アルバムレビュー:Last Day of Summer by Summer Walker

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

発売日:2018年10月19日

ジャンル:コンテンポラリーR&B、オルタナティヴR&B、ネオソウル、トラップソウル

概要

Summer Walkerの『Last Day of Summer』は、2018年に発表されたデビュー・ミックステープであり、2010年代後半のオルタナティヴR&Bにおいて、彼女の存在を強く印象づけた重要作である。後に『Over It』で大きな商業的成功を収め、現代R&Bを代表するシンガーの一人となるSummer Walkerにとって、本作はその美学の原型を示す作品である。内向的なヴォーカル、夜の部屋のような密室感、恋愛における不安や依存、自己防衛、性的な親密さと感情的な距離が、短く濃密な楽曲群の中で描かれている。

タイトルの『Last Day of Summer』は、「夏の最後の日」という意味を持つ。ここでの夏は、明るく開放的な季節というより、恋愛の熱、身体的な親密さ、若さの一瞬、そして終わりが近づく関係の余韻を象徴している。夏の終わりには、甘さと寂しさが同時にある。楽しかった時間が終わりに近づく感覚、熱が冷めていく感覚、まだ残っている温度とこれから訪れる空白。その微妙な気配が、本作全体に漂っている。

Summer Walkerの音楽は、1990年代R&Bの滑らかなメロディやネオソウルの内省性を継承しつつ、2010年代後半のトラップ以降の音響感覚に接続している。ビートはしばしば簡素で、低音は深く、ドラムは乾いており、ギターやキーボードは最小限のループとして配置される。その上で彼女の声は、強く張り上げるのではなく、独白のように近い距離で響く。これは、クラシックなR&Bのディーヴァ的な歌唱とは異なる、現代的な親密さを持つスタイルである。

本作の大きな特徴は、楽曲の短さと感情の濃度である。多くの曲は2分前後で終わり、一般的なR&Bバラードのように大きな展開や劇的なクライマックスを持たない。その代わり、感情の断片、関係の一場面、心の中で繰り返される言葉が、そのまま曲として切り取られている。これはストリーミング時代のR&Bの特徴とも結びつく。長い物語を語るよりも、ひとつのムード、ひとつの感情、ひとつの夜の場面を凝縮して提示するのである。

歌詞面では、恋愛における不安定な感情が中心となる。相手を求めながらも信じきれない、親密になりたいが傷つきたくない、自分の価値を認めてほしいが相手に依存したくない。そのような矛盾が繰り返し現れる。Summer Walkerの歌詞は、文学的な比喩を重ねるというより、会話に近い率直な言葉で構成される。だからこそ、現代の若いリスナーの感情に近く響く。SNS、深夜のメッセージ、関係の曖昧さ、気持ちを伝えすぎることへの恐れ。そうした時代の恋愛感覚が、本作には濃く刻まれている。

『Last Day of Summer』は、Summer Walkerの内向性を音楽的な魅力へ変換した作品でもある。彼女の声は大きく支配するのではなく、リスナーの耳元で話すように存在する。そのため、本作は広い会場で鳴る音楽というより、イヤホンや深夜の部屋に適した音楽である。現代R&Bにおいて、こうした「近さ」は非常に重要である。声が近いほど、歌詞の弱さや迷いも生々しく伝わる。Summer Walkerは、その親密な距離感をデビュー時点から確立していた。

本作は、SZA、H.E.R.、Jhené Aiko、Kehlani、Bryson Tiller以降のR&Bの流れとも関連している。2010年代のR&Bは、かつての壮大なバラードやクラブ向けの派手なサウンドから、より内省的で、曖昧で、ジャンル横断的な方向へ進んだ。ヒップホップのビート、アンビエントな空間、日記のような歌詞、感情の未整理なままの提示が重視されるようになった。『Last Day of Summer』は、その流れの中で、極めてパーソナルでミニマルな形を取った作品である。

日本のリスナーにとって本作は、現代R&Bの「静かな強さ」を理解するうえで有効な作品である。派手な歌唱力や分かりやすいサビよりも、声の質感、言葉の近さ、トラックの余白、恋愛の曖昧な心理を味わう作品である。90年代R&Bのメロディを好むリスナーにも、Lo-fi hip hopやチルなネオソウルに親しむリスナーにも接続しやすい。『Last Day of Summer』は、Summer Walkerが後に大きく花開く前の、最も裸に近い感情のスケッチ集といえる。

