発売日: 1971年7月6日
ジャンル: ガレージロック、プロトパンク、ハードロック
MC5の3枚目にして最後のスタジオアルバムHigh Timeは、バンドの成熟と音楽的な多様性を示す重要な作品だ。1971年にリリースされたこのアルバムは、前作Back in the USAでのシンプルでコンパクトなロックンロールサウンドから一歩進み、より厚みのあるアレンジや即興性を取り入れた内容となっている。
MC5はこの作品で、ガレージロックとプロトパンクにとどまらず、ブルース、ジャズ、サイケデリックロックなどの要素を融合させ、彼らの音楽的レンジを広げた。アルバム全体を通じて、バンドの一体感と野心が感じられる一方、商業的な成功には結びつかず、この作品を最後にバンドは解散に至った。しかし、現在ではその実験精神と大胆なアプローチが高く評価されている。
トラックごとの解説
1. Sister Anne
アルバムのオープニングを飾るゴスペル風ロック。教会の鐘の音で始まり、ブルージーで力強いギターリフが印象的。歌詞には宗教や精神的なテーマが込められており、MC5の新しい音楽的な一面が感じられる。
2. Baby Won’t Ya
キャッチーでダンサブルなトラック。軽快なリズムとメロディアスなボーカルが特徴で、バンドのポップなセンスが光る一曲。ライブ感溢れるエネルギーが魅力的だ。
3. Miss X
スローテンポで展開されるバラード調の楽曲。ロブ・タイナーの感情豊かなボーカルと、切なくも優雅なギターアレンジが心に残る。MC5の感傷的な一面を垣間見ることができる。
4. Gotta Keep Movin’
ハードロック色の強い一曲。ヘヴィなギターリフとタイトなリズムセクションが特徴で、バンドのエネルギッシュな演奏が光る。歌詞には「前進し続ける」ことへの決意が込められている。
5. Future/Now
サイケデリックな雰囲気を持つ大作で、ジャムセッションのような自由な構成が特徴。Wayne Kramerのギターソロが炸裂し、楽曲全体に高揚感と不安感が交錯する。
6. Poison
アルバムの中でも特に攻撃的なトラック。鋭いギターリフとドラムの激しいビートが印象的で、歌詞には毒々しいユーモアと社会への風刺が込められている。
7. Over and Over
リズミカルで楽しい雰囲気を持つ楽曲。繰り返されるメロディが耳に残り、MC5のカジュアルで軽快な一面が楽しめる。
8. Skunk (Sonicly Speaking)
アルバムを締めくくるにふさわしいダイナミックなトラック。長尺の構成の中で、ギターソロやリズムセクションが自由奔放に展開され、アルバム全体の集大成的な楽曲となっている。
音楽的な成熟と挑戦
High Timeは、MC5が商業性やフォーマットに縛られることなく、音楽的に自由であろうとしたアルバムだ。ブルースやサイケデリック、ジャズ的なアプローチを大胆に取り入れ、彼らの音楽の奥行きを広げている。特に「Sister Anne」や「Future/Now」といった楽曲では、ギターリフやリズムの構造において、当時としては非常に革新的な試みが行われている。
一方で、アルバムはリリース当時、音楽的な野心が商業的な成功につながらず、批評的にも冷ややかな評価を受けた。しかし、現在ではその大胆さと実験精神が再評価され、プロトパンクやガレージロックの金字塔として位置付けられている。
アルバム総評
High Timeは、MC5が音楽的な自由を追求した集大成ともいえるアルバムだ。彼らのエネルギーと創造性が詰まったこの作品は、パンクロックの礎を築いたのみならず、ブルースやサイケデリックロックの要素を取り入れることで、ジャンルの境界を超えたサウンドを作り出している。現在でも、その挑戦的な姿勢と演奏力はリスナーを魅了し続けている。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Funhouse by The Stooges
MC5と同じデトロイトロックの仲間であるThe Stoogesによる名盤。攻撃的なエネルギーと実験的なアプローチが共通する。
Exile on Main St. by The Rolling Stones
ブルースやロックンロールのルーツを重視した作品で、MC5のブルージーな一面と共鳴する。
Electric Ladyland by The Jimi Hendrix Experience
サイケデリックで自由奔放なギター演奏が楽しめる作品。MC5の実験精神に通じるものがある。
Raw Power by The Stooges
ハードで荒々しいサウンドが特徴のアルバム。MC5のエネルギッシュな演奏を好む人に最適。
Led Zeppelin II by Led Zeppelin
ハードロックとブルースを融合させた名盤。MC5の音楽的なレンジの広さを感じさせる。
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