アルバムレビュー:Crown of Creation by Jefferson Airplane

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

発売日:1968年9月

ジャンル:サイケデリック・ロック、アシッド・ロック、フォーク・ロック、サンフランシスコ・ロック、ブルース・ロック、プロト・ハード・ロック

概要

Jefferson Airplaneの『Crown of Creation』は、1960年代後半のサンフランシスコ・サイケデリック・ロックが、理想主義的な解放感から、より不穏で政治的、内省的な段階へ移行していく過程を刻んだ重要作である。1967年の『Surrealistic Pillow』によって「Somebody to Love」「White Rabbit」という決定的な楽曲を世に送り出したJefferson Airplaneは、同年の『After Bathing at Baxter’s』でより実験的かつ長尺志向のサイケデリック・ロックへ踏み込み、そして1968年の本作『Crown of Creation』で、曲ごとの完成度、社会的緊張、音響の鋭さをより引き締まった形で提示した。

Jefferson Airplaneは、Grateful Dead、Big Brother & the Holding Company、Quicksilver Messenger Service、Moby Grapeなどと並び、1960年代サンフランシスコのカウンターカルチャーを代表するバンドである。しかし、彼らの特徴は単にサイケデリックな浮遊感にあったわけではない。Marty Balin、Grace Slick、Paul Kantnerという複数のヴォーカル/ソングライターを中心に、フォーク、ブルース、ジャズ、ロック、政治的言語、SF的想像力を組み合わせ、ヒッピー文化の理想と現実の矛盾を同時に表現した点に大きな特色がある。

『Crown of Creation』が発表された1968年は、アメリカ社会にとって激動の年だった。ベトナム戦争、公民権運動、学生運動、政治的暗殺、世代間対立、ドラッグ・カルチャーの拡大とその影。1967年の「サマー・オブ・ラブ」が持っていた楽観的な共同体幻想は急速に揺らぎ、カウンターカルチャーは祝祭だけでなく、怒り、不信、分裂、暴力の気配を帯び始めていた。『Crown of Creation』には、まさにその空気が強く反映されている。

アルバム・タイトル曲「Crown of Creation」は、John WyndhamのSF小説『The Chrysalids』からの影響を持つ楽曲として知られ、進化、異端、共同体からの排除、旧世界への抵抗といったテーマを含んでいる。「創造の王冠」という言葉は、人類が自らを進化の頂点とみなす傲慢さを思わせる一方で、新しい価値観を持つ若者たちが旧社会の中で生き延びようとする姿にも重なる。Jefferson Airplaneはここで、サイケデリックな内面世界と、社会的な対立をSF的な寓話として結びつけている。

音楽的には、本作は『After Bathing at Baxter’s』ほど散漫で実験的ではなく、『Surrealistic Pillow』ほどポップに整理されてもいない。その中間に位置する作品であり、Jefferson Airplaneの鋭さが最もバランスよく表れたアルバムの一つである。楽曲は比較的短くまとまっているが、音はざらつき、ギターは攻撃的で、リズムは不安定な緊張を持つ。サイケデリック・ロックの幻想性と、後のハード・ロックに近い音の強さが共存している。

Grace Slickの存在感は本作でも非常に大きい。彼女の声は、一般的な女性ポップ・シンガーの柔らかさとは異なり、冷たく、強く、支配的で、時に呪術的である。「Lather」や「Greasy Heart」では、彼女の歌唱が楽曲の批評性や異様さを強めている。Grace Slickは、1960年代ロックにおける女性ヴォーカリストの役割を拡張した人物であり、単なる美しい声の持ち主ではなく、知的で挑発的な表現者だった。

Marty Balinのロマンティックでソウルフルな歌唱、Paul Kantnerの政治的・SF的な視点、Jorma Kaukonenのブルースに根ざした鋭いギター、Jack Casadyの非常に動きの多いベース、Spencer Drydenのジャズ的なドラムが組み合わさることで、Jefferson Airplaneの音楽は単純なフォーク・ロックやブルース・ロックに収まらない複雑な形を取る。特にJack Casadyのベースは、本作全体で非常に重要である。彼のベースは単なる低音の支えではなく、曲の内部でうねり、反発し、しばしばギターと同等の主張を持つ。

