
発売日:2012年6月1日
ジャンル:ガレージ・ロック、パンク・ロック、ロックンロール、ガレージ・パンク、ポストパンク・リバイバル
概要
The HivesのLex Hivesは、2012年に発表された5作目のスタジオ・アルバムであり、2000年代ガレージ・ロック・リバイバルを代表するバンドが、自らの原点である短く、鋭く、過剰にエネルギッシュなロックンロールへ再接近した作品である。スウェーデン出身のThe Hivesは、1990年代後半から活動を始め、2000年のVeni Vidi Vicious、2004年のTyrannosaurus Hivesによって世界的な知名度を獲得した。彼らの音楽は、1960年代ガレージ・ロック、1970年代パンク、初期ロックンロール、ニューウェイヴ的な切れ味を、極端に誇張されたステージングと結びつけたものだった。
The Hivesを特徴づけるのは、単なるロック・バンドとしての演奏力だけではない。彼らは徹底したキャラクター性を持つバンドである。黒と白のスーツ、整えられたヴィジュアル、Howlin’ Pelle Almqvistの誇張されたフロントマン像、バンド全体の自己神話化、そして楽曲タイトルやアルバム・タイトルに見られる大げさな言葉選び。The Hivesは、ロックンロールの本質を「真実の感情」だけでなく、「演技」「虚勢」「スピード」「様式」「笑い」にも見出している。彼らの音楽は真剣であると同時に、常に自分たちの過剰さを楽しんでいる。
Lex Hivesというタイトルも、その自己演出的な姿勢をよく表している。「Lex」はラテン語で「法」を意味する言葉であり、直訳すれば「Hivesの法」となる。これは、バンドが自らのロックンロールのルールを提示するアルバムであることを示している。The Hivesにとってロックンロールとは、複雑な内面告白や長大なコンセプトではなく、短い時間で聴き手を制圧するための法体系である。リフは短く、ビートは直線的で、ヴォーカルは命令形に近く、楽曲は無駄を排して進む。つまり本作は、The Hives流のロックンロール憲法のような作品である。
前作The Black and White Albumでは、The Hivesは外部プロデューサーを起用し、ファンク、ポップ、ニューウェイヴ、さらには少し実験的なサウンドへ広がりを見せた。しかし、その多様性はバンドの魅力を拡張した一方で、初期作品にあった瞬発力をやや分散させた面もあった。Lex Hivesでは、そうした拡張を一度整理し、よりコンパクトで攻撃的なガレージ・ロックへ戻っている。曲の多くは短く、リフは明快で、演奏は硬く、全体は30分台で駆け抜ける。これはThe Hivesに最も適した形式の一つである。
音楽的には、本作は1960年代のThe SonicsやThe Seeds、1970年代のRamones、The Damned、Sex Pistols、そしてThe Stoogesの荒々しさを、2000年代以降のポストパンク・リバイバルを通過したタイトな演奏で再構成している。The Hivesの特徴は、ガレージ・ロックの粗さを単に再現するのではなく、それを非常に精密なショーとして提示する点にある。彼らは乱暴に聴こえるが、実際には音の切り方、曲の長さ、コーラスの入り方、ドラムの押し出し方が非常に計算されている。Lex Hivesでも、その「管理された混沌」が全編を支配している。
歌詞面では、政治的な深い物語や個人的な内省よりも、命令、宣言、挑発、自己誇示、社会への皮肉が中心となる。The Hivesの歌詞はしばしば、ロックンロールそのものの身振りをパロディ化しながら、それを本気で実行する。例えば「Come On!」はほとんど一語の反復によってロックの起動装置として機能し、「Go Right Ahead」は聴き手を煽る命令形のアンセムとなり、「I Want More」は欲望の単純さをそのまま曲のエンジンにする。彼らの言葉は、説明するためではなく、動かすためにある。
2012年という時代を考えると、Lex Hivesはガレージ・ロック・リバイバルの第二波以降に発表された作品として興味深い。2000年代初頭には、The Strokes、The White Stripes、The Vines、Jet、そしてThe Hivesが、ロックンロールの簡潔さとギター・バンドの直接性を再評価させた。しかし2010年代に入ると、インディー・ロックはよりエレクトロニック、ドリーム・ポップ、R&B、シンセ・ポップ的な方向へ多様化していた。その中でThe Hivesは、あえて時代に合わせて滑らかになるのではなく、より自分たちの法へ戻った。Lex Hivesは、流行に迎合するのではなく、The HivesがThe Hivesであり続けることを宣言するアルバムである。
