発売日: 1991年9月24日
ジャンル: グランジ、オルタナティヴ・ロック
Nevermindは、ニルヴァーナが全世界にその名を轟かせた歴史的アルバムだ。この作品は、1990年代初頭の音楽シーンを一変させ、グランジというサブカルチャーが一気にメインストリームに押し上げられるきっかけを作った。プロデューサーのブッチ・ヴィグによるタイトでクリアなサウンドは、前作Bleachの荒削りな雰囲気から一転して洗練され、カート・コバーンのキャッチーで鋭いメロディと、痛烈な歌詞が生々しく響く。このアルバムは、コバーンの葛藤と憤りを表現する一方で、意図せずして「代弁者」となった彼の複雑な心境がにじみ出ている。リリース直後から爆発的な人気を得て、特にシングル「Smells Like Teen Spirit」は“アンセム”となり、若者の心を掴み、音楽業界全体に衝撃を与えた。
各曲解説
Smells Like Teen Spirit
「ティーンエイジ・アンセム」として一世を風靡したこの曲は、キャッチーなリフと爆発的なエネルギーで、聴く者に強烈なインパクトを与える。コバーンが「何も考えずに書いた」と語るこの曲の歌詞には、若者の鬱屈した感情や無気力さが込められている。力強いリズムと歪んだギターサウンドがリスナーを巻き込み、聴くたびにその衝撃がよみがえる。
In Bloom
コバーンのメランコリックなボーカルが、社会に対する疎外感や虚しさを表現する一曲。キャッチーなメロディラインと皮肉を効かせた歌詞が特徴で、「外側から見たニルヴァーナファン」をテーマにしたとも言われている。サビの力強いリフレインが印象的で、メロディックなロックとしての完成度が高い。
Come as You Are
重厚でミステリアスなギターリフが印象的なこの曲は、自己受容や他者との関わりをテーマにしている。「ありのままで来てほしい」というメッセージが込められた歌詞は、多くのリスナーの共感を呼んだ。シンプルながらも哀愁漂うメロディが、どこか切ない気持ちにさせる。
Breed
激しいギターリフと疾走感のあるドラムが特徴のこの曲は、コバーンが抱えていた閉塞感や社会に対する反発心を表現している。短く鋭い構成が非常に効果的で、ニルヴァーナらしいエネルギーが炸裂するパンク色の強い楽曲だ。
Lithium
宗教的なテーマを含んだ歌詞と、静と動のコントラストが際立つ楽曲。コバーンが感じていた孤独や信仰への複雑な感情が描かれ、サビでの爆発的なエネルギーがリスナーの心に強く響く。「I’m so happy ‘cause today I found my friends…」という冒頭の一節が印象的で、多くのファンに愛されている。
Polly
アコースティックギターで奏でられる暗く静かな曲で、実話に基づいた衝撃的な内容が描かれている。重いテーマにも関わらず、その静寂と抑えられたトーンが逆に聴く者に深い印象を与える。コバーンのボーカルが持つ内面的な苦悩がじわじわと伝わってくる。
Territorial Pissings
激しいドラムとギターで始まるこの曲は、圧倒的なスピードと攻撃的なリフでリスナーを突き放す。人種差別や社会的な偏見を批判する内容で、怒りと憤りがひしひしと感じられる。コバーンの叫びにも似たボーカルが印象的な一曲。
Drain You
ポップなメロディに乗せて、恋愛や人間関係の「中毒性」を描いた楽曲。キャッチーなフックと、間奏での実験的なノイズが印象的だ。コバーンの「一番気に入っている」と語るこの曲は、シンプルながらも非常に奥深い。
Lounge Act
コバーンの複雑な感情と苦悩が込められた曲で、特定の人物への思いを綴ったとされる。心情が激しく揺れ動く中、ベースラインが一貫して重厚感を保ち、シンプルな構成ながらもエモーショナルな一曲。
Stay Away
強烈なリフとリズムが疾走感を生むこの曲は、ニルヴァーナらしいパンクスピリットを前面に押し出している。社会や権威に対する拒絶を表現し、リスナーに強いインパクトを与える。コバーンの叫びがエネルギッシュに響き渡る。
On a Plain
シンプルな歌詞とメロディが交差するこの曲は、コバーンが抱える矛盾や葛藤が淡々と描かれている。カジュアルな雰囲気の中にも、どこか哀愁が漂い、心に染み入る一曲だ。
Something in the Way
アルバムのラストを締めくくるこの曲は、ニルヴァーナの中でも特に内省的で陰鬱な作品。コバーンが語る暗く静かなギターと抑えられたボーカルが、彼の孤独と絶望を静かに表現している。リスナーの心を締め付けるような悲壮感が漂う。
アルバム総評
Nevermindは、グランジの代名詞となり、カート・コバーンを時代の象徴に押し上げた歴史的名盤だ。このアルバムは、コバーンの内面に潜む苦悩や怒りを音楽として表現しつつも、キャッチーなメロディとシンプルな構成で多くのリスナーを魅了した。ニルヴァーナの持つエネルギーと、若者の鬱屈した感情が見事に融合し、90年代を象徴する作品として語り継がれている。このアルバムが持つ影響力は凄まじく、リリースから30年以上経った今も色褪せることなく輝き続けている。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Pearl Jam – Ten
ニルヴァーナと同時期にシアトルシーンから登場したパール・ジャムのデビュー作。パワフルなボーカルとメロディックなロックサウンドが、Nevermindファンにも響くだろう。
Soundgarden – Badmotorfinger
シアトルのグランジシーンを牽引したサウンドガーデンの代表作。ハードなリフとクリス・コーネルの圧倒的な歌唱力が特徴で、グランジファンにおすすめ。
Alice in Chains – Dirt
暗く重厚なサウンドと深い歌詞で知られるアリス・イン・チェインズの傑作アルバム。Nevermind同様に90年代の苦悩を象徴するような作品で、多くの共通点がある。
Pixies – Doolittle
カート・コバーンにも多大な影響を与えたピクシーズのアルバム。独特の音楽性とポップなメロディが融合した名作で、ニルヴァーナファンにおすすめ。
Hole – Live Through This
コバーンの妻コートニー・ラブが率いるバンド、ホールの代表作。強烈なパワーとエモーショナルな歌詞が魅力で、Nevermindの持つエネルギーを感じられる。
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