アルバムレビュー:Come of Age by The Vaccines

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

発売日:2012年9月3日

ジャンル:インディー・ロック、ガレージ・ロック、ポスト・パンク・リヴァイヴァル、パワー・ポップ

概要

The Vaccinesのセカンド・アルバム『Come of Age』は、2010年代初頭の英国インディー・ロックにおいて、デビュー作の勢いを受け継ぎながら、より自己批評的で、よりロックンロールの古典的な語法へ接近した作品である。2011年のデビュー・アルバム『What Did You Expect from The Vaccines?』は、短く鋭い楽曲、シンプルなギター・リフ、キャッチーなコーラス、パンク以降の即効性を武器に、The Vaccinesを一気に英国ギター・ロックの中心へ押し上げた。だが、その成功は同時に、バンドに対して「次に何をするのか」という課題を突きつけた。

『Come of Age』というタイトルは、「成熟する」「大人になる」という意味を持つ。これはセカンド・アルバムとして非常に象徴的である。デビュー作で若さ、衝動、シンプルさを前面に出したバンドが、次作で自分たちの立場や表現をどう更新するのか。本作は、その問いに対して、音楽的にはよりクラシックなロックンロール、ガレージ・ロック、パワー・ポップ、アメリカン・ロックの要素を取り込みながら、歌詞面では自己嫌悪、不安、恋愛の空虚、若さの終わり、社会的な居心地の悪さを描くことで答えている。

The Vaccinesは、Arctic Monkeys以降の英国ギター・ロックの文脈で語られることが多いが、彼らの音楽性はより単純化されたロックンロールの快感に根ざしている。The Strokes、Ramones、The Jesus and Mary Chain、The Modern Lovers、The Replacements、初期The Libertines、さらにはBuddy HollyやThe Everly Brothers的なシンプルなメロディ感覚まで、彼らの背後には複数のロック史的参照がある。デビュー作ではそれらが非常に短く、勢いのある形で提示されていたが、『Come of Age』ではテンポや曲調に幅が生まれ、より土臭く、時にブルージーで、時に皮肉なポップ・ロックへと変化している。

本作のプロデュースを手がけたのはEthan Johnsである。彼はKings of Leon、Ryan Adams、Laura Marlingなどとの仕事でも知られ、生々しいバンド・サウンドやアメリカーナ的な質感を引き出すことに長けたプロデューサーである。そのため『Come of Age』には、デビュー作のような鋭く圧縮されたインディー・ロック感だけでなく、より余裕のあるドラム、ざらついたギター、ロックンロール的な空間がある。音は過度に洗練されておらず、むしろ少し粗く、ライブ感を残している。

キャリア上の位置づけとして、『Come of Age』はThe Vaccinesが「期待された新人」から「継続するロック・バンド」へ移行するための作品である。デビュー作の成功は鮮烈だったが、そのスタイルをそのまま繰り返せば、バンドは短命なインディー・ブームの一部として消費される危険があった。本作では、彼らは過度に実験的な方向へ進むのではなく、むしろ古典的なロックの語法に立ち返りながら、自分たちの弱さや不器用さを歌うことで、より人間的な奥行きを獲得しようとしている。

歌詞面で特に重要なのは、フロントマンJustin Youngの自己批評的な視点である。The Vaccinesの歌詞は、ロマンティックな自信に満ちているというより、むしろ自信のなさ、皮肉、逃避、自己嫌悪、感情の未熟さを含んでいる。本作ではその傾向がより強まり、恋愛や若者文化を描きながらも、それを単純に美化しない。タイトルの『Come of Age』は成熟を意味するが、アルバム全体からは「本当に成熟できているのか」という疑問も漂う。大人になろうとしているが、まだ不安定で、失敗し、同じことを繰り返してしまう。その中途半端な状態こそが、本作の主題である。

2010年代初頭の英国ロックを考えるうえでも、本作は興味深い。2000年代半ばのガレージ・ロック・リヴァイヴァル、ポスト・パンク・リヴァイヴァルの熱が一段落し、ギター・バンドが新たな存在意義を模索していた時期に、The Vaccinesはあえてシンプルなロック・ソングの強さを提示した。革新的なアルバムではないが、シンプルなギター、短い曲、明快なメロディ、皮肉な歌詞という組み合わせによって、英国インディー・ロックの大衆的な魅力を再確認させる作品である。