全曲レビュー

1. BP

オープニング曲「BP」は、非常に短い楽曲でありながら、『Last Day of Summer』の空気を端的に示している。タイトルは「blood pressure」を思わせ、恋愛や感情の揺れによって高まる身体的な反応を連想させる。Summer Walkerの音楽では、恋愛は抽象的なロマンスではなく、身体、息づかい、心拍、緊張として現れる。この曲はその入口である。

サウンドはミニマルで、余白が多い。大きなドラムや派手なアレンジはなく、声とビートが近い距離で配置されている。Summer Walkerのヴォーカルは、強く歌い上げるよりも、感情を低い温度で滲ませる。デビュー作の冒頭として、彼女は自分を大きく見せようとしない。むしろ、小さな声で近づくことによって、リスナーを自分の内側へ引き込む。

歌詞では、関係の中で生まれる緊張や身体的な反応が示される。恋愛相手の存在によって心が乱れ、身体のリズムが変わる。R&Bでは昔から恋愛と身体感覚が密接に結びついてきたが、Summer Walkerはそれを非常に現代的な形で表現している。甘い誘惑というより、不安を含んだ親密さである。

「BP」は、アルバム全体の序章として重要である。本作は大きなドラマではなく、こうした小さな感覚の積み重ねによって成立している。心拍が少し速くなるような瞬間、相手の一言で身体が反応する瞬間。そのような微細な感情が、本作の基礎になっている。

2. Talk Yo Shit

「Talk Yo Shit」は、Summer Walkerの自己主張と不満が表れた楽曲である。タイトルは、相手に対して言いたいことを言う、あるいは自分の価値をはっきり示すというニュアンスを持つ。彼女の音楽には弱さや不安が多く含まれるが、それは受け身の姿勢だけを意味しない。この曲では、相手の態度や関係の不均衡に対して、冷静な怒りと自己防衛が表れる。

サウンドは控えめでありながら、ビートには一定の強さがある。Summer Walkerの歌唱は過剰に攻撃的ではないが、言葉の置き方には鋭さがある。声を張り上げるよりも、低いトーンで相手を突き放すような表現が特徴である。現代R&Bにおける強さは、必ずしも大声ではなく、冷たく距離を取ることによっても示される。

歌詞では、相手の言動に対する不信や、関係の中で自分が軽く扱われることへの不満が描かれる。恋愛において、相手が自分をどう扱うのか、自分の価値を認めているのかは、Summer Walkerの重要なテーマである。ここでは、相手に振り回されながらも、完全には屈しない態度が見える。

「Talk Yo Shit」は、アルバムの中でSummer Walkerの芯の強さを示す曲である。彼女の音楽は繊細で内向的だが、その内向性は弱さだけではない。言葉少なに距離を取り、自分を守る姿勢も含まれている。この曲は、その側面を明確に示している。

3. Girls Need Love

「Girls Need Love」は、『Last Day of Summer』の代表曲であり、Summer Walkerの名前を広く知らしめた重要曲である。後にDrakeを迎えたリミックスによってさらに注目を集めるが、オリジナル版の時点で、この曲は現代R&Bにおける女性の欲望表現として非常に重要な意味を持っている。

タイトルが示す通り、この曲では女性にも愛や欲望が必要であることが率直に歌われる。R&Bやヒップホップでは、男性の性的欲望が直接的に表現されることは珍しくない。一方で、女性が同じように自分の欲望を語ると、しばしば社会的な視線や批判にさらされる。Summer Walkerはこの曲で、その二重基準に対して静かに異議を唱えている。

音楽的には、メロウで夜の空気を持つR&Bトラックである。ビートは控えめで、メロディは滑らかに流れる。Summer Walkerの声は非常に近く、まるで深夜に送られたメッセージのように響く。彼女は欲望を大きく誇示するのではなく、日常的で率直な言葉として提示する。その自然さが、この曲の強さである。

歌詞では、女性も親密さを求め、身体的な欲求を持ち、満たされたいと願うことが語られる。ここで重要なのは、彼女が自分の欲望を恥じていない点である。同時に、その欲望には寂しさや承認欲求も混ざっている。単なるセクシュアルな宣言ではなく、愛されたい、触れられたい、理解されたいという複数の感情が絡み合っている。

「Girls Need Love」は、Summer Walkerの音楽的・社会的な位置を決定づけた曲である。ミニマルなR&Bの中で、女性の欲望を淡々と歌う。その淡々とした表現が、かえって強い説得力を持っている。現代R&Bにおける親密な自己表現の代表的な楽曲である。

