発売日: 2017年7月28日
ジャンル: インディー・ロック、ダンス・ポップ、アート・ロック
『Everything Now』は、Arcade Fireが消費社会やデジタル文化をテーマにした5枚目のアルバムで、ディスコ、ダンス・ポップ、エレクトロニカなどのスタイルを取り入れ、軽快なサウンドとともに鋭い社会批評を展開している。アルバムの中心テーマは、現代社会における情報や物質への過剰なアクセスと、それに伴う空虚感や孤立感だ。ポップなメロディと明るいビートが特徴だが、歌詞は深く内省的で、現代の資本主義や消費社会の虚しさに対する批判が込められている。『Reflektor』で見られたダンスロックの方向性をさらに発展させつつ、バンドが持つ特有の感情的な深みも感じられる作品だ。
各曲ごとの解説:
- Everything_Now (Continued)
アルバムのオープニングを飾る短いイントロ。シンプルなピアノのメロディとシンセサイザーが融合し、続くタイトル曲への伏線を張るような役割を果たしている。 - Everything Now
アルバムのタイトル曲で、ディスコビートとポップなメロディが印象的。明るいサウンドに反して、物質的な豊かさと空虚感をテーマにした歌詞が特徴的。アフリカのミュージシャンによるパーカッションが加わり、グローバルな影響を感じさせる楽曲で、ダンスフロア向けのリズムと深刻なメッセージが融合している。 - Signs of Life
ディスコ調のベースラインと、リズミカルなホーンが彩るトラック。現代社会における自己探求や、無意味な日常に埋もれた「生きている証」を求めるテーマが描かれている。軽快なリズムの裏に、内面的な不安や焦燥感が潜んでいる。 - Creature Comfort
シンセサイザーが前面に出たエレクトロポップ調の楽曲で、自己否定や自殺願望といった重いテーマを扱っている。歌詞は、現代の消費社会や理想化された成功のプレッシャーによる苦しみを描写しており、激しいサウンドと鋭いメッセージが聴く者に強烈な印象を残す。 - Peter Pan
レゲエやスカのリズムを取り入れた軽快なトラック。恋愛と時間の経過をテーマにしており、いつまでも若くいたいという願望と、それに伴う現実逃避が描かれている。シンプルなメロディラインが、曲全体にポップな雰囲気を与えている。 - Chemistry
ファンキーなベースラインと、軽快なギターが印象的な曲で、恋愛の化学反応にたとえて感情的なつながりを表現している。陽気なサウンドと軽快なリズムが際立つが、歌詞には恋愛における不安や期待のズレが描かれている。 - Infinite Content
パンク調のエネルギッシュなトラックで、繰り返し叫ばれる「Infinite Content」が印象的。現代社会における無限の情報やコンテンツへの飽和状態を皮肉っており、速いテンポとシンプルなリフが力強いメッセージを際立たせる。 - Infinite_Content
前曲「Infinite Content」と対照的に、カントリー調のアレンジで、同じテーマを異なるサウンドで表現している。物質的な満足感と、精神的な空虚さのギャップが浮き彫りになっている。 - Electric Blue
レジーヌ・シャサーニュがリードボーカルを務めるディスコ風のポップトラック。高音のボーカルと、シンセサイザーの軽やかなサウンドが印象的だが、歌詞には現代社会における孤独や、失われた愛への哀愁が込められている。 - Good God Damn
ダークでミニマルなトラックで、生と死、そしてその境界にある無力感がテーマ。シンプルなギターリフが繰り返される中で、ウィン・バトラーが静かに語るようなボーカルスタイルで深い感情を伝えている。 - Put Your Money on Me
ディスコビートとシンセサウンドが織り成す、リズミカルで中毒性のあるトラック。恋愛やお金に対する欲望と執着がテーマで、物質的な欲望に縛られながらも、それから逃れることができないジレンマが描かれている。 - We Don’t Deserve Love
メランコリックなメロディと、ウィン・バトラーの感情的なボーカルが際立つバラード。失われた愛や希望に対する無力感が描かれており、アルバム全体のテーマである孤独と絶望を総括するような曲。感情的なクライマックスに向かって徐々に盛り上がる構成が美しい。 - Everything Now (Continued)
アルバムの締めくくりとして、冒頭の「Everything_Now (Continued)」が再登場。ループ的なサウンドがアルバムの循環構造を示唆し、現代社会の無限ループに陥る感覚を象徴する。
アルバム総評:
『Everything Now』は、Arcade Fireが消費社会やデジタル文化に対する鋭い批評を込めた作品で、ポップなサウンドに反して重厚なメッセージを持つアルバムだ。明るいディスコビートやキャッチーなメロディの裏には、現代社会の虚無感や人々の孤独が描かれており、軽快な音楽と深いテーマの対比が印象的である。『Reflektor』に引き続き、ダンスミュージックやエレクトロニカの要素を取り入れつつも、Arcade Fireの感情的で内省的なスタイルを維持しており、彼らの音楽的進化が感じられる作品だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚:
- Random Access Memories by Daft Punk
ディスコとエレクトロニカを融合させ、懐かしさと新しさを感じさせるサウンドが特徴。『Everything Now』のポップな要素と通じる部分が多い。 - American Dream by LCD Soundsystem
エレクトロポップとダンスミュージックを融合させたアルバム。現代社会への批評的な視点と、キャッチーなサウンドが『Everything Now』と共鳴する。 - This Is Happening by LCD Soundsystem
ダンス・パンクのエッセンスと、内省的な歌詞が融合したアルバム。Arcade Fireの実験的なサウンドと同様、エレクトロとロックの見事なクロスオーバーを楽しめる。 - Currents by Tame Impala
サイケデリック・ポップとディスコを融合させた作品。『Everything Now』と同様に、ポップなビートの中に深い感情や内省を感じることができる。 - Hot Fuss by The Killers
ロックとポップ、エレクトロの融合が特徴的なアルバム。キャッチーなメロディと、現代社会を批評的に描いた歌詞が『Everything Now』と共通している。
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