michaelのヴォーカルは、明るく、少し茶目っ気がある。彼はここで、深刻な自己表現ではなく、聴き手を遊びへ誘うエンターテイナーとして振る舞う。しかし、その軽さの中にも、自由への切実な願望が感じられる。

「Off the Wall」は、アルバム全体の精神を象徴する楽曲である。踊ること、楽しむこと、普通の枠から少し外れること。それらがMichael Jacksonの新しい大人の表現として提示されている。

6. Girlfriend

「Girlfriend」は、Paul McCartneyによる楽曲であり、アルバムの中でも軽やかでポップな一曲である。もともとWingsの楽曲としても知られるが、Michael Jacksonが歌うことで、より柔らかく、若々しいポップ・ソウルとして響いている。

音楽的には、明るいメロディと軽いリズムが中心であり、アルバム前半のファンク/ディスコの濃密な流れから少し距離を置く。曲調は親しみやすく、Michaelの声の甘さがよく活かされている。シンプルなポップ・ソングとしての魅力がある。

歌詞では、相手の恋人に対して、自分の存在を知らせたいという少し複雑な恋愛状況が描かれる。内容だけを見れば三角関係的だが、曲調は非常に軽く、深刻なドラマというより、ポップな恋の駆け引きとして提示されている。

Michaelの歌唱は、ここで非常にチャーミングである。強いファンク・ナンバーで見せる鋭さとは異なり、柔らかく、少し少年らしさを残した声が聴ける。この曲は、アルバムの中でMichaelの甘いポップ感覚を示す役割を持つ。

「Girlfriend」は、本作の中では比較的小品的な位置づけだが、Michaelが大人のダンス・アーティストであると同時に、親しみやすいポップ・シンガーでもあることを示している。

7. She’s Out of My Life

「She’s Out of My Life」は、『Off the Wall』の中で最も感情的なバラードであり、Michael Jacksonの繊細な歌唱表現を強く示す楽曲である。Tom Bahlerによるこの曲は、ダンス・ナンバーが多い本作の中で、突然時間を止めるような深い悲しみをもたらす。

音楽的には、非常にシンプルなバラードである。ピアノと控えめなストリングスを中心に、Michaelの声が前面に置かれている。過剰な装飾はなく、歌詞と声の感情がそのまま伝わる構成である。この簡素さが、曲の痛みを強くしている。

歌詞では、愛する人を失った後の後悔が歌われる。相手が自分の人生から去ってしまったこと、もっと大切にすべきだったこと、失って初めてその価値を知ること。非常に普遍的な失恋の感情が、直接的な言葉で表現されている。

Michaelの歌唱は、ここで非常に脆い。特に終盤では、感情が声ににじみ、完全にコントロールされた美しさを超えて、人間的な痛みが出る。この曲によって、彼がダンス・ポップのスターであるだけでなく、深い悲しみを歌えるヴォーカリストであることが明確になる。

「She’s Out of My Life」は、『Off the Wall』の中で重要な感情の転換点である。夜の解放とダンスの快楽の裏側に、喪失と孤独が存在することを示している。

8. I Can’t Help It

「I Can’t Help It」は、Stevie WonderとSusaye Greeneによる楽曲であり、本作の中でも特に洗練されたソウル/ジャズ寄りの雰囲気を持つ一曲である。タイトルは「どうしようもない」「抑えられない」という意味で、恋に落ちる感情の自然さが歌われている。

音楽的には、非常に滑らかで、コード進行にはStevie Wonderらしい複雑で美しい響きがある。派手なダンス曲ではなく、夜の静かなグルーヴを持つミッドテンポのソウルである。ベース、キーボード、リズムが柔らかく絡み合い、アルバムの中でも大人びた質感を作っている。

歌詞では、相手に惹かれる気持ちを止められないことが歌われる。それは理屈ではなく、自然に起こる感情である。Michaelの歌唱は、ここで非常にしなやかで、Stevie Wonder的なメロディの起伏を丁寧に表現している。

この曲の魅力は、Michaelの声が持つ柔らかさと、楽曲の洗練が完全に合っている点である。強烈なフックで押すのではなく、メロディとコードの微妙な動きによって聴かせる。Michaelの音楽性の深さを示す楽曲である。

「I Can’t Help It」は、『Off the Wall』の隠れた名曲として評価されるべき一曲である。ダンス・アルバムとしての本作に、ジャズ・ソウル的な知性と柔らかな官能を加えている。

