
発売日:2013年4月8日
ジャンル:Electronic / Alternative R&B / Post-Dubstep / Art Pop / Ambient Soul
概要
Overgrownは、イギリスのシンガー、ソングライター、プロデューサーJames Blakeが2013年に発表した2作目のスタジオ・アルバムである。2011年のセルフタイトル作James Blakeで提示した、ダブステップ以後の低音感覚、ミニマルな電子音、ゴスペルやソウルを思わせるヴォーカル、ピアノを組み合わせた独自の音楽を、より成熟したソングライティングへ発展させた作品であり、2010年代のエレクトロニック・ミュージックとR&Bの接近を象徴する一枚として位置づけられる。
James Blakeは、ロンドンのクラブ・カルチャーとシンガー・ソングライター文化の境界から登場した。
初期にはダブステップ、UKガラージ、2ステップなどの影響を受けたインストゥルメンタル作品を発表していた。
しかし次第に、
ピアノ。
自分自身の声。
ゴスペル的な和音。
沈黙。
極端な低音。
ヴォーカルの断片化。
を組み合わせるようになる。
この変化によって、彼は単なるクラブ・プロデューサーでも、一般的なピアノ弾き語りのシンガーでもない位置へ進んだ。
Overgrownでは、その両面がさらに自然に統合されている。
デビュー作James Blakeには、実験性が強かった。
声が細かく切断される。
リズムが突然消える。
ベースが予測できない場所から入る。
曲そのものより、音響構造が前に出る瞬間も多かった。
それに対してOvergrownは、より「歌」の比重が大きい。
メロディ。
恋愛。
孤独。
距離。
親密さ。
喪失。
これらがはっきり聞こえる。
しかし、ポップへ単純化したわけではない。
むしろJames Blakeは、実験的なサウンドを維持したまま、そこへ感情の中心を置くことに成功した。
タイトルのOvergrownは、「生い茂った」「伸びすぎた」という意味を持つ。
草木が管理されずに成長し、形を変える。
この言葉は本作の音楽にもよく合う。
前作で作ったミニマルな構造が、時間とともに広がる。
ヴォーカル。
ベース。
電子音。
ピアノ。
それぞれが少しずつ成長し、アルバム全体がより豊かな音響へ変化する。
しかし、それでもJames Blakeの音楽には「空白」が多い。
音を埋めすぎない。
ここが重要である。
通常のポップ・ミュージックでは、空白は何かを加えて埋める場所になりやすい。
James Blakeは逆だ。
空白そのものを音楽にする。
何も鳴らない瞬間。
声だけが残る瞬間。
ベースが入る前の無音。
その空間が感情を増幅する。
そして本作では、RZA、Brian Enoといった異なる世代・ジャンルの人物との協働も重要である。
Wu-Tang ClanのRZA。
アンビエント、アート・ロック、スタジオ実験の歴史を担ってきたBrian Eno。
この二人の存在は、James Blakeの音楽がヒップホップ、電子音楽、ソウル、アート・ポップの複数の系譜にまたがっていることを示す。
Overgrownは、2013年という時代において、Frank Ocean、The Weeknd、FKA twigs、Mount Kimbieなどと並び、「R&B的な親密さ」と「電子音楽の実験性」を結びつける流れの重要な作品となった。
全曲レビュー
1. Overgrown
アルバムはタイトル曲「Overgrown」で始まる。
ピアノ。
低い声。
静かな電子音。
非常に少ない要素でスタートする。
しかし曲が進むにつれ、音が少しずつ増える。
タイトル通り、音楽そのものが「生い茂る」ように成長していく。
歌詞では、時間が経っても残る感情や、関係が終わった後にも消えないものが中心にある。
何かは終わった。
しかし、その跡は残る。
草木が放置された庭を覆うように、記憶も人間の中で勝手に広がっていく。
ここでの「overgrown」は、単なる自然描写ではない。
感情の蓄積。
記憶。
関係。
それらが制御できなくなることの比喩として機能する。
James Blakeの歌唱も非常に抑制されている。
感情を叫ばない。
