アルバムレビュー:Cleopatra by The Lumineers

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

  • 発売日: 2016年4月8日
  • ジャンル: インディー・フォーク、フォーク・ロック、アメリカーナ、オルタナティブ・フォーク、ルーツ・ロック

概要

The Lumineersの『Cleopatra』は、2016年にリリースされたセカンド・アルバムであり、2012年のセルフタイトル・デビュー作『The Lumineers』で一躍注目を集めたバンドが、単なる「Ho Hey」のヒット・バンドにとどまらないことを示した重要作である。前作では、手拍子、足踏み、アコースティック・ギター、ピアノ、チェロ、合唱的なコーラスを用いた素朴なインディー・フォーク・サウンドが広く受け入れられ、2010年代前半のフォーク・リバイバルの象徴的存在となった。『Cleopatra』では、その基本的な音楽性を引き継ぎながら、より物語性、陰影、アルバム全体の統一感を強めている。

The Lumineersの魅力は、非常にシンプルな楽曲構造の中に、人物の人生や関係性の断片を描き込む点にある。『Cleopatra』ではその性質がより明確になり、アルバム全体に一人の人物の記憶、後悔、愛、選択、時間の経過が流れている。タイトル曲「Cleopatra」は、若い頃に愛を選び損ねた女性の人生を振り返る楽曲であり、本作全体の象徴となっている。前作が若さ、恋愛、帰属、共同体的な合唱を中心にしていたとすれば、本作はそれよりもさらに人生の後悔や喪失、過去との折り合いに焦点を当てている。

アルバム・タイトルの「Cleopatra」は、古代エジプトの女王を連想させる壮大な名前である。しかしThe Lumineersが描くクレオパトラは、歴史的な女王そのものではなく、日常の中で老い、働き、過去の選択を思い返す一人の女性である。この名前の大きさと、歌詞に描かれる人生の慎ましさの対比が、本作の重要な美学である。誰もが歴史に名を残すわけではないが、誰の人生にも壮大なドラマがある。The Lumineersはその視点を、派手な音ではなく、簡素なフォーク・ソングとして表現している。

音楽的には、前作よりもプロダクションがやや整理され、楽曲ごとの完成度が高まっている。手作り感や親密さは残されているが、曲の展開、音の配置、コーラスの使い方はより緻密である。「Ophelia」ではピアノのリフと軽快なリズムによってポップな即効性が生まれ、「Cleopatra」では力強いストロークと語りの構成が印象を残す。「Sleep on the Floor」では逃避と旅立ちが歌われ、「Angela」では失われた相手への呼びかけが穏やかに響く。アルバム全体は大きな音楽的実験を目指すものではないが、The Lumineersのフォーク・ロックとしての語り口がより洗練されている。

2010年代中盤の音楽シーンでは、Mumford & SonsやThe Head and the Heart、Of Monsters and Menなどによって広まったインディー・フォークのブームが一段落し、アーティストたちはその後の方向性を問われていた。The Lumineersにとって『Cleopatra』は、デビュー作の成功を受けて、同じ方法を単に繰り返すのではなく、より深い物語性と成熟した感情へ進むためのアルバムだった。大ヒット曲「Ho Hey」のような即時的な合唱感は少し後退し、その代わりに、一曲一曲が人物の人生の断片として機能するようになっている。

歌詞のテーマは、逃避、後悔、過去、愛の選択、家族、喪失、名声、時間の流れである。「Sleep on the Floor」では若い恋人たちが町を出ることを夢見ており、「Ophelia」では名声や愛に振り回される人物が描かれる。「Cleopatra」では、結婚や人生の選択を振り返る女性が歌われ、「Angela」では失われた関係への柔らかな哀惜が表れる。「My Eyes」や「Sick in the Head」には、前作よりも暗く内省的な影がある。The Lumineersはここで、明るいフォーク・ポップの表面の下にある人間の弱さをよりはっきり描いている。

日本のリスナーにとって『Cleopatra』は、The Lumineersのアルバムとして最も聴きやすく、かつ物語性を味わいやすい作品のひとつである。前作の素朴な勢いを好むリスナーにも入りやすく、同時に、より深い歌詞世界やアルバム単位の流れを求めるリスナーにも響く。派手な音楽ではないが、歌の背後にある人生の時間を感じさせる作品である。『Cleopatra』は、The Lumineersがフォーク・ポップの親しみやすさを保ちながら、より成熟したアメリカーナ的な物語へ踏み込んだアルバムである。