歌詞面では、成熟拒否、社会批判、身体性、自己像、幻想、政治的疎外が中心にある。「Lather」では大人になることへの違和感が童話的に描かれ、「In Time」では時間と関係の変化が歌われ、「Triad」では複数恋愛という当時としても挑発的なテーマが扱われる。「Greasy Heart」では美や消費文化への批判が強く表れ、「House at Pooneil Corners」では終末的なヴィジョンが展開される。アルバム全体に、1960年代後半のカウンターカルチャーが抱えた希望と不安の両方が刻まれている。

『Crown of Creation』は、サイケデリック・ロックを単なる幻覚的な音楽としてではなく、社会的な対立、個人の変容、共同体への疑問を表現する手段として用いたアルバムである。音楽は時に美しく、時に攻撃的で、時に皮肉で、時に終末的である。1967年の鮮やかな理想主義から、1969年以降のより政治的で過激な空気へ向かう途中にある作品として、本作はJefferson Airplaneのキャリアの中でも重要な転換点に位置している。

日本のリスナーにとって『Crown of Creation』は、Jefferson Airplaneを「Somebody to Love」「White Rabbit」のバンドとしてだけでなく、アルバム単位で深く理解するために有効な一枚である。『Surrealistic Pillow』のポップな入口からさらに進み、サンフランシスコ・サイケデリアが持っていた政治性、実験性、混乱、知的な批評性に触れることができる。『Crown of Creation』は、愛と平和の夢が崩れ始めた時代に、その亀裂を音にしたサイケデリック・ロックの重要作である。

全曲レビュー

1. Lather

アルバム冒頭の「Lather」は、Grace Slick作の楽曲であり、『Crown of Creation』の不思議で批評的な世界へ聴き手を導く重要なオープニングである。タイトルの「Lather」は人物名のように用いられているが、同時に泡や石鹸のような曖昧なイメージも連想させる。曲は童話的でありながら、内容は子どもであり続けることと、大人になることへの違和感を扱っている。

歌詞では、30歳になっても子どものような感覚を保つ人物が描かれる。1960年代カウンターカルチャーにおいて、成熟することはしばしば既存社会への順応を意味した。つまり「大人になる」とは、仕事、家庭、規律、戦争を支える社会制度に組み込まれることでもあった。「Lather」は、そのような成熟への拒否を、直接的な政治スローガンではなく、奇妙な寓話として表現している。

サウンドは、柔らかく幻想的で、アルバム冒頭としては意外に静かである。しかし、その静けさの中には不穏さがある。Grace Slickの声は冷静でありながら、どこか子守歌のようでもあり、同時に観察者のように距離を置いている。彼女は主人公を優しく見つめるだけでなく、社会がその人物をどう扱うかを冷たく示す。

「Lather」は、Jefferson Airplaneの知的なサイケデリアを象徴する曲である。派手なギターや長尺のジャムではなく、童話的なイメージを通じて、成熟、社会、個人の自由を問いかける。『Crown of Creation』が単なるロック・アルバムではなく、時代の価値観を批評する作品であることを最初に示している。

2. In Time

「In Time」は、Paul KantnerとMarty Balinによる楽曲であり、時間、関係、変化をテーマにしたサイケデリック・ロックである。タイトルが示す通り、この曲では時間の流れが重要な感覚として扱われている。愛や人間関係は固定されたものではなく、時間の中で変化し、揺らぎ、消えていく。

サウンドは、Jefferson Airplaneらしいフォーク・ロック的なメロディと、サイケデリックなギターの質感が組み合わさっている。Marty Balinの歌唱には、柔らかさと切迫感が同居しており、Grace Slickとは異なる人間的な温度がある。Jorma Kaukonenのギターは、曲に鋭い輪郭を与えながらも、過度に前に出すぎない。

歌詞では、時間がすべてを変えていくこと、今は理解できないことも、いずれ別の意味を持つことが示される。これは恋愛の歌としても読めるが、1960年代のカウンターカルチャー全体が時間とともに変質していく感覚にも重なる。理想が永遠に続くわけではなく、すべては時間の中で試される。

「In Time」は、アルバムの中で比較的穏やかな楽曲だが、Jefferson Airplaneの内省的な側面をよく表している。激しい社会批判や実験性だけでなく、時間と感情の変化を見つめる繊細さも、本作の重要な要素である。

