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ブリットポップを知るなら、まず定番アーティストから
ブリットポップは、1990年代のイギリスを代表するロックのムーブメントである。OasisとBlurのライバル関係が大きく報じられたことで知られるが、実際の音楽はギターロック、ポップ、グラムロック、パンク、1960年代の英国ポップなどが交差する幅広いものだった。
ジャンルの入口として定番アーティストを知ることが重要なのは、ブリットポップが単一のサウンドで定義しにくいからである。Oasisの大きなギターサウンド、Blurの英国的な観察眼、Pulpの物語性、Suedeのグラマラスなロックなど、同時代のバンドでも個性は大きく異なる。
まず代表的な10組を聴けば、ブリットポップが単なる1990年代の流行ではなく、英国ロックの歴史を再解釈したムーブメントだったことが見えてくる。
ブリットポップとはどんなジャンルか
ブリットポップは主に1990年代前半から後半にかけてイギリスで盛り上がった。アメリカのグランジやオルタナティブロックが世界的な存在感を強めていた時期に、英国の若いバンドが自国のポップ/ロックの伝統を改めて意識するようになった流れとして語られることが多い。
音楽的にはギター、ベース、ドラムを中心とした比較的オーソドックスなバンド編成が多く、The Beatles、The Kinks、David Bowie、T. Rex、The Smiths、Madchester周辺のバンドなど、過去の英国音楽からさまざまな要素を吸収している。
歌詞でも英国の日常生活、階級、恋愛、退屈、若者文化などが扱われた。音だけでなく、1990年代英国の社会やファッション、メディアと密接に結びついたムーブメントだった点も重要である。
ブリットポップの定番アーティスト10選
1. Oasis
マンチェスターで結成されたOasisは、ブリットポップを象徴する存在である。ノエル・ギャラガーによる明快な作曲と、リアム・ギャラガーの特徴的な歌声を軸に、巨大なギターサウンドと覚えやすいメロディを組み合わせた。
1994年のデビュー作『Definitely Maybe』、翌1995年の『(What’s the Story) Morning Glory?』はいずれもブリットポップを代表するアルバムである。「Live Forever」「Wonderwall」「Don’t Look Back in Anger」など、時代を越えて親しまれる楽曲も多い。
初心者なら『(What’s the Story) Morning Glory?』から入るとよい。ロックの勢いと大合唱できるメロディの両方があり、ブリットポップの大衆的な側面を最もつかみやすい。
2. Blur
ロンドンで結成されたBlurは、Oasisと並ぶブリットポップの中心的なバンドである。ただし、その音楽性は一貫して同じではなく、英国的なギターポップからローファイ、オルタナティブロック、電子音楽まで変化していった。
ブリットポップ期の代表作は1994年の『Parklife』である。「Girls & Boys」「Parklife」などを収録し、英国の日常や人物像を観察するデーモン・アルバーンの歌詞と、多彩なアレンジを楽しめる。
Oasisが大きなメロディとギターで魅せるバンドなら、Blurは曲ごとにスタイルを変える器用さが魅力である。ブリットポップの音楽的な幅を知るうえで欠かせない。
3. Pulp
シェフィールドで結成されたPulpは長い下積みを経て、1990年代半ばにブリットポップの中心へ浮上した。ジャーヴィス・コッカーの語りかけるような歌唱と、英国社会を細かく観察する歌詞が最大の特徴である。
1995年の『Different Class』は代表作で、「Common People」「Disco 2000」などを収録している。特に「Common People」は階級意識を題材としながら、シンセサイザーとギターによる非常にキャッチーなポップソングとして成立している。
ブリットポップの歌詞や社会的背景まで楽しみたいなら、Pulpは重要な入口になる。まず『Different Class』を通して聴きたい。
4. Suede
ロンドンで結成されたSuedeは、ブリットポップという呼称が広く定着する以前から1990年代英国ロックの新しい流れを作った重要バンドである。
1993年のデビューアルバム『Suede』では、バーナード・バトラーの鋭いギターとブレット・アンダーソンのドラマティックなボーカルを中心に、グラムロックからの影響を強く感じさせる音楽を展開した。続く『Dog Man Star』では、より壮大で複雑なアレンジへ進んでいる。
明るいポップというブリットポップのイメージとは少し異なり、妖艶さや重さを備えたギターロックを聴きたい人におすすめである。
5. Supergrass
オックスフォードで結成されたSupergrassは、勢いのあるギターロックとポップなメロディを得意としたバンドである。1995年のデビュー作『I Should Coco』によって一気に注目を集めた。
代表曲「Alright」は軽快なピアノとギター、覚えやすいコーラスが印象的で、1990年代英国の若々しいポップ感覚を象徴する一曲となった。一方でアルバムを聴くと、パンクやグラムロック、1960年代ポップなど幅広い影響も確認できる。
ブリットポップをまず楽しく聴きたい人には特に入りやすい。テンポのよい楽曲が多く、OasisやBlurの次に聴くバンドとしてもおすすめである。
6. Elastica
ロンドンで結成されたElasticaは、パンクやニューウェーブの切れ味を1990年代のギターポップへ持ち込んだバンドである。ジャスティーン・フリッシュマンを中心に活動し、1995年のセルフタイトル作『Elastica』で大きな成功を収めた。
短く引き締まった曲構成、乾いたギター、簡潔なリズムが特徴で、「Connection」などではWireをはじめとするポストパンクからの影響も明確に感じられる。
大きなコーラスを持つOasisとは対照的で、無駄を削った鋭いギターロックが魅力である。ブリットポップとパンク/ポストパンクのつながりを知るうえでも重要な存在だ。