全曲レビュー

1. No Hope

オープニング曲「No Hope」は、アルバムのテーマを最も明確に提示する楽曲である。タイトルは「希望がない」という意味であり、いきなり悲観的な言葉から始まる。しかし曲調は軽快で、ギターは明るく鳴り、メロディも親しみやすい。この明るいロックンロールの表面と、内側にある自己不信の対比が、本作全体の重要な特徴である。

歌詞では、語り手が自分自身の未熟さや空虚さを自覚している。若さに伴う万能感ではなく、むしろ「自分には何もない」「何者にもなれていない」という感覚が前面に出る。これは単なる個人的な弱音ではなく、2010年代初頭の若い世代が抱えていた停滞感とも重なる。大きな理想や反抗の物語が見えにくい時代に、若者は何に向かって成長すればよいのか。「No Hope」は、その問いを軽やかなギター・ロックの形で提示する。

音楽的には、デビュー作の勢いを引き継ぎながらも、やや余裕のあるテンポとロックンロール的なグルーヴがある。ギターはシンプルだが、リフとコード進行の分かりやすさによって曲が強く印象に残る。Justin Youngのヴォーカルは、感情を過度に爆発させるのではなく、少し投げやりな距離感を保つ。その冷めた声が、歌詞の皮肉とよく合っている。

「No Hope」は、アルバムの導入として非常に効果的である。タイトルだけなら暗いが、曲はポップで、聴き手をすぐに引き込む。The Vaccinesが得意とする、絶望を軽いロックンロールの形で鳴らす手法が、ここで明確に示されている。

2. I Always Knew

「I Always Knew」は、本作の中でも特にポップな魅力が強い楽曲である。タイトルは「ずっと分かっていた」という意味を持ち、恋愛における予感や確信をテーマにしている。デビュー作の荒々しさと比べると、ここではメロディがより丸みを帯び、パワー・ポップ的な明快さが前面に出ている。

サウンドは、軽快なギターとタイトなリズムを中心に構成されている。曲は非常にコンパクトで、サビも分かりやすい。The Vaccinesのソングライティングの強みは、複雑な展開に頼らず、短い時間でフックを作る能力にある。この曲では、その能力が非常にポジティブな形で発揮されている。

歌詞では、相手との関係について、以前から何かを感じていたという語り手の視点が描かれる。ただし、その確信は必ずしも成熟した愛の確信ではない。むしろ、若い恋愛にありがちな思い込みや、自分の感情を後から意味づけする態度も含まれている。「ずっと分かっていた」という言葉はロマンティックだが、同時に少し自己中心的にも響く。その曖昧さが、The Vaccinesらしい。

「I Always Knew」は、『Come of Age』の中で最も親しみやすいシングル的な楽曲のひとつであり、バンドのポップ・センスを示している。暗い自己批評だけでなく、素直に口ずさめるギター・ポップを作れる点が、The Vaccinesの大きな魅力である。

3. Teenage Icon

「Teenage Icon」は、本作の中心的な楽曲のひとつであり、The Vaccinesの自己認識を象徴する曲である。タイトルは「十代のアイコン」を意味するが、歌詞ではそのような存在になれない自分、あるいはアイコンとして期待されることへの違和感が描かれる。デビュー作の成功によって、バンドは若い世代のロック・アイコンとして見られるようになったが、この曲ではその期待を皮肉に受け止めている。

音楽的には、非常にキャッチーなギター・ロックであり、短く鋭い。リフはシンプルで、コーラスはすぐに耳に残る。The Vaccinesはここで、あえてロック・スター的な曲調を使いながら、その中でロック・スターになりきれない自分を歌っている。この自己矛盾が曲の面白さである。

歌詞では、語り手は自分が「teenage icon」ではないと宣言する。これは謙遜ではなく、むしろ時代そのものへの皮肉でもある。かつてロック・ミュージックは若者の反抗や憧れを象徴するものだったが、2010年代の英国において、その役割はすでに不安定になっていた。The Vaccinesはロック・バンドでありながら、自分たちがロック神話の中心に立てるとは信じていない。その醒めた視点が、曲全体に独特の軽さと苦味を与えている。

「Teenage Icon」は、The Vaccinesの強みである自己卑下とポップな即効性が最もよく結びついた曲である。聴き手はサビを楽しみながら、その裏にあるロック・スター幻想への不信も受け取ることになる。