3. Triad

「Triad」は、David CrosbyがThe Byrds在籍時に書いた楽曲であり、Jefferson Airplaneが本作で取り上げたことで広く知られるようになった。テーマは三角関係、あるいは三者による恋愛関係であり、1960年代の自由恋愛や既存の道徳観への挑戦を象徴する曲である。

歌詞では、語り手が二人の相手に対して、三人で愛し合うことを提案する。これは当時のポップ・ソングとしては非常に挑発的な内容だった。単なる浮気や不倫の歌ではなく、所有や排他性を前提とする一対一の恋愛制度そのものに疑問を投げかけている。カウンターカルチャーにおける性的解放の理想が、ここでは穏やかな口調で提示される。

Grace Slickの歌唱は、この曲に非常に適している。彼女はテーマを過剰に官能的に演じるのではなく、落ち着いた説得力を持って歌う。そのため、曲は単なるスキャンダラスな挑発ではなく、ひとつの思想的な提案として響く。彼女の声には冷静さと大胆さがあり、曲の異端性を支えている。

サウンドは比較的穏やかで、フォーク・ロック的な美しさを持つ。だからこそ、歌詞の内容がより際立つ。「Triad」は、『Crown of Creation』における社会規範への挑戦を象徴する曲であり、Jefferson Airplaneが60年代の自由と矛盾をどのように音楽化したかを示す重要な一曲である。

4. Star Track

「Star Track」は、タイトルから宇宙的なイメージを連想させる楽曲であり、Jefferson Airplaneのサイケデリックな側面が強く表れた曲である。宇宙、軌道、星の移動といったイメージは、1960年代サイケデリアにおいて内面の旅や意識の拡張と結びつくことが多かった。

サウンドは、比較的タイトなロック・ナンバーでありながら、ギターやヴォーカルの響きに幻覚的な質感がある。Jorma Kaukonenのギターはブルースを基盤にしつつ、音の伸びや歪みによってサイケデリックな空間を作る。Jack Casadyのベースは非常に動きがあり、曲に推進力と不穏なうねりを与える。

歌詞は、明確な物語というより、宇宙的なイメージと感覚の断片によって構成されている。これはサイケデリック・ロックに特有の方法であり、言葉が論理的に意味を説明するのではなく、イメージの連鎖を作る。聴き手は、歌詞を一つのメッセージとして読むよりも、音とともに浮遊するイメージとして受け取ることになる。

「Star Track」は、アルバムの中でSF的・宇宙的な感覚を担う曲である。タイトル曲「Crown of Creation」のSF的なテーマとも響き合い、本作が単なる社会批判ではなく、想像力によって現実をずらすサイケデリックな作品であることを示している。

5. Share a Little Joke

「Share a Little Joke」は、Marty Balinによる楽曲であり、アルバムの中では比較的親しみやすいメロディを持つ曲である。タイトルは「少し冗談を分け合う」という意味で、重い社会的テーマやサイケデリックな抽象性が多い本作の中で、少し人間的な温かさを感じさせる。

サウンドは、フォーク・ロック的な柔らかさを持ちながらも、Jefferson Airplaneらしい不安定な響きがある。Marty Balinのヴォーカルは、Grace Slickの冷たい鋭さとは異なり、感情をより直接的に伝える。彼の声はバンドにロマンティックで人間的な側面を与えている。

歌詞では、冗談や笑いを分け合うことの意味が歌われる。これは単なる軽いユーモアの歌ではなく、緊張した時代において、人と人が小さな笑いを共有することの重要性を示しているとも読める。1968年の不穏な空気の中で、笑いは現実逃避であると同時に、共同体を保つための小さな手段でもあった。

「Share a Little Joke」は、アルバム全体の緊張を少し和らげる曲である。大きな代表曲ではないが、Jefferson Airplaneの中にある人間的な親密さや、Marty Balinのソングライティングの魅力を示している。

6. Chushingura

「Chushingura」は、短い実験的なインストゥルメンタルであり、タイトルは日本の「忠臣蔵」を連想させる。Jefferson Airplaneがここで直接的に日本の物語を描いているというより、異国的な音響や断片的なイメージを用いて、アルバムの中に奇妙な間を作っていると考えられる。

サウンドは非常に短く、抽象的で、通常のロック・ソングの構造を持たない。アルバム全体の流れの中では、次のタイトル曲へ向かう前の一種の音響的な接続部として機能している。1960年代サイケデリック・ロックでは、こうした短い音響断片がアルバムに異様な空気を加えることが多かった。