むしろ低く、少し距離を置いて歌う。
その結果、悲しみがより深く聞こえる。
アルバム全体のテーマである「静かな感情の増殖」を提示するオープニングである。
2. I Am Sold
タイトルは「僕はもう君のものだ」「完全に納得している」といった意味。
恋愛における降伏や献身を示す言葉である。
この曲では、James Blakeのヴォーカル加工が特に重要。
声が何層にも重なる。
同じ人物の声なのに、複数の人格が同時に歌っているように聞こえる。
これは彼の代表的な技法である。
一般的なコーラスは複数の歌手が歌う。
James Blakeは自分自身の声を加工・重層化し、一人で合唱を作る。
その結果、極めて私的な歌が、奇妙に共同体的な響きを持つ。
歌詞では「自分が相手に引き込まれていく」感覚が中心。
自分を守る距離が少しずつ消える。
恋愛の幸福と、自己を失う危険が同時にある。
低音は深い。
しかしビートは過剰に強くない。
この「巨大な低音と小さな声」の対比がJames Blakeらしい。
3. Life Round Here
本作の中でも特にリズムが印象的な曲。
タイトルは「この辺りの生活」「ここでの暮らし」。
日常を観察するような言葉である。
音楽にはUKガラージ/ポスト・ダブステップの影響が強く、細かく刻まれるリズムと深いベースが中心になる。
ただしクラブ向けの曲ではない。
踊れる構造を持ちながら、感情的には孤独。
ここがJames Blakeの特徴である。
歌詞では、周囲の生活を見ながら、自分がどこに属しているのかを考える感覚がある。
都市。
人々。
夜。
関係。
その中で、語り手は完全に溶け込まない。
「Life Round Here」は、都会に住んでいても孤独になれることを描く。
音楽的にも、人が集まるクラブ文化のリズムを使いながら、内面は孤独。
この矛盾が非常に現代的である。
4. Take a Fall for Me feat. RZA
Wu-Tang ClanのRZAをフィーチャーした、本作でも特に異質な楽曲。
タイトルの「Take a Fall for Me」は「自分のために犠牲になってくれ」といった意味を持つ。
RZAのラップは、通常のヒップホップ・ビートの上には乗らない。
James Blakeの不安定で空白の多いトラックに、言葉が置かれる。
そのためラップはリズムを支配するのではなく、音響の一部になる。
RZAの低く乾いた声と、James Blakeの柔らかな高音は非常に対照的。
しかし、その違いが曲の緊張を作る。
歌詞では恋愛、距離、犠牲、孤独が絡み合う。
RZAはストリート的な語り口を持ちながら、ここではかなり内省的。
通常の「フィーチャリング・ラッパーが16小節参加する」という構造から離れ、楽曲全体の世界観へ入り込んでいる。
James Blakeがヒップホップを単なるビートの引用ではなく、「声と間の文化」として理解していることがよく分かる曲である。
5. Retrograde
Overgrown最大の代表曲であり、James Blakeのキャリア全体でも最重要曲のひとつ。
タイトルの「Retrograde」は「逆行する」「後退する」。
天文学では惑星が逆方向へ動いて見える現象を指す。
ここでは、人間関係や感情の状態が前進せず、むしろ戻っていくような感覚と重なる。
曲は極めてシンプルなヴォーカルから始まる。
ハミング。
声。
ほとんど何もない。
そこからシンセサイザーの大きなコードが入る。
この瞬間が非常に強い。
James Blakeは大音量を長く使わない。
だからこそ、音が開いた瞬間に巨大に感じる。
歌詞には、誰かを守ろうとする意志と、関係が崩れつつある不安がある。
「周囲がどう言おうと、自分の感情を信じる」という感覚もある。
しかし曲全体には完全な確信がない。
強い言葉を歌っている。
でも声は不安定。
その矛盾が感情のリアリティを作る。
音楽的にはソウル、ゴスペル、エレクトロニカ、アンビエントの融合。
サビが明確なのに、通常のポップ・ドラムがない。
それでも強烈に記憶へ残る。
2010年代のオルタナティヴR&B/電子ソウルを象徴する曲である。
6. DLM
アルバムの中でも特に静かな楽曲。
