1. 歌詞の概要
「It’s a Plain Shame」は、Peter Frampton(ピーター・フランプトン)が1972年にリリースしたソロ・デビュー・アルバム『Wind of Change』に収録された、ブルージーなリフと鋭いギター・アタックが印象的なハード・ロック寄りの一曲である。
タイトルの「plain shame」とは、「まったく残念なこと」「明白な恥」といった意味を持ち、歌詞全体に通底するのは、失望と怒りの入り混じった嘆きの感情である。語り手は、誰か(おそらく恋人)に裏切られ、もしくは見捨てられたことに強いショックを受けながらも、そのことを正面から吐き出し、痛烈に糾弾する。
「君がやったことは明らかに間違っている」「それはまぎれもない恥だ」――
この曲では、フランプトンらしい穏やかな語りではなく、怒りや衝動がギター・サウンドとともに解き放たれている。
つまりこれは、裏切られた者の“魂の叫び”をロックの言葉で叫ぶ歌なのだ。
2. 歌詞のバックグラウンド
1972年、ピーター・フランプトンはHumble Pieを脱退し、自身のソロキャリアをスタートさせた。
その最初の一歩がアルバム『Wind of Change』であり、「It’s a Plain Shame」はその中でも特にエネルギッシュなナンバーのひとつである。
当時のフランプトンは、ブルース、ハード・ロック、フォーク、クラシカルなサウンドなどを自在に融合しながら、自分だけの音楽スタイルを模索していた過渡期にあり、その過程で彼の“怒れる若者”としての一面が表出したのがこの曲である。
また、のちの『Frampton Comes Alive!』(1976)にもライヴ・バージョンが収録されており、スタジオ版よりも数段荒々しく、フランプトンのギター・プレイが縦横無尽に炸裂する名演として知られている。
3. 歌詞の抜粋と和訳
It’s a plain shame
The way you treat me
ひどいよ、まったく
君が僕をどう扱ってるかなんて、目も当てられない
It’s a plain shame, the way you lie
恥ずべきことだよ
君が平気で嘘をつくなんてさ
You know I love you
But I can’t take this pain
僕は君を愛していた
でも、もうこの痛みには耐えられない
引用元:Genius 歌詞ページ
この短い一節には、愛と裏切りのコントラスト、そしてその中にある“まだ愛している自分”への怒りや悲しみが凝縮されている。嘆くというより、叫びに近い。この歌はまさに“魂の反撃”だ。
4. 歌詞の考察
「It’s a Plain Shame」は、ピーター・フランプトンの初期の作品群の中でも、もっとも怒りとエネルギーに満ちた楽曲のひとつである。
その怒りは、ただ相手を責めるものではない。むしろ、「なぜこんなにも好きだったのか」という自分への怒りと失望、そして諦めきれなさが同時に存在している。
だからこそ歌詞は短く、シンプルで、繰り返しが多い。言葉で説明するよりも、エモーションそのものをギターと声に乗せて爆発させることが目的なのだ。
この曲におけるフランプトンのギター・ソロもまた、歌詞の延長線上にある“感情の解放”のようなもので、とくにライヴ版ではロング・トーンやシャープなチョーキングが、抑圧された感情を言葉以上に雄弁に語っている。
フランプトンといえば「Baby, I Love Your Way」のような優しいラブソングのイメージが強いかもしれないが、この「It’s a Plain Shame」では、その裏にあるロック・ギタリストとしての激情と反骨精神がしっかりと刻まれている。
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- Gimme Shelter by The Rolling Stones
愛と暴力、絶望と情熱が交錯する、激動のエネルギーを宿したロック。 - Since I’ve Been Loving You by Led Zeppelin
裏切りと愛に引き裂かれる男の魂の叫びを、ブルースで表現。 - I Don’t Live Today by Jimi Hendrix
生きることの虚無感と怒りが爆発する、サイケデリックなブルース・ロック。 - Bell Bottom Blues by Derek and the Dominos
哀しみと怒りが入り混じる、クラプトンによる切ないブルース・バラード。 -
Go Your Own Way by Fleetwood Mac
別れと未練の中で、前を向こうとするロック・サウンドの決意表明。
6. 怒りを抱えたまま、それでもロックする――若きフランプトンの原点
「It’s a Plain Shame」は、Peter Framptonというアーティストのキャリア初期における最も荒削りで、最も人間的な一面を映し出したロック・ナンバーである。
それは洗練されたメロディでも、美しいラブソングでもない。
だが、そのぶん**“どうしようもない感情”を剥き出しにしたリアリズム**がある。
裏切られたとき、人はこうして叫ぶ。
痛みに蓋をせず、そのまま音に変える――それがロックなのだ。
この曲を聴いたあと、フランプトンのやさしげな笑顔を見ると、
その奥にある、言葉にできない葛藤と情熱の存在を感じずにはいられない。
それは、若きギタリストの“痛みの声”。
そして、それを抱えながらもギターとともに前へ進む決意の第一歩でもあった。
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