全曲レビュー

1. Sleep on the Floor

「Sleep on the Floor」は、アルバムの冒頭を飾る楽曲であり、『Cleopatra』全体の重要なテーマである逃避、旅立ち、若い衝動を最初に提示する。タイトルは「床で眠る」という意味で、安定した生活や快適さを手放し、どこかへ向かうことを示している。語り手は相手に対して、ここを出て行こう、町を離れよう、今すぐ人生を変えようと呼びかける。

歌詞の中心には、若さ特有の切迫感がある。何かを失う前に出ていかなければならない、今動かなければ人生が閉じてしまう、という感覚である。The Lumineersの楽曲には、しばしば小さな町、家族、恋人、過去から逃げたいという衝動が登場するが、この曲はその最も明快な例である。逃避は単なるロマンではなく、現状に留まることへの恐怖でもある。

音楽的には、静かな始まりから徐々にバンド全体が加わり、推進力を増していく。アコースティック・ギター、ピアノ、ドラムがシンプルに組み合わされ、曲は過度な装飾なしに前へ進む。The Lumineersらしい手作り感は残っているが、前作よりも構成が洗練され、オープニング曲としてのドラマ性が強い。

ウェスリー・シュルツのヴォーカルは、ここで語り手の焦りと誠実さをよく表現している。彼は相手を説得するように歌うが、その声には自信だけでなく不安もある。逃げ出すことが正しいのかは分からない。それでも、動かなければならないという感覚だけが確かにある。

「Sleep on the Floor」は、『Cleopatra』の幕開けとして非常に効果的である。逃げること、旅立つこと、愛する人と人生を変えようとすること。それらが、アルバム全体の物語の入口として提示されている。

2. Ophelia

「Ophelia」は、『Cleopatra』を代表するヒット曲であり、The Lumineersの楽曲の中でも特にポップな完成度を持つ一曲である。タイトルの「Ophelia」は、シェイクスピア『ハムレット』の登場人物を連想させる名前であり、悲劇的な女性像、狂気、愛、喪失を思わせる。しかしこの曲では、オフィーリアは文学的な人物であると同時に、名声や恋愛の対象として語られる象徴的な存在になっている。

音楽的には、ピアノの印象的なリフが曲を牽引する。軽快なリズムと短いフレーズ、覚えやすいサビによって、The Lumineersらしい親しみやすさが最大限に発揮されている。前作の「Ho Hey」に近い即効性を持ちながらも、より洗練されたポップ・ソングとして仕上げられている。

歌詞では、愛と名声、そしてそれに伴う距離感が描かれる。語り手は「Ophelia」に向かって呼びかけるが、その相手は手の届く恋人であると同時に、イメージとして消費される存在にも聞こえる。The Lumineers自身がデビュー作の成功で急速に注目されたことを考えると、この曲には名声への戸惑いも読み取れる。誰かを愛しているのか、それともその人が象徴するものに惹かれているのか。その曖昧さが曲の奥にある。

ウェスリー・シュルツの歌唱は、軽やかだが少し哀愁を帯びている。曲調は明るいが、タイトルや歌詞の背後には失われていくものへの不安がある。The Lumineersの強みは、こうした明るいメロディの中に、少しの影を含ませる点にある。

「Ophelia」は、The Lumineersのポップ・センスが最も鮮やかに表れた楽曲である。シンプルで歌いやすく、同時に名声や愛の不安定さを含んでいる。『Cleopatra』の中心的な曲として、アルバムを広く聴き手へ開く役割を果たしている。

3. Cleopatra

表題曲「Cleopatra」は、本作の物語的な核心を担う楽曲である。タイトルは歴史的な女王の名を想起させるが、歌われるのは権力者としてのクレオパトラではなく、人生の選択を振り返る一人の女性である。この曲は、若い頃に愛を選びきれなかった人物が、年齢を重ねてからその選択を思い返す歌として響く。

歌詞には、プロポーズを受け入れられなかったこと、親の死、時間の経過、働き続ける日々、老いと後悔が描かれる。非常に短いフレーズの中に、一人の人生が凝縮されている点が印象的である。The Lumineersはここで、フォーク・ソングの伝統にある物語歌の手法を用い、個人の人生を普遍的な感情へ変えている。