7. Sleeper
Sleeperはロンドンを拠点に活動し、1990年代半ばのブリットポップを支えたバンドの一つである。ルイーズ・ウェナーのボーカルと、簡潔でフックの強いギターサウンドを中心としている。
1995年のデビュー作『Smart』や翌年の『The It Girl』が代表作で、「Inbetweener」「Sale of the Century」など、ポップなメロディと鋭いギターを組み合わせた楽曲を残した。
Oasis、Blur、Pulpといった巨大な存在だけでは見えにくい、当時の英国ギターポップの層の厚さを知るために聴いておきたいバンドである。
8. The Bluetones
ロンドンで結成されたThe Bluetonesは、メロディを重視したギターポップで1990年代半ばに人気を集めた。派手なサウンドよりも、繊細なギターの組み合わせと親しみやすい歌を特徴としている。
1996年のデビューアルバム『Expecting to Fly』が代表作で、「Slight Return」は彼らを代表する楽曲として知られている。ブリットポップの中でも比較的穏やかで、インディーポップに近い感触を持っているのが特徴だ。
BlurやSupergrassのメロディアスな側面が好きなら入りやすい。ブリットポップをヒット曲だけでなく、当時のギターポップ全体へ広げて聴くための重要な一組である。
9. Cast
リヴァプールで結成されたCastは、The La’sで活動していたジョン・パワーを中心とするバンドである。1960年代以来の英国ポップのメロディ感覚と、1990年代らしい力強いギターサウンドを組み合わせた。
1995年のデビューアルバム『All Change』には「Finetime」「Alright」などが収録されている。複雑な実験性よりも、シンプルなコード進行と印象的なメロディを重視したスタイルが特徴である。
The BeatlesやThe La’sからOasisへ続くような、リヴァプールや英国北部のメロディ重視のギターロックが好きな人には特におすすめしやすい。
10. Ocean Colour Scene
バーミンガム周辺で結成されたOcean Colour Sceneは、1960年代のロックやソウル、モッズ文化からの影響を色濃く受けたバンドである。
1996年の『Moseley Shoals』が代表作で、「The Riverboat Song」「The Day We Caught the Train」などを収録している。ギターを中心としたオーソドックスなバンドサウンドながら、リズム&ブルースやクラシックロックへの敬意が随所に表れている。
ブリットポップからさらにThe Who、Small Facesなど過去の英国ロックへさかのぼりたい人に適した存在である。同時代の流行だけでは説明できない、英国ロックの継承という側面が見えてくる。
まず聴くならこの3組
初心者がブリットポップを知るなら、まずOasis、Blur、Pulpの3組がおすすめである。この3組を比較するだけでも、ジャンルの主要な特徴をかなり広く把握できる。
Oasisは最もストレートな入口だ。『Definitely Maybe』や『(What’s the Story) Morning Glory?』には、ギターを大きく鳴らしながら、誰でも覚えられるメロディへ着地するブリットポップの大衆性が凝縮されている。
Blurは英国ポップの伝統をよりひねりのある方法で再構築したバンドである。まず『Parklife』を聴き、そこから『Modern Life Is Rubbish』や『The Great Escape』へ進むと、ブリットポップ期のBlurを理解しやすい。
Pulpは歌詞を含めて聴くことで魅力が増す。『Different Class』にはキャッチーな楽曲が並ぶ一方、階級や恋愛、日常生活への細かな視線がある。ブリットポップが1990年代英国の社会や文化と密接につながっていたことを知るための重要なバンドである。
関連ジャンルへの広がり
ブリットポップをさらに掘り下げるなら、まずオルタナティブロックとの関係を追うとわかりやすい。ブリットポップはしばしばアメリカのグランジに対する英国側の動きとして説明されるが、実際には同時代のオルタナティブロックと多くの要素を共有していた。Blurが後期作品でアメリカのインディーロックから影響を受けたことも、その境界が固定的ではなかったことを示している。
一方、1980年代末から1990年代初頭の英国音楽へさかのぼるなら、Madchesterも重要である。The Stone RosesやHappy Mondaysなどがロックとダンスミュージックを接続した流れは、後に登場するブリットポップの環境を準備したものとして語られることが多い。
さらにThe SmithsやThe La’sなどブリットポップ以前の英国インディーを聴き、そこからOasis、Blur、Pulp、Supergrassへ進むと、1990年代になって突然ブリットポップが誕生したわけではないことが理解できる。パンク以降の英国ギターロックが積み重ねてきた要素が、1990年代半ばに大きなムーブメントとして表面化したのである。
まとめ
ブリットポップの定番を押さえるなら、まずOasis、Blur、Pulp、Suedeは外せない。そこにSupergrassやElasticaを加えることで、ポップ、パンク、グラムロックなどジャンル内部の違いが見えやすくなる。
さらにSleeper、The Bluetones、Cast、Ocean Colour Sceneまで聴けば、ブリットポップが数組のスターだけによる現象ではなく、多数のギターバンドが登場した大きなシーンだったこともわかる。
入口としてはOasisの『(What’s the Story) Morning Glory?』、Blurの『Parklife』、Pulpの『Different Class』が特に聴きやすい。この3枚から気に入った方向へ広げていけば、ブリットポップだけでなく、その背景にある1960年代から1990年代までの英国ロックの流れも自然に見えてくるのである。

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