タイトルは略語的で、意味を完全には固定しない。
音楽はピアノとヴォーカルを中心に、極端に少ない音で進む。
ここではJames Blakeのクラブ・プロデューサーとしての側面より、シンガー・ソングライターとしての側面が前面に出る。
声の近さが重要。
ほとんど耳元で歌っているように聞こえる。
この親密さは、一般的な大規模ポップ・バラードとは正反対だ。
ストリングスを大量に入れない。
ドラムも巨大にしない。
その結果、歌詞の小さな感情がそのまま残る。
本作の中盤で、音響的なスケールを一度縮める役割を持つ。
7. Digital Lion feat. Brian Eno
Brian Enoとの協働による楽曲。
タイトルは「Digital Lion」。
「デジタル」と「ライオン」という、人工的なものと野生的なものを組み合わせた言葉である。
これはJames Blakeの音楽そのものにも近い。
デジタル処理。
コンピューター。
シンセサイザー。
しかし、その中に声、呼吸、低音という身体的な要素がある。
Brian Enoの参加は非常に象徴的だ。
Enoは1970年代から、スタジオを単なる録音装置ではなく「作曲の場」として扱ってきた。
アンビエント。
テープ処理。
偶然性。
音響空間。
James Blakeも同じく、スタジオ加工そのものを作曲として使う。
「Digital Lion」では、その二世代が自然に接続する。
音楽は徐々に変化する。
突然大きなサビへ行くのではない。
小さな電子音が増える。
リズムが変形する。
声が加工される。
その変化自体が曲になる。
アルバム中でも最も音響実験的な一曲である。
8. Voyeur
タイトルは「覗き見る者」。
観察すること。
見ること。
しかし自分はその場に参加しない。
この距離感はJames Blakeの歌詞世界に非常によく合う。
彼の曲では、人間関係の中にいても、どこか外から自分自身を見ているような感覚がある。
音楽は本作の中でも特にクラブ寄り。
反復的なビート。
断片化された声。
徐々に変化するリズム。
ダンス・ミュージックとしての身体性が強くなる。
しかし、曲が進むほど声は抽象化される。
言葉が意味を失い、音へ変わる。
ここにJames Blakeの初期ダブステップ/電子音楽的ルーツが戻ってくる。
「Voyeur」は、アルバムが恋愛ソング集だけではなく、クラブ・ミュージックの実験性をまだ強く持っていることを示す重要曲である。
9. To the Last
タイトルは「最後まで」。
関係を維持すること。
誰かと最後まで一緒にいること。
あるいは、何かを最後までやり遂げること。
非常に直接的な言葉だが、曲は断定的ではない。
むしろ、「最後まで行けるのか」という不安がある。
James Blakeのラブソングでは、愛情と恐怖がほぼ常に同居する。
相手を愛している。
しかし関係が続く保証はない。
信じたい。
でも完全には信じ切れない。
この揺れが曲の中心にある。
音楽はゆっくりしている。
ピアノと電子音が重なる。
リズムは最小限。
アルバム終盤に向けて、再び非常に内省的な空気へ戻る。
10. Our Love Comes Back
アルバム最後を飾る「Our Love Comes Back」。
タイトルは「僕たちの愛は戻ってくる」。
本作の中では比較的希望を感じさせる言葉である。
ここまで、
距離。
不安。
逆行。
犠牲。
孤独。
を扱ってきた。
最後に「愛は戻る」と言う。
ただし、完全なハッピーエンドではない。
James Blakeの歌唱は相変わらず不安定。
希望を歌っているが、確信ではない。
「戻ってくるかもしれない」。
その程度の希望。
この曖昧さが非常に本作らしい。
音楽はゆっくり。
ピアノ。
ヴォーカル。
低い電子音。
そして余白。
アルバムは大きな爆発では終わらない。
むしろ、静かな場所へ戻る。
タイトル曲で「生い茂った」感情が始まり、最後にはそれを完全に整理せず、そのまま残す。
非常に自然なクロージングである。
総評
Overgrownは、James Blakeが「電子音楽の実験家」から「独自のソングライター」へ完全に移行した作品である。
もちろん、実験性は失われていない。
むしろ音響は依然として極めて独特。
