アルバムレビュー:Big Trash by Thompson Twins

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※本記事は生成AIを活用して作成されています。

cover

発売日: 1989年10月**
ジャンル: ポップ・ロック、ニュー・ウェイヴ、アダルト・コンテンポラリー、シンセポップ


『Big Trash』は、Thompson Twinsが1989年にリリースした7作目のスタジオ・アルバムであり、
彼らの音楽キャリア後期における**“ポップ回帰”と“商業的再出発”を賭けたアルバム**である。
前作『Close to the Bone』(1987年)では個人的な喪失と静かな内省が色濃く反映されていたが、
本作ではより明快なエンターテインメント志向を打ち出し、キャッチーでダンサブルなポップソングが前面に押し出されている。

レーベルも長年所属していたAristaからWarner Bros.へ移籍し、
アメリカ市場での再起動を強く意識したアルバムであり、
80年代末期の音楽シーンにおいて存在感を再び取り戻そうとする気概に満ちている。
ただしその一方で、**時代のポップ文法に過剰に接近したがゆえの“没個性”**という批評も受けた作品でもある。


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全曲レビュー

1. Sugar Daddy
アルバムを代表するリードシングルで、アメリカのモダンロック・チャートではTOP30入りを果たした。
皮肉たっぷりな歌詞とセクシャルなテーマが特徴で、
シンセ×ギターのハイブリッドなサウンドがポップでありつつもダークな雰囲気を醸す。

2. Bombers in the Sky
軍事とメディアのイメージを重ねたメッセージ性の強いナンバー。
シリアスなテーマながら、軽快なメロディと明瞭なリズムがポップスとしての聴きやすさを保っている。

3. Tongue Like a Knife
タイトル通り、言葉の暴力や誤解をテーマにしたスリリングなポップ・チューン。
トム・ベイリーのヴォーカルが低く抑えられ、緊張感を演出する。

4. Wild
ミッドテンポのグルーヴが心地よい1曲。
野性的な本能と理性の葛藤を描いたようなリリックが印象的で、80年代の終わりらしいアレンジ。

5. Goldfinger
ユーモアと風刺の混ざったナンバーで、タイトルは明らかに007映画のパロディ。
贅沢主義や消費文化を軽やかに皮肉る。

6. Salvage
環境問題や人間社会の崩壊を暗示するようなリリックが特徴。
シリアスな内容ながら、アレンジはシンセ・ポップ寄りで聴きやすく仕上げられている。

7. Rock This Boat
明快なサビと軽やかなリズムが印象的な、典型的な“ポップ・ロック・ラジオチューン”。
“穏やかな航海”を揺さぶるというメタファーが、変化や挑戦のテーマと重なる。

8. Dracula
タイトルから受ける印象どおり、耽美で少しゴシックな雰囲気を纏った曲。
愛と恐怖、依存と支配の関係を戯画的に描く。

9. Big Trash
アルバムのタイトル曲にしてコンセプチュアルな中核。
“大量廃棄”という言葉を、物質社会への風刺と同時に、感情のゴミ溜めとしても機能させる。
アート性とエンタメ性の両面が交差する佳作。

10. Dirty Summer’s Day
ノスタルジーと苦味が入り混じったサマー・チューン。
ひと夏の恋、あるいは過去の記憶をテーマにしたシンセ・バラード的楽曲。

11. Love Jungle
プリミティブな欲望を寓話的に描いたナンバー。
ポリリズムやパーカッションの導入で、80年代初期のThompson Twinsを彷彿とさせる一面もある。

12. Sugar Daddy (Extended Version)
リード曲の拡張バージョン。ダンサブルなビートが強調されており、クラブ志向を感じさせるアレンジ。


総評

『Big Trash』は、Thompson Twinsにとって**“商業回帰”と“自己更新”の狭間に生まれたポップ・アルバムである。
音楽的には一貫してキャッチーで、ダンサブルで、アメリカ市場向けに整えられた洗練が感じられるが、
その反面、バンド初期〜中期に見られた
哲学的・民族的な個性や内省の深みはやや希薄**となっている。

とはいえ、「Sugar Daddy」「Bombers in the Sky」などに垣間見える社会的な意識や、
“Trash(廃棄)”というキーワードに宿る80年代文化への懐疑的視線は、
ポップスの形式の中にアート性を残そうとするベイリーとカリーの意志の表れでもある。

この作品を“軽い80sポップの名残”として聴くこともできるが、
むしろ“バブルの終焉を予感しながら笑って踊る”ようなポスト・ニューウェイヴ的な達観こそが、このアルバムの核心なのかもしれない。


おすすめアルバム

  • Belinda Carlisle / Runaway Horses
     80年代末の大人のポップとメロディの黄金比。
  • Pet Shop Boys / Introspective
     エレクトロと皮肉を融合した知的なダンス・ポップ。
  • Roxette / Look Sharp!
     商業的ポップスにアート性を微かに宿した成功例。
  • INXS / Kick
     ファンクとロックの中間で成立する高揚感が共通。
  • Prince / Lovesexy
     セクシャルとスピリチュアル、軽やかさと深みの絶妙な交差点。

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