アルバムレビュー:Fisherman’s Blues by The Waterboys

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※本記事は生成AIを活用して作成されています。

cover

発売日: 1988年10月**
ジャンル: ケルト・ロック、フォークロック、オルタナティブ・カントリー、ルーツ・ミュージック


Fisherman’s Blues』は、The Waterboysが1988年にリリースした4作目のスタジオ・アルバムであり、
前作『This Is the Sea』までのビッグ・ミュージック期の壮麗さを手放し、アイルランドの民俗音楽と深く結びついた“ケルト期”の幕開けを告げる記念碑的作品である。
本作においてマイク・スコットは、自らの音楽的ヴィジョンを神秘的なポエトリー・ロックから、土と風と共同体の響きを宿したルーツ・ミュージックへと大きく転換した。

録音は主にアイルランド・ゴールウェイ郊外のスピドルにあるスタジオで、
**3年以上にわたるセッションから膨大な未発表曲が生まれた“創造の坩堝”**としても知られている。
そのなかから選ばれた本作のトラック群は、伝統と革新、喜びと祈り、即興と構築が見事に調和した稀有な音楽世界を形成している。


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全曲レビュー

1. Fisherman’s Blues
タイトル曲にして代表曲。
「僕は漁師のブルースが歌いたい」──という冒頭の一節が象徴するように、
ビッグ・ミュージックからの離脱と、新たな土地に根ざした“再出発”の歌である。
アコーディオンとフィドルが軽快に絡み合い、喜びに満ちた開放感をもたらす。

2. We Will Not Be Lovers
パワフルなフィドルと疾走感あるリズムが特徴のフォーク・ロック
タイトル通り、恋愛関係の拒絶を高らかに宣言する曲だが、
その裏には痛みや葛藤がにじむ。ステージではしばしば10分以上に及ぶ白熱の演奏を披露。

3. Strange Boat
神秘的で抒情的なスローバラード。
“奇妙な舟”というメタファーが、人生の道行きと霊的探求を象徴している。
アンディ・ドッグの幻想的なアートワークとの親和性も高い楽曲。

4. World Party
のちにカール・ウォリンジャーが自らのバンド名に流用することになる軽快なナンバー。
ルーツ・ロックの遊び心とバンドの一体感が表れた楽曲で、
アメリカ南部風のソウルフルな風味も感じさせる。

5. Sweet Thing(ヴァン・モリソンのカバー)〜Donald Where’s Your Troosers?
前半はヴァン・モリソンのスピリチュアルなラブソングを美しくカバーし、
そのままスコットランドのコミカルな民謡へと突入する意表を突く構成。
形式の崩し方と選曲のユーモアが、バンドの脱構築的姿勢を象徴している。

6. Jimmy Hickey’s Waltz
アイリッシュ・ワルツの小品。インストゥルメンタルだが、
旋律に込められた郷愁と温もりがじんわりと胸に響く。

7. And a Bang on the Ear
各地の元恋人たちとの思い出を軽やかに綴った、愛と別れの歌。
アコーディオンの旋律が懐かしさと祝祭感を同時に呼び起こし、
聴いているうちに自然と口ずさみたくなる一曲。

8. Has Anybody Here Seen Hank?
ハンク・ウィリアムズへのオマージュを込めたカントリー調ナンバー。
消えた伝説のカントリー・シンガーを探しながら、自らのルーツを再確認するような構造を持つ。

9. When Will We Be Married?
アイルランド伝承曲をベースにした楽曲で、軽快なリズムとシンプルなコーラスが特徴。
現代に響く問いかけとしての“結婚の意味”を、ユーモラスかつ牧歌的に描く。

10. When Ye Go Away
哀しみと誠実さが滲むミディアム・テンポのフォークソング。
去っていく誰かへの祈りと、置き去りにされた側の静かな怒りが交錯する。

11. Dunford’s Fancy
フィドル主導のインストゥルメンタルで、アイリッシュ・ダンスの典型的スタイル。
バンドの演奏力とリール/ジグへの愛情が感じられる。

12. The Stolen Child(W.B.イェイツ詩の朗読+音楽)
アルバムの締めくくりは、イェイツの詩にマイク・スコットが作曲した幻想曲。
詩の朗読に、フィドルとキーボードが神秘的に重なり、
ケルト的霊性の頂点として響く。夢と現実、自然と人間の境界を揺さぶる名曲。


総評

『Fisherman’s Blues』は、The Waterboysにとっての**“変容”と“帰属”を同時に体現した歴史的傑作**である。
ビッグ・ミュージックを放棄したのではなく、そのスピリチュアルな核心を土着の音楽と言語に置き換えることで、
より地に足のついた音楽的高みに到達した作品
である。

この作品は、マイク・スコットの内なる詩的探求と、アイリッシュ・トラディショナルとの邂逅が生んだ“共鳴”であり、
それは単なるスタイルの転換ではなく、人生観の再構築に近い音楽的事件であった。
聴く者を癒し、踊らせ、そしていつかの故郷へと連れ戻してくれるこのアルバムは、
現代においても変わらぬ普遍性と魅力を保ち続けている。


おすすめアルバム

  • Van Morrison / Into the Music
     霊性とフォークの融合によるスピリチュアル・ポップの極致。
  • The Pogues / If I Should Fall from Grace with God
     アイリッシュ・パンクと伝統音楽の力強い邂逅。
  • Fairport Convention / Liege & Lief
     ブリティッシュ・フォークロックの原点であり、地に根ざした音楽の金字塔。
  • Bob Dylan / Desire
     バンド感と叙情性、遊び心を備えたフォーク・ロックの秀作。
  • Richard & Linda Thompson / I Want to See the Bright Lights Tonight
     土着的サウンドと詩的リアリズムの融合。

特筆すべき事項

  • アルバム制作にあたっては100曲以上の未発表音源が録音され、のちにボックスセット『Fisherman’s Box』として公開された。
     この膨大なセッションは、“創造の洪水”とも称される。
  • 本作はUKチャートでTOP20入りを果たし、The Waterboysの知名度を大きく押し上げるきっかけとなった
     一方で、一部の初期ファンからは「ビッグ・ミュージックの終焉」として賛否を呼んだ。
  • 『The Stolen Child』におけるW.B.イェイツの詩の導入は、文学とフォーク音楽の融合という意味でも画期的であり、
     The Waterboysの“現代ケルト芸術”としての側面を決定づけた瞬間
    とされる。

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