発売日: 2014年10月14日
ジャンル: サイケデリックロック、ガレージロック、ローファイ、アートロック
Foxygenの3作目「…And Star Power」は、24曲入り、全82分にもおよぶ壮大なコンセプトアルバムで、彼らの音楽的野心が詰め込まれた一作である。前作「We Are the 21st Century Ambassadors of Peace & Magic」で成功を収めたFoxygenが、さらに大胆に実験を重ね、70年代サイケデリックロックやガレージロックの影響を色濃く感じさせるエキセントリックな音楽を展開している。アルバム全体はバンドの架空のメンバー「Star Power」による作品とされ、混沌としたエネルギーと遊び心が交錯する構成となっている。
楽曲は、荒々しいガレージロックやアコースティックなフォーク、ノイズに満ちたローファイサウンドといった多様なスタイルが取り入れられており、アルバムは大きく4部構成に分かれている。それぞれのパートが異なる音楽性を持ちながらも、「Star Power」と題された曲群がアルバムを通して統一感を保っている。サム・フランスの奔放なボーカルスタイルとジョナサン・ラドーのサウンドメイキングが随所に光り、聴き手をサイケデリックな音楽の旅へと誘う。
トラックごとの解説
1. Star Power Airlines
アルバムの幕開けを飾る「Star Power Airlines」は、短いイントロのようなトラックで、荒々しいノイズと共にリスナーを奇妙な音楽の旅へと引き込む。
2. How Can You Really
「How Can You Really」は、シングルカットされたポップでキャッチーな一曲で、ソウルフルなメロディと軽快なピアノが特徴。サム・フランスのカリスマ性あふれるボーカルが印象的だ。
3. Coulda Been My Love
「Coulda Been My Love」は、メロウでロマンチックなトラックで、穏やかなメロディが魅力。愛に対する切ない感情が、柔らかいサウンドに溶け込んでいる。
4. Cosmic Vibrations
「Cosmic Vibrations」は、サイケデリックなサウンドスケープとミステリアスな雰囲気が漂うトラック。浮遊感のあるメロディと幻想的なリフが心地よい。
5. You & I
ゆったりとしたリズムとシンプルなメロディの「You & I」は、どこか懐かしいカントリー風の雰囲気を持つ楽曲で、Foxygenの多様な音楽性が垣間見える。
6-9. Star Power I-IV
アルバムのハイライトともいえる「Star Power」シリーズは、ポストパンクやガレージロック、ローファイサウンドを融合させた実験的なパート。荒々しいエネルギーとユニークな構成が際立ち、アルバム全体のスリルを高めている。
10. I Don’t Have Anything / The Gate
サイケデリックで重厚なサウンドが特徴の「I Don’t Have Anything / The Gate」。瞑想的なトーンと不安感が交錯し、アルバムの流れにさらなる奥行きを与えている。
11. Mattress Warehouse
「Mattress Warehouse」は、ダークでどこか不気味なガレージロックチューン。ノイズがかったサウンドと狂気じみたボーカルが、楽曲にスリリングな雰囲気を加えている。
12. 666
「666」は、攻撃的なギターリフとエネルギッシュなドラムが特徴で、Foxygenのパンクロック的な側面が強調された一曲。サムのボーカルが荒々しく、圧倒的な勢いを感じさせる。
13. Flowers
ノスタルジックでメロディアスな「Flowers」は、愛と別れをテーマにしたトラックで、柔らかなギターとリズムが穏やかに流れる。優しくもどこか切ないメロディが心に残る。
14. Wally’s Farm
カントリーロック風の「Wally’s Farm」は、サムの陽気なボーカルが際立つトラック。ユーモラスな歌詞とシンプルなリズムが、アルバムにユーモアを添えている。
15. Cannibal Holocaust
「Cannibal Holocaust」は、ノイズとエフェクトが散りばめられたアヴァンギャルドな楽曲で、不穏なムードが支配する。Foxygenの実験的な一面が垣間見える。
16. Hot Summer
「Hot Summer」は、軽快でポップなビートが特徴の曲で、アルバムの中でも明るいトーンの一曲。キャッチーなメロディとリズミカルなアレンジが魅力的だ。
17. Cold Winter / Freedom
「Cold Winter / Freedom」は、暗く重厚なサウンドが印象的で、冬の寒さと孤独を象徴するような曲。サムのエモーショナルなボーカルが、切なさを引き立てている。
18. Can’t Contextualize My Mind
実験的な構成の「Can’t Contextualize My Mind」は、ローファイなサウンドと自由奔放なメロディが組み合わさり、Foxygenの個性が炸裂する楽曲。
19. Brooklyn Police Station
「Brooklyn Police Station」は、エネルギッシュでロックンロール調のナンバー。疾走感のあるビートとサムの情熱的なボーカルが印象的なトラックだ。
20. The Game
「The Game」は、哀愁のあるメロディが響くバラードで、アルバムの終盤にふさわしい深みのある楽曲。繊細なアレンジが楽曲に温かさを加えている。
21. Freedom II
「Freedom II」は、パワフルなギターサウンドが特徴で、自由や反抗心をテーマにした一曲。スリリングなリズムがアルバム全体に勢いをもたらしている。
22. Talk
「Talk」は、ダウナーなトーンが印象的で、どこか悲しげな雰囲気が漂う。サムのボーカルが心に染み入るような一曲だ。
23. Everyone Needs Love
「Everyone Needs Love」は、愛と連帯をテーマにした温かい楽曲。シンプルながらもエモーショナルで、リスナーに癒しを与える。
24. Hang
アルバムを締めくくる「Hang」は、静かでメランコリックなエンディングトラックで、Foxygenの音楽的な多様性と彼らの旅の終わりを示唆するような余韻を残す。
アルバム総評
「…And Star Power」は、Foxygenがサイケデリックロックとガレージロックの枠を超え、音楽の可能性を追求した実験的で壮大なアルバムである。70年代ロックのエッセンスが詰まったこの作品は、荒々しさと美しさ、カオスと秩序が同時に存在する。サム・フランスとジョナサン・ラドーの自由奔放なアプローチと、ユニークなサウンドメイキングが合わさり、聴くたびに新しい発見がある「音楽の冒険」を提供している。「…And Star Power」は、Foxygenの野心と創造性を感じさせ、ファンにとっても記憶に残るアルバムとなるだろう。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Exile on Main St. by The Rolling Stones
荒々しくもエネルギッシュなサウンドが特徴のロック名盤。Foxygenのガレージロック的な一面に共通する。
The Piper at the Gates of Dawn by Pink Floyd
サイケデリックで実験的なサウンドが魅力の一枚。Foxygenの幻想的な世界観とリンクする作品。
Double Nickels on the Dime by Minutemen
長尺で多様なスタイルを持つパンク/ガレージの名盤。多彩なトラック構成が「…And Star Power」に共通する。
On Avery Island by Neutral Milk Hotel
ローファイで感情的なサウンドが特徴。Foxygenの荒々しいサウンドと内省的な歌詞に共感できるリスナーにおすすめ。
White Light/White Heat by The Velvet Underground
実験的で前衛的なガレージロックの金字塔。Foxygenの自由奔放で反抗的な音楽性と重なる。
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