音楽的には、アコースティック・ギターの力強いストロークと、シンプルなリズムが曲を支える。曲は過度に劇的ではないが、歌詞の重みを受け止めるだけの力強さがある。サビのメロディには、後悔と諦め、そしてどこか誇りが混ざっている。人生は思い通りにはならなかったが、それでも生きてきたという感覚がある。

この曲の魅力は、壮大な名前と庶民的な人生の対比にある。Cleopatraという名前は、歴史的な栄光や美しさを象徴する。しかし歌の中の人物は、タクシーを運転するような現実的な人生を生きている。この落差によって、普通の人生にも神話的な深さがあることが示される。

「Cleopatra」は、アルバムのタイトル曲として、作品全体のテーマである時間、選択、後悔、人生の物語を象徴している。The Lumineersが単なる合唱系フォーク・バンドではなく、人物の人生を短い歌に閉じ込める力を持つことを示す重要曲である。

4. Gun Song

「Gun Song」は、家族、父親、遺品、記憶をテーマにした楽曲であり、The Lumineersの個人的な物語性がよく表れている。タイトルは「銃の歌」を意味するが、ここでの銃は暴力の道具としてだけでなく、家族の記憶や父親の存在を象徴する物として描かれる。

歌詞では、語り手が父親の銃を見つける、あるいは父親にまつわる物に触れる場面が中心となる。そこから、家族の秘密、世代間の距離、父親を完全には理解できない感覚が浮かび上がる。The Lumineersは、このような具体的な物を通じて、抽象的な感情を描くことに長けている。銃という物体は、父親の不在や、語り手が知りきれなかった過去を象徴する。

音楽的には、曲は穏やかで、語りを中心に進む。大きな盛り上がりよりも、歌詞の細部が重要である。アコースティック・ギターやピアノの響きは控えめで、家庭の中に残された記憶を静かにたどるような雰囲気がある。

この曲のテーマは、家族を理解することの難しさである。親は子にとって身近な存在でありながら、同時に一人の他者でもある。銃という遺された物を通じて、語り手は父親の知らなかった側面に触れる。しかし、それによってすべてが分かるわけではない。むしろ、分からなさが残る。

「Gun Song」は、『Cleopatra』の中で家族の記憶を扱う重要な楽曲である。恋愛や旅立ちだけでなく、親子関係や過去の不可解さがアルバムのテーマに含まれていることを示している。

5. Angela

「Angela」は、『Cleopatra』の中でも特に美しく、穏やかな哀愁を持つ楽曲である。タイトルは女性の名前であり、The Lumineersが得意とする人物名を中心にした物語性がここでも表れている。Angelaという人物は、語り手にとって失われた相手、遠くへ行ってしまった存在、あるいは自分自身を取り戻そうとする人として描かれる。

歌詞では、逃げること、戻ること、誰かのもとへ帰ることが重要なテーマになっている。Angelaは何かから離れ、どこかへ向かっているように見える。語り手は彼女を見つめ、呼びかけるが、完全には引き止められない。この距離感が曲の魅力である。愛は所有ではなく、相手の旅を見守ることとして表れる。

音楽的には、ミディアム・テンポの穏やかなフォーク・ロックであり、メロディの美しさが際立つ。アレンジは控えめだが、サビに向かって自然に感情が広がる。The Lumineersの楽曲の中でも、特に優しい余韻を持つ曲である。

ウェスリー・シュルツのヴォーカルは、ここで非常に柔らかい。彼はAngelaに対して強く要求するのではなく、遠くから呼びかけるように歌う。そのため、曲には喪失感と受容が同時にある。失われた相手を思う悲しみはあるが、それを過度にドラマ化しない。

「Angela」は、『Cleopatra』における感情的なハイライトのひとつである。人物名を通じて、逃避、帰属、愛の距離を静かに描く。The Lumineersの成熟したフォーク・ソングライティングがよく表れた楽曲である。

6. In the Light

「In the Light」は、光の中にいること、あるいは光を求めることをテーマにした楽曲である。タイトルはシンプルだが、The Lumineersの文脈では、光は救い、真実、記憶、あるいは誰かとの関係の中で見えるものを象徴する。『Cleopatra』の中では、比較的静かで内省的な位置にある。