4. All in Vain

「All in Vain」は、アルバムの中でややテンポを落とし、よりメランコリックな感情を前面に出す楽曲である。タイトルは「すべて無駄に」という意味を持ち、努力や感情が報われないことへの諦めが感じられる。『Come of Age』には、若さの勢いだけでなく、その勢いが空回りする感覚が繰り返し登場するが、この曲はその側面を担っている。

サウンドは、前曲までの軽快なロックンロールよりも落ち着いており、ギターの響きにもやや陰りがある。メロディはシンプルだが、歌には沈んだ感情がある。The Vaccinesは大きくドラマティックなバラードを作るタイプではないが、こうした中速の曲で、乾いた哀愁を出すことに長けている。

歌詞では、何かを求めて行動しても、それが結局無駄に終わってしまうという感覚が描かれる。恋愛の文脈にも読めるが、それ以上に、自分の努力や成長そのものへの疑念としても響く。大人になること、成功すること、誰かに認められること。それらに向かって進んでも、最終的には何も変わらないのではないかという不安がある。

「All in Vain」は、アルバム全体の明るい表面に影を与える重要な曲である。派手なフックは少ないが、The Vaccinesの歌詞にある空虚感をよく示している。

5. Ghost Town

「Ghost Town」は、本作の中でもやや不穏なムードを持つ楽曲である。タイトルは「ゴーストタウン」、つまり人のいなくなった街、かつて活気があったが今は空っぽになった場所を意味する。英国のロック史において「Ghost Town」という言葉は、The Specialsの名曲を思わせる社会的な響きも持つが、The Vaccinesのこの曲では、より個人的で、荒涼とした感覚が強い。

サウンドは、ガレージ・ロック的なざらつきと、少し西部劇的な乾いた響きを持っている。ギターは鋭く鳴るが、曲全体には空虚な空間がある。デビュー作のような都市的なインディー・ロックとは異なり、本作では時折、アメリカン・ロックやロカビリーに近い感触が現れる。「Ghost Town」はその代表的な曲である。

歌詞では、関係の終わりや、感情が失われた後に残る空虚な場所が描かれる。ゴーストタウンは物理的な街であると同時に、心の状態でもある。誰かが去った後、あるいは若さや期待が失われた後、そこには建物だけが残り、生命感が消える。このイメージは、アルバム全体の「成熟」のテーマともつながる。大人になることは、時に自分の中のかつて活気があった場所が空っぽになることでもある。

「Ghost Town」は、本作にロックンロールの陰影を加える楽曲であり、The Vaccinesが単なる軽快なインディー・バンドではなく、荒涼感や虚無感も表現できることを示している。

6. Aftershave Ocean

「Aftershave Ocean」は、タイトルからして奇妙で印象的な楽曲である。「アフターシェーブの海」という言葉は、男性的な身だしなみ、人工的な香り、若者の自己演出、そして広大な海というイメージを不自然に結びつけている。このやや滑稽で、少し不格好な言葉の組み合わせが、The Vaccinesらしい皮肉な感覚をよく表している。

音楽的には、軽快なギター・ポップであり、メロディも比較的明るい。サウンドには1960年代ポップやサーフ・ロック的な軽さも感じられるが、歌詞のイメージはどこか歪んでいる。清潔感や青春の爽やかさを連想させる音の裏に、自己演出の空虚さがある。

歌詞では、若い男性の不器用な自意識や、恋愛における自己像の作り方が描かれているように響く。アフターシェーブは、大人っぽさや魅力を演出する道具だが、それが「海」になるほど過剰になると、むしろ滑稽になる。ここには、大人になろうとする若者の背伸びと、その背伸びがどこか不自然に見えるという視点がある。

「Aftershave Ocean」は、『Come of Age』のタイトルに含まれる成熟のテーマを、ユーモラスかつ皮肉に扱った曲である。大人になることは、自然に変化することではなく、しばしば不器用な演技を伴う。その演技の可笑しさと切なさが、この曲にはある。

7. Weirdo

「Weirdo」は、本作の中でも特に自己認識のテーマが強い楽曲である。タイトルは「変人」「風変わりな人」を意味し、自分が周囲にうまく馴染めないという感覚を端的に示している。The Vaccinesの歌詞には、ロック・バンドらしい自信よりも、むしろ自分の不器用さや居心地の悪さを認める視点が多い。この曲はその代表例である。

