
発売日:2001年10月23日
ジャンル:Alternative Rock / Post-Grunge
概要
Bushが2001年に発表した4作目のスタジオ・アルバムがGolden Stateである。Gavin Rossdale、Nigel Pulsford、Dave Parsons、Robin Goodridgeという初期の4人による最後のスタジオ作で、プロデュースはバンドとDave Sardyが担当した。前作The Science of Thingsではシンセサイザー、打ち込み、電子的な音響を大胆に導入したが、本作では方向を反転させ、ギター、ベース、ドラムを中心とした直接的なロック・サウンドへ戻っている。
ただし、1994年のSixteen Stoneをそのまま再現した作品ではない。初期の荒いギターを取り戻しながら、曲の構成や録音はより整理され、静かなヴァースから大きなサビへ移るBushの基本形も簡潔になっている。Rossdaleの声は以前より低く乾いた響きを帯び、ギターの壁の中でも歌詞を聞き取りやすい位置に置かれている。90年代のオルタナティブ・ロックから生まれたバンドが、ニュー・メタルやガレージ・ロックが台頭する2001年に、自分たちの核を再確認した作品と言える。
歌詞では恋愛、距離、喪失、自己疑念が繰り返し現れる。Rossdaleの言葉は筋道の明確な物語より、短いイメージや感情を連結する書き方が多く、意味を一つに固定しにくい。それでも演奏が前作より直接的になったことで、感情の方向は伝わりやすくなった。大きな音楽的変身を狙うのではなく、Bushが最も自然に鳴らせるギター・ロックを2001年時点の技術で磨き直したアルバムである。
全曲レビュー
1. 「Solutions」
鋭いギター・リフと強いドラムで即座に始まり、電子音の多かった前作との違いを最初の数秒で示す。ヴァースではRossdaleの声の周囲に余白を残し、サビになると歪んだギターを左右へ広げるため、音量以上に大きな落差が感じられる。歌詞には答えや解決を求めながら簡単には到達できない焦燥がある。アルバムの「ギター・バンドへの帰還」を端的に知らせるオープニングだ。
2. 「Headful of Ghosts」
頭の中から消えない記憶や思考を「ghosts」という像に置き換え、精神的な落ち着かなさを描く。演奏は暗く沈むより前へ進み、ギターの反復とリズム隊の推進力が、考えを振り切ろうとしても振り切れない感覚を作る。Rossdaleは言葉を説明的につなげず、断片的なイメージを重ねていく。初期Bushらしい陰影と、本作の引き締まったプロダクションがよくかみ合った曲である。
3. 「The People That We Love」
当初「Speed Kills」と題されていた先行シングルで、アルバムでも特に速く切れ味のある一曲だ。短いギター・リフとドラムがほぼ休まず前へ押し、サビではRossdaleのボーカルが一気に高くなる。失うことへの恐れや身近な人々への感情が、細かな説明より切迫したフレーズとして放出される。Bushの得意な静と動の構造を短く圧縮し、2000年代初頭らしい硬い録音へ更新している。
4. 「Superman」
有名なヒーローの名前を使いながら、無敵の人物を称える曲ではない。強さへの期待と現実の弱さの間にある距離が感じられ、Rossdaleの歌唱にも自信と疲労が混ざる。ギターは重量感を持つがテンポは過度に速くせず、サビのメロディを十分に広げる余裕を残している。「The People That We Love」の疾走から速度を落とし、アルバムをより内向きな領域へ移す。
5. 「Fugitive」
逃亡者を意味するタイトルに合わせ、落ち着かず移動を続けるようなリズムが曲を引っ張る。ギターは長いコードを鳴らすより短く刻まれ、ベースとドラムも前へ転がる感覚を強める。歌詞の人物は何かから逃げているように見えるが、具体的な筋書きを提示しないため、外的な逃亡とも精神的な回避とも読める。意味を限定せず、音の運動で題名の感覚を補っている。
6. 「Hurricane」
題名通り、荒れた状況へ巻き込まれる感覚をギターの厚みで表現する。ヴァースでは比較的抑えているものの、サビへ入るとドラムの打点が強まり、ギターが一段広がることで嵐のような圧力が生まれる。Rossdaleの歌詞は自然現象をそのまま描くのではなく、感情的な混乱を示す比喩として利用している。アルバム中盤でも初期Bushの荒々しさを維持するハードなナンバーだ。
7. 「Inflatable」
ここでバンドは大きく音量を落とし、アコースティックな響きとRossdaleの声を中心に据える。題名には「膨らませることができる」「実体が薄い」といった奇妙なニュアンスがあり、親密な関係にもどこか不安定さが漂う。声を張らないことでRossdaleのメロディメーカーとしての側面が見え、前半の歪んだギターとの対比も鮮明になる。アルバムの中で必要な呼吸を作る静かな曲である。
8. 「Reasons」
再びバンド全体が前へ出るが、単純に重量感へ戻るのではなく、サビの旋律を中心に組み立てられている。理由を求める言葉には、関係や自分の行動を理解したいのに整理できない感覚があり、Rossdale特有の曖昧な作詞と相性がよい。Nigel Pulsfordのギターはボーカルの隙間に音を差し込み、曲を必要以上に埋めない。荒さとポップな輪郭のバランスが取れた中盤の一曲だ。
9. 「Land of the Living」