全曲レビュー
1. Come On!
アルバム冒頭を飾る「Come On!」は、わずか1分程度の短い楽曲でありながら、本作の姿勢を完璧に示すオープニングである。タイトル通り、歌詞の中心は「Come on」という呼びかけであり、意味の複雑さよりも、音楽を起動する合図として機能している。これはThe Hivesにとって極めて重要な曲である。彼らのロックンロールは、深く考え込む前に身体を動かさせる音楽だからである。
音楽的には、ギター、ドラム、ヴォーカルが一斉に前へ飛び出す。曲はイントロダクションというより、開演の号令である。長い導入も複雑な展開もなく、いきなりステージの幕が上がり、観客へ向かって命令が飛ぶ。Pelle Almqvistのヴォーカルは、歌というより煽動であり、バンド全体がそれに従って突進する。
この曲は、ロックンロールの最小単位を示している。意味のある歌詞、洗練されたアレンジ、繊細な感情表現を削ぎ落とし、「来い」「始めろ」「動け」という衝動だけを残す。The Hivesはその単純さを恥じない。むしろ、その単純さを極限まで誇張することで、ロックの原始的な力を再提示している。
アルバムの冒頭として、「Come On!」は非常に効果的である。Lex Hivesは長い旅や物語ではなく、短い爆発の連続である。この曲は、その爆発の導火線である。
2. Go Right Ahead
「Go Right Ahead」は、本作の代表曲の一つであり、The Hivesの持つアンセム性とガレージ・ロック的な推進力が最も明快に表れた楽曲である。タイトルは「さあ、やってみろ」「そのまま進め」といった命令形の響きを持ち、聴き手を行動へ駆り立てる。The Hivesの曲名にはしばしば命令や挑発が含まれるが、この曲はその典型である。
音楽的には、太いリフと直線的なビートが中心である。ギターは短いフレーズを力強く繰り返し、ドラムは曲を前へ押し出す。コーラスは非常にキャッチーで、ライヴでのコール・アンド・レスポンスを想定したような作りになっている。The Hivesの楽曲は、スタジオ録音であっても常にステージ上の動きを感じさせる。この曲も、観客を巻き込むためのロックンロール装置として機能する。
歌詞のテーマは、挑発、行動、自己正当化である。「Go right ahead」という言葉は、相手を促すようでいて、どこか皮肉も含んでいる。やれるものならやってみろ、というニュアンスがある。これはThe Hivesのバンド像とも重なる。彼らは常に自信過剰に振る舞い、自分たちこそが正しいロックンロールの法を持っているかのように演じる。その虚勢が、曲のエネルギーになっている。
また、この曲にはThe Hivesのポップ・センスもよく表れている。単に荒々しいだけではなく、リフとコーラスが明確に記憶に残る。ガレージ・ロックの粗さと、ポップ・ソングとしての即効性を両立させている点で、本作を象徴する楽曲である。
3. 1000 Answers
「1000 Answers」は、The Hivesらしい過剰なスピード感と情報量を持つ楽曲である。タイトルは「千の答え」を意味し、多すぎる答え、あるいは答えが多すぎて逆に何も分からなくなる状況を示しているように響く。The Hivesの歌詞は深刻な哲学的問いを展開するタイプではないが、このタイトルには現代的な情報過多への皮肉も感じられる。
音楽的には、高速でタイトなパンク・ロックである。ギターは細かく刻まれ、ドラムは前のめりに走り、ヴォーカルは言葉を畳みかける。The Hivesの演奏は荒いようでいて非常に精密であり、スピードの中でもバンド全体の輪郭が崩れない。この制御された疾走感が、彼らの大きな魅力である。
歌詞のテーマは、答えの多さと混乱として読める。現代社会では、あらゆる問題に対して無数の意見、情報、解釈が提示される。しかし、答えが多ければ多いほど、人は行動できなくなることもある。The Hivesはそうした状況を、複雑な批評ではなく、ロックンロールの圧力で吹き飛ばす。千の答えよりも、一つのリフと一つのビートで前へ進むという態度がある。
