1. 歌詞の概要
Coldplayの「Clocks」は、2002年にリリースされた2ndアルバム『A Rush of Blood to the Head』に収録された楽曲で、バンドの代表曲のひとつとして広く知られています。この曲は、特徴的なピアノのアルペジオリフと、抽象的で詩的な歌詞が印象的な楽曲です。歌詞は時間の流れ、運命、そして人生の選択に関するテーマを扱っており、明確なストーリーを持たない一方で、聴く人によってさまざまな解釈ができる内容になっています。
「Clocks」というタイトルが示すように、時間に対する意識が強く表れており、歌詞全体を通じて「過ぎ去る時間」「避けられない運命」といったモチーフが繰り返されています。楽曲の雰囲気は、メランコリックでありながらも壮大なスケールを持ち、Coldplayの持つエモーショナルな音楽性を象徴する一曲となっています。
2. 歌詞のバックグラウンド
「Clocks」は、アルバム『A Rush of Blood to the Head』の制作終盤に誕生した楽曲です。当初、アルバムの収録曲がほぼ決定していたにもかかわらず、クリス・マーティンが急遽この曲のアイデアを思いつき、バンドメンバーとプロデューサーのケン・ネルソンに提案しました。最初は「次のアルバムのために取っておこう」と言われたものの、クリスはどうしてもこの曲を完成させたいと考え、短期間でレコーディングが行われました。
楽曲の基盤となるピアノのアルペジオリフは、クラシック音楽やスティーヴ・ライヒのミニマル・ミュージックから影響を受けたものと言われており、Coldplayの楽曲の中でも特に特徴的なサウンドを持っています。このリフが曲全体の流れを作り出し、聴き手に時間の流れを感じさせる要素となっています。
歌詞については、クリス・マーティンが当時の個人的な葛藤を反映させたと言われており、恋愛や人生の選択に対する迷いや、抗えない運命への思いが込められていると考えられています。
3. 歌詞の抜粋と和訳
The lights go out and I can’t be saved
灯りが消えて、僕には救いがない
Tides that I tried to swim against
抗おうとした波の流れ
Have brought me down upon my knees
僕は膝をつき、打ちのめされた
Oh, I beg, I beg and plead
ああ、僕は嘆き、懇願する
Come out of things unsaid
言えなかったことから抜け出して
Shoot an apple off my head
僕の頭の上のリンゴを撃ち落として
And a trouble that can’t be named
名付けられない問題が
A tiger’s waiting to be tamed
飼いならされるのを待つ虎のようにそこにある
この歌詞は、まるで夢の中にいるような抽象的な表現が多く使われており、明確な意味を持たないまま聴き手にさまざまなイメージを喚起させます。「Shoot an apple off my head（僕の頭の上のリンゴを撃ち落として）」というフレーズは、ウィリアム・テルの伝説を連想させるもので、プレッシャーや試練を象徴しているとも考えられます。
4. 歌詞の考察
「Clocks」の歌詞は、一見すると恋愛をテーマにしているようにも読めますが、より広義には「人生における選択」や「時間に対する焦燥感」を描いていると解釈できます。
冒頭の「The lights go out and I can’t be saved（灯りが消えて、僕には救いがない）」というラインは、人生のある瞬間において希望が失われ、抗えない運命を感じる状況を示しているように思えます。その後の「Tides that I tried to swim against（抗おうとした波の流れ）」というフレーズも、努力しても変えられない運命や現実に直面することを示唆しているのではないでしょうか。
また、曲全体に流れる「ticking clocks（時を刻む時計）」のイメージは、時間の流れに抗えない人間の性（さが）や、限られた時間の中で選択を迫られることの象徴とも取れます。この点で、「Clocks」はColdplayの楽曲の中でも特に哲学的な要素を含んでいると言えるでしょう。
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- “Speed of Sound” by Coldplay
- 「Clocks」と同じく、ピアノを基調とした壮大なサウンドが特徴の楽曲。時間や宇宙をテーマにした詩的な歌詞も共通点が多い。
- “Time Is Running Out” by Muse
- 時間の制約をテーマにした歌詞と、ドラマティックなメロディが「Clocks」に通じる楽曲。
- “Bittersweet Symphony” by The Verve
- 人生の苦さと美しさを描いた名曲で、メロディの繰り返しが時間の流れを象徴している点が「Clocks」と共通。
- “The Scientist” by Coldplay
- 「Clocks」と同じアルバムに収録されたバラードで、後悔や時間の逆行をテーマにした歌詞が深く心に響く。
6. ミュージックビデオと受賞歴
「Clocks」のミュージックビデオは、幻想的な青いライトに包まれたバンドのパフォーマンスを中心に構成されており、楽曲の持つ夢幻的な雰囲気を見事に映像化しています。映像の中で時間が逆再生されるようなエフェクトが使われているのも特徴で、時間というテーマを強調する演出が施されています。
また、「Clocks」は2004年のグラミー賞で**「最優秀レコード賞（Record of the Year）」**を受賞し、Coldplayの国際的な成功を決定づける重要な一曲となりました。
7. まとめ
「Clocks」は、Coldplayの楽曲の中でも特に象徴的な作品であり、時間の流れや人生の選択といった普遍的なテーマを美しいメロディとともに表現した名曲です。特徴的なピアノのリフと詩的な歌詞が融合し、リスナーに深い余韻を残す一曲となっています。リリースから20年以上経った今でも、その魅力は色褪せることなく、多くの人々に愛され続けています。
コメント