4. CPR

「CPR」は、タイトルが示す通り、心肺蘇生を意味する言葉を恋愛の比喩として用いた楽曲である。相手の存在が自分を生き返らせる、あるいは関係の中で呼吸が苦しくなり、救いを求めるような感覚が中心にある。Summer Walkerの恋愛表現では、愛はしばしば癒やしであると同時に、危険な依存でもある。

音楽的には、非常にメロウで、静かなトラックである。ギターやキーボードの柔らかな音が、声を包むように配置される。Summer Walkerのヴォーカルは、息づかいが近く、タイトルの「CPR」が持つ身体性とよく合っている。呼吸、鼓動、弱さが、音の近さによって伝わる。

歌詞では、相手が自分にとって必要な存在として描かれる。だが、その必要性には危うさもある。誰かに生き返らせてもらうという感覚は、愛の深さであると同時に、自分の心の状態が相手に左右されることを意味する。Summer Walkerは、この依存の甘さと危険を、過剰に説明せずに表現している。

「CPR」は、アルバムの中でも非常に親密な楽曲である。大きな展開はないが、声と空間の近さによって、恋愛における切実な依存が浮かび上がる。『Last Day of Summer』の内向的なR&B美学を代表する一曲である。

5. Smartwater

「Smartwater」は、タイトルからして現代的で日常的な固有名詞を用いた楽曲である。高級ミネラルウォーターのブランド名を想起させるタイトルは、生活の中の小さなアイテム、都市的な消費感覚、自己管理や清潔さのイメージと結びつく。Summer Walkerは、こうした身近な言葉を使って、恋愛や身体の感覚を描く。

サウンドは控えめで、滑らかなR&Bの質感を持つ。ビートは強く主張せず、声が前面に置かれる。Summer Walkerの歌唱は、感情を大きく動かすよりも、一定のトーンを保ちながら流れていく。これにより、曲全体にチルで少し冷めた雰囲気が生まれている。

歌詞では、相手との関係や自分の状態が、日常的な表現の中で描かれる。Summer Walkerの特徴は、感情を大げさな詩的言語に変換しすぎない点である。現代の恋愛は、ブランド名、携帯電話、部屋、飲み物、短い会話の中で進む。そのリアルな空気が、この曲にも反映されている。

「Smartwater」は、派手な代表曲ではないが、アルバムのムードを支える重要な曲である。現代R&Bのミニマルな質感と、生活感のある言葉の選び方が結びついている。Summer Walkerの音楽が、日常の小さな場面から感情を引き出すものであることを示している。

6. Deep

「Deep」は、タイトル通り、深い感情や深い関係性をテーマにした楽曲である。恋愛において、表面的なやり取りを超えて深く入り込みたいという欲求と、その深さに伴う不安が描かれる。Summer Walkerの歌う「深さ」は、ロマンティックな理想であると同時に、傷つきやすくなる危険でもある。

音楽的には、暗めでメロウなR&Bトラックである。低音は落ち着いており、上物の音は控えめで、声のニュアンスが際立つ。Summer Walkerは、深い感情を歌いながらも声を大きくしない。その抑制によって、感情はより内側へ沈んでいく。

歌詞では、相手との関係がただの遊びではなく、より深いものになっていることが示される。しかし、その深まりには不安もある。深く入り込むほど、相手の態度に傷つきやすくなる。現代R&Bでは、こうした親密さへの欲求と自己防衛の矛盾が重要なテーマとなるが、「Deep」はその感覚をよく捉えている。

この曲は、Summer Walkerの声の魅力を感じるうえでも重要である。彼女は技巧を誇示するよりも、感情の温度を一定に保ち、その中に微妙な揺れを作る。深い関係について歌いながら、声はどこか距離を保っている。その矛盾が、曲にリアリティを与えている。

7. Baby

「Baby」は、アルバムの中でも比較的親しみやすく、恋愛の呼びかけが前面に出た楽曲である。タイトルの「Baby」はR&Bでは非常に伝統的な呼称であり、相手への親密さ、甘さ、依存、甘えを含む言葉である。Summer Walkerはこの言葉を、過度にドラマティックではなく、日常的な親密さとして使っている。

サウンドは柔らかく、ビートも控えめである。メロディは滑らかで、声は近い。曲全体に、深夜に相手へ語りかけるような空気がある。派手な展開はないが、その分、感情の距離が近く感じられる。