9. It’s the Falling in Love

「It’s the Falling in Love」は、Patti Austinとのデュエット曲であり、恋に落ちることそのものの高揚と危うさを歌った楽曲である。タイトルが示すように、ここで重要なのは恋愛関係の完成形ではなく、「落ちていく」過程である。

音楽的には、軽快なポップ・ソウルであり、明るく親しみやすいメロディが特徴である。Patti Austinの声は、Michaelの声と自然に調和し、曲に温かみを与えている。二人のデュエットは過度に劇的ではなく、軽やかな会話のように進む。

歌詞では、恋に落ちることが持つ甘さと危険性が描かれる。恋が始まる瞬間は楽しいが、同時に自分をコントロールできなくなる不安もある。この曲は、その感情を深刻にしすぎず、ポップな軽さで表現している。

Michaelの歌唱は、ここで非常に自然体である。Patti Austinとの掛け合いによって、彼の声の柔らかさと親しみやすさが引き出されている。アルバム終盤に、明るい恋愛の空気を再びもたらす役割を持つ。

「It’s the Falling in Love」は、本作の中で軽やかなデュエットとして機能する楽曲である。Michaelのポップ・シンガーとしての魅力を、過度に派手ではない形で示している。

10. Burn This Disco Out

アルバムの最後を飾る「Burn This Disco Out」は、Rod Tempertonによるダンス・ナンバーであり、『Off the Wall』を再びダンス・フロアの熱気の中へ戻して締めくくる楽曲である。タイトルは「このディスコを燃え尽きさせろ」という意味に近く、アルバム全体のダンスのエネルギーを最後に再点火する。

音楽的には、ディスコとファンクの勢いを持つアップテンポな楽曲である。ベース、ドラム、ギター、ホーンがタイトに組み合わされ、終曲らしい高揚を作る。『Off the Wall』はバラードやミッドテンポの曲も含むが、最後はやはり踊るアルバムとして終わる。

歌詞では、夜が終わるまで踊り続けるような熱気が歌われる。ディスコという空間は、単なる場所ではなく、人々が日常から離れ、身体を解放する場である。この曲は、その場が燃え尽きるほどのエネルギーを求める。

Michaelのヴォーカルは、最後まで軽快で、リズムに対する反応が鋭い。アルバム全体を通して彼が示してきたダンス感覚が、この曲で再び前面に出る。終盤の勢いは、リスナーにもう一度最初から聴きたくさせるような循環性を持つ。

「Burn This Disco Out」は、『Off the Wall』の終曲として非常に効果的である。ダンス・ミュージックへの愛と、夜の解放感を最後まで保ったまま、アルバムを締めくくる。

総評

『Off the Wall』は、Michael Jacksonが少年スターから大人のソロ・アーティストへと完全に移行した決定的なアルバムである。ここには、The Jackson 5時代から続く天才的な歌唱力があり、同時に、ディスコ、ファンク、ソウル、ポップを自分の身体で統合する新しいMichael Jacksonがいる。後の『Thriller』が世界的な現象となる前に、本作はすでに彼の音楽的完成度を高い水準で示していた。

本作の最大の魅力は、圧倒的な解放感である。「Don’t Stop ’Til You Get Enough」「Rock with You」「Workin’ Day and Night」「Get on the Floor」「Off the Wall」「Burn This Disco Out」といった楽曲には、踊ることによって自分を解放する喜びが満ちている。ここでのMichaelは、後年のような巨大な神話や孤独の重圧をまだ背負いきっていない。音楽と身体が一体となる純粋な快楽がある。

Quincy Jonesのプロダクションは、本作の成功に不可欠である。彼はMichaelの若さと才能を、洗練された大人のポップ・サウンドへ導いた。ディスコの華やかさ、ファンクのリズム、ソウルの感情、AOR的な滑らかさをバランスよく配置し、アルバム全体を非常に完成度の高い作品に仕上げている。音は豊かだが過剰ではなく、常にMichaelの声とグルーヴを中心にしている。

Michael Jacksonのヴォーカルは、本作で驚くほど多彩である。「Don’t Stop ’Til You Get Enough」ではファルセットの高揚、「Rock with You」では滑らかなロマンス、「Workin’ Day and Night」ではリズムの鋭さ、「She’s Out of My Life」では感情の脆さ、「I Can’t Help It」では洗練されたソウル感覚が示される。彼は単なる高い声のシンガーではなく、楽曲ごとに声の質感を変えられる表現者である。