歌詞では、相手との関係の中で、自分がどこにいるのか、何を見ているのかを確認しようとするような感覚がある。光は希望の象徴である一方、物事を隠せなくするものでもある。暗闇では見えなかった感情や過去が、光の中で明らかになる。この曲には、そのような静かな緊張がある。

音楽的には、ピアノやアコースティック楽器を中心とした穏やかなアレンジが特徴である。曲は派手に展開せず、ゆっくりと感情を積み重ねていく。The Lumineersの魅力である素朴な響きが、ここではより落ち着いた形で表れている。

この曲は、アルバム全体の流れの中で、外へ向かう逃避や人物の物語から、内側の静かな確認へ移る役割を持っている。「Sleep on the Floor」や「Cleopatra」のように明確な物語を語る曲に比べると、より抽象的で感情的である。

「In the Light」は、『Cleopatra』の中で大きく目立つ曲ではないが、アルバムの陰影を深める重要な楽曲である。光の中で何かを見つめるように、静かに自分と相手の関係を確かめる曲である。

7. Gale Song

「Gale Song」は、もともと映画『The Hunger Games: Catching Fire』のサウンドトラックにも関連する楽曲として知られ、The Lumineersの繊細な叙情性が表れた曲である。タイトルの「Gale」は人名としても、強風という意味としても響く。人名であると同時に、何かが吹き荒れる感情や状況を連想させる。

歌詞では、離れてしまった相手、戻れない時間、失われた関係への思いが描かれる。The Lumineersの楽曲では、相手に直接呼びかけながらも、その相手がすでに遠くにいることが多い。この曲もその系譜にある。声は届いているようで届かず、過去だけが残っている。

音楽的には、非常に静かで抑制されている。派手なリズムや合唱はなく、声と楽器の最小限の響きが中心である。そのため、歌詞の寂しさが直接伝わる。The Lumineersの音楽は合唱的な曲で知られるが、このような静かな曲においても強い表現力を持つ。

ウェスリー・シュルツの歌唱は、ここで非常に親密である。彼は感情を強く爆発させず、低い温度で歌う。その抑制が、曲に深い悲しみを与えている。失われたものを叫んで取り戻そうとするのではなく、静かに見送るような歌である。

「Gale Song」は、『Cleopatra』の中で静かな喪失感を担う楽曲である。派手さはないが、アルバムの感情的な奥行きを大きく支えている。

8. Long Way from Home

「Long Way from Home」は、タイトル通り「家から遠く離れている」感覚を歌った楽曲である。The Lumineersの音楽において、家や故郷はしばしば重要なテーマである。そこは帰る場所であると同時に、離れなければならない場所でもある。この曲では、その距離感が静かに描かれる。

歌詞では、誰かが家から遠く離れ、身体的にも精神的にも帰れない場所にいるような感覚がある。病院、旅、死、孤独といったイメージも読み取れる。The Lumineersは、具体的な場面を細かく説明しすぎず、短い言葉で深い喪失感を作る。この曲もその例である。

音楽的には、非常に抑制されたバラードである。ピアノやアコースティック・ギターが静かに響き、曲全体に空白が多い。音の少なさが、家から遠く離れた孤独を強めている。聴き手は、広い空間の中に一人置かれたような感覚を覚える。

この曲の重要性は、『Cleopatra』の逃避のテーマを反転させている点にある。アルバム冒頭の「Sleep on the Floor」では、家を出ることが自由として歌われる。しかし「Long Way from Home」では、家から遠いことは孤独や喪失として響く。出て行くことと帰れないことは、表裏一体である。

「Long Way from Home」は、アルバム後半に深い静けさをもたらす楽曲である。旅立ちのロマンの裏側にある、帰属の喪失を描いている。

9. Sick in the Head

「Sick in the Head」は、タイトルからして不安定で、自己認識の痛みを含む楽曲である。「頭がおかしい」「精神的に病んでいる」という直接的な表現は、The Lumineersの比較的穏やかなサウンドの中では強く響く。この曲では、自己嫌悪、混乱、精神的な不調がテーマになっている。

歌詞では、語り手が自分自身をうまく扱えない感覚、あるいは他者からそう見られる感覚が描かれる。The Lumineersの楽曲には、表面的には素朴で温かい雰囲気があるが、内側には不安や精神的な揺れが存在する。「Sick in the Head」は、その暗い部分をより直接的に表している。