歌詞では、相手への愛情や欲求がシンプルに描かれる。Summer Walkerの魅力は、複雑な感情を非常に簡単な言葉で表現する点にある。「Baby」という言葉の反復には、甘さだけでなく、相手にすがるような弱さも含まれる。そこに現代R&Bらしい曖昧な感情がある。

「Baby」は、アルバム全体の中でムードを柔らかく保つ役割を持つ。強い主張の曲ではないが、Summer Walkerが得意とする親密なラヴ・ソングの感覚がよく出ている。声、余白、シンプルな言葉によって成立する楽曲である。

8. I’m There

「I’m There」は、相手のためにそこにいること、支えること、関係の中で自分が存在し続けることをテーマにした楽曲である。タイトルはシンプルだが、恋愛における献身や待つ姿勢、時に自己犠牲にも近い感情を含んでいる。

音楽的には、アルバムの流れを保つメロウなR&Bであり、声とビートの距離が近い。Summer Walkerのヴォーカルは、ここでも大きな起伏よりも、静かな確信を重視している。彼女は「私はそこにいる」と強く宣言するのではなく、淡々と、しかし確かに歌う。

歌詞では、相手が必要とする時に自分がそばにいることが示される。これは愛情の表現である一方で、自分自身が相手の都合に合わせて存在してしまう危うさも含む。Summer Walkerの恋愛観には、支えたい気持ちと、自分が消耗することへの不安が同居している。この曲もその両義性を持っている。

「I’m There」は、派手な曲ではないが、本作の感情構造を理解するうえで重要である。愛することは、ただ欲望を満たすことではなく、相手のために存在することでもある。しかし、その存在が報われるとは限らない。その静かな緊張が曲の奥にある。

9. Karma

「Karma」は、因果応報をテーマにした楽曲であり、アルバムの中でも比較的はっきりしたメッセージ性を持つ。恋愛において相手が不誠実であった場合、その行為はいずれ返ってくるという考えが中心にある。Summer Walkerの音楽では、傷つけられた側の静かな復讐心や冷めた視線がしばしば表れるが、この曲はその代表的な例である。

サウンドは落ち着いているが、ムードはやや暗い。ビートは淡々と進み、Summer Walkerの声は冷静である。怒りを爆発させるのではなく、相手がいずれ自分の行為の結果を受けるだろうと静かに見ている。この抑制された態度が、曲に独特の強さを与えている。

歌詞では、相手の裏切りや不誠実さに対して、カルマが働くという考えが示される。これは単なる復讐ではなく、倫理的なバランスの回復を求める感覚である。自分が直接相手を罰しなくても、相手の行いはいずれ返ってくる。そう考えることで、傷ついた側は少し距離を取ることができる。

「Karma」は、『Last Day of Summer』の中で、Summer Walkerの自己防衛的な強さを示す楽曲である。彼女は傷つきやすいが、ただ泣いているだけではない。相手の行いを見抜き、その結果を冷静に待つ。この静かな強さが、彼女のR&Bを単なる失恋の音楽にしない理由である。

10. Prayed Up

「Prayed Up」は、タイトルからも分かる通り、祈りや精神的な防御をテーマにした楽曲である。Summer Walkerの音楽は恋愛や欲望を中心にしながらも、時折、スピリチュアルな感覚や自己保護の意識が顔を出す。この曲では、外部の悪意や不安から自分を守るために、祈り続ける姿勢が示される。

音楽的には、アルバムの中でも静かで内省的な質感が強い。ビートは控えめで、声が前面に置かれる。Summer Walkerの歌唱は、祈りというテーマにふさわしく、どこか独白に近い。大きな宗教的高揚ではなく、日常の中で自分を守るための小さな祈りである。

歌詞では、周囲のネガティヴなエネルギーや、人間関係の混乱に対して、自分を保つために祈ることが描かれる。現代R&Bでは、精神的な疲労や不安、自己防衛が重要なテーマであるが、「Prayed Up」はその中にスピリチュアルな支えを持ち込んでいる。祈りはここで、教義というより、心の境界線を守る行為として機能する。

「Prayed Up」は、本作の中で恋愛以外の自己保護のテーマを強く示す曲である。Summer Walkerの世界では、親密な関係はしばしば消耗を伴う。その中で自分を失わないためには、祈りや精神的な距離が必要になる。この曲は、その意識を静かに表現している。

