Another Girl, Another Planet by The Only Ones(1978)楽曲解説

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1. 歌詞の概要

「Another Girl, Another Planet」は、イギリスのバンドThe Only Onesが1978年に発表した代表曲であり、ポストパンクとパワーポップの美しい交差点に位置する不朽の名作である。この曲は一見ラブソングのように見えるが、実はその歌詞には、恋愛、依存、逃避、そして中毒といった複雑で多層的なテーマが織り込まれている。

タイトルの「別の女の子、別の惑星(Another Girl, Another Planet)」というフレーズは、恋愛における新しい出会いや放浪的な関係性を意味すると同時に、物理的な“逃避”のメタファーとも捉えることができる。語り手は、ある女性との関係に心を奪われながらも、それが現実を離れるための手段、あるいは破滅的な依存関係であることをどこかで理解している。恋と中毒は、どちらも陶酔をもたらすが、やがて代償を払わされるものでもある。

このように、「Another Girl, Another Planet」は感情の高揚と混沌を見事に捉えた楽曲であり、青春の刹那と逃れられない孤独感を併せ持つ、深く印象に残る一曲である。

2. 歌詞のバックグラウンド

The Only Onesは1976年にロンドンで結成されたバンドで、パンクムーブメントの最中に登場しながらも、その音楽性はより洗練され、メロディックで、60年代のブリティッシュ・ロックやパワーポップからの影響を色濃く受けていた。特にリードシンガーのピーター・ペレット(Peter Perrett)は、ルー・リードのような虚無的かつ詩的な詞世界を持ち、ミステリアスで退廃的なカリスマ性を備えていた。

「Another Girl, Another Planet」は、1978年のデビューアルバム『The Only Ones』に収録され、シングルとしてもリリースされた。この曲はリリース当初こそ大きな商業的成功には至らなかったものの、後に音楽評論家やファンの間で「パンク時代に生まれた最も完成されたポップソングのひとつ」として再評価されることになる。

その後、この曲はThe Replacements、Blink-182、Babyshamblesなど数多くのアーティストにカバーされ、ジャンルを越えて受け継がれる名曲となった。また、英国の音楽誌『Mojo』や『NME』ではしばしば「偉大なラブソング」としても挙げられ、時代や世代を越えて共鳴を呼び続けている。

3. 歌詞の抜粋と和訳

以下に、本楽曲の象徴的な部分を抜粋し、英語と日本語訳を併記する。

I always flirt with death
いつも死と戯れている

I look ill but I don’t care about it
病んで見えるけど、気にしちゃいない

I can face your threats
君の脅しだって向き合える

And stand up straight and tall and shout about it
真っ直ぐ立ち上がって、それを叫ぶことだってできる

この冒頭のセクションは、自己破壊的で反抗的な姿勢を感じさせ、主人公が何かから逃れようとしていることを暗示する。ここでの「死との戯れ」は、薬物使用のメタファーとも、激しい恋愛の比喩とも読める。

You’re my kind of girl
君は、まさに俺のタイプの女の子さ

And I’ve been far, far from home
俺はずっと、家から遠く離れてた

Put another girl, another planet
また別の女の子、別の惑星さ

このコーラス部分は、恋愛によってどこか現実離れした状態にいることを象徴的に表現している。「別の惑星」は、精神的な逃避先や快楽の象徴として読むことができ、彼の愛情は地に足がついていない、浮遊するようなものだ。

※引用元:Genius – Another Girl, Another Planet

4. 歌詞の考察

「Another Girl, Another Planet」の魅力は、歌詞の曖昧さと多義性にある。タイトルが示すように、「別の女の子」は単なる恋愛対象ではなく、薬物や欲望、あるいは新しい経験への欲求そのものを指している可能性がある。「別の惑星」という表現は、その体験が現実世界とは隔絶された感覚であること、つまり陶酔・逃避・快感といった非日常的な感覚を意味している。

実際、ピーター・ペレット自身もインタビューで「この曲は恋愛についても書いたし、ヘロインについても書いた」と語っており、歌詞は意図的にその両方を重ね合わせている。恋に落ちる感覚と薬物に溺れる感覚は、どちらも一瞬で世界の色を変えてしまうという意味で近い体験だということが暗示されている。

また、この曲の語り手は、愛や関係性に対してどこか冷めた視点を持っており、それが歌詞全体にシニカルで知的なトーンを与えている。彼は「君は俺のタイプだ」と言いながらも、それを深く追い求めようとはしない。常に次の「別の女の子」「別の惑星」を探しているような、永遠に満たされることのない存在として描かれている。

5. この曲が好きな人におすすめの曲

  • Teenage Kicks by The Undertones
    青春の衝動と純粋な情熱を歌ったポップ・パンクの金字塔。疾走感と切なさが共通している。

  • Just Like Heaven by The Cure
    恋愛の陶酔感と夢のような感覚を描いたラブソングで、感情の浮遊感が似ている。
  • There Is a Light That Never Goes Out by The Smiths
    死とロマンスを交差させた歌詞が印象的で、「逃避としての恋愛」を描いている点が共通。

  • Love Will Tear Us Apart by Joy Division
    愛の崩壊と自己喪失をクールなトーンで表現した名作。冷たく美しい音と詩世界が魅力。

6. パンク以後の時代に輝くメロディック・アンセム

「Another Girl, Another Planet」は、そのリリース当時には商業的成功には至らなかったものの、音楽史の中でじわじわと評価を高め、「隠れた名曲」から「ジャンルを代表する名曲」へと変貌を遂げた。

この曲が与えた影響は広範で、90年代のオルタナティヴ・ロックから2000年代のインディー・ポップに至るまで、そのメロディセンスと退廃的ロマンスの表現は受け継がれている。特にBlurThe Libertines、The Strokesといったバンドたちは、本作の持つ「知性と退廃の同居」から少なからず影響を受けたと言われている。

演奏面でも、疾走感あるギターリフとエモーショナルなヴォーカルが絶妙なバランスを保ち、ポップでありながらも危うさを残すサウンドは、時代を超えて多くのリスナーを惹きつけている。

「Another Girl, Another Planet」は、一瞬の恋、幻想のような幸福、そして果てしない空虚感といった、青春の矛盾を詰め込んだ詩的なカプセルである。その魅力は今なお褪せることなく、世界中の“別の惑星”を夢見るリスナーの心に響き続けている。

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