「生きている者の世界」というタイトルが、アルバム後半に少し異なる視点を持ち込む。重いギターを使いながらも、曲には沈み切らず現実へ戻ろうとするような動きがあり、Rossdaleの歌唱もサビで開かれていく。死や不在を連想させる言葉と、生き続ける側の感覚を並べることで、単純な希望の歌にはしていない。暗さを抱えたまま前進するBushらしい曲である。
10. 「My Engine Is with You」
エンジンという機械的なイメージを人間関係へ持ち込み、相手との結びつきを少し奇妙な言葉で表現する。演奏には速度感があり、リズム隊が一定の推進力を保つことでタイトルの機械的な連想ともつながる。ギターは厚いが、Rossdaleのボーカル・メロディを覆うほど前へは出ない。本作が単なるグランジ回帰ではなく、コンパクトなロック・ソングとして整理されていることがよく分かる。
11. 「Out of This World」
タイトルとは反対に、演奏は派手な宇宙的サウンドへ向かわず、比較的落ち着いたテンポで進む。Rossdaleの声を中心に、ギターが広い背景を作ることで、現実から少し離れていくような感覚を生む。歌詞も具体的な出来事より距離や疎外を思わせるイメージを重ねており、終盤らしい内省性が強い。前半の即効性のあるロックから、より静かな余韻へ流れを変える曲だ。
12. 「Float」
標準盤の最後は、タイトルの「浮かぶ」という感覚を思わせる比較的開放的な響きで締めくくられる。アルバムを通して鳴ってきたギターの重量を残しながら、終盤では音に空間を作り、Rossdaleの声をゆっくりと漂わせる。すべての葛藤を解決するような大団円ではなく、重さから少しだけ離れていくような終わり方である。硬質な「Solutions」から始まった作品に、静かな出口を与えている。
総評
Golden Stateの中心にあるのは、実験より整理である。The Science of Thingsで電子音とプログラミングを取り込んだBushは、本作で再びギター、ベース、ドラムという基本編成へ重心を戻した。しかし初期作品の荒さをそのまま再現せず、Dave Sardyとの制作によって各楽器を明瞭に分け、リフとサビを短い時間で伝える。結果として、Bushの4作品の中でも特に無駄の少ないロック・アルバムになった。
Gavin Rossdaleの作曲もその簡潔さから恩恵を受けている。「The People That We Love」のような速い曲では、短いリフからサビまで迷わず進み、「Inflatable」のような静かな曲では声そのものを前へ出す。彼の歌詞は依然として断片的で、一読して物語が理解できるタイプではないが、演奏が整理されたことで怒り、喪失、不安といった感情の方向は以前よりつかみやすい。言葉の曖昧さと音楽の直接性が補い合っている。
弱点を挙げるなら、方向性を絞ったぶん、中盤以降に似たギターの質感とテンポが続くところである。The Science of Thingsのような大胆な音色の変化は少なく、Sixteen Stoneほど無骨な若さもない。その代わり、Nigel PulsfordのギターとRobin Goodridgeのドラムを含む初期編成が、一つのロック・バンドとしてどれだけ堅実な演奏をできたかがよく記録されている。
結果的に本作は、Bushの最初の活動期を締めくくるアルバムとなった。90年代半ばに巨大な成功を収めたポスト・グランジの形式は、2001年にはすでに新しい音楽ではなかったが、Golden Stateは流行に無理に合わせず、その形式を磨くことを選んだ。「The People That We Love」の切迫感から「Float」の静かな余韻まで、Bushがギター・バンドとして持っていた強みを簡潔にまとめた、派手な転換より完成度を優先した作品である。
おすすめアルバム
The Science of Things by Bush
1999年の前作。シンセサイザーや打ち込みを積極的に使い、Bushのギター・ロックを電子的な方向へ広げた。そこから生演奏中心のGolden Stateへ戻った変化を確認するうえで、最も直接的な比較対象となる。
Sixteen Stone by Bush
1994年のデビュー作。「Glycerine」「Machinehead」などを収録し、荒いギターとRossdaleのメロディを結びつけた代表作。Golden Stateはこの基本形へ戻りながら、演奏と録音をより引き締めた作品として聞ける。
Razorblade Suitcase by Bush
1996年作。Steve Albiniとの録音による乾いたドラムと巨大なギターが特徴で、初期Bushの暗く荒々しい側面が最も強い。Golden Stateの整理された重量感と比べると、同じバンドの異なる録音美学がよく分かる。
Purple by Stone Temple Pilots
1994年作。重いギターを土台にしながら、サイケデリアやアコースティックな曲まで広げたオルタナティブ・ロック作品である。リフの強さとポップな旋律を両立させる点で、Bushの作曲法と比較しやすい。
Bleed American by Jimmy Eat World
2001年作。同年のギター・ロックながら、グランジ由来の重量より簡潔な構成と強いメロディを優先した。Golden Stateと並べると、2000年代初頭に90年代型オルタナティブがより引き締まったロック・ソングへ移っていく流れが見える。

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