Blue by NewDad（2021）楽曲解説

1. 歌詞の概要
2. 歌詞のバックグラウンド
3. 歌詞の抜粋と和訳
4. 歌詞の考察
5. この曲が好きな人におすすめの曲
6. “見えないブルー”を音にした静かな祈り
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1. 歌詞の概要

「Blue（ブルー）」は、アイルランド西部・ゴールウェイ出身のドリームポップ／インディーロックバンド NewDad（ニューダッド） による代表曲のひとつで、2021年のデビューEP『Waves』に収録された楽曲である。
この曲は、心のなかで静かに積もる孤独や自己否定の感情、そしてその感情が周囲との関係性にどのような“影”を落とすのかを描いている。タイトルの「Blue」は、もちろん“憂鬱”を意味するが、それ以上に自分の内側にしか見えない深い色を表すメタファーとして機能している。

「誰にも気づかれないまま、静かに沈んでいく」。
そんな感覚を、鋭くも繊細に、そしてどこか冷めたようなニュアンスで描き切るこの曲には、現代の若者特有の“可視化されない苦しみ”が宿っている。
明確な怒りも、悲鳴もない。ただ“ブルー”という色に、感情のすべてを閉じ込めている。

2. 歌詞のバックグラウンド

NewDadは、2018年に高校の同級生によって結成されたバンドで、Julie Dawsonの淡く儚い歌声を中心に、シューゲイザーやポストパンク、ドリームポップの影響を色濃く感じさせるサウンドを展開している。

「Blue」は彼らのキャリアにおけるブレイクスルーともいえる楽曲であり、SNS時代の感情の断片性や、語られない心の内を音楽に変えることに成功した象徴的な作品である。

この曲は、Julie自身が経験した“目に見えないメンタルの落ち込み”から生まれたとされ、心の不調が他人にどう映っているか、逆に何も伝えられない自分への苛立ちや羞恥心が反映されている。

また、リリース当時のインタビューで彼女は、「この曲を書いたとき、すごく内向的になっていて、自分の価値が見えなくなっていた」と語っており、「Blue」はまさに自己否定と自己認識の間で揺れる感情の記録なのだ。

3. 歌詞の抜粋と和訳

“You don’t see it but I’m blue”
「あなたには見えないかもしれないけど、私はブルーなの」

“I don’t know how to show you”
「どう伝えたらいいのかわからない」

“It’s always there when I wake / And it follows me all day”
「朝起きたときからずっとある／それは一日中私につきまとう」

“I tried to speak, but nothing came”
「話そうとしたけど、何も出てこなかった」

これらのリリックは、心の中の憂鬱が“言葉にできないまま存在している”という普遍的な感覚を非常にリアルに描いており、共感性が極めて高い。
特に「You don’t see it but I’m blue」というラインは、他者からは見えない内面の苦しみの象徴的な一節として、多くのリスナーの心に残った。

4. 歌詞の考察

「Blue」は、感情の鈍化や麻痺、そしてそれを人に説明する術を失った“静かな崩壊”のような状態を描いている。
ここに登場する“私”は、何かを叫びたいわけではない。ただ、何も感じられないことが、自分の存在を曖昧にしてしまうことへの戸惑いと不安を抱えている。

「I tried to speak, but nothing came」という一節は、心が閉じてしまったときの状態を驚くほど的確に表している。
感情を表現できないことへの焦燥感と、それでも外側では“普通の顔”をして生きていかなければならない社会的圧力——この相反する力のあいだに立たされているのがこの曲の語り手なのだ。

また、“blue”という色そのものが、悲しみと静けさ、深さと孤立を同時に内包しているという点で、この曲全体のトーンに絶妙な調和を与えている。

音楽的にも、リバーブの深いギターと宙を漂うようなベースが、“浮いているようで沈んでいく”という感情の揺らぎを音像で的確に描いている。
まさに感情の“色彩”をそのまま音にしたような構成だ。