
発売日: 1996年9月2日
ジャンル: ブリットポップ、オルタナティブロック
Suedeの再生と勝利――ポップに振り切った華やかなブリットポップの到達点
1996年にリリースされた『Coming Up』は、Suedeにとって最も商業的に成功したアルバムであり、新たなギタリスト、リチャード・オークスを迎えた再生の作品となった。
前作『Dog Man Star』(1994年)は壮大でドラマチックな作品だったが、本作ではシンプルでキャッチーなポップサウンドへとシフトし、ブリットポップの時代に完全にフィットするアルバムに仕上がった。新加入のリチャード・オークスはバーナード・バトラーの陰鬱なギターとは対照的に、明るく軽快なプレイスタイルを披露し、アルバム全体のトーンを大きく変化させている。
アルバムからは5枚のシングルがリリースされ、すべてがUKチャートTOP10入りを果たし、バンドにとって最大のヒット作となった。
全曲レビュー
1. Trash
アルバムのリードシングルであり、Suedeの代表曲のひとつ。アウトサイダーへの賛歌とも言える歌詞と、開放的でキャッチーなギターリフが印象的。ブレット・アンダーソンのボーカルも力強く、ポジティブなエネルギーに満ちている。
2. Filmstar
シンプルなロックンロールナンバー。ハリウッドの虚構と欺瞞を風刺した歌詞と、荒々しいギターリフが特徴的。ライブ映えするアグレッシブな楽曲。
3. Lazy
軽快なポップソングで、アルバムの中でも最もシンプルな楽曲。無気力な若者を描いた歌詞と、楽しげなメロディのギャップがSuedeらしい魅力を生み出している。
4. By the Sea
アルバムの中でも特に美しいバラード。海辺の幻想的な風景を描きながら、切なくもロマンティックな雰囲気を持つ楽曲。
5. She
グラムロックの影響を色濃く受けた、攻撃的でセクシーな楽曲。Suede特有の退廃的な美学とキャッチーなサウンドが融合している。
6. Beautiful Ones
本作の中でも特に人気のあるシングル。「美しくも堕落した人々」を讃えるアンセムであり、シンガロング必至のキャッチーなサビが印象的。Suedeのライブでも定番の楽曲。
7. Starcrazy
グルーヴ感のあるギターリフと、浮遊感のあるメロディが特徴的な楽曲。スターを夢見る若者たちの虚しさを描く。
8. Picnic by the Motorway
ダークな雰囲気のバラード。アメリカのロードムービーのような風景を描きながら、恋愛と破滅をテーマにしたストーリーが展開される。
9. The Chemistry Between Us
アルバムの中でも特に耽美的な楽曲。官能的な歌詞と、サイケデリックな雰囲気のアレンジが融合し、幻想的な世界観を作り上げている。
10. Saturday Night
アルバムのラストを飾る、ロマンティックなバラード。シンプルなピアノの旋律とブレットのエモーショナルなボーカルが、アルバム全体を感動的に締めくくる。
総評
『Coming Up』は、Suedeが過去の重圧から解放され、ポップな魅力を最大限に発揮した作品であり、バンドのキャリアの中で最もヒットしたアルバムとなった。前作『Dog Man Star』の内省的でドラマチックなスタイルから一転し、よりダイレクトでキャッチーなサウンドを前面に押し出している。
バーナード・バトラーの脱退後、「Suedeは終わった」と言われていた状況からの完全復活を証明したアルバムであり、シングル「Trash」「Beautiful Ones」「Saturday Night」などは今もなおSuedeの代表曲として親しまれている。
本作は、ブリットポップ時代の象徴的な作品でありながらも、単なる流行ではなく、今聴いても色褪せない普遍的な魅力を持つアルバムとして評価され続けている。
おすすめアルバム
- Suede – Dog Man Star (1994)
- 『Coming Up』とは対照的に、ドラマチックで芸術性の高い作品。
- Blur – Parklife (1994)
- 同時代のブリットポップを代表する作品で、キャッチーなポップセンスが共通する。
- Pulp – Different Class (1995)
- Suedeと同じく、退廃的な美学を持つブリットポップの傑作。
- David Bowie – Hunky Dory (1971)
- Suedeのルーツとも言えるグラムロックの名盤。
- Oasis – (What’s the Story) Morning Glory? (1995)
- 90年代UKロックを象徴するアルバムで、『Coming Up』と同時代の作品。
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- 90年代UKロックを象徴するアルバムで、『Coming Up』と同時代の作品。
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