この曲は、Lex Hivesの中でも特にパンク的な短距離走として機能する。考えるより速く、分析するより先に音が突進する。The Hivesの美学を端的に示す一曲である。
4. I Want More
「I Want More」は、欲望を非常に直接的に歌う楽曲である。タイトルは「もっと欲しい」という単純なフレーズであり、The Hivesのロックンロールが持つ飢餓感をそのまま表している。ここには複雑な心理描写はない。あるのは、もっと音量を、もっと快楽を、もっと成功を、もっと刺激を求める衝動である。
音楽的には、重めのリフと反復的な構造が曲を支配している。The Hivesの曲の中では、ややミッドテンポ寄りで、リフの太さが強調されている。Pelleのヴォーカルは、欲望を説明するのではなく、ほとんど子どものように要求する。その単純さが、曲の強さになっている。
歌詞のテーマは、消費社会的な欲望としても読める。もっと欲しい、もっと必要だ、まだ足りない。この言葉はロックンロールのエネルギーであると同時に、現代の消費文化の基本原理でもある。The Hivesはそれを批判的に分析するというより、わざと過剰に演じる。欲望の滑稽さと魅力を同時に提示しているのである。
この曲は、The Hivesの自己像にも合っている。彼らは控えめなバンドではない。常に自信過剰で、常に観客の注目を要求し、常に自分たちが最高だと宣言する。「I Want More」は、その過剰な自己演出を音にした楽曲といえる。
5. Wait a Minute
「Wait a Minute」は、アルバムの中で少しテンポと空気を変える楽曲である。タイトルは「ちょっと待て」という意味であり、ここまで突進してきたアルバムの流れに一瞬ブレーキをかけるような効果を持つ。ただし、The Hivesの音楽において「待つ」とは、静かに内省することではなく、次の爆発のための一瞬の溜めである。
音楽的には、リズムの切り方が印象的で、単純な疾走だけではない。ギターは鋭く、ドラムはタイトだが、曲には少し余白がある。その余白によって、Pelleのヴォーカルの演劇性がより前に出る。彼は歌うというより、相手を制止し、問い詰め、煽っている。
歌詞のテーマは、疑念や制止として読める。何かがおかしい、少し待て、話を整理しろという感覚がある。The Hivesは単純な突進力のバンドだが、こうした曲では、勢いを一瞬止めることで逆に緊張を作る。止まることもまた、ロックンロールの演出の一部である。
アルバムの流れの中では、「Wait a Minute」は非常に重要な配置にある。短い曲が連続する中で、少しだけ異なるリズム感を持ち込み、Lex Hivesが単調なスピードだけのアルバムではないことを示している。
6. Patrolling Days
「Patrolling Days」は、監視、巡回、警戒を連想させるタイトルを持つ楽曲である。The Hivesの歌詞はしばしば抽象的で、具体的な物語を明示しないが、この曲には社会的な管理や、誰かに見張られている感覚が漂う。ガレージ・ロックの単純な楽しさの中に、少し不穏な緊張が入り込んでいる。
音楽的には、歯切れのよいギターと直線的なビートが中心である。曲はコンパクトにまとまり、余計な展開を避ける。リズムには行進のような硬さもあり、タイトルの「Patrolling」とよく合っている。The Hivesの演奏は、乱暴でありながら統制されているため、こうした監視や規律のイメージとも相性が良い。
歌詞のテーマは、自由と監視の関係として読める。ロックンロールは自由の象徴であるはずだが、現代社会では人々の行動は常に見られ、測られ、管理される。The Hivesはそれを深刻な政治的声明としてではなく、緊張したロック・ソングとして表現している。音楽は踊れるが、その背後には監視の足音がある。
この曲は、Lex Hivesに少し硬質な社会性を加える。The Hivesは基本的にエンターテインメント性の強いバンドだが、そのエンターテインメントの中には、現代社会への皮肉や違和感も含まれている。
