アルバムレビュー:Munki by The Jesus and Mary Chain

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

発売日:1998年6月1日

ジャンル:Alternative Rock / Noise Pop / Indie Rock

概要

The Jesus and Mary Chainの6作目『Munki』は、1998年に発表されたアルバムであり、ウィリアム・リードとジム・リードの兄弟を中心とするバンドの最初の活動期を締めくくる作品となった。前作『Stoned & Dethroned』ではアコースティック・ギターを中心にした比較的静かな音へ接近していたが、本作では歪んだギター、フィードバック・ノイズ、ドラムマシン的なビートを再び大きく取り入れている。ただし初期の『Psychocandy』へ単純に戻ったわけではなく、長いキャリアの中で試してきた複数のスタイルを一枚に詰め込んだような作りである。

全17曲、70分近い長さも特徴で、簡潔で統一された作品というより、意図的に散らかった印象を残す。甘いポップ・メロディをノイズで覆う初期からの方法、ブルースやガレージ・ロックに近い演奏、電子的なリズム、静かなバラードまでが並び、曲によって録音の質感も大きく変わる。兄弟間の関係が悪化していた時期でもあり、ジムが歌う冒頭の「I Love Rock ‘N’ Roll」に対して、ウィリアムが歌う最後の曲を「I Hate Rock ‘N’ Roll」とした構成も、この時期のバンドが抱えていた矛盾を端的に表している。

全曲レビュー

1. 「I Love Rock ‘N’ Roll」

題名通りロックンロールへの愛着を正面から掲げながら、音は決して懐古的ではない。単純なビートと反復するギターを大量の歪みで覆い、ジム・リードの気だるい歌を中央に置くことで、ロックへの賛歌と投げやりな態度を同居させている。歌詞も理屈を積み重ねるのではなく、ロックンロールそのものへの執着を反復する。この肯定から始まり、最後に正反対の題名へ到達する構成が『Munki』全体の大きな枠になる。

2. 「Birthday」

前曲のノイズを引き継ぎつつ、より軽いポップ・メロディが表へ出る。ギターは激しく歪んでいるが、コードとボーカルの動きは簡潔で、The Jesus and Mary Chainが得意としてきた「甘い曲を汚れた音で鳴らす」という組み合わせがよく分かる。祝祭的な題名とは対照的に歌にはどこか醒めた感覚があり、明るさへ完全には振り切らない。その微妙な温度差が曲の魅力になっている。

3. 「Stardust Remedy」

反復するリズムとギターの層が、曲を前へ押し出すというより一定の場所で回転させるように響く。そこへ柔らかなメロディを重ねることで、ノイズの内部に夢を見るような感覚が生まれている。初期作品にも通じる発想だが、ここではフィードバックを無秩序に暴れさせず、背景の持続音として整理している点が異なる。荒々しさと陶酔感のバランスが取れた、本作でも比較的まとまりのよい曲である。

4. 「Fizzy」

乾いたビートと短いギターのフレーズを中心に進み、前曲より音の隙間が増える。ボーカルも感情を大きく動かさず、同じ調子を保つことで、曲全体に倦怠感のあるグルーヴが生まれている。派手なサビで一気に開くタイプではなく、反復そのものを楽しませる作りだ。『Munki』がノイズ・ポップへの回帰だけではなく、リズムと音響の組み合わせにも関心を持っていたことが分かる。

5. 「Moe Tucker」

題名はThe Velvet Undergroundのドラマー、モーリン・“モー”・タッカーを指している。演奏も余計な装飾を削った反復性を強く持ち、原始的なビートとざらついたギターが同じ場所を執拗に回り続ける。The Jesus and Mary Chainにとって重要な音楽的先達を思わせる題名だが、単なる模倣ではなく、自分たちのノイズと無愛想な歌唱へ置き換えている。ロックの単純さそのものを魅力に変える彼らの美学がよく出た一曲だ。

6. 「Perfume」

Hope Sandovalをゲスト・ボーカルに迎えた曲で、彼女の柔らかく霞んだ声がジム・リードの低い声と対照を作る。ギターは鳴っているものの前面を埋め尽くさず、二人のボーカルの間に空間を残しているため、『Munki』の中では特に穏やかな表情を持つ。『Stoned & Dethroned』で強まった静かなフォーク/ポップへの感覚を引き継ぎながら、より夢見るような音へ変えた曲である。