サウンドは、比較的シンプルなロック・アレンジであり、ギターとリズムが曲をまっすぐ支える。だが、ヴォーカルにはどこか不安げなニュアンスがある。曲調は重すぎず、むしろ軽快さを保っているため、歌詞の自己嫌悪が過度に陰鬱にならない。The Vaccinesは、暗いテーマをポップなフォーマットに入れることで、聴きやすさと苦味を両立させる。

歌詞では、語り手が自分を「weirdo」と見なす感覚が描かれる。これは単なる個性の誇示ではない。むしろ、自分が普通ではないことへの不安や、他者との距離を埋められないことへの苛立ちがある。現代のインディー・ロックにおいて、アウトサイダー性はしばしば魅力として消費されるが、この曲ではそれがもっと素朴で、少し情けないものとして扱われている。

「Weirdo」は、本作の「大人になること」の裏側にある、いつまでも消えない自己違和感を表す楽曲である。成熟しても、自分がどこか変だという感覚は消えない。その事実を、The Vaccinesは軽いロック・ソングとして提示している。

8. Bad Mood

「Bad Mood」は、タイトル通り「機嫌の悪さ」「気分の落ち込み」をテーマにした楽曲である。本作の中でも特に荒々しく、ガレージ・ロック的な勢いが強い。The Vaccinesの初期衝動が再び顔を出す曲であり、短く、直接的で、感情の処理が雑なところに魅力がある。

サウンドは歪んだギターと勢いのあるリズムが中心で、曲全体に苛立ちがある。ここでは洗練よりも、感情の瞬発力が重視されている。デビュー作の楽曲に近い短さと鋭さを持ちながら、本作らしい少し乾いたロックンロール感もある。

歌詞では、原因がはっきりしない不機嫌や、自分でも制御できない感情が描かれる。若さの不安や自己嫌悪は、必ずしも深刻な言葉で表現されるとは限らない。時には単に「機嫌が悪い」という形で現れる。この曲は、その単純で厄介な感情をそのまま音にしている。

「Bad Mood」は、アルバム中盤にエネルギーを与える曲である。深い内省よりも、苛立ちをギターで吐き出すような楽曲であり、The Vaccinesのロック・バンドとしての即効性を再確認させる。

9. Change of Heart pt.2

Change of Heart pt.2」は、タイトルが示すように、心変わりや感情の変化を扱う楽曲である。「pt.2」とあることで、語られていない前史や、同じ問題が繰り返されている感覚も生まれる。The Vaccinesの歌詞では、恋愛はしばしば一貫した愛情ではなく、揺れや自己矛盾として描かれる。この曲もその延長にある。

サウンドは、ややゆったりとしたロックンロールであり、メロディには哀愁がある。ギターは派手ではないが、曲に温かいざらつきを与えている。アルバム後半に置かれることで、作品全体に少し落ち着いたムードをもたらしている。

歌詞では、気持ちが変わること、あるいは相手の気持ちが変わってしまうことへの戸惑いが描かれる。恋愛において、心変わりはしばしば裏切りとして受け止められるが、実際には人間の感情は常に変化している。成熟とは、その変化を受け入れることでもある。しかし、語り手はそれを簡単には受け入れられない。この未熟さが、曲の感情的な核である。

「Change of Heart pt.2」は、The Vaccinesが描く恋愛の不安定さをよく示している。明確な悪者がいるわけではなく、ただ感情が変わってしまう。そのどうしようもなさが、シンプルなロック・ソングの中に込められている。

10. I Wish I Was a Girl

「I Wish I Was a Girl」は、本作の中でも特に印象的なタイトルを持つ楽曲である。直訳すれば「女の子だったらよかったのに」となる。これは単純なジェンダー表現として読むだけでなく、自己嫌悪、自己像の不満、異なる存在への憧れ、男性性への違和感を含む言葉として解釈できる。

音楽的には、比較的軽快なロック・ソングであり、タイトルの複雑さに対して曲調はあくまでポップである。このギャップが重要である。The Vaccinesは深刻なテーマを大げさに扱うのではなく、少し投げやりで皮肉なポップ・ソングとして提示する。そのため、曲は重くなりすぎず、むしろ曖昧な感情を保つ。