7. Take Back the Toys
「Take Back the Toys」は、本作の中でも非常にThe Hivesらしいタイトルを持つ楽曲である。おもちゃを取り返す、という言葉は一見子どもじみているが、そこには所有、支配、幼児性、消費、権利の主張が含まれている。The Hivesはこうした単純な言葉を、大げさなロックンロールの宣言へ変えるのが得意である。
音楽的には、軽快で跳ねるようなリズムがあり、曲全体に遊び心がある。ただし、演奏は緩くならず、鋭さを保っている。ギターは短く切り込み、ドラムは曲をしっかり前へ進める。Pelleのヴォーカルは、子どものような要求を大人のロックスターの態度で叫ぶ。そのミスマッチが面白い。
歌詞のテーマは、奪われたものを取り戻すこととして読める。おもちゃとは、実際の玩具であると同時に、自由、楽しみ、権利、創造性の象徴でもある。誰かに管理され、奪われ、商品化された遊びを、自分たちの手に取り戻す。この感覚は、The Hivesがロックンロールを再び自分たちの遊び場にしようとする姿勢にも重なる。
この曲は、アルバムの中でもユーモアと攻撃性のバランスがよい。The Hivesのロックンロールは、怒りだけではなく、悪ふざけと子どもっぽい所有欲によっても動いている。その魅力がよく出ている楽曲である。
8. Without the Money
「Without the Money」は、金銭の不在をテーマにした楽曲である。The Hivesはロックンロールの享楽性を強く打ち出すバンドだが、この曲では、その享楽が資本と結びついていることを意識している。金がなければ何ができるのか、何が残るのか。短いガレージ・ロックの中に、シンプルだが現実的な問いが含まれている。
音楽的には、やや荒々しく、ガレージ・パンク的な質感が強い。曲は長く引き伸ばされず、言いたいことを言ってすぐに終わる。The Hivesの美学では、無駄な説明は不要である。リフとタイトルだけで十分にメッセージが伝わる。
歌詞のテーマは、金銭と自由の関係である。ロックンロールはしばしば自由や反抗を掲げるが、ツアー、録音、機材、メディア、成功には金が関わる。金なしでどこまでできるのか。あるいは、金によって何が歪められるのか。この曲は、その矛盾を大げさに論じるのではなく、簡潔なフレーズと演奏で提示する。
The Hivesは、ロックの商業性を完全に否定するバンドではない。むしろ、ロックがショーであり商品であることを理解したうえで、それを過剰に演じる。この曲は、その自己認識を含んだ小さな一撃である。
9. These Spectacles Reveal the Nostalgics
「These Spectacles Reveal the Nostalgics」は、本作の中でも特に長く奇妙なタイトルを持つ楽曲である。「この眼鏡はノスタルジックな者たちを明らかにする」といった意味に取れ、過去を美化する人々、懐古趣味、ロックンロールの過去への依存を皮肉っているように響く。The Hives自身もガレージ・ロックやパンクの過去を引用するバンドであるため、このタイトルには自己批評的な面もある。
音楽的には、鋭いリフとタイトなビートが中心で、曲自体は過去のロックンロール形式を強く参照している。しかし、その参照は単なる懐古ではなく、極端に様式化された再演である。The Hivesは、過去の音をそのまま保存するのではなく、スーツを着せ、テンポを上げ、誇張し、現代のショーとして提示する。
歌詞のテーマは、ノスタルジアの暴露である。過去を愛することと、過去に閉じこもることは違う。The Hivesは過去のロックンロールを深く愛しているが、それを博物館の展示物として扱わない。彼らは過去を現在の騒音として鳴らす。この曲は、その姿勢を示している。
アルバムの中では、Lex Hivesが単なるガレージ・ロック復古ではないことを示す重要な曲である。The Hivesは、自分たちがノスタルジアに接近していることを理解している。そして、その理解を持ったうえで、あえて過去の形式を使い倒している。