7. 「Virtually Unreal」

題名が示す現実と非現実のずれを思わせるように、加工された音と反復するビートが目立つ。生々しいロックンロールの勢いより、スタジオで組み立てられた質感を強く感じさせ、ギターもリフというより音の層として働く部分が多い。メロディ自体は単純なので、電子的な感触が加わっても曲の輪郭は失われない。90年代後半のオルタナティヴ・ロックらしい制作感覚が、彼らの基本スタイルに入り込んだ例である。

8. 「Degenerate」

ここでは題名にふさわしく、整った美しさよりも汚れたギターと粗い勢いを優先する。リズムは直線的で、ボーカルも細かな表情をつけるより言葉を吐き捨てるように進み、ガレージ・ロックに近い感触を作る。アルバム中盤でこうした単純な曲を置くことで、前曲の加工されたサウンドから空気を切り替えている。洗練と粗雑さを同じアルバム内で平然と並べる『Munki』らしい一曲でもある。

9. 「Cracking Up」

鋭いギターの反復と覚えやすいサビを組み合わせた、本作の中でも特に直接的なロック・ナンバーである。精神的に追い詰められていく状態を示す題名と歌詞に対し、演奏は沈み込むのではなく勢いよく前進する。そのため不安が内向的な告白ではなく、外へ噴き出す衝動として聞こえる。ノイズをまとわせてもポップソングの骨格を崩さないという、このバンドの基本的な強さが後期にも残っていたことを示している。

10. 「Commercial」

タイトルからして商業性を意識した言葉だが、実際の曲はラジオ向けの滑らかなポップとはかなり離れている。反復と歪みを押し出した音作りには、音楽を商品として扱うことへの皮肉を思わせる感覚があり、題名とサウンドの食い違いそのものが面白い。短く効率よくまとめるよりも、ざらついた感触を残すことを優先しており、『Munki』のひねくれたユーモアがよく表れている。

11. 「Supertramp」

ブルースや古いロックンロールを思わせる骨格を、汚れたギターで包み込んでいる。演奏は複雑ではなく、一定のリフとビートを繰り返すことで粘りを作り、そこへ無気力にも聞こえるボーカルが乗る。勢いだけで押す「Cracking Up」などとは異なり、テンポと反復によってじわじわと存在感を増すタイプの曲だ。アルバム後半が一つのスタイルへ収束することを拒むように、再び別のロックの原型へ立ち返っている。

12. 「Never Understood」

ギターの歪みを残しながらも、中心にあるのは素直で寂しげなメロディである。相手と理解し合えない距離を扱う歌詞と、感情を大げさに表現しない歌唱が合っており、激しい演奏以上に諦めの感覚が残る。The Jesus and Mary Chainの曲には、ノイズを取り除けば1960年代のポップスにも近い簡潔な旋律が現れることがあるが、その特徴を後期の乾いた感触で聞かせる曲である。

13. 「I Can’t Find the Time for Times」

題名からして言葉遊びを含み、深刻さ一辺倒だった直前の空気を少し崩す。演奏も重厚な展開を作るより、ギターとリズムの反復を中心に簡潔に進む。アルバムがすでにかなり長くなった位置に置かれていることもあり、独立した大曲として主張するより、散漫さも含めた『Munki』の流れをさらに横へ広げる役割が強い。まとまりより曲ごとの気分を優先した本作の性格が表れている。

14. 「Man on the Moon」

ここではノイズの圧力を下げ、メロディの素朴さを前面に出す。遠い場所を見つめるような題名と、力を抜いた歌唱が組み合わさり、後半の中でも特に静かな余白を作っている。大きな展開を用意せず、同じ感情を保ったまま進むため、聴き手には孤立した人物の独白を眺めているような距離感が残る。騒音だけではないリード兄弟のソングライティングがよく見える曲だ。

15. 「Black」

低く濁ったギターと暗い音色を中心に、終盤でもう一度アルバムの重量を増していく。色彩を削ったようなサウンドに対してメロディは比較的明確で、このバンドが繰り返してきた美しい旋律と不快な音色の対比がここでも機能する。ただし初期のような若々しい爆発力というより、疲労や閉塞感を引きずったまま演奏しているような重さがある。終幕へ向かう空気を作るうえでも効果的だ。

16. 「Dream Lover」

題名には甘いラブソングを思わせる響きがあるが、The Jesus and Mary Chainらしく、親密さは安定した幸福としては描かれない。比較的柔らかなメロディと霞んだギターが重なり、現実の恋愛というより、手の届かない相手を頭の中で作り上げているような感触を生む。アルバム最終盤でノイズの攻撃性を抑えることで、続く最後の曲の露骨な否定をより強く聞かせる配置にもなっている。