「Chushingura」というタイトルは、日本の武士道、復讐、忠義、集団的な行動といったイメージを呼び込む可能性がある。アルバム全体が社会、共同体、異端、進化を扱っていることを考えると、この短い曲も、異文化の象徴を通じてアルバムのイメージを広げる役割を果たしている。

「Chushingura」は単独で聴く代表曲ではないが、『Crown of Creation』のサイケデリックなアルバム構成を支える小品である。音楽的な意味よりも、雰囲気と転換の役割が重要である。

7. If You Feel

「If You Feel」は、Marty BalinとGary Blackmanによる楽曲であり、アルバム後半のロック的なエネルギーを支える曲である。タイトルは「もし君が感じるなら」という条件文で、感情や直感を信じるサイケデリック時代の感覚を思わせる。

サウンドは、比較的力強いバンド演奏が中心である。Jorma Kaukonenのギターはブルース・ロック的な鋭さを持ち、Jack Casadyのベースは非常に動き回る。Jefferson Airplaneのリズム隊は単純なロックの土台にとどまらず、曲の内部で強く主張する。この立体的なアンサンブルが、バンドの大きな魅力である。

歌詞では、感情や内面の動きに従うことが示される。1960年代のサイケデリック文化において、「感じること」は理性や制度への対抗でもあった。社会が押しつける規範よりも、自分の感覚を信じること。それは自由の表現である一方、不安定さや混乱にもつながる。

「If You Feel」は、アルバムの中で大きな代表曲とはいえないが、Jefferson Airplaneのバンドとしての勢いをよく示している。歌詞の直感的なテーマと、演奏の生々しいロック感が結びついた曲である。

8. Crown of Creation

タイトル曲「Crown of Creation」は、本作の中心的な楽曲であり、アルバムのテーマを最も明確に示している。Paul Kantnerによるこの曲は、SF的な発想とカウンターカルチャー的な社会批判を結びつけた作品であり、Jefferson Airplaneの知的な側面を代表する一曲である。

歌詞は、John WyndhamのSF小説『The Chrysalids』の影響を受けたものとして知られ、異端の存在、新しい進化、旧い社会からの拒絶といったテーマを含んでいる。ここでの「創造の王冠」は、旧人類が自らを頂点とみなす傲慢さを示すと同時に、新しい感性を持つ者たちがその頂点を更新しようとするイメージも持つ。カウンターカルチャーの若者たちは、既存社会から見れば異端だったが、自分たちを新しい未来の担い手とも考えていた。

サウンドは、重く、緊張感があり、非常に印象的である。Grace SlickとPaul Kantnerの声が作る硬質な響き、Jorma Kaukonenのギター、Jack Casadyのベースが、曲に不吉な推進力を与える。ポップな親しみやすさよりも、宣言的な強さがある。

「Crown of Creation」は、Jefferson Airplaneが単なるラヴ&ピースのバンドではなかったことを示す重要曲である。ここには、社会への拒絶、進化への希求、異端者としての誇りがある。1968年の空気を凝縮した、アルバムの核心である。

9. Ice Cream Phoenix

Ice Cream Phoenix」は、Charles Cockey作の楽曲であり、タイトルからして奇妙でサイケデリックなイメージを持つ。アイスクリームという甘く溶けるものと、灰から蘇る不死鳥フェニックスの組み合わせは、儚さと再生、快楽と変容を同時に連想させる。

サウンドは、比較的フォーク・ロック的な感触を持ちながら、Jefferson Airplaneらしい不安定な響きが加わっている。メロディは美しいが、完全に穏やかではない。バンドのアンサンブルには、どこか揺らぎと緊張がある。

歌詞は、明確な物語を伝えるというより、イメージの連なりによって幻想的な世界を作る。タイトルのように、甘さ、溶解、再生、夢のような感覚が漂う。サイケデリック・ロックにおいて、こうした言葉の組み合わせは、論理的な意味よりも、聴き手の想像力を刺激する役割を持つ。

「Ice Cream Phoenix」は、アルバムの中で少し柔らかいサイケデリックな色彩を加える曲である。社会批判や終末感が強い本作の中で、夢のようなイメージを提示し、音楽的な幅を広げている。

