アルバムレビュー:Midnight to Midnight by The Psychedelic Furs

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

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発売日: 1987年2月
ジャンル: ポップロック、ニューウェーブ、アリーナロック


概要

『Midnight to Midnight』は、The Psychedelic Fursが1987年にリリースした5作目のスタジオ・アルバムであり、商業的に最も成功を収めた作品であると同時に、バンド自身が後年「最も表層的な作品だった」と振り返る光と影のアルバムである。

前作『Mirror Moves』の成功を受け、よりラジオフレンドリーでアリーナ向けのサウンドを志向した本作では、派手なホーンセクション、分厚いプロダクション、明快なメロディといった要素が強調されている。
プロデューサーはロックンロール界のヒットメイカー、クリス・キムジー(The Rolling Stones, Peter Frampton)で、重厚でスタジアムライクな音作りが施された。

その結果、アルバムは全英チャートで最高12位、シングル「Heartbreak Beat」は全米チャートで最高26位を記録するなど、バンドにとって最大のヒット作となった。
しかし、同時にポストパンクの文学的美学から大きく離れたポップ路線に対する違和感も付きまとい、バンドの内外で賛否を呼ぶことになった。


全曲レビュー

1. Heartbreak Beat

バンド史上最大のヒット曲。
煌びやかなサウンド、キャッチーなサビ、アリーナを意識したスケール感のあるアレンジが特徴的。
タイトル通り、愛と失恋の鼓動がシンコペーションの効いたリズムとともに駆け抜ける。

2. Shock

エネルギッシュなリフと分厚いホーンが絡み合うロックナンバー。
リチャード・バトラーのヴォーカルも攻撃的で、当時のMTV世代にアピールするスタイル。
ギターとブラスのバランスは、当時の流行を見事に捉えている。

3. Shadow in My Heart

バラード調のミディアムテンポ・ナンバー。
シンセとギターが絡み合いながら、愛の残像を描く詩的な楽曲。
アルバム中では比較的初期のFursに近い陰影を感じさせる。

4. Angels Don’t Cry

タイトルに反して、ややキッチュなアレンジとオーバーな演出が印象的。
大仰なホーンやコーラスが楽曲を“演劇的”にしており、バンドのポップ化を象徴する一曲とも言える。

5. Midnight to Midnight

タイトル・トラックにして、アルバム中もっともコンセプチュアルな楽曲。
一日の時間の流れを、都市の夜と感情の起伏に重ねた詩的世界。
サウンドはエレガントで、バトラーのヴォーカルも抑制された表現力が光る。

6. One More Word

恋愛の終わりにおける言葉の暴力性や空虚さをテーマにしたアップテンポなロック。
言葉が人を繋げ、同時に引き裂くという主題が、軽快なリズムとは裏腹に重みを持つ。

7. All of the Law

ポップだがスリリングな展開の楽曲で、反復的なリフと力強いコーラスが印象的。
タイトルの“法”は、社会や恋愛のルールといった抽象性を内包する。

8. Torture

タイトル通り、感情のジレンマと痛みをテーマにしたダークな楽曲。
サウンドもややインダストリアル寄りの質感で、アルバム中では異色の存在。

9. No Release

アルバムのラストを飾るスロウでシリアスなトラック。
“解放はない”という閉塞感を主題に、しっとりと幕を下ろす。
アリーナ向けの派手さの裏にある、Furs本来の陰鬱な美学が滲み出ている。


総評

『Midnight to Midnight』は、The Psychedelic Fursにとって最も商業的成功を収めた作品でありながら、最もバンド本来の美学から距離を置いたアルバムでもある。

煌びやかなプロダクション、ラジオ仕様のキャッチーなメロディ、アリーナ対応の大仰なアレンジ。
それらはいずれも1980年代中盤のポップロックの潮流に乗ったものだったが、Fursが持つ本来的な詩的深度、皮肉、退廃的ロマンティシズムはその表層に埋もれがちであった。

しかしながら、本作はバンドが大衆性と芸術性のはざまで苦闘した記録でもあり、その緊張感とアンビバレンスこそが今日的な聴き方を可能にしている。
当時の華やかなサウンドの奥に潜む、バトラーの声が放つ「それでも何かが足りない」というメッセージこそが、このアルバムの真の主題なのかもしれない。


おすすめアルバム(5枚)

  • INXS – Kick (1987)
     同時期にリリースされたポップとロックの融合型アルバム。商業性とダンスビートが共通。
  • Simple MindsOnce Upon a Time (1985)
     アリーナ志向のニューウェーブ路線。『Midnight to Midnight』との制作志向が似ている。
  • David BowieLet’s Dance (1983)
     アートロックの巨人がポップに舵を切った代表作。Fursの葛藤とも重なる。
  • Duran DuranNotorious (1986)
     商業性と音楽的野心の共存。プロデュースも同系統の洗練されたサウンド。
  • The Alarm – Eye of the Hurricane (1987)
     アリーナ志向のブリティッシュ・ロック。リリックの誠実さとスケール感が共通する。

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