アルバムレビュー:Mutineers by David Gray

発売日: 2014年6月17日
ジャンル: フォークロック、オルタナティヴ・ロック


新たな創造への航海—David Grayの音楽的革新

2014年のMutineersは、David Grayにとって創造的なリブートとも言える作品である。前作Draw the Line(2009年)では、ブルージーでライブ感の強いロックサウンドへと移行したが、本作ではより実験的でドリーミーなアプローチを取り入れ、新たな音楽的領域へと踏み出している。

本作のプロデューサーには、The NationalやMumford & Sonsのプロデュースで知られるAndy Barlow(Lamb)を迎えた。彼の影響によって、Grayの特徴であるアコースティックなサウンドは、アンビエントなエレクトロニカやシネマティックなアレンジと融合し、これまでにない独特のサウンドスケープを生み出している。

アルバムタイトルMutineers(反乱者たち)は、Gray自身の音楽的な変革を象徴しており、過去のスタイルを一新し、新しい創造の旅に出る決意が込められている。


全曲レビュー

1. Back in the World

アルバムの幕開けを飾る、リズミカルで高揚感のある楽曲。ピアノとストリングスが調和し、再生と希望をテーマにした歌詞が、David Grayの新しい出発を感じさせる

2. As the Crow Flies

穏やかで幻想的なサウンドが印象的。アコースティック・ギターとエレクトロニカの要素が交錯し、旅の途中のような浮遊感を持つ

3. Mutineers

アルバムタイトル曲。ミニマルなリズムとシンプルなメロディが、徐々に壮大なクライマックスへと向かう。「反乱者」としての意識を象徴する詩的な歌詞が、これまでのGrayとは異なるアプローチを示している

4. Beautiful Agony

静かなピアノと幻想的なサウンドが融合した楽曲。痛みの中にある美しさを描いた歌詞が印象的で、エモーショナルなボーカルが心に響く。

5. Last Summer

シンプルなアコースティックギターのアルペジオが美しい楽曲。過去の記憶や夏の終わりの切なさを歌うリリックが郷愁を誘う

6. Snow in Vegas

少しポップなテイストを持ったミディアムテンポの楽曲。フィーチャリング・アーティストとしてLeAnn Rimesが参加し、デュエットによるコントラストが楽曲のドラマ性を高めている

7. Cake and Eat It

エレクトロニカ要素が強めに取り入れられた楽曲で、グルーヴ感のあるリズムとアンビエントなシンセが独特の雰囲気を作り出す

8. Birds of the High Arctic

アルバムの中でも最も実験的な楽曲。アンビエントなサウンドスケープと静かなヴォーカルが、広大な風景を思わせる。音数を絞ったアレンジが、リスナーを深い思索の世界へと誘う。

9. The Incredible

ピアノ主体のミディアムテンポな楽曲で、優しさと力強さを併せ持つサウンドが特徴的。過去を振り返りつつも、未来への期待を感じさせる。

10. Girl Like You

アコースティックギターとソフトなビートが心地よいナンバー。恋愛の喜びと切なさが絡み合う歌詞が印象的。

11. Gulls

アルバムのラストを飾る静かで美しい楽曲。シンプルなピアノとボーカルのみで構成され、波の音のように流れるメロディが、余韻を残して幕を閉じる


総評

Mutineersは、David Grayのキャリアにおいて最も音楽的に挑戦的なアルバムのひとつだ。過去のフォークロック的なサウンドから離れ、よりエクスペリメンタルな要素を取り入れたことで、シネマティックで幻想的な雰囲気を持つ作品となっている。

特に、プロデューサーAndy Barlowの影響によるエレクトロニカやアンビエント的な要素の導入は、Grayの音楽に新たな次元を加えており、リスナーに新鮮な驚きを提供する。

また、アルバムタイトルが示すように、Mutineers自身の殻を破り、新たな音楽の方向性を模索するDavid Grayの意志を表現した作品である。フォークロックの枠を超えた、より広がりのあるサウンドを楽しみたいリスナーにおすすめの一枚だ。


おすすめアルバム

  • Bon Iver22, A Million (2016)
    • エレクトロニカとフォークを融合させた実験的なサウンドが、Mutineersの雰囲気と共鳴する。
  • The NationalTrouble Will Find Me (2013)
    • Andy Barlowが手掛けたバンドの作品で、シネマティックなアレンジが共通点を持つ。
  • Elbow – The Take Off and Landing of Everything (2014)
    • 壮大なサウンドスケープと詩的な歌詞が、David Grayの新しいアプローチと似ている。
  • James BlakeOvergrown (2013)
    • アンビエントな要素と感情的なヴォーカルのバランスが、Mutineersと親和性を持つ。
  • Lamb – What Sound (2001)
    • プロデューサーAndy Barlowのオリジナルプロジェクト。エレクトロニカとフォークの融合が光る作品。
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