しかし、その実験が曲の外側にない。
ここが重要だ。
例えばデビュー作では、声を細かく切ること自体が前面に出る瞬間があった。
Overgrownでは、その加工が感情を表現する手段になる。
声を重ねる。
なぜか。
一人の感情が複数に分裂しているように聞かせるため。
声を切る。
なぜか。
言葉にできない不安を表現するため。
ベースを突然入れる。
なぜか。
感情が身体へ落ちる瞬間を作るため。
つまり制作技術が、感情と完全に結びついている。
これが本作の最大の進化である。
James Blakeの音楽において「低音」は非常に重要だ。
通常、低音はクラブで身体を動かすために使われる。
ダブステップ。
UKガラージ。
ダブ。
これらの音楽では、サブベースが身体そのものへ作用する。
James Blakeは、その低音をラブソングへ持ち込む。
この組み合わせが革新的だった。
ピアノ。
悲しい声。
そして巨大なサブベース。
感情が頭だけではなく身体へ届く。
「Retrograde」がその代表例だ。
声は小さい。
でも低音は巨大。
この落差によって、内面の感情が物理的な圧力へ変わる。
彼の音楽を「静か」とだけ呼ぶと、この身体性を見落とす。
James Blakeは静かな音楽家ではない。
むしろ、「静けさと巨大な低音の差」を使う音楽家である。
また、ゴスペル/ソウルの影響も重要だ。
彼のヴォーカル・ハーモニーは、電子音楽だけからは生まれない。
同じ声を何層にも重ねる。
コール&レスポンスの感覚。
和音を長く伸ばす。
これらにはゴスペル的な響きがある。
しかし、それを教会の大合唱として使わない。
一人の寝室のような空間へ縮小する。
言い換えれば、「共同体のソウル」を「孤独な電子音楽」へ変換する。
この逆説がJames Blake独自のものだ。
Overgrownというタイトルも、その点で非常に象徴的である。
感情は制御できない。
人間関係も完全には管理できない。
時間が経つ。
記憶が増える。
愛情も変化する。
庭の植物のように、勝手に育つ。
この「制御と成長の対立」がアルバム全体にある。
電子音楽は、基本的には非常に制御可能な音楽だ。
コンピューター。
プログラミング。
編集。
すべて細かく調整できる。
しかし歌詞では、人間の感情が制御できない。
この矛盾が面白い。
サウンドは精密。
感情は不安定。
James Blakeの魅力は、この二つが同時に存在することだ。
RZAの参加も本作の意味を広げる。
James BlakeのリズムはUKクラブ文化から来ている。
RZAはニューヨーク・ヒップホップの重要人物。
両者は異なる。
しかし、低音、間、声の質感を重視する点では共通する。
「Take a Fall for Me」では、その距離が逆に曲の魅力になる。
一方、Brian Enoとの「Digital Lion」は、James Blakeをより長い電子音楽史へ置く。
Enoはスタジオを楽器にした。
James Blakeもスタジオを楽器にする。
しかし世代が違う。
Enoの時代にはテープやアナログ機材。
Blakeの時代にはDAW、サンプリング、デジタル処理。
技術は違っても、「録音後に音を組み替えること自体が作曲になる」という思想は同じ。
Overgrownは、その歴史的連続性を示す作品でもある。
2013年という時代を考えると、本作の影響力は非常に大きい。
この時期、R&Bは急速に変化していた。
Frank Ocean。
The Weeknd。
How to Dress Well。
FKA twigs。
こうしたアーティストが、従来のR&Bより暗く、空間的で、電子的なサウンドを作る。
James Blakeはその流れと交差しながら、クラブ・ミュージック側から同じ地点へ到達した。
結果として、電子音楽とR&Bの境界はさらに曖昧になった。
その後のオルタナティヴR&Bでは、
小さな声。
深い低音。
大量の空白。
ピッチ加工。
アンビエント的なシンセ。
が一般的になる。
その語彙の形成にJames Blakeが果たした役割は大きい。
さらに、彼の影響はR&Bだけではない。
ポップ。
ヒップホップ。
シンガー・ソングライター。
エレクトロニカ。
幅広いジャンルへ広がった。
