発売日: 1990年9月
ジャンル: パワーポップ、オルタナティヴ・ロック
アルバム全体の印象
The Posiesの2ndアルバム『Dear 23』は、1990年にリリースされ、パワーポップの名作として広く知られている。前作『Failure』でのDIY精神あふれる粗削りなサウンドから一転、メジャーレーベルからのリリースとなった本作は、より洗練されたプロダクションと壮大なアレンジが特徴だ。
プロデューサーにジョン・レッキー（RadioheadやStone Rosesの作品を手がけた名プロデューサー）を迎え、クリアで深みのあるサウンドを実現。ジョン・オーエルとケン・ストリングフェローの二人による、透明感のあるハーモニーとメロディはさらに輝きを増し、彼らのパワーポップサウンドを決定づけた作品となった。
本作は、愛や喪失、若さの葛藤をテーマにした楽曲で構成されており、どの曲も普遍的な美しさと感情に溢れている。60年代のビートルズやビッグ・スターの影響を色濃く感じさせつつ、90年代のオルタナティヴ・ロックの風を吹き込んだ一枚だ。美しいコーラスと、切なくもどこか爽やかなサウンドは、今もなお色褪せることなく、多くのリスナーを魅了し続けている。
各曲解説
1. My Big Mouth
アルバムのオープニングを飾るパワフルな一曲。軽快なギターリフと二人の美しいハーモニーが印象的だ。「口は災いの元」というテーマが、爽快なメロディに乗せて語られ、皮肉めいた雰囲気が心地よい。
2. Golden Blunders
本作を代表する楽曲の一つで、切ないメロディと印象的な歌詞が特徴だ。「Golden blunders come undone」というリフレインが耳に残り、若さゆえの過ちや恋愛の失敗を淡々と描いている。ジョン・オーエルとケン・ストリングフェローの息の合ったハーモニーが際立つ、エモーショナルな名曲だ。
3. Apology
シンプルなアコースティックギターが基調の楽曲。歌詞には後悔や謝罪の気持ちが込められており、柔らかなメロディと控えめなサウンドがその感情を引き立てている。落ち着いたトーンの中にも力強さを感じる一曲だ。
4. Any Other Way
疾走感のあるアップテンポなナンバー。ギターのカッティングとコーラスが絶妙に絡み合い、聴いていて爽快な気分にさせる。歌詞には迷いや決断の葛藤が描かれ、誰もが共感できる内容になっている。
5. You Avoid Parties
ミドルテンポで静かなイントロから始まるこの曲は、内省的で少し暗めの雰囲気を持つ。人間関係の孤独や疎外感をテーマにした歌詞と、ゆったりとしたメロディが心に染みる。美しいストリングスのアレンジも印象的だ。
6. Suddenly Mary
アルバムのハイライトの一つで、叙情的なメロディが際立つ珠玉のポップソング。「Suddenly Mary」というタイトルが示す通り、突然の変化や喪失をテーマにしており、歌詞の中には切ない物語が込められている。二人のコーラスが楽曲に温かみを加えている。
7. Help Yourself
アコースティックギターと軽やかなメロディが心地よい楽曲。自分自身を助けること、自己受容の大切さを歌っており、シンプルながら深いメッセージ性を持っている。聴いていて優しい気持ちになれる一曲だ。
8. Mrs. Green
アップビートなギターポップで、アルバムの中でも陽気な印象を与える一曲。ストーリーテリング的な歌詞とキャッチーなメロディが際立っており、60年代ポップの影響を感じる楽曲だ。
9. Everyone Moves Away
アルバム終盤に位置する、静かで切ない一曲。過ぎゆく時間や人間関係の移ろいをテーマにしており、淡々としたギターのリフレインが、楽曲全体に寂しげな雰囲気を作り出している。
10. Flood of Sunshine
アルバムのラストを飾る大作で、6分を超える長尺の楽曲。ゆっくりとしたテンポで始まり、徐々に盛り上がる構成が美しい。タイトル通り、最後には光が差し込むような希望を感じさせるエンディングで、アルバム全体を締めくくるにふさわしい一曲だ。
アルバム総評
『Dear 23』は、The Posiesの音楽的な成熟と、メロディメーカーとしての才能が開花したアルバムだ。DIYな初期作品の勢いを残しつつも、ジョン・レッキーのプロデュースにより、サウンドは洗練され、楽曲のクオリティも飛躍的に向上している。
特に「Golden Blunders」や「Suddenly Mary」のような珠玉のメロディは、パワーポップの名曲として語り継がれており、60年代の影響を受けながらも現代的な感性が息づいている。若者の純粋さや葛藤を描いた歌詞は普遍的であり、時を経ても多くのリスナーの心に響く。
Dear 23は、The Posiesのキャリアにおいて重要なマイルストーンとなっただけでなく、90年代初頭のパワーポップ・ムーブメントを象徴する傑作として、今なお愛され続けるアルバムだ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
1. Frosting on the Beater by The Posies
The Posiesの3rdアルバムで、よりロック色を強めた作品。力強いギターサウンドとキャッチーなメロディが際立つ一枚。
2. #1 Record by Big Star
パワーポップのルーツとも言えるアルバム。繊細なメロディとハーモニーが美しく、The Posiesの影響源としても欠かせない名盤。
3. Girlfriend by Matthew Sweet
90年代パワーポップの名作。甘酸っぱいメロディとパワフルなギターサウンドが、The Posiesファンにぴったり。
4. Skylarking by XTC
プロデュースはトッド・ラングレン。ポップセンスと実験的なアレンジが共存する傑作。The Posiesの美しいメロディが好きな人におすすめ。
5. Pet Sounds by The Beach Boys
60年代ポップの最高峰。美しいコーラスワークと繊細なアレンジは、The Posiesのサウンドにも通じるものがある。
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