17. 「I Hate Rock ‘N’ Roll」

冒頭の「I Love Rock ‘N’ Roll」を反転させた題名で、長いアルバムを締めくくる。ロックへの愛情を宣言して始まった作品が、最後にはその文化や産業への嫌悪を吐き出す構造になっており、単純な冗談以上にバンド自身の疲弊を思わせる。音も滑らかな結論へ向かわず、歪みと反復を押し出した攻撃的なものだ。ロックンロールを嫌っていると歌いながら、その嫌悪をロックンロールそのもので鳴らすという矛盾が、いかにもThe Jesus and Mary Chainらしい終わり方である。

総評

『Munki』は、The Jesus and Mary Chainの作品の中でも特に整理しにくいアルバムである。『Psychocandy』のようにフィードバック・ノイズという一つの発想で全体を貫くわけでも、『Stoned & Dethroned』のように音数を絞って統一するわけでもない。ノイズ・ポップ、ガレージ・ロック、電子的なビート、ブルース、静かなバラードが次々と現れ、17曲という長さもあって意図的な過剰さを感じさせる。アルバムとしての簡潔さを求めれば弱点になるが、バンドがそれまで試してきた方法を一度に見渡せる面白さでもある。

それでも、曲の芯にある作曲法は驚くほど一貫している。複雑なコードや技巧的な演奏よりも、短いフレーズを繰り返し、そこへ簡潔なメロディを乗せる。ギターが激しく歪んでいても、音を取り除いていけば古いポップスやロックンロールに近い骨組みが現れる。「Stardust Remedy」や「Cracking Up」のような曲では特に、この単純さと騒音の組み合わせが長い活動を経ても有効だったことが分かる。

一方、本作の散漫さは単なる曲数の多さだけから生じているわけではない。音の密度、録音の質感、テンポ、曲が参照するロックの時代まで頻繁に変わるため、一枚のアルバムとして滑らかに進む感覚は薄い。そのまとまりの悪さを含めて、1998年当時のThe Jesus and Mary Chainの状態が音になった作品と捉えると理解しやすい。完成されたスタイルを磨き直すより、まだ使えるアイデアも、飽きてしまったロックの形式も、まとめて放出しているように聞こえる。

そして「I Love Rock ‘N’ Roll」と「I Hate Rock ‘N’ Roll」で両端を挟んだことが、この長い作品に最低限の輪郭を与えている。The Jesus and Mary Chainはもともと、1960年代ポップスやロックンロールへの強い愛着と、その伝統をフィードバックで破壊する衝動を同時に持ったバンドだった。『Munki』ではその二面性が、サウンドだけでなく題名としても露出している。結果的に本作の後でバンドは最初の解散へ向かったため、『Munki』はきれいに完成された最終章というより、ロックへの愛情と嫌悪を両方抱えたまま最初の活動期を終えた、荒れた記録として聞く方が実態に近い。

おすすめアルバム

Psychocandy by The Jesus and Mary Chain

1985年のデビュー作で、甘い60年代風メロディを猛烈なフィードバックで覆う基本形を確立した。『Munki』に残るノイズ・ポップの原型と、13年間でスタジオ制作がどう変化したかを比較できる。

Stoned & Dethroned by The Jesus and Mary Chain

『Munki』の前作で、歪みを大幅に減らし、アコースティックな演奏と簡潔な歌を中心に据えている。本作の静かな曲にはこの方向性が残っており、二枚を続けると『Munki』の振れ幅の大きさがよく分かる。

The Velvet Underground & Nico by The Velvet Underground & Nico

単純な反復、甘いポップと騒音の共存、感情を過剰に込めない歌唱など、The Jesus and Mary Chainの音楽を理解するうえで重要な比較対象になる。『Munki』の「Moe Tucker」という題名からも接点が見える。

Loveless by My Bloody Valentine

ギターの歪みを巨大な音の層へ変え、メロディとノイズを分離できないところまで融合した1991年作。The Jesus and Mary Chainから続くノイズ・ポップの発想が、別の制作方法によって大きく発展した例として聴き比べられる。

XTRMNTR by Primal Scream

2000年発表。ロックンロールの反復を電子音、激しいノイズ、機械的なビートへ接続しており、『Munki』の電子的で攻撃的な側面と共通する部分がある。より政治的で切迫した作品であり、90年代末以降の英国ロックが向かった別の方向も見えてくる。

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