アルバムレビュー:New York – London – Paris – Munich by M

発売日: 1979年8月1日
ジャンル: シンセポップ / ニューウェーブ / ディスコ

『New York – London – Paris – Munich』は、イギリスのシンガーソングライターでありプロデューサーのロビン・スコットによるプロジェクト、Mのデビューアルバムである。この作品は、シンセサイザー主導の斬新なサウンドと、ディスコやニューウェーブの要素を大胆に融合させ、当時の音楽シーンに鮮烈な印象を残した。特に、アルバムからのシングル「Pop Muzik」は国際的な大ヒットを記録し、アメリカとイギリスのチャートで上位にランクイン。未来的なサウンドと風刺的な歌詞が魅力のこの楽曲は、アルバム全体を象徴している。

プロダクションには、ロビン・スコット自身が深く関わり、斬新で洗練された音作りが特徴だ。シンセサイザーの重層的な音色やエレクトロニックなリズムが、当時のディスコ全盛期のサウンドと一線を画しており、アルバムタイトルが示すように、世界の主要都市を繋ぐポップミュージックのグローバルな視点が貫かれている。リリースから数十年を経た今でも、エッジの効いた革新性を感じさせる一枚だ。

全曲解説

1. Pop Muzik

アルバムのオープニングトラックであり、Mの代名詞的な楽曲。「Pop, pop, pop muzik」という繰り返しのキャッチーなフレーズが印象的だ。風刺的な歌詞では、ポップミュージックの商業主義やその普遍性について描いている。シンセサイザーとリズムマシンの未来的な音作りが際立ち、リリース当時のディスコサウンドと対比されることで、ユニークな印象を与える。

2. Woman Make Man

ミッドテンポのトラックで、ロマンティックなテーマを扱いつつ、フェミニズム的な視点も垣間見える歌詞が特徴的だ。柔らかなシンセパッドと控えめなギターリフが、楽曲全体にエレガントな雰囲気を添えている。

3. Moderne Man / Sassafras and Moonshine

未来的なサウンドスケープを作り出す一方で、歌詞にはノスタルジックな要素が含まれる。曲中のリズムチェンジや、シンセサイザーによる大胆なアレンジが新鮮で、Mの実験的な一面を垣間見ることができる。

4. Made in Munich

タイトル通り、ドイツ的なエレクトロニカの影響を感じさせるトラック。クラフトワークを彷彿とさせるミニマルなビートが印象的で、シンセベースと機械的なパーカッションが楽曲を支えている。ヨーロッパ的なエッセンスが色濃く反映されている一曲。

5. Moonlight and Muzak

「Pop Muzik」に次ぐ代表曲で、メロウなメロディと洗練されたアレンジが光る。歌詞では、夜の都市生活をテーマにしており、夢見心地な雰囲気が漂う。静かに高揚していく構成が魅力的で、アルバム全体の中でも特にエモーショナルな一曲。

6. That’s the Way the Money Goes

金銭や商業主義をテーマにした風刺的な楽曲。跳ねるようなリズムとユーモアたっぷりの歌詞が特徴で、聴く者を楽しませる。軽快なギターとシンセサウンドが、曲の明るいトーンを引き立てている。

7. Cowboys and Indians

社会的・文化的なテーマを扱ったトラックで、異なる文化間の対立を象徴的に描いている。シンセサイザーのエスニックなフレーズが楽曲にユニークな彩りを加え、リズムセクションが力強さを提供している。

8. Unite Your Nation

アルバムの中でも特にメッセージ性が強い一曲。団結や平和を呼びかける歌詞が、シンセポップの明るいサウンドに乗せられている。アップテンポでありながらも、リスナーに考えさせる内容が込められている。

9. M Factor

インストゥルメンタル中心の楽曲で、アルバム全体を締めくくるにふさわしい壮大な雰囲気を持つ。シンセサイザーの緻密なアレンジが光り、映画音楽のようなスケール感が楽しめる。


アルバム総評

『New York – London – Paris – Munich』は、ポップミュージックの商業主義とその普遍性を風刺しつつ、その魅力を最大限に活かしたアルバムである。斬新なシンセサウンドと社会的なテーマを絡めた歌詞が、当時のリスナーに衝撃を与えた。特に「Pop Muzik」は、現在でもシンセポップの代表曲として語り継がれている。全体を通して、Mの実験精神と音楽的ビジョンが詰まった一枚だ。


このアルバムが好きな人におすすめの5枚

Autobahn by Kraftwerk
ミニマルなシンセサウンドと未来志向の音楽性が共通しており、『New York – London – Paris – Munich』に通じる要素が多い。

Dare by The Human League
シンセポップの金字塔。キャッチーなメロディと洗練されたアレンジが楽しめる。

Replicas by Tubeway Army
ガリー・ニューマン率いるバンドの作品で、未来的でダークなシンセサウンドが特徴。Mのファンにも刺さるはず。

The Pleasure Principle by Gary Numan
シンセサイザー主導のエレクトロポップアルバムで、『Pop Muzik』のような未来感に共感できる。

Scary Monsters (And Super Creeps) by David Bowie
エクスペリメンタルな要素を取り入れたポップサウンドが印象的で、Mの冒険的な音楽性と共鳴する。

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