11. Shame

Shame」は、恥、後悔、自己否定、関係の中で感じる弱さをテーマにした楽曲である。Summer Walkerの歌詞には、欲望を率直に語る強さがある一方で、自分の感情に対する恥や不安も同時に存在する。この曲は、その内側の陰りに焦点を当てている。

サウンドは非常に抑制されており、声の表情が中心になる。ビートは強くなく、音の余白が大きい。Summer Walkerのヴォーカルは、傷ついた感情を大げさに表現するのではなく、低い声で滲ませる。恥という感情は、しばしば外へ大きく出すよりも、内側に沈むものとして経験される。その感覚が音にも反映されている。

歌詞では、関係の中で自分がどう見られているのか、自分が何を許してしまったのか、どこで傷ついたのかが暗示される。Summer Walkerは、強い女性像だけを歌うのではなく、自分でも認めたくない弱さや迷いも歌う。この正直さが、彼女の音楽を多くのリスナーにとって身近なものにしている。

「Shame」は、アルバムの中でも感情的に深い楽曲である。女性の欲望を肯定する「Girls Need Love」と並べて聴くと、本作が単純な自己解放だけではなく、その裏にある恥や葛藤も描いていることが分かる。Summer Walkerの表現は、強さと脆さを分けずに同じ場所に置く。

12. Just Like Me

「Just Like Me」は、相手と自分の似た部分、あるいは関係の中で映し合う感情をテーマにした楽曲である。タイトルは「私と同じ」という意味を持ち、恋愛における自己投影や、似た者同士の引力を示している。Summer Walkerの楽曲では、相手はしばしば自分を傷つける存在であると同時に、自分の弱さを映す鏡でもある。

音楽的には、ミニマルで、アルバム全体の内向的なムードを保っている。声は近く、ビートは控えめで、曲は短い感情の断片として提示される。Summer Walkerの歌唱は、相手への語りかけと自分への独白の中間にある。

歌詞では、相手も自分と同じように不完全で、同じように愛を求め、同じように傷を抱えていることが示される。恋愛における怒りや不満は、相手を完全に他者として突き放すことで成立する場合もあるが、この曲ではむしろ、相手との類似性が問題を複雑にしている。自分に似ているからこそ惹かれ、似ているからこそ傷つけ合う。

「Just Like Me」は、アルバムの終盤において、関係の心理的な複雑さを示す曲である。Summer Walkerは、相手を単純な加害者としてだけ描かない。そこには自分自身の欲望、弱さ、反復してしまう行動も映っている。その自己認識が、この曲に静かな深みを与えている。

総評

『Last Day of Summer』は、Summer Walkerのデビュー・ミックステープでありながら、彼女の音楽的な美学を非常に明確に示した作品である。後の『Over It』に比べると規模は小さく、曲も短く、プロダクションもミニマルである。しかし、その小ささこそが本作の魅力である。ここには、まだ大きな商業的成功を得る前のSummer Walkerの、非常に親密で未加工に近い感情が刻まれている。

本作の中心にあるのは、恋愛の不安定さである。愛されたい、触れられたい、理解されたい。しかし、傷つきたくない。相手を求めながら疑い、自分を差し出しながら守ろうとする。その矛盾が、ほぼすべての曲に流れている。Summer Walkerは、恋愛を理想化しない。むしろ、曖昧で、時に不健全で、しかし抜け出しがたい関係の現実を、短いフレーズと近い声で描く。

音楽的には、ミニマルなオルタナティヴR&Bとして非常に完成度が高い。派手なビートや複雑な展開は少なく、トラックは声を引き立てるための余白として機能する。ギター、キーボード、低音、簡素なドラムが、夜の部屋のような空間を作る。Summer Walkerの声は、その空間の中心にありながら、支配的ではない。むしろ、部屋の中に漂う感情のように存在する。

この声の近さは、本作の最大の特徴である。Summer Walkerは、伝統的なR&Bシンガーのように圧倒的な声量や技巧を前面に出すタイプではない。彼女の強みは、囁きに近い声で、リスナーの個人的な記憶や感情に触れることにある。これは、2010年代以降のR&Bにおける大きな変化を象徴している。歌唱力の誇示よりも、親密さ、正直さ、未整理の感情が重視されるようになったのである。

