Marry Myself by BENEE（2022）楽曲解説

1. 歌詞の概要
2. 歌詞のバックグラウンド
3. 歌詞の抜粋と和訳
4. 歌詞の考察
5. この曲が好きな人におすすめの曲
6. “私”と恋に落ちるということ
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1. 歌詞の概要

「Marry Myself（マリー・マイセルフ）」は、BENEE（ベニー）が2022年にリリースしたEP『Lychee』に収録された楽曲であり、自己愛と孤独、そして“誰にも依存しない”という決意がユーモラスかつ哲学的に描かれた、自立のためのポップソングである。

タイトルの「Marry Myself」は直訳すると「自分と結婚する」。それは単なるジョークのようにも聞こえるが、BENEEはこの言葉を通して、「恋人に愛されたい」という願望ではなく、「自分を一番理解し、愛するのは自分自身」という信念を伝えている。

この楽曲は、他者からの承認や関係性に振り回されることに疲れた末に、自分という存在を一度受け入れ直すための“儀式”のようなものとして描かれている。
そのユニークなテーマに、BENEE特有の軽やかでミニマルなサウンドが加わり、ポップでありながらも示唆に富んだ一曲へと仕上がっている。

2. 歌詞のバックグラウンド

「Marry Myself」は、BENEEがパンデミックを経て「他人との距離や依存について深く考えた」というタイミングで生まれた楽曲である。
彼女自身はこの曲を「ちょっとおかしく聞こえるかもしれないけど、“自分と付き合うってこういうことだ”っていう歌」と語っており、
「恋愛＝他人との関係」として描くのではなく、恋愛のフォーマットを“自己との関係”に反転させたポップアート的アプローチがとられている。

サウンド面では、ドリーミーなギターリフとリズムボックスのようなシンプルなビートが中心に構成されており、
思考が浮遊するような感覚と、内面に静かに語りかけるような語り口が融合した、非常にBENEEらしい音世界が展開されている。

3. 歌詞の抜粋と和訳

I think I’m gonna marry myself
Just me and nobody else
And I’ll be good to me too
I’ll do things that lovers do

自分と結婚しようと思うの
誰もいらない、私ひとりでいい
私に優しくしてあげるし
恋人がするようなことも全部、自分でしてあげるよ

I’ll make a playlist
Of all my favorite songs
I’ll go for dinner
To a place where I belong

お気に入りの曲でプレイリストを作って
好きなレストランに一人でディナーに行くの
“自分が心地いい場所”を選ぶんだ

Don’t need no heartbreak
Don’t need no fights
I’ll sleep alone and I’ll sleep right

傷つくことも、ケンカもいらない
一人で寝て、一人でぐっすり眠れるわ

歌詞引用元：Genius – BENEE “Marry Myself”

4. 歌詞の考察

「Marry Myself」は、「自分自身を最良のパートナーと認める」ことによって、他者依存から解放される感情のプロセスを、ウィットと優しさで包んだ作品である。

BENEEは、「恋愛＝自分以外の誰かに幸せにしてもらうこと」という従来の構造に対して、
「じゃあ、いっそ自分と結婚すればいいじゃん」というラディカルでいて、どこかユーモラスな転換を提示している。

「I’ll do things that lovers do（恋人がすることを全部自分にしてあげる）」というラインは、自己充足と自己愛の再定義とも言えるフレーズだ。
「誰かにしてほしいことは、まず自分が自分にしてあげよう」という姿勢が、傷つくことを恐れながらも前向きに立ち直ろうとする心の動きを浮かび上がらせている。

また、「Don’t need no heartbreak（傷つきたくない）」「Don’t need no fights（ケンカもいらない）」というストレートな言葉には、
BENEEがこれまで経験してきた人間関係での疲労やすれ違いがにじんでおり、ただの“気ままなひとり時間”ではなく、“過去からの解放”としてのソロライフが描かれている。

この曲に悲壮感はない。むしろ、「自分で自分を幸せにできるって最高じゃない？」という小さな革命的肯定感が、静かに、しかし確かに鳴り響いている。