音楽的には、短く、ややラフな印象を持つ曲である。前後のバラード的な曲と比べると、少し荒い質感があり、語り手の不安定さと合っている。完璧に整えられた曲ではなく、感情の断片がそのまま歌になったような印象がある。

この曲は、アルバム全体の物語性の中で、登場人物たちの内側にある不調を示す役割を持つ。『Cleopatra』は後悔や喪失のアルバムだが、その背景には、自分自身とうまく付き合えない人々の姿がある。The Lumineersはそれを過度に劇的にせず、短い曲として置いている。

「Sick in the Head」は、本作の中では小品的ながら、重要な暗さを持つ楽曲である。The Lumineersのフォーク・ポップの温かさの裏にある、精神的な不安定さを覗かせている。

10. My Eyes

「My Eyes」は、『Cleopatra』の終盤で深い内省をもたらす楽曲である。タイトルは「私の目」を意味し、見ること、目撃すること、理解すること、そして見てしまったものから逃れられないことを連想させる。アルバム全体で語られてきた人生の選択や喪失が、この曲ではより静かな視点へと集約される。

歌詞では、誰かの行動や世界の状態を見つめながら、そこに対する無力感や失望が表れる。目は真実を見る器官だが、見たからといって変えられるわけではない。この曲には、そのような苦さがある。The Lumineersは、大きな社会批判としてではなく、個人の視線の中に不安を込めている。

音楽的には、暗く、重心の低い雰囲気がある。アルバム前半の軽快なフォーク・ロックとは異なり、ここでは音の余白と沈んだメロディが重要になる。The Lumineersのセカンド・アルバムが、前作よりも陰影を深めていることをよく示す曲である。

ウェスリー・シュルツのヴォーカルは、静かに疲れているように響く。強く訴えるのではなく、見てしまったものを抱えたまま歌う。その声には、怒りよりも諦めに近い感情がある。だが、完全に感情を失っているわけではない。むしろ、まだ見つめ続けていること自体が抵抗になっている。

「My Eyes」は、『Cleopatra』の終盤に重い余韻を与える楽曲である。人生や世界を見つめることの痛みを、静かなフォーク・ソングとして表現している。

11. Patience

アルバムの最後を飾る「Patience」は、インストゥルメンタル曲であり、『Cleopatra』を静かに閉じる役割を持つ。タイトルは「忍耐」を意味し、本作全体のテーマである時間、待つこと、受け入れること、人生の経過を象徴している。歌詞がないことによって、アルバムの最後は言葉ではなく余韻として残される。

音楽的には、ピアノを中心とした非常にシンプルな楽曲である。短く、静かで、派手な結末を作らない。The Lumineersはここで、大きな合唱や感情的な爆発によってアルバムを終えるのではなく、静かなピアノの響きで物語を閉じる。この選択が、本作の成熟を示している。

「Patience」というタイトルは、アルバム全体を振り返ると非常に意味深い。『Cleopatra』には、若い頃に急いで逃げ出そうとする人、過去の選択を悔やむ人、家から遠く離れた人、戻れない関係を抱える人が登場する。そうした人々の人生に必要なのは、時に激情ではなく、時間と共に耐えること、待つこと、受け入れることなのかもしれない。

インストゥルメンタルであるため、聴き手は自分自身の記憶や感情をこの曲に重ねることができる。前の曲までで語られた人物たちの声が消え、最後には静かな音だけが残る。その余白が、アルバムの物語を閉じる。

「Patience」は、『Cleopatra』のラストとして非常に効果的である。言葉で結論を出さず、時間の流れと静けさを残すことで、アルバム全体の後悔と受容のテーマを深く印象づけている。

総評

『Cleopatra』は、The Lumineersがデビュー作の成功を受けて、より成熟した物語性とアルバムとしての統一感を獲得したセカンド・アルバムである。前作『The Lumineers』は、「Ho Hey」に代表されるような合唱的で素朴なインディー・フォークの魅力が中心だったが、本作ではその親しみやすさを保ちながら、より深い人生の陰影が描かれている。

本作の最大の特徴は、人物の物語を歌う力である。「Cleopatra」では一人の女性の人生が短い歌の中に凝縮され、「Angela」では遠くへ行ってしまった人物への呼びかけが描かれ、「Gun Song」では父親の記憶が銃という物を通じて浮かび上がる。「Long Way from Home」や「My Eyes」では、逃避や帰属の喪失が静かに歌われる。The Lumineersは、細かな説明をしすぎず、名前、物、場所、短い場面を通じて、人物の人生を想像させる。

