発売日: 1982年
ジャンル: パンクロック、ポストパンク、アートパンク
1982年にリリースされたThe Flesh EatersのアルバムForever Came Todayは、前作A Minute to Pray, A Second to Dieで確立した彼らのユニークなサウンドを進化させ、さらに緊張感と攻撃性を増した作品だ。フロントマンのChris D.（Chris Desjardins）は、文学的でグロテスクな歌詞と荒々しいボーカルスタイルを駆使し、ポストパンクの枠を超えた実験性を引き続き追求している。
このアルバムでは、前作で用いられたマリンバやサックスといった多彩な楽器は姿を潜め、よりギター中心のアプローチへと回帰している。しかし、その分、エネルギーや焦燥感が増し、リスナーを圧倒する仕上がりとなっている。全体を通じて、混沌と暴力性、そして詩的な美しさが同居する稀有な音楽体験を提供する。
トラックごとの解説
1. My Life to Live
アルバムのオープニングを飾るこの曲は、荒々しいギターリフとChris D.の激情的なボーカルが印象的。歌詞には絶望感と反抗心が滲み出ており、アルバム全体のテーマを予感させる。
2. A Minute to Pray, A Second to Die
前作のアルバムタイトルをそのまま冠した曲がここに登場。冷酷で暗いギターサウンドと不気味な歌詞が、バンドの得意とするゴシック的な美学を見事に体現している。
3. Secret Life
アップテンポでパンクロックのエネルギーに満ちた一曲。歌詞は秘密や欺瞞をテーマにしており、Chris D.のボーカルが荒々しくも力強い。
4. Shallow Water
スローテンポで展開されるこの楽曲は、深い憂鬱さと不安を感じさせる雰囲気が特徴的。ギターリフが繰り返される中、Chris D.の詩的な歌詞が際立つ。
5. The Rosy Hours
ブルース的なアプローチが光るトラック。荒々しいサウンドの中に、どこか牧歌的なムードが感じられる一曲で、バンドの幅広い音楽性を示している。
6. The Wedding Dice
アグレッシブなリズムセクションが曲をリードし、バンドのエネルギーが爆発するような一曲。Chris D.のボーカルは怒りと焦燥感に満ちており、リスナーに強いインパクトを与える。
7. Drag My Name in the Mud
キャッチーなメロディと攻撃的な歌詞が融合したトラック。バンドの荒々しい一面と、時折見せるポップなセンスが絶妙に絡み合っている。
8. Forever Came Today
アルバムのタイトル曲であり、最も象徴的な楽曲の一つ。ギターリフが反復的に展開される中、Chris D.のボーカルが楽曲を支配している。歌詞には、時間や存在に関する哲学的な問いが込められているようだ。
9. Life Goes On
シンプルな構成ながらも、歌詞と演奏の両方に深い感情が込められた一曲。アルバム全体のテーマをまとめるような楽曲だ。
前作との比較と進化
Forever Came Todayは、前作A Minute to Pray, A Second to Dieの実験性とゴシック的な美学を受け継ぎながらも、よりシンプルで攻撃的なサウンドへとシフトしている。マリンバやサックスといった多彩な楽器が目立った前作に対し、本作ではギターリフが楽曲の中心に据えられ、パンクロックの荒々しさが強調されている。
Chris D.の詩的な歌詞と情熱的なボーカルスタイルは健在で、聴き手に強烈な印象を与える。特に「Forever Came Today」や「My Life to Live」といった楽曲では、彼の才能が存分に発揮されている。
アルバム総評
Forever Came Todayは、The Flesh Eatersが持つエネルギーとクリエイティビティを存分に発揮した作品だ。前作に比べてサウンドがシンプルになった分、より直接的な力強さが増している。また、Chris D.の詩的な歌詞と感情的なパフォーマンスが、アルバム全体を通じて一貫したテーマ性を持たせている。
パンク、ポストパンク、そしてゴシック的要素が見事に融合したこのアルバムは、ジャンルの枠にとらわれない音楽を愛するリスナーにとって必聴の一枚だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Fire of Love by The Gun Club
ブルースとパンクを融合させた作品で、The Flesh Eatersの持つ荒々しい美学に通じる。
Los Angeles by X
ロサンゼルスのパンクシーンの代表的なバンドによるアルバム。エネルギッシュな演奏とストーリーテリングが共通点。
Y by The Pop Group
ポストパンクの名作で、実験的なアプローチと不穏な雰囲気がThe Flesh Eatersの音楽と響き合う。
The Modern Dance by Pere Ubu
アートパンクの先駆け的なアルバムで、The Flesh Eatersの実験精神とリンクする作品。
Damaged by Black Flag
攻撃的なパンクロックの名作。シンプルなサウンドの中に込められたエネルギーが、Forever Came Todayと共鳴する。
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