
発売日: 2019年5月24日
ジャンル: インディーフォーク、オルタナティブR&B、アメリカーナ
ジャンルを超えたエレガントな憂鬱—Faye Websterのブレイクスルー作
2019年、アトランタ出身のシンガーソングライターFaye Websterは、3rdアルバムAtlanta Millionaires Clubをリリースし、インディーミュージックシーンでの地位を確立した。本作は、フォーク、アメリカーナ、R&Bを融合させた独特のサウンドが特徴で、ウェブスターの憂いを帯びたボーカルと、内省的な歌詞が心に深く響く。
彼女の音楽は、カントリーのスチールギターとR&Bのスムースなリズムが共存し、どこかノスタルジックな雰囲気を醸し出している。本作からは「Kingston」や「Room Temperature」といった代表曲が生まれ、Faye Websterのメランコリックで洗練されたスタイルが多くのリスナーを魅了した。
全曲レビュー
1. Room Temperature
ミニマルなギターとメランコリックなメロディが印象的なオープニングトラック。「同じ部屋に閉じ込められたまま」という孤独感を繊細に表現する。
2. Right Side of My Neck
ジャジーなコード進行とスチールギターが融合した心地よいトラック。恋愛の記憶と喪失感を描いたリリックが秀逸。
3. Hurts Me Too
R&Bの要素が強く、ゆったりとしたビートが特徴的。ウェブスターの囁くようなボーカルが感傷的な雰囲気を醸し出す。
4. Cheap Thrills
アメリカーナ風のアレンジが際立つ楽曲。淡々とした歌声の裏に、切ない感情がにじむ。
5. Kingston
本作の代表曲。ゆったりとしたリズムとシンプルなコード進行の中に、切ない愛の感情が込められている。ウェブスターのヴォーカルが特に際立つ楽曲。
6. Come to Atlanta
R&Bテイストのグルーヴが効いた一曲。彼女の地元・アトランタへの愛が感じられる。
7. What Used to Be Mine
ドリーミーな雰囲気のバラード。ノスタルジックなメロディが印象的で、過去への郷愁が込められている。
8. Flowers
スローテンポの美しいバラード。ウェブスターのボーカルがひときわセンシティブに響く。
9. Jonny
実験的なアレンジが際立つトラック。ローファイな質感が独特の雰囲気を生み出している。
10. Jonny (Reprise)
ピアノを主体としたインストゥルメンタルのリプライズ。アルバムの余韻を残す美しいエンディング。
総評
Atlanta Millionaires Clubは、Faye Websterの音楽的なアイデンティティを確立した作品であり、ジャンルを超えた独創的なアプローチが際立っている。フォーク、カントリー、R&B、ジャズといった異なる要素が絶妙に融合し、洗練されたサウンドが作り出されている。
ウェブスターの歌声はどこか飄々としていながらも、深い感情を内包しており、アルバム全体を通じて独特の憂鬱な雰囲気を醸し出している。本作は、単なるインディーフォークの枠を超えた、新しい形のオルタナティブ・ポップとして評価されるべき一枚だ。
おすすめアルバム
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Weyes Blood – Titanic Rising (2019)
ノスタルジックなサウンドとドリーミーな雰囲気が共通する。 -
Angel Olsen – My Woman (2016)
インディーフォークとオルタナティブロックの融合が似ている。 -
Mitski – Be the Cowboy (2018)
シンプルなアレンジとエモーショナルな歌詞が共鳴する。 -
Kacey Musgraves – Golden Hour (2018)
カントリーとポップの融合が、ウェブスターのサウンドと共通する部分が多い。 -
Big Thief – U.F.O.F. (2019)
静かで繊細なメロディと内省的な歌詞が、本作の雰囲気に近い。
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