発売日: 2013年6月10日
ジャンル: オルタナティブ・ロック, サイケデリック・ロック
『BE』は、Beady Eyeのセカンドアルバムであり、2011年のデビュー作『Different Gear, Still Speeding』からの進化を強く感じさせる作品だ。リアム・ギャラガー率いるバンドは、より野心的でサイケデリックなサウンドを追求し、デビューアルバムのシンプルなロックンロールから一歩踏み出している。プロデューサーには、かつてパルプやプロディジーを手がけたデイヴ・シディックを起用し、エレクトロニックやアコースティックを取り入れた、より洗練されたサウンドメイクが特徴となっている。
歌詞の面では、リアムの内面的な感情や、人生への洞察が強く反映されており、成熟したテーマと彼の持つエッジの効いた感覚が融合している。リアム独特のカリスマ的なボーカルと、サイケデリックで夢幻的なサウンドスケープが交錯するこのアルバムは、Beady Eyeの創造的な側面を深く掘り下げた作品と言える。
それでは、『BE』のトラックを順に見ていこう。
1. Flick of the Finger
アルバムの幕開けを飾るこの曲は、力強いホーンセクションとシンプルなドラムビートで始まる。リアムのボーカルが徐々に力を増し、歌詞には反抗的なメッセージが込められている。特に終盤の語り部分が、曲全体に重厚感を加えており、アルバム全体のサイケデリックな雰囲気を予感させるスタートとなっている。
2. Soul Love
この曲は、アコースティックギターと夢幻的なサウンドが特徴のバラードで、リアムの感情的なボーカルが印象的だ。エコーを効かせたボーカルとシンプルなメロディラインが、浮遊感を感じさせ、リスナーを幻想的な世界へと誘う。愛についてのテーマが描かれており、優雅で美しい一曲だ。
3. Face the Crowd
エネルギッシュなギターリフで始まるこの曲は、アルバムの中でも特にアップテンポでキャッチーなロックナンバー。観衆に向けて立ち向かう姿勢を歌った歌詞は、リアムらしい反抗的なスピリットが感じられる。ライブでも盛り上がりそうなダイナミックな一曲。
4. Second Bite of the Apple
サイケデリックなベースラインと独特のリズムが際立つ曲で、アルバムの中でも特に実験的な要素が強い。ビートルズ風のサイケデリックポップを感じさせつつ、リアムのボーカルがそれにフレッシュな力強さを加えている。フレーズのリピートが耳に残り、徐々に盛り上がる構成が見事だ。
5. Soon Come Tomorrow
このバラードは、アコースティックギターと優しいメロディが中心となり、リアムの繊細な一面を感じさせる。歌詞には失恋や再生のテーマが込められており、サウンドのシンプルさが歌のメッセージを引き立てている。リアムのボーカルが特に感情豊かに響く一曲だ。
6. Iz Rite
キャッチーでリズミカルなギターリフが特徴の曲で、明るいメロディが印象的だ。Oasis時代のシンプルなポップロックを思わせる曲調ながら、Beady Eyeとしての進化が感じられる。「Everything feels just right」という歌詞が繰り返され、ポジティブな雰囲気を放つトラックだ。
7. I’m Just Saying
激しいギターリフとリアムの力強いボーカルが印象的な、典型的なブリットポップのロックナンバー。歌詞には挑発的で自信に満ちたフレーズが散りばめられ、リアムのカリスマ性が全開となっている。短いながらも力強いエネルギーを感じさせる。
8. Don’t Brother Me
リアムが兄のノエル・ギャラガーに向けて書いたとされるこの曲は、穏やかで感情的なバラードだ。アコースティックギターを中心としたサウンドに、リアムの切実なボーカルが重なる。歌詞には過去の葛藤や兄弟間の複雑な関係が暗示されており、深い感情を感じさせる一曲。
9. Shine a Light
サイケデリックなアレンジが施されたこの曲は、アルバムの中でも特に独特な雰囲気を持っている。アコースティックなイントロから、徐々に重厚なサウンドが広がり、リアムのボーカルが力強く響く。終盤にかけてのサウンドの広がりが壮大で、印象に残る一曲だ。
10. Ballroom Figured
シンプルなアコースティックギターとリアムのボーカルが中心となったバラードで、静かな美しさが際立つ曲。歌詞には自己反省や失われた時間についてのメッセージが込められており、内省的なトーンが特徴的だ。アルバム全体の中で一息つける穏やかな瞬間を提供する。
11. Start Anew
アルバムのラストを飾るこのバラードは、新たな始まりを予感させるテーマを持つ。リアムのボーカルが穏やかに、しかし力強く響き、アコースティックなサウンドと共に未来への希望を感じさせる。シンプルでありながらも感動的なフィナーレを迎える一曲だ。
アルバム総評
『BE』は、Beady Eyeの音楽的な進化を示す作品であり、デビュー作に比べてより洗練され、サイケデリックな要素が強調されている。リアム・ギャラガーのボーカルは力強さと感情を兼ね備え、特に「Flick of the Finger」や「Don’t Brother Me」のような曲でその存在感を発揮している。プロデューサーのデイヴ・シディックによるエレクトロニックなアレンジが、バンドのサウンドに新たな深みを加えており、アルバム全体に流れる浮遊感が心地よい。Beady Eyeのアイデンティティが確立された、野心的かつ感情的な作品だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
- 『Who Built the Moon?』 by Noel Gallagher’s High Flying Birds
ノエル・ギャラガーのサイケデリックなサウンドが詰まったアルバム。リアムの作品と対比する形で、同時代の音楽的実験が楽しめる。 - 『Morning Phase』 by Beck
サイケデリックでメロディアスなバラードが魅力の作品。浮遊感のあるサウンドスケープが『BE』の静謐なトラックと共鳴する。 - 『Heathen Chemistry』 by Oasis
Oasis時代のアルバムの中でも、リアム・ギャラガーの楽曲が多く収録された作品。シンプルなロックサウンドと感情的な歌詞が似ている。 - 『The Seldom Seen Kid』 by Elbow
エモーショナルなロックと、複雑なアレンジが特徴のアルバム。感情的なボーカルと、広がりのあるサウンドが『BE』に通じる。 - 『A Northern Soul』 by The Verve
サイケデリック・ロックとブリットポップが融合したアルバム。リアム・ギャラガーのカリスマ性と、サイケデリックなサウンドを好むリスナーにおすすめ。
コメント