10. Greasy Heart

「Greasy Heart」は、Grace Slickによる楽曲であり、本作の中でも特に鋭い社会批判を持つ曲である。タイトルは「脂ぎった心」とでも訳せる不快なイメージを含み、外見、美、消費文化、自己演出への皮肉が込められている。

歌詞では、化粧、流行、見た目の作り込み、他者からどう見られるかへの執着が批判的に描かれる。Grace Slickは、美しく見られることを求められる女性像を内側から解体するように歌う。この曲は、単なる恋愛曲ではなく、女性の身体や外見が消費される文化への攻撃として読むことができる。

サウンドは、硬く、ブルース・ロック的な力を持っている。Grace Slickのヴォーカルは非常に強く、冷たく、相手を突き刺すように響く。彼女は自分自身もまたロック・スターとして見られる立場にありながら、その見られ方を批評している。この自己意識の鋭さが、曲に深みを与えている。

「Greasy Heart」は、『Crown of Creation』の中でも特に現代的に響く曲である。美の規範、自己演出、消費文化への批判は、現在のポップ・カルチャーにも通じる。Grace Slickの作家性と批評性が強く表れた重要曲である。

11. The House at Pooneil Corners

アルバムの最後を飾る「The House at Pooneil Corners」は、終末的なヴィジョンを持つ楽曲であり、『Crown of Creation』を不穏に締めくくる。前作『After Bathing at Baxter’s』にも「The Ballad of You and Me and Pooneil」があり、「Pooneil」はJefferson Airplaneのサイケデリックな想像世界における象徴的な言葉として機能している。

サウンドは、重く、激しく、アルバムの中でも最も破壊的な雰囲気を持つ。ギター、ベース、ドラムは緊張感を高め、ヴォーカルは世界の崩壊を告げるように響く。ここには、『Surrealistic Pillow』のようなフォーク・ロック的な柔らかさはほとんどない。むしろ、サイケデリック・ロックが終末的なハード・ロックへ接近している。

歌詞では、世界の破壊、都市の崩壊、人類の終わりのようなイメージが描かれる。1968年の政治的・社会的な不安を背景に、この曲はカウンターカルチャーの夢が見た悪夢のように響く。愛と平和の理想は、ここでは終末のヴィジョンに変わっている。

「The House at Pooneil Corners」は、本作の終曲として非常に強い意味を持つ。アルバムは童話的な「Lather」で始まり、終末的なこの曲で終わる。その流れは、無垢な夢から破局への移行を示している。『Crown of Creation』が1968年の不穏な時代精神を深く反映した作品であることを、最後に強烈に印象づける楽曲である。

総評

『Crown of Creation』は、Jefferson Airplaneのキャリアにおいて、ポップな成功と実験的野心、カウンターカルチャーの理想とその崩壊、個人の自由と社会的対立が高い密度で交差した重要作である。『Surrealistic Pillow』のような分かりやすいヒット曲の集合ではなく、『After Bathing at Baxter’s』ほど拡散した実験作でもない。本作はその中間で、曲ごとの輪郭を保ちながら、1968年の不穏な空気を鋭く音楽化している。

アルバムの中心にあるのは、変化する世界への不信と、新しい人間像への希求である。「Lather」では大人になることへの拒否が童話的に描かれ、「Triad」では既存の恋愛制度への挑戦が示され、「Crown of Creation」では旧社会に対する異端者の自己認識が語られる。「Greasy Heart」では消費される美や女性像への批判があり、「The House at Pooneil Corners」では終末的な社会崩壊が描かれる。これらはすべて、1960年代後半のカウンターカルチャーが抱えた問いと結びついている。

Grace Slickの存在は、本作の強い個性を支えている。彼女の声は、単に美しい女性ヴォーカルではなく、知的で、冷たく、挑発的で、時に支配的である。「Lather」「Triad」「Greasy Heart」では、彼女の歌唱と作家性が、アルバムに鋭い批評性を与えている。Grace Slickは、60年代ロックにおける女性像を大きく変えた人物の一人であり、本作はその重要な証拠である。

Marty Balinの役割も重要である。彼の歌唱は、Grace SlickやPaul Kantnerとは異なる柔らかさと感情の温度を持つ。「In Time」や「Share a Little Joke」では、バンドの中に人間的な親密さやロマンティックな陰影を加えている。Jefferson Airplaneは、複数の声が同時に存在するバンドであり、その多声性が作品の複雑さを生んでいる。

