Brave by Hovvdy（2021）楽曲解説

楽曲レビュー

2025.05.08

1. 歌詞の概要
2. 歌詞のバックグラウンド
3. 歌詞の抜粋と和訳
4. 歌詞の考察
5. この曲が好きな人におすすめの曲
6. “怖くても、踏み出すこと”──Hovvdyが描く日常の勇気
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1. 歌詞の概要

「Brave」は、Hovvdy（ホウディ）が2021年にリリースしたアルバム『True Love』に収録された楽曲であり、「勇気」という言葉の静かで柔らかな側面を優しく掬い取った作品である。

一般的に「勇気」というと大きな行動や劇的な瞬間を思い浮かべがちだが、この曲で描かれるのはもっと繊細で日常的な、例えば「自分の弱さを受け入れること」や「大切な人に心を開くこと」のような、静かな勇気である。
「Brave」という一見シンプルな言葉に込められたのは、「愛すること」「信じること」「そして壊れそうな自分を抱きしめること」へのささやかな敬意なのだ。

曲全体を通して、穏やかなギターと浮遊感のあるヴォーカルが織りなすサウンドが、歌詞の持つ感情の微細な揺らぎを包み込み、リスナーの心にじんわりと染み込んでくる。
「Brave」は、叫ぶでもなく、ただそっと語りかけるような、Hovvdyらしい誠実なラブソングなのである。

2. 歌詞のバックグラウンド

『True Love』というアルバムは、パンデミックを経て再確認された人との絆や、自分自身と向き合うことの大切さをテーマにしている。
その中でも「Brave」は特に、無理に変わろうとするのではなく、ありのままの自分を認めた上で誰かに心を開く勇気について、静かに語っている。

メンバーのCharlie MartinとWill Taylorにとってこの曲は、「大きなドラマではなく、日常の中で積み重ねていく小さな勇気」を讃えるためのものだった。
恋愛だけではなく、友情や家族との関係においても、「Brave」で描かれる感情は普遍的であり、リスナーに寄り添うものとなっている。

サウンド面では、柔らかなアコースティックギターに、温かみのあるベースと控えめなパーカッションが加わり、あたたかくも夢見心地な空気感を生み出している。
そのミニマルな音の設計が、リリックの親密さを一層際立たせているのである。

3. 歌詞の抜粋と和訳

以下に、「Brave」の印象的なフレーズを抜粋し、和訳とともに紹介する。

“I wanna be brave for you”
君のために、強くなりたい

“Even when I’m scared too”
怖くても、それでも

“Even when I don’t know how”
どうすればいいか分からなくても

“I will figure it out somehow”
それでもきっと、道を見つけるよ

これらのフレーズは、「完璧でなくてもいい、怖がりながらでも大切な人のために踏み出そうとする」
──そんな、Hovvdyならではの誠実な勇気を映し出している。

※歌詞引用元：Genius Lyrics

4. 歌詞の考察

「Brave」の歌詞は、一般的なヒーロー像とはまったく異なる、「日常の中に潜む勇気」を描いている。

“I wanna be brave for you”というラインには、「誰かを守りたい」という願いと、同時に「自分自身の弱さを乗り越えたい」という静かな意志が込められている。
それは、「無敵になる」ことではない。
むしろ、怖れや迷いを抱えたままでも、大切な誰かのために一歩を踏み出そうとすること。
その脆くも力強い姿こそが、Hovvdyが描く「本当の勇気」なのである。

また、”Even when I don’t know how”という一節は、完璧な答えを持っていなくても、ただ「一緒にいること」「寄り添うこと」がどれだけ尊いかをさりげなく教えてくれる。

「Brave」は、戦うことでも、勝つことでもなく、
「怖れながらも手を伸ばす」ことこそが、最も人間的な勇気なのだと、
優しく、静かに、リスナーに伝えてくる。

この楽曲の真髄は、力強さの中にある柔らかさ──
そして「弱さを抱えたまま愛する」ことへの深い敬意にあるのだ。