発売日: 2012年8月20日
ジャンル: インディー・ロック, ポストパンク, オルタナティブ・ロック
『Four』は、Bloc Partyの4枚目のスタジオアルバムであり、前作『Intimacy』のエレクトロニック・サウンドから離れ、よりギターを中心としたオルタナティブ・ロックへと回帰した作品だ。前作の実験的な要素に対し、『Four』ではギターリフやパワフルなドラムサウンドを前面に押し出し、より荒々しく、攻撃的な音楽性を追求している。バンドが一度休止した後に制作されたこのアルバムは、バンドとしての新たなスタートを象徴しており、そのエネルギッシュなサウンドからは、バンドメンバーが再びひとつにまとまった様子が感じられる。
Kele Okerekeの感情豊かなボーカルと、ラッセル・リサックの鋭いギターワークが際立ち、Bloc Partyの原点回帰的なサウンドと同時に、新たな進化も見せている。歌詞のテーマは、個人的な葛藤、社会的な不満、愛と喪失など、これまでの作品同様に鋭い感情が表現されており、アルバム全体を通して緊張感が漂っている。
それでは、『Four』のトラックを順に見ていこう。
1. So He Begins to Lie
アルバムの幕開けは、この力強いギタートラックでスタートする。リズムセクションはタイトで、ラッセル・リサックのギターリフが非常に攻撃的だ。Keleのボーカルは、嘘や欺瞞、そしてそれに伴う裏切りをテーマにしており、彼の独特の緊張感がアルバム全体のトーンを決定づける。サウンドはこれまでのBloc Partyよりも荒削りで、バンドの新たな方向性が感じられる。
2. 3×3
この曲は、ダークで不穏なトーンが漂っており、ギターリフとリズムセクションの複雑な展開が特徴的だ。Keleのボーカルは、時にささやき、時に叫ぶようにして聴く者を引き込む。歌詞には怒りと緊張感が込められており、エネルギッシュな展開が続く。特に終盤に向けて、バンド全体が爆発するような瞬間が圧巻だ。
3. Octopus
アルバムのリードシングルであり、キャッチーなギターリフが際立つポップなロックナンバー。シンプルな構成ながらも、ギターリフとリズムのキレが素晴らしく、Bloc Partyらしいフックのあるサウンドが展開されている。歌詞には、不安や揺れ動く感情が込められており、軽快なサウンドとは対照的に内面的な深みが感じられる。
4. Real Talk
エレクトロニカ的な要素がわずかに残るこのトラックは、ゆったりとしたテンポと控えめなギターサウンドが特徴だ。歌詞には自己認識や親密な関係における葛藤が描かれており、Keleのボーカルは感情豊かに響く。アルバム全体の中でも、穏やかなトラックでありながら、感情的な深みを感じさせる。
5. Kettling
この曲は、パワフルなギタリフと重厚なドラムサウンドが炸裂する、ハードなロックナンバーだ。歌詞は社会的な不満をテーマにしており、特に「We smash the windows, and we riot」というフレーズが象徴するように、現代社会に対する怒りと反抗が込められている。ダイナミックなサウンドが、バンドの激しさを強調している。
6. Day Four
この曲は、アルバムの中でも静かな瞬間を提供するバラードだ。繊細なギターとKeleの感情的なボーカルが美しく調和し、歌詞には別れや失った愛に対する悲しみが描かれている。曲が進むにつれて感情が高まり、最後には壮大なサウンドスケープが広がる。アルバム全体に緊張感が漂う中で、静かな癒しをもたらす一曲だ。
7. Coliseum
アコースティックギターのイントロから始まるこの曲は、途中で一転して激しいギターリフとドラムが加わる展開が印象的だ。サウンドは荒々しく、ブルース的な要素が感じられる。歌詞には、争いや対立をテーマにしたメタファーが込められており、曲全体に強烈なエネルギーが満ちている。
8. V.A.L.I.S.
ポップで軽快なメロディーが際立つこのトラックは、アルバムの中でも比較的明るい雰囲気を持っている。歌詞には、現実と虚構が交錯するテーマが描かれており、科学やテクノロジーに対する不安が垣間見える。シンプルなリズムとキャッチーなメロディが耳に残る一曲だ。
9. Team A
エレクトロニックなビートとギターサウンドが融合した、実験的なトラック。複雑なリズムパターンとKeleのボーカルが絡み合い、アルバム全体の中でも特に独創的な楽曲だ。歌詞には、競争社会や集団意識に対する批判が込められており、Bloc Partyの鋭い社会的視点が反映されている。
10. Truth
アルバムの中でもエモーショナルなトラックで、シンプルなギターリフとKeleのボーカルが前面に出ている。歌詞には真実を探し求める切実な思いが込められており、感情がストレートに伝わってくる。メロディーが美しく、心に残る一曲だ。
11. The Healing
静かなイントロから始まるこの曲は、癒しと再生をテーマにしたバラードだ。Keleの優しいボーカルとシンプルなギターサウンドが、曲全体に穏やかな雰囲気を与えている。歌詞には、痛みを乗り越えようとする強い意志が込められており、アルバムの中でも特に感情的な楽曲だ。
12. We Are Not Good People
アルバムを締めくくるこのトラックは、荒々しいギターと攻撃的なリズムが特徴のパワフルなロックナンバーだ。Keleのボーカルもエネルギッシュで、歌詞には内なる葛藤や自己嫌悪が描かれている。激しさと焦燥感が融合し、アルバム全体を通して緊張感のあるフィナーレを迎える。
アルバム総評
『Four』は、Bloc Partyがギターサウンドを再び中心に据え、オルタナティブ・ロックの力強さを全面に押し出したアルバムだ。荒々しくエネルギッシュな楽曲から、静かで内省的なバラードまで、幅広い感情とサウンドが詰め込まれており、バンドの新たなスタートを感じさせる作品となっている。エレクトロニック要素が薄れた一方で、バンドとしての一体感やパワーが戻り、Kele Okerekeの感情豊かなボーカルとラッセル・リサックの鋭いギターが光る。『Silent Alarm』で見せたエネルギーを再び感じさせつつ、進化した音楽性が詰まった一枚だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
- 『Suck It and See』 by Arctic Monkeys
オルタナティブ・ロックのエッジとメロディアスな楽曲が特徴のアルバム。Bloc Partyのロックサウンドを好むリスナーにはぴったり。 - 『Humbug』 by Arctic Monkeys
荒々しいギターリフとダークな雰囲気が特徴で、『Four』の攻撃的なサウンドと共通する。 - 『Antidotes』 by Foals
ポストパンクとエレクトロニカを融合させたサウンドで、Bloc Partyのリズム感や実験性が好きな人におすすめ。 - 『Total Life Forever』 by Foals
深い感情と複雑な楽曲構成が特徴で、Bloc Partyのエモーショナルな側面に共鳴する一枚。 - 『The Suburbs』 by Arcade Fire
広がりのあるサウンドと社会的なテーマが特徴で、Bloc Partyの深い歌詞やメッセージ性が好きな人におすすめ。
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