歌詞面では、「Girls Need Love」が特に重要である。この曲は、女性も愛や欲望を求めるというシンプルな主張を、非常に自然な言葉で提示した。過剰な挑発ではなく、日常的な率直さとして女性の欲望を歌った点に、本作の現代性がある。Summer Walkerは、強い女性像を演じるのではなく、欲望、孤独、恥、不安を同時に抱えた一人の女性として歌う。その複雑さが、多くのリスナーの共感を呼んだ。

『Last Day of Summer』は、R&Bの歴史的な流れの中では、1990年代のスロウジャムやネオソウルの親密さを受け継ぎながら、トラップ以降の簡素なビート感覚へ接続している。SZAの『Ctrl』が自己分析と恋愛の不安を鮮やかに描いた作品だとすれば、Summer Walkerの本作は、より内向的で、より部屋の中に閉じた感情を描いている。H.E.R.のような静かなR&Bとも近いが、Summer Walkerにはより生々しい会話感と、関係に巻き込まれている最中のリアルさがある。

本作の短さも重要である。多くの曲は長く展開せず、感情の断片のように終わる。これは未完成というより、現代の感情のあり方に合っている。メッセージの途中、思考の断片、深夜の数分間、送るか迷っている言葉。そのような短い感情の単位が、そのまま曲になっている。『Last Day of Summer』は、長い物語ではなく、断片の集積として機能するアルバムである。

一方で、本作にはデビュー作らしい粗さもある。楽曲によっては非常に短く、アイデアのスケッチに近いものもある。大きな構成力やアルバム全体のドラマ性という点では、後の『Over It』の方が充実している。しかし、『Last Day of Summer』には、その粗さを補うだけの空気感がある。Summer Walkerの声、余白、恋愛の疲労感、欲望の正直さが、アルバム全体をひとつのムードとしてまとめている。

日本のリスナーにとっては、本作は派手なR&Bを期待するよりも、夜に一人で聴く内省的な作品として向き合うと理解しやすい。声の小さな揺れ、トラックの余白、短い言葉の中にある感情を聴くアルバムである。90年代R&Bのメロディを好む場合にも、現代的なチルR&BやLo-fiな音像に親しむ場合にも、接点を見つけやすい作品といえる。

『Last Day of Summer』は、Summer Walkerのキャリアの始まりであると同時に、2010年代後半のR&Bがどこへ向かっていたのかを示す作品でもある。大きな愛の物語ではなく、小さな不安。完璧な歌唱ではなく、近い声。華やかなプロダクションではなく、余白。勝利宣言ではなく、迷いながら自分の欲望を認めること。そうした要素が、現代R&Bのリアリティとしてここに結晶化している。

総じて、『Last Day of Summer』は、Summer Walkerの原点を示す親密なR&B作品である。恋愛の熱が冷め始める瞬間、まだ残っている甘さ、これから来る孤独、身体が覚えている欲望、心を守るための祈り。それらが、短く静かな楽曲の中に閉じ込められている。タイトル通り、夏の最後の日のように、温かさと終わりの気配が同時に存在するアルバムである。

おすすめアルバム

1. Summer Walker – Over It

Summer Walkerのファースト・スタジオ・アルバムであり、『Last Day of Summer』で提示された内省的R&Bの美学を大きく発展させた代表作。恋愛の疲労、失望、欲望、自己防衛がより豊かな楽曲群で描かれている。彼女の本格的なブレイクを決定づけた作品である。

2. SZA – Ctrl

2010年代オルタナティヴR&Bの重要作。恋愛、不安、自己価値、身体、嫉妬、曖昧な関係を、率直で独自の言葉で描いている。Summer Walkerの内向的な恋愛表現を理解するうえで、非常に関連性の高い作品である。

3. H.E.R. – H.E.R.

現代R&Bにおけるミニマルで内省的なサウンドを代表する作品。控えめな歌唱、ギターを中心にしたトラック、夜の空気を持つプロダクションが特徴である。『Last Day of Summer』の静かな音像と比較して聴く価値がある。

4. Jhené Aiko – Souled Out

夢幻的で内省的なR&Bを代表する作品。恋愛、スピリチュアリティ、喪失、自己探求が柔らかなサウンドで描かれている。Summer Walkerよりも浮遊感が強いが、親密な声と精神的な不安を扱う点で共通している。

5. Bryson Tiller – T R A P S O U L

トラップ以降のR&Bの方向性を決定づけた重要作。ヒップホップ的なビート、暗いムード、恋愛の葛藤、内向的なヴォーカルが特徴である。Summer Walkerのサウンド背景にあるトラップソウルの文脈を理解するために関連性が高い。

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