音楽的には、大きな変革よりも深化が中心である。アコースティック・ギター、ピアノ、ドラム、チェロ、コーラスという基本的な要素は前作から引き継がれている。しかし、曲ごとの構成はより引き締まり、アルバム全体の流れも明確になっている。「Ophelia」のようなポップな曲、「Sleep on the Floor」のような旅立ちのアンセム、「Gale Song」や「Long Way from Home」のような静かなバラードがバランスよく配置されている。

歌詞のテーマとしては、時間の経過が非常に重要である。若い頃の選択、逃げ出したい衝動、戻れない過去、老いてからの後悔、家族の記憶、待つこと。これらはすべて、人生が一方向に進んでしまうことへの意識と結びついている。『Cleopatra』は、若さのアルバムというより、若さを振り返るアルバムである。そこには、The Lumineers自身の成長も反映されている。

また、本作はアメリカーナの現代的な再解釈としても優れている。伝統的なフォークやカントリーをそのまま再現するのではなく、現代のインディー・ポップの感覚で、シンプルな歌と物語を再構築している。大きなスタジオ装飾は少なく、歌の骨格が前面に出る。そのため、聴き手は楽曲の人物や場面に自然に入り込むことができる。

デビュー作の大ヒットによって、The Lumineersには分かりやすい合唱曲を求める期待があった。しかし『Cleopatra』は、それに応えつつも、より暗く、より大人びた方向へ進んでいる。「Ophelia」はヒット曲として機能するが、アルバム全体はそれだけに依存していない。むしろ、タイトル曲や後半の静かな曲群によって、本作は長く聴けるアルバムになっている。

日本のリスナーにとって『Cleopatra』は、The Lumineersの魅力をアルバム単位で理解するための最適な作品のひとつである。メロディは親しみやすく、サウンドは温かく、歌詞には物語がある。英語詞を読みながら聴くと、表面的なフォーク・ポップの明るさだけでなく、人物の後悔や人生の重さが見えてくる。特に、短い言葉で長い人生を感じさせる「Cleopatra」は、本作の核心である。

総じて『Cleopatra』は、The Lumineersがフォーク・ポップの素朴さから、より成熟したアメリカーナの物語へ進んだアルバムである。旅立ち、名声、家族、愛、後悔、忍耐。それらを派手に語るのではなく、簡潔なメロディと慎ましい演奏で描く。デビュー作の成功を単に再現するのではなく、その先へ進んだ、The Lumineersの重要な代表作である。

おすすめアルバム

1. The Lumineers – The Lumineers(2012)

The Lumineersのデビュー作であり、「Ho Hey」「Stubborn Love」「Dead Sea」などを収録した代表作。『Cleopatra』よりも素朴で初期衝動が強く、手拍子や合唱的なインディー・フォークの魅力が前面に出ている。『Cleopatra』の成熟を理解するために欠かせない作品である。

2. The Lumineers – III(2019)

家族、依存症、世代を超えた痛みをテーマにしたコンセプチュアルなアルバム。『Cleopatra』で強まった物語性がさらに発展し、より暗く重いテーマへ踏み込んでいる。The Lumineersのソングライティングが短編小説的な方向へ進んだことを示す重要作である。

3. Mumford & Sons – Sigh No More(2009)

2010年代インディー・フォーク・ブームを代表する作品。バンジョー、アコースティック楽器、合唱的なサビ、疾走感のあるアレンジが特徴である。The Lumineersよりも劇的で大きなサウンドを持つが、同時代のフォーク・リバイバルを理解するうえで重要な比較対象である。

4. The Head and the Heart – The Head and the Heart(2011)

複数のヴォーカル、温かいアコースティック・サウンド、共同体的なコーラスを特徴とするインディー・フォークの重要作。The Lumineersと同じく、シンプルなメロディと人間的な温かさを持つ。『Cleopatra』の親しみやすさに惹かれるリスナーに適している。

5. Gregory Alan Isakov – The Weatherman(2013)

より静かで詩的なアメリカーナ/フォーク作品。The Lumineersよりも内省的で、風景や記憶を繊細に描く作風が特徴である。『Cleopatra』の後半にある静かな哀愁や物語性をさらに深く味わいたいリスナーに関連性が高い。

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