1. 歌詞の概要
“Fortunate Son” は、アメリカのロックバンド Creedence Clearwater Revival（CCR） が 1969 年にリリースしたシングルで、アルバム『Willy and the Poor Boys』に収録されています。この曲は、ベトナム戦争と社会的不平等を鋭く批判したプロテスト・ソング であり、CCR の代表曲の一つとして今なお多くのリスナーに愛されています。
歌詞では、裕福なエリート層の子息（Fortunate Son / 恵まれた息子） と、徴兵されて戦場へ送られる庶民との対比が描かれています。曲の主人公は、戦争を支持する政治家や資本家の息子ではなく、「自分は権力者の血筋ではない、だから戦争に行かされる」と歌います。これは、当時のアメリカ社会における 階級格差や徴兵制度の不公正さ を痛烈に批判するものです。
この楽曲は、リリース当時の 反戦運動の象徴 となり、現在でも戦争や政治的なテーマを扱う映画やドラマで頻繁に使用されています。特に、ベトナム戦争を描いた映画『フォレスト・ガンプ / 一期一会（1994）』や『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド（2019）』のサウンドトラックとしても有名です。
2. 歌詞のバックグラウンド
“Fortunate Son” は、CCR のリーダーである ジョン・フォガティ（John Fogerty） によって書かれました。彼は、アメリカの徴兵制度が不公平であることに強い憤りを感じており、この楽曲を通じて 「戦争は庶民が戦い、権力者は安全な場所にいる」 という現実を訴えました。
当時のアメリカでは、大学生や裕福な家庭の子供たちは、コネや特権を利用して徴兵を免れることができる一方、貧しい家庭の若者や労働者階級は戦場へ送り込まれる という状況がありました。これに対して、フォガティは強い怒りを抱き、“Fortunate Son” を作曲したと言われています。
曲がリリースされた1969年は、アメリカ国内でベトナム戦争に対する反戦運動が激化していた時期 であり、多くの若者がこの楽曲に共感しました。特に、徴兵制度の不公平さを訴えるメッセージは、社会的に大きな影響を与えました。
3. 歌詞の印象的なフレーズと和訳
（※以下の歌詞は権利を尊重し、一部のみ引用しています。）
“Some folks are born made to wave the flag, ooh, they’re red, white, and blue.”
「生まれながらにして国旗を振る者もいる。彼らは赤、白、青（アメリカの国旗の色）さ。」
この冒頭のラインは、愛国心を全面に押し出すエリート層 を皮肉っています。彼らは、戦争を賛美しながらも、自分自身は戦場に行かないという矛盾を抱えています。
“It ain’t me, it ain’t me, I ain’t no senator’s son.”
「それは俺じゃない、俺じゃないさ。俺は上院議員の息子なんかじゃない。」
このリフレインは、曲の中心的なメッセージです。裕福な家の子供たちは特権を利用して徴兵を免れる一方、普通の若者たちは戦争に駆り出されるという不公平さを批判しています。
“It ain’t me, it ain’t me, I ain’t no millionaire’s son, no, no.”
「それは俺じゃない、俺じゃないさ。俺は金持ちの息子なんかじゃない。」
ここでは、政治家だけでなく 裕福な家庭の子供たちもまた、戦争を回避する手段を持っている という点が強調されています。
4. 歌詞の考察
“Fortunate Son” は、当時の アメリカ社会における階級格差と戦争の不公平さ を痛烈に批判した楽曲です。
この曲が伝えようとしているのは、単に「戦争は悪い」というメッセージではなく、「戦争が誰にとって有利で、誰が犠牲を強いられているのか」 という点です。戦争を支持する人々の多くは、安全な立場にいて、自ら戦場に行くことはありません。対照的に、庶民の若者たちは政府の決定によって徴兵され、戦場で命を落とすことになるのです。
また、この楽曲は、単なるベトナム戦争の批判にとどまらず、現代の戦争や政治状況にも当てはまる普遍的なテーマ を持っています。2020年代に入っても、戦争に関する議論の中でこの曲が引用されることがあり、その影響力の大きさがうかがえます。
音楽的には、シンプルなギターリフと力強いボーカルが特徴で、フォガティの怒りとフラストレーションがストレートに伝わる ような構成になっています。このシンプルながらもエネルギッシュなサウンドが、楽曲のメッセージをより強く印象づけています。
5. この曲が好きな人におすすめの曲
“Fortunate Son” のように、社会的メッセージを持ち、力強いロックサウンドを持つ楽曲をいくつか紹介します。
- “Born in the U.S.A.” by Bruce Springsteen
- パトリオティズムとベトナム戦争帰還兵の現実を描いた楽曲。
- “Ohio” by Crosby, Stills, Nash & Young
- ケント州立大学の銃撃事件を題材にした反戦ソング。
- “For What It’s Worth” by Buffalo Springfield
- 1960年代の抗議運動をテーマにした社会派ロック。
- “Blowin’ in the Wind” by Bob Dylan
- 戦争や人権問題についての普遍的な問いかけを歌った名曲。
- “Sympathy for the Devil” by The Rolling Stones
- 歴史的な暴力や権力の腐敗を風刺した楽曲。
6. Creedence Clearwater Revival の影響と “Fortunate Son” の意義
CCR は、1960年代後半から1970年代初頭にかけて、アメリカの音楽シーンで絶大な人気を誇ったバンドの一つです。彼らの音楽は、サザンロック、ブルース、カントリー、そして社会的メッセージを融合 させた独自のスタイルを持っていました。
“Fortunate Son” は、単なるロックソングではなく、社会の不公平さを暴き、戦争の不条理を訴えた時代を超えたプロテスト・ソング です。50年以上経った今もなお、そのメッセージは色褪せることなく、世界中の人々に影響を与え続けています。
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