10. My Time Is Coming
「My Time Is Coming」は、到来する自分の時代を宣言する楽曲である。The Hivesの自己誇示的な美学に非常に合ったタイトルであり、バンドのキャラクター性を強く感じさせる。ここには謙虚さはない。あるのは、自分たちの時が来るという確信、あるいはそう信じ込むことで現実を動かすロックンロール的な虚勢である。
音楽的には、やや重めのリズムと力強いコーラスが印象的である。曲は高速で突っ走るというより、宣言の重みを持って進む。Pelleのヴォーカルは、予言者というより、ステージ上の扇動者として響く。彼は自分の時代が来ると歌いながら、実際にその場を自分のものにしようとする。
歌詞のテーマは、待機と到来である。まだ完全には成功していない、まだ認められていない、しかし自分の時は近い。この感覚は、ロック・バンドの基本的な神話でもある。The Hivesは、すでに国際的な成功を収めたバンドでありながら、この曲では新人バンドのような野心を演じる。それが彼ららしい。
この曲は、アルバム終盤に向けて再び自己神話を強化する役割を果たす。Lex Hivesは「Hivesの法」であり、この曲はその法がやがて支配的になるという宣言として響く。
11. If I Had a Cent
「If I Had a Cent」は、金銭に関するタイトルを持つもう一つの楽曲であり、「もし1セントでも持っていたら」という仮定から始まる。The Hivesの歌詞では、こうした単純な経済的フレーズが、欲望、欠乏、皮肉、誇張へと変換される。前半の「Without the Money」とも関連し、アルバム全体にある金銭とロックンロールの関係を補強している。
音楽的には、軽快でコンパクトなガレージ・ロックである。曲は長い説明を避け、リフとテンポで進む。The Hivesの強みは、短い曲でもキャラクターをはっきり残せる点にある。この曲も、タイトルの小さな金額とは対照的に、態度は非常に大きい。
歌詞のテーマは、欠乏と欲望の誇張である。1セントという最小単位の金銭は、ほとんど何の力も持たない。しかし、それを持っていたら、という仮定には、金銭が人間の想像力を支配する様子が表れている。The Hivesはそれを笑いながら、同時に金に振り回される社会の滑稽さを示している。
この曲は、アルバムの経済的な皮肉を軽快に表現する小品である。The Hivesのロックンロールには、欲望と貧しさ、虚勢と現実が常に混ざっている。
12. Midnight Shifter
アルバム本編の最後を飾る「Midnight Shifter」は、夜中に動く者、深夜の労働者、あるいは正体を変える者を連想させるタイトルを持つ楽曲である。終曲として、本作のガレージ・ロック的な疾走感を少し暗く、不穏な方向へ閉じる役割を持っている。
音楽的には、リズムの粘りとギターの切れ味があり、曲全体に夜の雰囲気が漂う。The Hivesの曲としては、単純な明るさよりも少し影がある。Pelleのヴォーカルも、いつものように過剰に煽りながら、どこか怪しい人物像を演じている。
歌詞のテーマは、夜の移動、変身、裏側の世界として読める。Midnight Shifterとは、昼の秩序が終わった後に動き出す存在である。The Hivesのロックンロールそのものも、社会の表通りではなく、夜のクラブ、ガレージ、ステージの上で力を持つ音楽である。この曲は、その夜の側面を象徴している。
アルバムの締めくくりとして、「Midnight Shifter」は完全な大団円ではなく、次の夜へ向かう余韻を残す。The Hivesの法は昼の秩序ではなく、夜の騒音の中で発動する。この曲は、そのことを示す終曲である。
13. High School Shuffle