歌詞面では、夜と解放が大きなテーマになっている。『Off the Wall』というタイトルが示す通り、本作は日常の壁、規則、期待から抜け出すアルバムである。踊ることは、社会的な役割やプレッシャーから自由になることでもある。幼少期からショービジネスの中で生きてきたMichaelにとって、この自由の感覚は非常に重要だったといえる。

一方で、本作には切なさもある。「She’s Out of My Life」はその最も明確な例である。ダンスと快楽のアルバムの中に、突然深い喪失感が現れることで、『Off the Wall』は単なるパーティー・アルバムではなくなる。喜びの裏側には孤独があり、解放の裏側には傷つきやすさがある。この二面性は、後年のMichael Jackson作品でさらに強まっていく。

『Thriller』と比較すると、『Off the Wall』はより一貫してダンス・ソウル的であり、音楽そのもののグルーヴに集中している。『Thriller』はロック、ホラー、映像、ポップ戦略を含む総合的な文化現象だったが、『Off the Wall』はより純粋に音楽的なアルバムとして楽しめる。Michael Jacksonの最高傑作をどちらと見るかは意見が分かれるが、グルーヴと自由さという点では『Off the Wall』を最も高く評価する声にも十分な説得力がある。

ディスコ史の中でも、本作は重要である。1979年はディスコへの反発も高まっていた時期だが、『Off the Wall』はディスコを一過性の流行ではなく、高度なポップ・ミュージックへ昇華している。リズムは踊れるが、楽曲は丁寧に作られ、歌唱は深い。ディスコの快楽性とソウルの表現力が、ここでは理想的に結びついている。

また、本作は1980年代ポップへの橋渡しでもある。シンセサイザー、タイトなリズム、クロスオーヴァー志向、ダンスと映像への意識は、後の『Thriller』や1980年代のポップ・ミュージック全体へつながる。PrinceMadonnaJanet Jackson、Whitney Houstonなどが活躍する80年代ポップの時代を考えるうえでも、『Off the Wall』はその直前にある重要な転換点である。

日本のリスナーにとっては、『Thriller』の前作としてだけでなく、Michael Jacksonのソウル/ファンク的な魅力を最も自然に味わえる作品として聴く価値がある。映像的なイメージや巨大なスター神話をいったん脇に置き、声、リズム、ベース、ギター、ストリングス、グルーヴに集中すると、本作の音楽的な豊かさがより鮮明になる。

総じて、『Off the Wall』は、Michael Jacksonが大人のアーティストとして自らを解放し、ディスコ/ファンク/ソウル/ポップを一つの完璧なダンス・アルバムへまとめ上げた名盤である。踊る喜び、恋の高揚、夜の自由、失恋の痛み、洗練されたグルーヴが一枚に収められている。『Thriller』が世界を制したアルバムだとすれば、『Off the Wall』はMichael Jacksonが音楽的に自由を手にしたアルバムである。

おすすめアルバム

1. Michael Jackson – Thriller

『Off the Wall』の成功を受け、Michael JacksonとQuincy Jonesがさらに大きなスケールで作り上げた歴史的作品。ロック、ホラー、ファンク、R&B、映像表現を統合し、Michaelを世界最大のポップ・スターへ押し上げた。『Off the Wall』の洗練が、より総合的なポップ文化へ拡張されたアルバムである。

2. The Jacksons – Destiny

The Jacksons名義で1978年に発表された重要作。Michael Jacksonがソロで完全に飛躍する直前の作品であり、「Blame It on the Boogie」「Shake Your Body」など、ディスコ/ファンク路線の完成度が高い。『Off the Wall』への直接的な流れを理解するうえで重要である。

3. The Jacksons – Triumph

1980年発表のThe Jacksonsの代表作。『Off the Wall』後のMichaelの成長と、兄弟グループとしてのファンク/ポップの成熟が聴ける。ソロMichaelとグループMichaelの両面を比較するために有効な作品である。

4. Quincy Jones – The Dude

『Off the Wall』と『Thriller』を手がけたQuincy Jonesの1981年作品。ジャズ、R&B、AOR、ポップの洗練が詰まっており、Michael Jackson作品の背景にあるプロダクション感覚を理解するうえで重要である。James IngramやPatti Austinの歌唱も聴きどころである。

5. Chic – C’est Chic

ディスコとファンクを洗練されたポップへ高めたChicの代表作。Nile RodgersとBernard Edwardsによるギターとベースのグルーヴは、『Off the Wall』期のダンス・ミュージックの背景を理解するうえで欠かせない。ディスコが高度な音楽性を持っていたことを示す名盤である。

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