歌詞では、自分自身への不満や、別の存在であればもっと楽だったのではないかという感覚が描かれる。ここには、男性として期待される振る舞いや、ロック・バンドのフロントマンとしての役割への違和感も読み取れる。強く、自信に満ち、欲望を明確に表現する男性像に対して、語り手はそこに馴染めない。だからこそ、別の性や別の自己を想像する。

この曲は、『Come of Age』における成熟のテーマを非常に興味深い形で広げている。大人になることは、社会が用意した性別や役割を自然に受け入れることではない。むしろ、その役割に違和感を持ち、自分が何者なのかを疑うことでもある。「I Wish I Was a Girl」は、その不安を短く鋭く示す楽曲である。

11. Lonely World

「Lonely World」は、アルバム終盤に置かれた、タイトル通り孤独をテーマにした楽曲である。『Come of Age』の多くの曲では、恋愛や自己像の不安が軽快なロック・サウンドの中に埋め込まれていたが、この曲では孤独という言葉がより直接的に前面に出る。

サウンドは、やや落ち着いたテンポで、ギターの響きにも寂しさがある。派手なクライマックスを作るのではなく、乾いたロックンロールの中に孤独感を漂わせる。The Vaccinesの音楽における孤独は、深夜の静寂というより、人の多い場所にいても自分だけが浮いているような感覚に近い。

歌詞では、世界そのものが孤独な場所として描かれる。これは個人的な失恋だけでなく、社会全体への感覚でもある。人とつながっているようで、実際には誰も完全には理解し合えない。若さの終わりに近づくにつれて、その事実がよりはっきり見えてくる。タイトルの「Lonely World」は、個人の気分を超えた、時代的な孤独感を示している。

「Lonely World」は、アルバム終盤に重みを加える楽曲である。ここまで歌われてきた自己嫌悪、変人意識、心変わり、性別への違和感、不機嫌さが、最終的に孤独という大きな感情へ収束していく。

12. Runaway

アルバムを締めくくる「Runaway」は、逃避をテーマにした楽曲である。タイトルは「逃げる人」「逃亡者」を意味し、『Come of Age』の結末として非常にふさわしい。大人になること、自己を受け入れること、関係に向き合うこと。そうした課題が提示されてきたアルバムの最後に、語り手は解決ではなく逃避へ向かう。

音楽的には、落ち着いたロック・ソングとして始まり、アルバムの終幕にふさわしい余韻を残す。過度に劇的な終わり方ではないが、曲には旅立ちや離脱の感覚がある。The Vaccinesはここで、成熟の物語を完全な成長や克服として終わらせない。むしろ、逃げることもまた若さの一部であり、時には人間的な選択であると示している。

歌詞では、どこかへ逃げたいという欲求が描かれる。これは責任から逃げることでもあり、自分自身から逃げることでもある。しかし、逃避は必ずしも否定されていない。現実に向き合い続けることができない時、人は一度距離を置く必要がある。「Runaway」は、その弱さを認める曲である。

アルバムの最後にこの曲が置かれることで、『Come of Age』というタイトルは皮肉を帯びる。成熟するはずのアルバムは、最終的に成熟の完成ではなく、逃げ出したいという感情で終わる。だが、その正直さこそが本作の魅力である。The Vaccinesは、大人になったふりをするのではなく、大人になりきれない自分をロック・ソングとして鳴らしている。

総評

『Come of Age』は、The Vaccinesがデビュー作の勢いを保ちながら、自分たちの音楽をより広いロックンロールの文脈へ接続しようとしたアルバムである。『What Did You Expect from The Vaccines?』のような即効性や初期衝動を期待すると、本作はややテンポが落ち、粗さや余白が増えたように感じられるかもしれない。しかし、その変化こそがタイトルに示された「成長」と関係している。

本作の音楽性は、インディー・ロックの鋭さだけでなく、1950年代から1970年代のロックンロール、ガレージ・ロック、パワー・ポップ、アメリカン・ロックの語法をより強く取り込んでいる。ギター・サウンドはシンプルで、曲の構成も大きく複雑化しているわけではないが、デビュー作よりもテンポや質感に幅がある。Ethan Johnsのプロダクションによって、バンドはより生々しく、少し土臭い音を獲得している。

