アルバムレビュー：Flip Your Wig by Hüsker Dü

アルバムレビュー

2024.12.05

発売日: 1985年9月
ジャンル: ポストハードコア、オルタナティヴロック

Hüsker Düの5枚目のアルバム『Flip Your Wig』は、バンドが完全に成熟した音楽性を示した作品であり、インディーズレーベルSSTからリリースされた最後のアルバムである。前作『New Day Rising』で示されたメロディックなアプローチをさらに発展させ、より洗練された楽曲が揃っている。DIY精神を維持しながらも、キャッチーなメロディーと叙情的な歌詞が増え、商業的なポテンシャルを感じさせる内容となっている。

アルバム全体を通じて、Bob MouldとGrant Hartという2人のソングライターの個性が見事に融合しており、バンドの音楽的ダイナミズムを際立たせている。ラフなプロダクションはバンドらしさを保ちつつ、メロディーやハーモニーが際立つアレンジが施されている。本作は、インディーロックのクラシックとして広く評価されており、Hüsker Düがオルタナティヴロックの基礎を築いたことを示す重要な作品だ。

トラック解説

1. Flip Your Wig
タイトル曲であり、アルバムの幕開けを飾る爽快なロックナンバー。キャッチーなギターリフとメロディーが印象的で、Hüsker Düの新たな方向性を感じさせる。

2. Every Everything
Grant Hartの明るいエネルギーが詰まった楽曲。軽快なリズムとポップなメロディーが特徴的。

3. Makes No Sense at All
アルバムを代表する名曲で、メロディックなギターポップの要素が色濃い。Bob Mouldの感情的なボーカルと切ない歌詞が心に響く。

4. Hate Paper Doll
Grant Hartによるシンプルでキャッチーな楽曲。皮肉の効いた歌詞と軽快なメロディーが楽しい。

5. Green Eyes
Grant Hartが恋愛をテーマに書いた感情的な楽曲。穏やかなメロディーと優しい歌詞が心に残る一曲。

6. Divide and Conquer
Bob Mouldの攻撃的なギターリフが印象的なトラック。政治的なテーマを扱った鋭い歌詞が、バンドの知性を感じさせる。

7. Games
アップテンポでエネルギッシュな楽曲。リズムセクションが際立ち、バンドの一体感が感じられる。

8. Find Me
アンビエントな雰囲気を持つ一曲。実験的なアプローチが光り、アルバムの中で異彩を放つ。

9. The Baby Song
短いインストゥルメンタルトラック。遊び心が感じられる軽い一曲。

10. Flexible Flyer
Grant Hartによる楽曲で、ポップなメロディーとノスタルジックな歌詞が特徴的。アルバムの中でも特に親しみやすい一曲。

11. Private Plane
荒々しいギターサウンドが特徴のトラック。Bob Mouldのエネルギッシュなボーカルが楽曲を引き締めている。

12. Keep Hanging On
ドラマチックな展開を持つトラックで、感情的な深みが際立つ。バンドの多彩な音楽性を示す一曲。

13. The Wit and the Wisdom
インストゥルメンタルで、力強いギターとドラムが印象的。アルバムの中で実験的な一面を見せる。

14. Don’t Know Yet
アルバムを締めくくる楽曲で、穏やかで美しいメロディーが印象的。優しい余韻を残すフィナーレとなっている。

アルバム総評

『Flip Your Wig』は、Hüsker Düが持つ攻撃性とメロディックな要素をバランスよく融合させた作品であり、バンドが新しい音楽的な領域を切り開いたアルバムである。「Makes No Sense at All」や「Green Eyes」といった楽曲は、バンドのポップセンスと感情表現の高さを象徴しており、アルバム全体を通じて聴き応えがある。本作は、後のオルタナティヴロックやインディーロックに多大な影響を与えた重要な作品として評価され続けている。