発売日: 2018年8月24日
ジャンル: ポストパンク・リバイバル、インディーロック、オルタナティブ・ロック
Interpolの6枚目のアルバム『Marauder』は、これまでの作品と比べてより大胆で、個人的な要素を前面に押し出した作品だ。プロデューサーには、アークティック・モンキーズやザ・ストロークスを手がけたデイヴ・フリッドマンを迎え、粗削りでエネルギッシュなサウンドに仕上がっている。これまでのクールで洗練されたイメージから一歩踏み出し、より感情的で人間味のあるトーンが特徴だ。
本作のテーマは、欲望、罪、悔恨といった複雑な感情が中心で、ポール・バンクスの個人的な内面が色濃く反映されている。特にベースとドラムのリズムセクションが強調され、躍動感のあるアプローチがアルバム全体を支配している。一方で、バンドのトレードマークであるメランコリックなギターと深い歌詞も健在だ。
以下、各トラックの詳細を解説する。
1. If You Really Love Nothing
アルバムのオープニングを飾るトラックで、キャッチーなメロディとダイナミックなリズムが特徴。タイトルが示す通り、愛と虚無感がテーマとなっている。
2. The Rover
リードシングルとしてリリースされたエネルギッシュな楽曲。歪んだギターとアップテンポなビートが、アルバムの中でも特に勢いのあるナンバーを形成している。
3. Complications
シンプルで力強いリズムとメランコリックなメロディが絡み合うトラック。関係性のもつれや自己矛盾をテーマにした歌詞が印象的。
4. Flight of Fancy
ダークなトーンと繊細なギターが特徴的な楽曲。浮遊感のあるメロディと内省的な歌詞が、アルバム全体のトーンに深みを与えている。
5. Stay in Touch
6分を超える大作で、静かな導入から徐々に壮大に展開する構成が印象的。喪失感や過去への未練がテーマとなっており、叙情的なギターが楽曲を引き立てている。
6. Interlude 1
短いインストゥルメンタルトラック。アルバム全体のムードをつなぐ役割を果たしている。
7. Mountain Child
大胆で荒々しいアレンジが特徴のトラック。ポール・バンクスのボーカルが感情的に響き、バンドの新たな一面を垣間見ることができる。
8. NYSMAW
タイトルは「Now You See Me at Work」の略。シンプルなリズムと攻撃的なギターリフが際立ち、都市生活の孤独や不安を描写している。
9. Surveillance
重厚なサウンドと切迫感のあるボーカルが印象的な楽曲。監視社会への皮肉と個人の葛藤がテーマとなっている。
10. Number 10
歪んだギターとタイトなビートが特徴のアップテンポなナンバー。バンドの初期の勢いを彷彿とさせるトラックだ。
11. Party’s Over
ダイナミックでエモーショナルなトラック。終わりを迎える人間関係をテーマにした歌詞が印象的で、アルバム全体のクライマックスとなる一曲。
12. Interlude 2
アルバムのトーンを落ち着かせる短いインストゥルメンタル。
13. It Probably Matters
アルバムの締めくくりを飾るバラードで、控えめながらも感情的な深みを持つ楽曲。希望と後悔が入り混じった歌詞が心に残る。
アルバム総評
『Marauder』は、Interpolがこれまでの洗練された美学を維持しつつ、より荒々しく感情的な側面を探求した作品だ。デイヴ・フリッドマンのプロデュースによる大胆なアプローチが、バンドの新たなエネルギーを引き出している。一方で、「The Rover」や「Stay in Touch」など、メランコリックなギターと深い歌詞によるバンドらしさも健在である。
このアルバムは、バンドの原点を思わせる瞬間と、新たな挑戦が共存するバランスの取れた作品であり、キャリアにおける重要な一歩を示している。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
The Strokes – Comedown Machine
大胆なサウンド実験とキャッチーなメロディが、『Marauder』の革新性と響き合う。
Editors – Violence
ダークで感情的なサウンドが、『Marauder』の緊張感ある楽曲に共通する。
The National – Trouble Will Find Me
メランコリックな雰囲気と内省的な歌詞が、『Marauder』の静けさとダークさに通じる。
Bloc Party – Intimacy
荒々しいギターとエモーショナルなテーマが、Interpolの新たなエネルギーと共振する。
Yeah Yeah Yeahs – Mosquito
粗削りでエネルギッシュなサウンドが、『Marauder』の荒々しさを愛するリスナーにぴったり。
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