Kanye West以降の実験的ヒップホップ、Bon Iver周辺の電子処理、後のBillie EilishやSamphaのようなミニマルなヴォーカル・プロダクションにも、James Blakeと共有する感覚を見ることができる。
ただしOvergrownの魅力は、後世への影響だけではない。
アルバムとしての流れが強い。
「Overgrown」で感情が育ち始める。
「I Am Sold」で相手へ引き込まれる。
「Life Round Here」で都市の日常へ出る。
「Take a Fall for Me」で他者の声が入り、
「Retrograde」で最大の感情的ピークへ到達する。
「DLM」で縮小。
「Digital Lion」で再び実験。
「Voyeur」でクラブ的身体性。
「To the Last」で関係の持続を問い、
「Our Love Comes Back」で小さな希望へ戻る。
この曲順によって、作品は「実験曲とバラードの寄せ集め」にはならない。
ひとつの感情の流れになる。
特に「Retrograde」はアルバムの中心に置かれるべき曲だ。
この曲ではJames Blakeのすべてが一度に聞こえる。
ソウル。
ゴスペル。
電子音楽。
低音。
沈黙。
ピアノ的和声。
高い声。
そして恋愛の不安。
技術と感情が完全に一致している。
この一曲の完成度によって、James Blakeが単に「面白いプロデューサー」ではなく、大きなソングライターでもあることが決定的になった。
Overgrownは、音数の少ない作品である。
しかし感情は少なくない。
むしろ、音を減らすことで一つ一つの感情を大きくする。
何も鳴っていない場所。
声が途切れる場所。
低音が来る直前。
その「間」に最も強い緊張がある。
James Blakeは、沈黙を音楽の外側ではなく、音楽そのものとして使う。
その美学が最もバランスよく完成したのがOvergrownである。
デビュー作の革新性を失わず、そこへより明確な歌、恋愛、成熟を加えた。
2010年代の電子音楽とオルタナティヴR&Bをつなぐ、決定的な作品のひとつである。
おすすめアルバム
1. James Blake – James Blake(2011)
デビュー作。ポスト・ダブステップ、ピアノ、加工されたヴォーカル、極端な空白を組み合わせ、James Blakeの基本言語を確立した。Overgrownより実験性が前面に出ており、2年間でソングライティングがどのように成熟したかを比較できる。
2. James Blake – The Colour in Anything(2016)
Overgrownで確立した電子ソウルをさらに広げた作品。より長く、より暗く、Bon Iverとの接点なども含めて、孤独と親密さを大規模な音響へ発展させている。James Blakeの中期を理解するうえで重要な一枚。
3. Frank Ocean – Channel Orange(2012)
Overgrownの前年に発表された2010年代R&Bの重要作。ソウル、エレクトロニック・ミュージック、内省的な歌詞を融合し、R&Bの物語性と音響を大きく拡張した。James Blakeとは異なる出自ながら、同時代の「オルタナティヴR&B」の形成を考えるうえで欠かせない。
4. Mount Kimbie – Crooks & Lovers(2010)
James Blakeと近いロンドンのポスト・ダブステップ文脈から登場した重要作。細かなリズム、環境音、切断されたヴォーカル、温かい電子音を組み合わせ、クラブ・ミュージックを内省的なリスニング作品へ変換した。Overgrownの電子音楽的ルーツを理解するための重要な一枚。
5. Sampha – Process(2017)
ピアノ、電子音、ソウル的ヴォーカル、喪失や不安を結びつけた作品。James Blakeと同じく、クラブ・ミュージック以後の音響を非常に私的なシンガー・ソングライター表現へ変換しており、Overgrownが切り開いた2010年代の電子ソウルの流れを発展させた代表作である。

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