Lights Out by UFO(1977)楽曲解説

Spotifyジャケット画像

1. 歌詞の概要

「Lights Out(ライツ・アウト)」は、イギリスのハードロックバンドUFOが1977年にリリースしたアルバム『Lights Out』のタイトル・トラックであり、彼らの代表曲の一つとして知られている。スリリングなギター・リフと緊迫感のある展開、そして社会的・都市的混沌をテーマにしたスケール感ある歌詞によって、ハードロック史における重要曲として高く評価されている。

歌詞の中心にあるのは、「ロンドンが暗闇に包まれる=Lights Out in London」というイメージである。それは単なる夜の暗さではなく、都市そのものが機能不全に陥るような象徴的状況を描き出しており、暴動や政治不信、孤独、そして無秩序の時代を予感させる。つまりこの曲は、個人の感情と社会不安が交差する地点に立つロック・ナンバーなのだ。

直接的な暴力描写こそないものの、「There’s no tomorrow for you and me(君と僕に明日はない)」というラインに表れているように、社会と人間の崩壊寸前の危うさが息づいている。これは恋愛の終焉という個人的なテーマを超えて、時代そのものの暗さを照射する予言的な楽曲としても機能している。

2. 歌詞のバックグラウンド

UFOにとって『Lights Out』は商業的にも芸術的にも大きな飛躍となったアルバムであり、その中心に置かれたこの表題曲「Lights Out」は、マイケル・シェンカーの攻撃的かつ叙情的なギターと、フィル・モグの冷静で激情的なヴォーカルが完璧に融合した楽曲である。

1977年当時のイギリスは、経済不安、階級闘争、ストライキ、そしてパンク・ムーブメントの台頭など、社会的な緊張がピークに達していた。“Lights Out”というフレーズには、そんな時代の“不安と閉塞感”が濃密に漂っている。

音楽的には、リズムチェンジやブリッジを多用しながらも、曲としての推進力を失わない構成が秀逸であり、シェンカーのギターソロはメロディアスでありながら攻撃的なテンションを持ち、まさに曲全体の“緊張の美学”を体現している。プロデュースを手がけたのはロック・プロデューサーの名手ロン・ネヴィソンであり、その音作りも非常に鮮明で洗練されている。

3. 歌詞の抜粋と和訳

Lights out, lights out in London
ロンドンの灯りが消える

Hold on tight ‘til the end
最後までしっかりしがみつけ

Better now you know we’ll never
もうわかっただろう――俺たちにはもう

Show again
明日はやってこないんだ

Lights out, lights out in London
ロンドンの夜に闇が落ちる

When the lights go down
灯りが落ちたそのとき

There’s no one left around
もう誰も残っていない――

(参照元:Lyrics.com – Lights Out)

都市に生きる人間の孤独、終末感、そして静かな怒りが、この冷ややかなリリックの中に凝縮されている。

4. 歌詞の考察

この楽曲が描き出す「Lights Out(灯りが消える)」という状況は、単なる電気の消失ではない。それはむしろ、社会の機能停止、秩序の崩壊、人間関係の終焉、希望の喪失といった、あらゆる“終わり”を象徴している。

この曲の語り手は、何かを失った者であり、かつてあった光を記憶している存在である。その記憶と現実のギャップが、曲全体に張り詰めたような緊張感をもたらしている。Hold on tight ‘til the end」という一節に現れるように、この世界ではもはや、しがみつくことしかできない。それでもなお、崩れゆく世界に何かを見出そうとする眼差しがこの曲にはある。

また、“ロンドン”という都市名の明示は、イギリスの首都としてのロンドンが持つ象徴性――政治、経済、文化の中心としての都市が、灯りを失うというイメージを通じて、文明の脆さと虚構性を暴いているとも解釈できる。

音楽的に見ると、イントロからすでに焦燥感が漂っており、マイケル・シェンカーのリフは鋭く切り裂くような痛快さを持ちつつ、どこか悲しげでもある。この破壊と哀愁の同居こそが、「Lights Out」の核心なのだ。

5. この曲が好きな人におすすめの曲

  • Rock Bottom by UFO
     同じくシェンカー期の代表曲。内面の混沌とギターの美しさが結晶化されたハードロックの名作。

  • Heaven and Hell by Black Sabbath
     終末的な世界観とパワフルなギターリフがぶつかる、陰と陽のハードロック叙事詩。
  • Overkill by Motörhead
     都市の喧騒と狂気を音で表現した、暴走する美学。

  • Diamond Head by Am I Evil?
     社会の崩壊と個人の狂気を交差させる、NWOBHMの影の金字塔。

  • Children of the Sea by Black Sabbath
     崩壊した世界から逃れようとする想像力を、叙情的に描いた名曲。

6. “都市の終焉とロックの警鐘”

「Lights Out」は、UFOというバンドがメロディ、テクニック、そしてメッセージ性を極限まで融合させた瞬間である。この曲はただのロックンロールではない。都市の崩壊、個人の不安、社会の無関心、それらすべてに対する音楽的警鐘なのだ。

灯りが消えたとき、残されるのは沈黙と闇だけか? それとも、闇の中で響き出す新たな声か? その問いに対するひとつの答えが、この曲にはある。ロックとは、灯りが消えた後にも鳴り続ける“音の灯火”である。

そして今なお、ライヴでこの曲が始まる瞬間に響くギターのリフは、“今、この瞬間の不安定さ”を鋭く照らし出すサーチライトのような存在なのだ。UFOの「Lights Out」は、終わりを歌いながら、未来へと火を灯す、崩壊と再生のロック・アンセムである。

コメント

タイトルとURLをコピーしました