Paul Kantnerは、本作にSF的、政治的、共同体的な視点を持ち込んでいる。タイトル曲「Crown of Creation」や「The House at Pooneil Corners」には、彼の世界観が強く表れている。彼の歌詞は、個人的な恋愛だけでなく、人類、社会、進化、破滅といった大きなテーマを扱う。これがJefferson Airplaneを単なるフォーク・ロック・バンド以上の存在にしている。

Jorma KaukonenのギターとJack Casadyのベースは、本作の音楽的な緊張を生み出している。Kaukonenのギターはブルースを基盤にしながら、サイケデリックな歪みと鋭いフレーズで曲を切り開く。Casadyのベースは非常に動きが多く、リズムの下支えを超えて、曲の中で独自の声を持つ。Spencer Drydenのドラムも、ジャズ的な柔軟さとロック的な推進力を併せ持ち、バンド全体を立体的にしている。

『Crown of Creation』のサウンドは、1968年のロックの変化をよく示している。フォーク・ロックのメロディ、サイケデリックな音響、ブルース・ロックの鋭さ、ハード・ロック前夜の攻撃性が混ざっている。曲は比較的短くまとまっているが、その内部には強い緊張がある。音は美しく漂うだけでなく、しばしばざらつき、攻撃的で、不安定である。

本作の弱点を挙げるなら、『Surrealistic Pillow』のような即効性のある代表曲が少ないため、初めてJefferson Airplaneを聴くリスナーにはやや地味に感じられる可能性がある。また、歌詞や時代背景を理解しないと、楽曲の鋭さが伝わりにくい部分もある。しかし、アルバム全体として聴くと、その凝縮された緊張感と批評性は非常に強い。

『Crown of Creation』は、サイケデリック・ロックが単にドラッグ体験や幻想を表現する音楽ではなく、社会的な異議申し立て、個人の変容、既存制度への疑問、終末的な時代感覚を表現する音楽でもあったことを示している。愛と平和の時代は、ここではすでに亀裂を抱えている。その亀裂を、Jefferson Airplaneは美化せず、鋭い音と複数の声で描き出した。

日本のリスナーにとって本作は、60年代サンフランシスコ・ロックの成熟と不安を理解するために重要なアルバムである。『Surrealistic Pillow』で入口を得た後、本作を聴くことで、Jefferson Airplaneがより政治的で、知的で、暗いサイケデリアを持つバンドだったことが分かる。『Crown of Creation』は、1968年という時代の緊張を閉じ込めた、サイケデリック・ロックの重要なドキュメントである。

おすすめアルバム

1. Surrealistic Pillow by Jefferson Airplane

1967年発表の代表作。「Somebody to Love」「White Rabbit」を収録し、Jefferson Airplaneを全国的に知らしめたアルバムである。『Crown of Creation』よりもフォーク・ロック色とポップ性が強く、バンドの入口として重要である。

2. After Bathing at Baxter’s by Jefferson Airplane

1967年発表の実験的作品。長尺の構成、サイケデリックな音響、断片的な曲展開が特徴であり、『Crown of Creation』へ向かう前のより拡散したバンドの姿を確認できる。Jefferson Airplaneの実験精神を理解するうえで重要である。

3. Volunteers by Jefferson Airplane

1969年発表の政治色の強いアルバム。反戦、革命、共同体意識がより直接的に表れた作品であり、『Crown of Creation』にあった社会的緊張がさらに外向きに展開されている。60年代末の政治的ロックを理解するために欠かせない。

4. Cheap Thrills by Big Brother & the Holding Company

1968年発表のサンフランシスコ・ロックの重要作。Janis Joplinの圧倒的な歌唱を中心に、ブルース・ロックとサイケデリックな熱気が混ざり合う。Jefferson Airplaneとは異なる形で、同時代の西海岸カウンターカルチャーを体現している。

5. Anthem of the Sun by Grateful Dead

1968年発表の実験的アルバム。ライブ録音とスタジオ編集を組み合わせ、サイケデリック・ロックを即興と音響実験の方向へ押し広げた作品である。『Crown of Creation』と比較すると、同じサンフランシスコでも、Jefferson Airplaneの曲志向とGrateful Deadの即興志向の違いが見えてくる。

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