歌詞面では、自己批評が本作の中心にある。「No Hope」「Teenage Icon」「Weirdo」「I Wish I Was a Girl」「Lonely World」「Runaway」といった曲名だけを並べても、本作が単なる若者向けロックンロール・アルバムではないことが分かる。そこには、自信のなさ、ロック・スター幻想への違和感、自己像への不満、孤独、逃避願望がある。The Vaccinesは、青春を単純に美化しない。むしろ、若さの滑稽さ、不器用さ、空虚さをポップな形で描いている。

『Come of Age』というタイトルは、表面的にはバンドの成長を示している。しかし、本作の本当の面白さは、成熟が完成されていないところにある。語り手は大人になろうとしているが、希望がなく、変人で、心変わりし、機嫌が悪く、逃げ出したい。つまり、本作が描く成熟とは、立派な大人になることではなく、自分の未熟さを少しだけ理解することに近い。これは非常に現実的な成長の描写である。

The Vaccinesの魅力は、こうしたテーマを重くしすぎない点にある。歌詞だけを読むと悲観的な内容が多いが、音楽はあくまでキャッチーで、ギターは軽快に鳴る。これはThe SmithsやThe Cure、The Strokesなどにも通じる、明るいメロディと暗い感情の組み合わせである。The Vaccinesはその伝統を、2010年代の英国インディー・ロックとして分かりやすく提示している。

歴史的に見ると、『Come of Age』は革新的なアルバムではない。新しいジャンルを生み出した作品でも、ロックの形式を根本から変えた作品でもない。しかし、2010年代初頭のギター・バンドが置かれた状況をよく表している。ロック神話はすでに古く、若者の代表として振る舞うことにも照れがある。それでも、短いギター・ソングにはまだ力がある。The Vaccinesはその矛盾を抱えたまま、シンプルなロック・アルバムを作った。

日本のリスナーにとって、本作は英国インディー・ロックの分かりやすい入口であると同時に、歌詞を読むことで印象が深まる作品である。表面上はキャッチーなギター・ロックとして楽しめるが、歌詞には自己否定や皮肉が多く含まれているため、聴き込むほどに苦味が増す。Arctic Monkeys、The Strokes、The Libertines、The Cribs、The Drumsなどが好きなリスナーには特に親しみやすいだろう。

総合的に見て、『Come of Age』は、The Vaccinesのセカンド・アルバムとして、デビュー作の勢いをそのまま繰り返すのではなく、バンドの不安や自己認識を音楽に取り込んだ作品である。完璧な成熟ではなく、成熟しようとして失敗し続ける過程を描いている。その不完全さが、本作を単なるインディー・ロックの続編ではなく、バンドのキャリアにおける重要な一枚にしている。

おすすめアルバム

1. The Vaccines『What Did You Expect from The Vaccines?』

2011年発表のデビュー・アルバム。短く鋭いギター・ロック、シンプルなリフ、キャッチーなコーラスによって、The Vaccinesの名前を一気に広めた作品である。『Come of Age』よりも衝動的で、初期インディー・ロックとしての即効性が強い。バンドの原点を知るうえで欠かせない。

2. The Strokes『Is This It』

2001年発表のガレージ・ロック・リヴァイヴァルを代表するアルバム。無駄を削ぎ落としたギター、都会的な倦怠感、短くキャッチーな楽曲構成は、The Vaccinesの背景を理解するうえで重要である。『Come of Age』の冷めたロックンロール感とも強くつながる。

3. The Libertines『Up the Bracket』

2002年発表の英国インディー・ロックの重要作。荒々しいギター、若さの混乱、友情と破綻、ロマンティックな不良性が特徴である。The Vaccinesよりも混沌としているが、英国ロックにおける若者の不器用さや衝動を理解するうえで関連性が高い。

4. Ramones『Rocket to Russia』

1977年発表のパンク/ポップの古典。短くシンプルで、メロディアスな楽曲を連発するスタイルは、The Vaccinesの初期作品にも通じる。『Come of Age』にあるシンプルなロックンロールの快感を歴史的にさかのぼるうえで重要な作品である。

5. The Cribs『Men’s Needs, Women’s Needs, Whatever』

2007年発表の英国インディー・ロック作品。ラフなギター・サウンド、皮肉な歌詞、若者の不安と衝動をポップな形で鳴らす点で、The Vaccinesとの共通点が大きい。『Come of Age』の自己嫌悪や不器用なユーモアに近い感覚を持つアルバムである。

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