一部仕様のボーナス・トラックとして知られる「High School Shuffle」は、The Hivesのロックンロールにある若さ、反復、ダンス性を強く感じさせる楽曲である。タイトルは高校とシャッフルを組み合わせており、青春、ダンス、退屈、反抗、古いロックンロールのパーティー感を連想させる。
音楽的には、非常にシンプルで、初期ロックンロールやガレージ・ロックの形式に近い。曲は深刻な内省へ向かわず、リズムとノリを優先する。The Hivesにとって、こうした曲は単なる余興ではなく、ロックンロールの基本的な身体性を示すものでもある。
歌詞のテーマは、学校という制度空間の中で生まれる小さな逸脱として読める。高校は規律と退屈の場所である一方、若者が音楽やダンスを通じて自分たちの空間を作る場所でもある。The Hivesは、そのエネルギーを大げさに、しかし愛情を持って演じている。
ボーナス曲として、本編の「Hivesの法」を少し軽い形で補足する楽曲である。The Hivesの音楽が、最終的には踊りと悪ふざけに根ざしていることを思い出させる。
14. Insane
「Insane」もボーナス・トラックとして扱われることが多い楽曲であり、タイトル通り狂気や制御不能の感覚を前面に出している。The Hivesのロックンロールは、常に秩序だった演奏と狂ったような演技の間で成立しているが、この曲はその後者を強調している。
音楽的には、攻撃的で短く、パンク的な衝動が強い。ギターは鋭く、リズムは直線的で、ヴォーカルは過剰に煽る。曲は洗練された構築よりも、瞬間的な爆発を重視している。The Hivesにとって「狂気」とは、完全な無秩序ではなく、ショーとして制御された過剰さである。
歌詞のテーマは、理性から外れること、社会的な正常性を拒むこととして読める。ロックンロールはしばしば「正気」への反抗として機能する。The Hivesはそれを深刻に悩むのではなく、笑いながら実行する。狂っていることは、彼らにとって恐怖ではなく、ステージ上の資格である。
この曲は、本編の余韻をさらに荒々しく補強する。The Hivesの美学において、正気であることはそれほど価値を持たない。重要なのは、どれだけ見事に狂気を演じきれるかである。
総評
Lex Hivesは、The Hivesが自らの本質へ戻ったアルバムである。前作The Black and White Albumで見せた多様なプロダクションやスタイルの拡張に対し、本作はよりシンプルで、短く、硬く、ガレージ・ロック的な方向へ絞り込まれている。結果として、The Hivesというバンドの魅力が非常に明確に再提示されている。
本作の最大の特徴は、無駄のなさである。多くの曲は短く、リフは単純で、歌詞も命令形や宣言に近い。しかし、その単純さは未熟さではない。The Hivesは、ロックンロールの最も基本的な要素を理解し、それを徹底的に様式化している。短い曲、鋭いギター、タイトなドラム、過剰なヴォーカル、キャッチーなコーラス。これらを極端に磨き上げることで、彼らは古典的なロックンロールを現代のステージ・ショーとして再生している。
アルバム・タイトルのLex Hivesが示すように、本作はThe Hivesの法を提示する作品である。その法とは、長く語らないこと、考え込ませる前に動かすこと、謙虚にならないこと、リフを信じること、観客を煽ること、ロックンロールの虚勢を恥じないことである。彼らは、ロックの誇張された身振りをよく理解しており、それを半分冗談、半分本気で演じている。この二重性が、The Hivesの最大の魅力である。
音楽的には、本作はガレージ・ロック、パンク、初期ロックンロールを基盤としているが、単なる懐古ではない。「These Spectacles Reveal the Nostalgics」というタイトルが示すように、The Hivesは自分たちが過去の形式を使っていることを自覚している。だが、彼らは過去をそのまま保存するのではなく、過剰な速度と演技によって現在化する。The Hivesの音楽は、ロックンロール博物館ではなく、爆音の劇場である。
Pelle Almqvistのヴォーカルは、本作でも中心的な役割を果たしている。彼は伝統的な意味での繊細な歌手ではない。むしろ、司会者、扇動者、道化、独裁者、コメディアン、ロックスターを同時に演じるフロントマンである。「Come On!」「Go Right Ahead」「I Want More」などでは、彼の声が曲の意味そのものを作っている。歌詞の内容以上に、その声の態度が重要である。
一方で、本作には限界もある。The Hivesの形式は非常に強いが、その分、曲ごとの感情的な幅や音楽的な冒険は限定されている。深い内省や大胆な構造変化を求めるリスナーにとっては、Lex Hivesは単調に感じられるかもしれない。しかし、それはThe Hivesが目指しているものではない。彼らは変化に富んだ長編小説を書くのではなく、短い命令文を連続して叩きつけるバンドである。本作は、その目的に非常に忠実である。
日本のリスナーにとってLex Hivesは、2000年代以降のガレージ・ロック・リバイバルを理解するうえで重要なアルバムである。The Strokesの都会的な脱力、The White Stripesのブルース的なミニマリズムとは異なり、The Hivesはロックンロールの演劇性と集団的な爆発力を前面に出す。彼らの音楽は、頭で深く解釈するよりも、短い曲の連続に身を任せることで本質が伝わる。
総合的に見て、Lex HivesはThe Hivesの原点回帰であり、同時に彼らの自己定義でもある。革新的な作品ではないが、バンドが自らの得意分野を徹底的に磨いた強力なガレージ・ロック・アルバムである。過剰で、短く、鋭く、馬鹿馬鹿しいほど自信に満ちている。The Hivesのロックンロールは、ここで再び法として宣言される。従うか、押し流されるか。その二択を突きつける作品である。
おすすめアルバム
1. The Hives – Veni Vidi Vicious(2000年)
The Hivesを世界的に知らしめた代表作であり、「Hate to Say I Told You So」を収録している。ガレージ・ロックとパンクの瞬発力、バンドの過剰な自己演出、短く鋭い楽曲構成が最も鮮烈に表れている。Lex Hivesの原点を理解するために欠かせない作品である。
2. The Hives – Tyrannosaurus Hives(2004年)
The Hivesのサウンドがさらにタイトで硬質になった作品であり、バンドの演奏精度と攻撃性が高い水準で結びついている。Lex Hivesにおける短く制御されたガレージ・パンクの方向性は、このアルバムの延長線上にもある。より鋭利なThe Hivesを聴くための重要作である。
3. The Hives – The Black and White Album(2007年)
Lex Hivesの前作であり、ファンク、ニューウェイヴ、ポップ的な要素を取り入れた比較的多様な作品である。外部プロデューサーの関与もあり、The Hivesのサウンドが拡張された一方で、次作Lex Hivesがなぜ原点回帰へ向かったのかを理解する手がかりになる。
4. The Sonics – Here Are The Sonics!!!(1965年)
ガレージ・ロックの原点の一つとして重要な作品であり、The Hivesの荒々しいリフ、叫ぶヴォーカル、短く爆発する曲構成の背景を理解するために有効である。The Hivesが受け継いだロックンロールの粗野なエネルギーが、1960年代の形で記録されている。
5. The Stooges – Fun House(1970年)
ガレージ・ロック、プロト・パンク、混沌としたロックンロールの重要作である。The Hivesほどタイトで様式化されてはいないが、過剰な身体性、反復するリフ、制御不能なヴォーカルという点で深い関連性がある。Lex Hivesの背後にあるパンク以前の野蛮なロックの流れを理解するために重要な作品である。

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